厚生労働省が発表した、2020年2月時点の有効求人倍率の平均は「1.34」。
「1.00」で1件の求人に1人の応募、ということなので、現在の日本は求人に対して求職者が少ない「人手不足」です。
今回は、そんな中でも特に人手不足の業界TOP5をご紹介。
日本で人手不足が深刻になっている原因や、人手不足の解消方法も解説いたします。
この記事の目次
人手不足の業界ランキングTOP5
それでは早速、人手不足の傾向が強い業界をランキング形式でご紹介していきます。
厚生労働省が発表している有効求人倍率のデータ(2019年・2020年分)から、人手不足の業界や職種を調べました。
①建設・建築・土木業界
2019年11月の調査で、建築・土木・測量技術者の有効求人倍率は「7.34」。
およそ7件の募集に対して1人の応募があるということで、かなり人手不足が深刻です。
建設・建築・土木業界の仕事には高度な専門技術が必要である反面、俗に「土方」と呼ばれるなど若年層からのイメージが良くないといった理由で人手不足が進んでいます。
また、リーマンショックで建設需要が低下し、その時に仕事が無くなって建設業界を離れた人材が戻っていないことも人手不足の原因です。
②運送・流通業界
運送・流通も、人手不足が問題となっている業界です。
2019年11月のデータでは、運輸・郵便事務の有効求人倍率は「3.66」、自動車運転の職業は「3.28」となっています。
運送・流通業界については、ネットショッピング等の需要拡大に運送・流通業界側が追いついていないことが人手不足の理由です。
業界の規模自体は拡大していて将来性は高いものの、急スピードで仕事量が増加していて人手の確保が難しい状況となっています。
③医療・介護福祉業界
医療・介護福祉業界も、人手不足が進んでいます。医師・薬剤師の有効求人倍率は「4.66」。
介護サービスの有効求人倍率は「3.75」、保険医療サービスは「3.32」で、医療・介護業界は職種を問わず、需要の1/3~1/4ほどしか人材が確保できていません。
これは、少子高齢化の進行により、医療や介護の需要が高まっているため。
さらに、専門的な技術や知識が必要な職種なので、人材の育成規模にも限りがあることが原因です。
④飲食・サービス業界
次にご紹介するのは、飲食・サービス業界。
接客・給仕の仕事の有効求人倍率は「3.08」、飲食物調理の有効求人倍率は「3.07」です。
これら飲食・サービス業界が人手不足な理由は、業界の需要の大きさに比べて低賃金な仕事が多いため。
一般的に、社会的地位の高い仕事と見られることがあまり多くいことも人手不足の理由といえます。
⑤IT業界
IT業界は、業界の成長スピードに人材の育成や確保が追いついておらず、人手不足の状態です。
情報処理・通信技術者の有効求人倍率は「2.42」。「1.00」以上は人手不足とはいえ、他の業界と比べて特別高い数字ではありませんが、今後業界の規模が拡大していくとともにさらに人手不足が加速すると予想されています。
特に、新しい技術であるAIやIoTに携わるエンジニアが不足していく見込みです。
人手不足の原因と今後の見通し
厚生労働省が行なった2020年2月の調査では、全業界・全職種の有効求人倍率平均は「1.34」。
1.00を割っている職種もあるにはありますが、現在の日本は全体的に人手不足なのです。
その理由や、今後の見通しについて知っていきましょう。
人手不足の原因は?
日本の人手不足の主な原因は、以下の3つが挙げられます。
・少子高齢化による労働人口の減少
・働き方改革
・景気・労働環境の悪化
それぞれについて、詳しく解説していきます。
少子高齢化による労働人口の減少
人手不足のもっとも大きな原因は、少子高齢化。日本の出生率は年々低下し続け、2019年には出生数が90万人を割りました。
総人口の中では65歳以上の高齢者が28.1%となり、約3人に1人が定年を超えています。
反面、先に触れたように医療・介護業界や、体が弱い高齢者の生活を支える運送・インフラ・交通・ITなどの需要は増し、社会全体の仕事量も増えていきます。
日本国内で若い労働力を確保するのが難しい以上、今後も人手不足が深刻化するのは必須なのです。
働き方改革
働き方改革とは、多様な働き方を推進し、人手不足による経営の悪化を防ぐ目的を持って行われています。
しかし、業界の体質や経営者の考え方などで、働き方改革が進んでいない企業も多数。
働きやすい柔軟な企業に人材が流出することで、そういった古い考えの企業の人材不足が深刻化してしまうのです。
人材の流出を防ぐには、従業員の働きやすさを重視し、時代に合わせた対応をしていくことが必要になります。
景気・労働環境の悪化
日本経済の景気の悪化や、個々の企業の労働環境の悪さも人手不足の原因です。
昨今では、少ない従業員に過重な業務を負わせたり、それに伴い長時間残業を強いたりする「ブラック企業」が問題になっています。
それが原因で人材が流出し、さらに社内が人手不足になっていくという悪循環も。
さらに、景気が悪いため利益が上がりにくく、キツい仕事なのに低賃金という職場には、当然人が留まりません。
新たな求人募集をしようにも、就職・転職市場は売手市場なので、条件の悪い企業には人が集まらなくなっているのです。
人手不足回復の兆しはあるか
ここまで進んでしまった少子高齢化は、なかなか挽回できるものではありません。
もし今後出生率が上がったとしても、効果が出るのは数十年後になるでしょう。
基本的に、日本国内の人材のみで人手不足を解消するのは難しいです。
しかし、外国人人材の採用や、高齢者・子育て世代の女性の職場復帰をサポートするなど、工夫次第で人手不足を解消することは可能です。
今後は、国籍や年齢性別に関わらず、様々な人が働きやすい環境を整えていくことが人手不足解消の鍵となるでしょう。
人手不足業界が行える6つの対策
それでは、人材不足の業界が行える、6つの対策について解説していきます。
外国人・高齢者・育児中の女性の雇用
2019年に入管法が改正となり、新たな就労ビザ「特定技能」が新設されました。
これは、先に解説した人手不足の業界である「建設」「介護」「飲食」などの仕事に就く外国人のための在留資格です。
これにより海外から労働力を受け入れることができ、人材不足の業界には大きな助けとなります。
また、シニア世代の再雇用や、子育て世代の女性の職場復帰をサポートするなど、これまであまり注目されてこなかった労働力を活用するという方法もあります。
これまでの雇用形態を継続すると人材の確保は難しいですが、新たな人材層に目を向けたり、多様な働き方を推進したりすることで人手不足の解消は可能です。
賃金アップ
労働条件のいい会社には、当然ながら人材が集まりやすいです。
条件といっても様々なものがありますが、誰もが注目するのはやはり「賃金」。
人材不足で有効求人倍率が高い業界では、同業他社より秀でた点がないと求職者からの注目を集めるのが難しいです。
可能な限りで賃金アップをするのは、人手不足の業界でこそ役立つ人材確保の方法でしょう。
長く働いてもらえる労働環境作り
一度確保した人材には、長く職場に定着してもらう必要があります。
人材不足の業界では、再度人を採用するのは容易ではないのです。
また、離職率が高い職場では、辞めてしまった人の仕事まで負わされることに不満が生まれ、さらなる離職者を呼んでしまいかねません。
従業員の希望なども取り入れながら働き方改革を進め、長く働きやすい労働環境を作ることが重要になります。
業務の効率化・自動化をすすめる
これまで人が担当していた業務を、PCなどが代わりにできるようになれば、人手を他の仕事に割くことができます。
導入に時間やコストはかかりますが、業務を自動化できる部分は自動化し、なるべく手間がかからないよう効率化していきましょう。
どうしても人が作業する必要がある部分も、外注することで手間とコストが削減できる場合があります。
事業の成長可能性を高める
長く働きたいと思っている求職者ほど、会社の将来性を重視します。
今後、業界全体の成長が見込める場合は問題ありませんが、先細りになりそうな業界の場合は、事業の将来性を高める必要があります。
求人方法の見直し
有効求人倍率が高い業界では、従来の「待ち」の姿勢ではなかなか応募が集まりません。
優秀な人材を確保するためには、ダイレクトリクルーティングやリファラル採用など、確実性の高い新たな採用方法を検討していく必要があります。
また、先にも触れたように、外国人・高齢者・子育て世代の女性など、新たな人材層に目を向けるのも一つの方法です。
まとめ
少子高齢化が進む日本は、どの業界も全体的に人手不足。特に、今回ご紹介した5つの業界では人手不足が深刻です。
これらの業界は、人の生活を維持するためになくてはならないものです。
日本国内での人材確保は今後も厳しくなっていきますが、外国人人材の受け入れなど新たな採用方法を実施すれば、企業単位の人手不足解消は可能です。