法務省によると、日本に在留しているフィリピン人の数は平成30年6月時点で26万人です。これは外国人在留者の約10.1%を占めており、中国、韓国、ベトナムに次いで4位です。
今後、外国人労働者の数はさらに増えいくと予想されています。日本でフィリピン人を採用し、長く働いてもらうためには、フィリピンの歴史・文化やフィリピン人の特徴を理解しておく必要があります。フィリピン人の採用を考えている企業の採用担当者の方はぜひご覧ください。
この記事の目次
フィリピン文化の特徴
フィリピンは、東南アジア唯一のキリスト教国家です。フィリピン人の約90%がキリスト教徒で、80%ほどがカトリックです。16世紀にスペインによって植民地化されていたときに改宗させられ、それ以来熱心なキリスト教徒が多いです。
キリスト教の教えでは、避妊や人工中絶がタブーとされています。離婚も良く思われていません。敬虔なクリスチャンにキリスト教の教えを否定するようなことを言うのはトラブルの元なので避けましょう。
フィリピンは、各地域や諸島に100以上の民族が存在する多民族国家です。100以上の言語が存在し意思疎通が難しいため、公用語はフィリピン語と英語とされています。約9割のフィリピン人が英語を使い、英語教育も小さい頃から行われているため、アメリカ、イギリスに次いで3番目に英語話者が多い国とも言われています。
フィリピンと日本の文化の違い
フィリピンと日本の文化・習慣の違いはどのようなことがあるのでしょう。日本では常識なこともフィリピンではマナー違反になることも、その逆もあります。
仕事にまつわる文化・習慣
まずは、フィリピン人の仕事にまつわる文化・習慣について、日本と比較しながらご紹介いたします。
時間にルーズ
「フィリピン時間」という言葉があるほど、フィリピン人は時間に遅れます。大事な商談や飛行機の時間は別ですが、フィリピンでは30分の遅刻は当たり前です。フィリピン人とアポイントをとるときは、時間に遅れることを頭に置いておいた方がよいでしょう。
女性の働き者が多い
フィリピンでは男女関係なく、働ける人・働きたい人が家族を養う国で、働き者の女性が多いです。2015年の統計によると、フィリピンの女性管理職の割合は47.6%でアジアでもトップの数字です。出産ギリギリまで働いている人や専門職の数も多いです。男性が子育てを担うことも珍しくありません。
プライドが高い?
フィリピン人は人前で叱られることは恥だと思う傾向があります。分からなくても分かるふりをすることあるようです。職場でフィリピン人に注意したいときは、別室に通して1対1で言うようにしましょう。
忍耐力がないかも
日本には一つの職場で長く働くことをよしとする風潮があり、嫌なことがあっても我慢する人が多いですが、フィリピン人は違います。注意されてそれが嫌と感じたら辞める、プレッシャーを感じたから辞めるといったことは珍しくありません。
経験重視
フィリピンは日本のような新卒採用制度はなく、経験値が重視されます。これまでの職場で何をしてきたか、何を学んだかが重要となります。
給与の交渉を自分で行うことも?
フィリピン人は給与の金額に敏感で、細かい箇所まで気にしています。給与が少ないと経験や実績を自分でアピールし、より給与の高いところに転職していきます。
生活にまつわる文化・習慣
フィリピンの生活にまつわる文化・習慣はどのようなことがあるのでしょう。キリスト教国家であるため、日本と違うことも多いです。しっかり確認してくださいね。
日曜日は礼拝に行く人が多い
フィリピンには熱心なキリスト教徒が多く、毎週日曜日にはたくさんの人が教会へ行きます。街中にはあちこちに教会があり、中にはショッピングモールで開催されるミサもあります。
フィリピンは電気代が高い
物価・水道代・ガス代はフィリピンよりも日本の方が高いですが、電気代は日本の数倍です。理由としては、電気の基本料金が高い、盗電が多いこと、消費税が高いこと、電化製品がエコ仕様でないことがあげられます。また、暑い国なのでスーパーなどの冷房はとても寒く、寒いくらいのエアコンは常識だと思っているそうです。
トイレの使い方が違う
生活面での日本とフィリピンとの大きな違いはトイレにあります。フィリピンのトイレでは使用済みの紙はゴミ箱に捨てる方式をとっているため、日本のように紙を流すと90%以上の確率で詰まってしまいます。
トイレの種類もいろいろで、日本と同じタイプ、紙がない、紙と便座がない、手動水洗などがあります。また、便座がないことも多いです。
年長者や子供を大切にする
フィリピンは大家族が多く、年齢が上も子どもが弟や妹の面倒を見ていることが多いです。フィリピン人は日本以上に妊婦や子どもを大切にしていて、街中でも積極的にサポートをします。
また、年長者も非常に大切にしていて、両親が年をとったら子どもが養うのが当たり前とされています。
プライバシー保護の意識が低いかも
フィリピン人にはプライバシー保護の意識が薄く、日本ではNGなことも気軽にSNSに載せてしまうことがあります。住所なども他人に簡単に教えてしまうことがあるため、採用の際はプライバシーポリシーについてもよく話しておきましょう。
お祭りやイベントが大好き!
フィリピン人はお祭りやイベント事が大好きです。キリスト教の最大のイベントであるクリスマスは3ヶ月以上の長い期間をかけて準備をします。他にも、イースターや誕生日なども盛大に祝う習慣があります。
食にまつわる文化・習慣
フィリピン人と日本人は、食事の文化や習慣の違うことが多くあります。どのようなところが違うのでしょう。
フィリピン人は箸を使わない
フィリピンの主食は日本と同じお米ですが、箸でなくスプーンとフォークを用います。洋食を食べるときのようにフォークとナイフで食べることはありません。
フォークとスプーンを使わないものは、手で食べます。おにぎりやパンだけでなく多くのものを手で食べる習慣があります。
味付けは濃く・高カロリーのものが多い
フィリピンには揚げ物やお肉などの高カロリーの料理も多いです。野菜は好まない人が多く、ファーストフードでもハンバーガーよりフライドチキンが注文される傾向にあります。
また、甘い物好きで紅茶などには必ず砂糖が入っています。
おやつ時間がある
フィリピンでは、朝昼晩の食事以外に10時と15時に「ミリエンダ」と呼ばれるおやつの時間があります。甘い物が多いですが、サンドイッチのようなものを食べる人もいます。
果物の種類が多い
フィリピンの果物と言えばバナナを思い浮かべる人は多いように、フィリピンはとにかく果物が豊富な国です。南国なので様々な果物が育つため、フィリピン人は果物を好んで食べています。
コミュニケーション・恋愛にまつわる文化・習慣
コミュニケーション文化を理解することは、面接・契約する上でも重要になります。フィリピン人のコミュニケーション・恋愛にまつわる文化・習慣の違いはどのようなところでしょう。
距離感は近め
日本とフィリピンでは、人付き合いでの距離感が違うようです。ビジネスの世界では握手をし、友人関係では数回会っただけでもハグや頬同士を合わせるなど、肌が触れ合う挨拶をすることが多いです。
フレンドリーな人が多い
フィリピン人はとにかくおおらかで明るい性格の人が多いです。日本に比べて距離感が近いく、初対面でも話しやすい人が多いです。プライドが高いことにさえ注意すれば、コミュニケーションは取りやすいです。
質問を多くする
フィリピン人は、プライバシーの考えがあまりないことから、初対面の女性にも体重や年齢を聞くことがあります。決して悪気があるわけでないので、そういった習慣だということを覚えておくと良いでしょう。
また、フィリピン人は身長が低い人が多く、フィリピン人男性に身長を聞くことは失礼にあたるので注意しましょう。
挨拶の方法が違う
フィリピンと日本では挨拶の方法が違います。日本では「お元気ですか?」と尋ねますが、フィリピンでは「ご飯食べた?」と聞きます。食事を元気のバロメーターだと考えるフィリピン人ならではの挨拶の方法です。
また、うまく聞き取れなかった場合、フィリピンでは「はあ?」「あ?」と返します。日本では悪い印象になってしまいますが、決して悪意はないので理解が必要です。
お金にまつわる文化・習慣
フィリピン人のお金にまつわる文化・習慣の違いはどのようなところにあるでしょうか。
貯金をしない人が多い
日本人は銀行にお金を預けて貯金をしますが、フィリピン人はそうではありません。過去の植民地時代などの影響で政府や銀行があまり信用されていないため、お金はあるだけ使う人が多いようです。
お金の貸し借りのトラブルが多い?
フィリピンは貧富の差が大きい国です。キリスト教の教えの一つに持っているものを分け与えるというものがあり、困っている人に救いの手を差し伸べることが当たり前だと考えられています。お金を貸さなくても恨まれ、貸しても帰ってくることはなく金額がエスカレートすることもあるようです。
お釣りを返さないことが多い
フィリピンの通貨は「ペソ」ですが、1ペソ以下は「センタポ」というコインが用いられます。このセンタポの計算が難しく、お釣りが正確に返ってこないことは珍しくありません。タクシーなどはお釣りを用意していないこともあるので、フィリピンでは細かいお金を持っておいた方が良いでしょう。
交通にまつわる文化・習慣
フィリピンの交通ルール・習慣は、どのようになっているのでしょうか。
交通ルールは日本と同じ
交通ルールは日本と同じく歩行者優先です。しかし、日本よりも信号機がある場所が少ないため、歩行者は手を挙げて渡らなければいけません。フィリピンの道路を横断するのはとても難しいと言われています。
渋滞が多い
経済成長に伴い、フィリピンでは自家用車を購入する人が増えています。そのため交通渋滞が年々深刻化しています。フィリピン国内では、車で10分程度の距離でも1時間以上掛かってしまう場合もあるため、時間に余裕を持った行動を心がける必要があります。
バスのようで停留所のないジプニー(Jeepney)
フィリピンには、タクシーでもバスでもないフィリピン独自の交通手段があります。昔のジープを改造して公共の乗り物にしたもので、ジプニー(Jeepney)と呼ばれていす。地方の隅々まで行き先があり、格安で移動することができます。
教育にまつわる文化・習慣
フィリピンの教育にまつわる文化・習慣は日本と違う点が多いです。どのようなところが違うでしょうか。
義務教育
日本は6-3-3-4年制で、義務教育は小学・中学の6年間です。フィリピンでは幼稚園が1年、小学校が6年、中学がなく高校が6年、大学4年の1-6-6-4制となっています。
フィリピンと日本では義務教育の長さが違います。フィリピンの義務教育は幼稚園から高校までの13年間と、日本の倍の長さです。
新学期の始まりが違う
日本では4月が新学期のスタートですが、フィリピンでは6月にスタートします。1年は4学期に分けられており、休みは年間約200日で日本と同じくらいの日数です。
授業内容
フィリピンの学校では公用語である英語と、キリスト教に力を入れています。
また、フィリピンは1年中暑い国なので体育の授業はほとんど行われません。
結婚にまつわる文化・習慣
フィリピン人の結婚にまつわる文化・習慣の違いはどのようなことがあるのでしょう。
男女とも嫉妬深い?
フィリピン人は男女ともにやきもち焼きで、特に女性が嫉妬深いと言われています。こまめな連絡をとる人が多く、連絡が取れないとトラブルになることが多いです。
不倫は許されない
フィリピンは不倫に厳しく、特に妻の不倫は反道徳的とされとても非難されます。
また、フィリピンの刑法には「夫や妻の不倫現場に遭遇して、逆上して暴力をはたらいても罪にならない」という規定があり、不倫が分かったら配偶者に暴力をふるうことが容認されています。
とにかく家族を大切にしているフィリピン人
フィリピン人は、家族を非常に大切にしていて、仕事よりも家族を優先します。そのことを踏まえ、フィリピン人を採用する日本人が注意すべきことはどのようなことでしょうか。
家族が何より大事
フィリピン人は、遠い親戚でも大切にしていたり、家族に仕送りをしたりする人が多いです。自分の夢を家族のために犠牲にしている人もいます。
家族の用事で休むことを受け入れよう
フィリピン人にとっては、家族の用事は最優先事項です。家庭の事情で仕事に遅れたり休んだりすることも珍しくありません。これができなければ転職をしてしまうので、フィリピン人を雇入れる際は休みやすい環境をしっかり整えましょう。
家族の悪口は絶対NG
日本でも非常識な振る舞いとみなされますが、フィリピン人は家族の悪口を言うことをとにかく嫌います。フィリピン人の家族を悪くいったり揶揄したりするのは絶対にやめましょう。
まとめ
フィリピン人は英語が話せてフレンドリーな性格であることから、採用したいという企業は多いです。
フィリピン人はプライドが高く時間にルーズな人が多いため、注意の仕方に気をつけましょう。また、給与の額にとても敏感なので、条件面も細かく説明しておく必要があります。
お互い気持ちよく仕事ができるよう、環境づくりはしっかり行いましょう。