
「送出機関」とは、海外の技能実習生を集め、教育し日本に送り出す機関のこと。多い国には300以上の認定機関があり、その特性や人材の質は様々です。
契約できる送出機関の数には限りがあるため、技能実習生受け入れの際には優良な機関を見極める必要があります。
今回は、送出機関の役割や探し方を解説。VAMASが発表した優良送出機関のランキングもご紹介します。
この記事の目次
送出機関とは?
まず、海外から技能実習生を集める方法は以下の2つ。
公募(求人募集を出して集める)
海外の会社の従業員を日本に送り出す
現状は、1つ目の公募という方法で仲介業者が技能実習生を集め、日本に送り出すことが多いです。
しかし、中には技能実習生が逃げ出せないように多額の借金を背負わせたり、高額な保証金を請求したりする悪質な仲介業者も。
この問題を解決するため、「技能実習への求職の申し込みを適切に日本の監理団体へ引き継ぐ」ための機関として、「送出機関」の定義が定められました。
先に挙げたような悪質な実態がなく、適切に技能実習生を送り出してフォローできる仲介業者のみが送出機関と認められるのです。
研修生を日本に派遣する海外の団体や企業
先にも触れた通り、送出機関は海外でその国の技能実習生を集め、日本に派遣する機関です。技能実習生に日本語を教えたり事前研修のみを行ったりする機関は「準備機関」であって。送出機関とは異なります。
研修生の選抜や日本語教育をする
送出機関は技能実習生の公募と選抜を行なって、日本に派遣する人材を揃えます。そして、その後日本で働くために必要な語学や技能教育を行います。
先に日本語教育や事前研修を行うのは「準備機関」だと解説しましたが、送出機関が準備機関を兼ねることもあるのです。
日本の習慣や法律が適用されない
送出機関は海外にある海外の機関なので、そこでの習慣や法律は海外のものが適用されます。現地の習慣や技能実習生の考え方に精通しているので、教育やフォローがスムーズにできるのです。
日本から出資して作られた機関もある
送出機関は日本からの出資で作られる場合も。日本語学校を併設している送出機関もあり、そういった機関から派遣される技能実習生は日本語能力の水準が高いことが多いです。
送出機関の主な役割
送出機関は、「技能実習生を日本に送り出す窓口」というだけではありません。
- 技能実習生候補者の募集
- 技能実習生の教育
- 技能実習生を日本に送り出す
- 技能実習生のケアや問題が起きれば対応
- 帰国後の実習生のフォローアップ
と、トータルに日本での技能実習をサポートしているのです。
技能実習生候補者の募集
まず、送出機関は日本の受け入れ企業からのオファーに合わせて人材を募集します。性別・年代・学歴など、欲しい人材をある程度指定することが可能です。
技能実習生の教育
技能実習生候補者を選抜したあと、本格的に日本で働くための教育を行います。語学力や、仕事上必要になる実技のトレーニング、日本の習慣や文化などの教育です。
その後、最終的に面接や実技試験を行って合格者のみを日本に送り出します。
技能実習生を日本に送り出す
送出機関は日本の技能実習生監理団体と連携して、能実習生を日本に送り出します。
一人ひとりの技能実習生について研修中の評価などを報告し、並行して関係各所との手続きも進めます。監理団体から在留認定証明書が送られてきたら、ビザの申請手続きも送出団体が行います。
技能実習生のケアや問題が起きれば対応
日本に送り出したあと、技能実習生がトラブルに巻き込まれた場合、その対応も送出機関が行います。
また、慣れない環境で働く技能実習生のメンタルケアも、本国の事情や考え方をよく知る送出機関の役割です。
帰国後の実習生のフォローアップ
実習機関が終わって技能実習生が帰国したあと、送出機関は国内での仕事や次の実習先の斡旋を行います。
また、日本の厚生年金返還など、諸手続きも送出機関の役目です。
送出機関の認定要件
送出機関は誰もが運営できるわけではなく、認定要件を満たして国の公的機関からの推薦を受けなければいけません。
送出機関の認定要件は、以下の通りです。
- 所在する国又は地域の公的機関から推薦を受けている
- 制度の趣旨を理解して候補者を適切に選定し、送り出す
- 技能実習生等から徴収する手数料等の算出基準を明確に定めて公表し、技能実習生に明示して十分理解させる
- 技能実習修了者(帰国生)に就職の斡旋等必要な支援を行う
- 法務大臣、厚労大臣又は外国人技能実習機構からのフォローアップ調査、技能実習生の保護に関する要請などに応じる
- 当該送出機関又はその役員が、日本又は所在国の法令違反で禁錮以上の刑に処せられ、刑執行後5年を経過しない者でない
- 当該送出機関又はその役員が、過去5年以内に
-保証金の徴収他名目を問わず、技能実習生や親族等の金銭又はその他財産を管理しない(同様の扱いをされていない旨 技能実習生にも確認)
-技能実習に係る契約の不履行について違約金や不当な金銭等の財産移転を定める契約をしない(同様の扱いをされていない旨 技能実習生にも確認)
-技能実習生に対する人権侵害行為、偽造変造された文書の使用等を行っていない - 所在国または地域の法令に従って事情を行う
- その他取次に必要な能力を有する
送出機関が多い国
送出機関は東南アジアを中心に西アジア、南米などの国々に存在します。
中国
中国国内の送出機関には以下の2種類があります。
- 中国国家外国専家局(専家局)認定送出機関
- 中国中日研修生協力機構(中日機構)認定送出機関
「中国国家外国専家局(専家局)認定送出機関」は8ヶ所、「中国中日研修生協力機構(中日機構)認定送出機関」は252ヶ所。
日本と中国は位置関係も文化的な背景も近く、また中国人の人口が単純に多いこともあり、技能実習生の送出機関が非常に多いです。
ベトナム
ベトナムにある認定送り出し機関は、329ヶ所。ベトナムは国内の平均年収が日本の1/10以下のため、海外への出稼ぎを目標とする若者が多いです。
さらに、ベトナム人の謙虚な国民性が日本人と馴染みやすいということもあり、若い人材と受け入れ企業のニーズが合致して技能実習生の数が多くなっています。
フィリピン
フィリピンにある認定送り出し機関は、305ヶ所。
フィリピン人材はタガログ語に加えて英語を話せることが多く、日本国内ではインバウンド対策としてフィリピン人実習生が重用されています。
インドネシア
インドネシアには200ヶ所の送出機関があります。
全体的に明るくのんびりした国民性で、聞き取りやすい日本語を話す実習生が多いです。
優良な送出機関を探す時のポイント
認定送出機関は全て認定基準を満たしているのが前提ですが、そこに集まる人材の質や教育の水準には差があります。
たくさんある送出機関から、優良な機関を探すポイントを見ていきましょう。
日本に駐在事務所があり、駐在員が配備されているか
大きな送出機関は、日本に駐在事務所を持っていることがあります。さらに、駐在員が常駐していれば、日本と海外両方の言葉や文化に精通しているため、スムーズな意思疎通が可能。
また、日本国内でトラブルがあった場合の対応も早いので、日本国内に駐在事務所があり、駐在員がいることは送出機関選びのポイントの1つです。
日本語教育の水準
技能実習生と的確なコミュニケーションを取るためには、日本語力の水準が重要です。日本の監理団体も来日後1~2ヶ月の日本語の教育を行いますが、短期間で教えられることは限られています。
そこで重要になるのが、送出機関による事前教育。送出機関の日本語教育水準は、教育担当者と日本語で話したり、講習中の技能実習生と実際に会話をしたりすることで、ある程度推察することができます。
また、日本語学校を併設している送出機関からの実習生は、日本語力の水準が高いことが多いです。
管理費が適正であるか
送出機関同士の競争のため、過度に管理費を下げている送出機関も。
しかし、管理費が安い送出機関は、そのぶん人件費を削るなどして技能実習生一人ひとりに対して目が行き届いていないことがあります。
実習生を適切に監理するためにはそれなりの費用が必要ですから、異様に監理費が安い送出機関は避けたほうがいいでしょう。
VAMASが公表したベトナムの優良な送出機関
最後に、VAMAS(ベトナム海外労働者派遣協会)が公表しているベトナムの優良な送出機関をご紹介します。
VAMASは、毎年ベトナム国内の送出機関について行動規範を基準に評価し、星の数でランク付けを行っています。
星6つの送出機関
LOD Human Resource Development Corporation(ハノイ)
Tourist, Trade and Labour Export Joint Stock Company(ハノイ)
星5つの送出機関
Anh Thai Duong Company Limited(ホーチミン)
ASIA HUMAN RESOURCES EDUCATION LIMITED COMPANY(ハノイ)
Advanced International Joint Stock Company(ハノイ)
Asian Dragon Human Resources Development Services And Investment Joint Stock Company(ハノイ)
C.E.O Service Development Joint Stock Company(ハノイ)
Truong Son Trading Service And Labor Export Joint Stock Company(ホーチミン)
Dai Viet Investment Development Construction Joint Stock Company(ホーチミン)
Broadcast information development corporation(ハノイ)
など53ヶ所
まとめ
海外からの技能実習生を適切に監理し、フォローするために定められた送出機関。しかし、実態としては、人材の水準や監理状況にはばらつきがあります。
トラブルなく技能実習生を受け入れるためには、優良な送出機関を見極める目が必要です。契約できる送出機関には限りがありますから、選ぶ基準を知って注意深く判断するようにしましょう。