外国人雇用管理アドバイザー制度とは?相談できる内容と活用方法

近年、国内における深刻な人材不足や、ビジネスのグローバル化があらゆる面で進展し、外国人雇用を積極的に検討する事業者が大幅に増加しています。

単純な労働力の確保だけでなく、自社内にない新たな発想をもたらしてくれる点でも外国人人材への期待は高く、今後はさらにスキル人材の採用が進んでいくものと見込まれます。
しかし、生まれ育った環境や文化背景、思想などが異なる外国人を受け入れ、ともに働く職場を作っていくことは容易でない面も多くあります。

初めての外国人雇用で、何から着手してどう管理すれば良いか分からない、採用したものの職場教育が難しいなど、それぞれの企業によって抱える特有の課題もあるでしょう。
こうした課題や悩みへの有用な対処策として、外国人雇用管理アドバイザー制度というものがあります。今回はこの制度について、概要と活用方法をご紹介します。

外国人雇用管理アドバイザーとはどんな制度?

外国人雇用管理アドバイザー制度とは、年々国内で仕事に就く外国人労働者が増えてきたことを受け、その適切な雇用管理や適正な労働条件確保を進めるため、厚生労働省が1993年度に導入したものです。

同省では、「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針」を策定するとともに、外国人雇用を行う企業の悩みに対し、専門的知識や経験をもって応じる「外国人雇用管理アドバイザー」を各都道府県に設置しました。

外国人雇用管理アドバイザーは、外国人を雇用するに当たって起きやすい、複雑な雇用管理や職業生活上の問題などについて、現状を的確に把握・分析し、効果的な改善案を提示、相談・指導を行っていくプロフェッショナルです。

社会保険労務士や行政書士などが委嘱を受けて活動しているケースが多く、雇用する、または検討中の外国人人材における労務管理や労働条件への対応に関する疑問点・不安点はもちろん、職場環境や生活環境に関して必要な配慮についてなど、地域の実態や事業者の現状を踏まえたアドバイスを提供してもらえます。

文化の違いや言葉の壁があることによって、互いの指示や希望・要望が伝わりづらく、コミュニケーション上の問題を生じているケースや、すでに発生してしまった職場内トラブルの解決を図りたいシーンなどにも対応してもらえ、具体的な策をもって解決へと導いてくれるほか、募集や採用時点での悩み事・相談もカバーしています。

外国人雇用に関して困ったことや不明なことが生じた際頼りになる総合的な専門家であり、その設置を定めた制度といえるでしょう。

活用方法

外国人雇用管理アドバイザーは各地域のハローワークに配置されているため、まず事業所を管轄するハローワークへ問い合わせを行います。

実施形態は地域によって異なり、訪問日程を調整して直接事業所本部や職場に派遣してもらえる場合や、ハローワークへの来所で相談に応じてもらう場合、電話を通じて相談を受けてもらう場合などがあります。問い合わせの際に、確認してみてください。

また、あらかじめ相談対応日を決めてハローワークを窓口として受け付け、実施しているケースもあります。この場合は、その日程を事前にチェックしたうえでスケジュール調整などを行い、申し込むようにするとスムーズでしょう。

このように、外国人雇用管理アドバイザーの助言を仰ぎたい場合には、管轄ハローワークに問い合わせ、予約申し込みを行うことが必要です。この制度を活用した相談は全プロセス無料となっているため、費用面の心配は不要です。

些細なトラブルやわずかな疑問点でも、およそ大丈夫であろうと放置している間に大きな問題へと発展してしまうことは少なくありません。無料で自由に活用できる優れた制度なので、何か気になることがあれば気軽に相談してみましょう。

相談できる内容

外国人雇用管理アドバイザーは、雇用対策法に基づき、国が定める「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針」を踏まえ、職場環境の改善や就労・生活に関連する問題に幅広く対応して、専門的な知識や経験を活かした支援を提供します。

事業主と外国人労働者の間に入り、問題が起きていればその解決を図る調停作業や、必要に応じたそれぞれへの指導を行うなど、両者にとって心強い味方となってくれる存在です。

外国人雇用においては、思わぬトラブルや問題が発生することが多々あり、業種業態によっても事情や課題となる事象もさまざまです。そうした多様な現場の悩みに対応するため、相談できる内容も多岐にわたります。代表的なものを見ておきましょう。

外国人労働者の雇用・採用に関する相談

いざ外国人労働者を採用しようと考えても、募集や採用方法についてどんな点に気をつけ、どのように進めれば良いか、初めは分からないことだらけというケースも多いでしょう。

雇用することで生ずる状況報告などの義務や、生活支援、コミュニケーションサポートなどの配慮の必要性も知っておかなければなりません。

対象となる候補者が保有している在留資格で、その職種に就かせて良いかといった基本的ポイントも丁寧に確認する必要があります。日本の雇用制度について十分な知識や情報を有していない場合も考えられるので、それを踏まえて労働条件をよく説明し、事業者側でも受け入れ体制を整えていくといった準備を進めることも非常に重要です。

これらの要件が満たされていなければ、雇用したい事業者と働きたい外国人労働者が出会っても、雇用できないという事態に陥ったり、およその理解で雇用し始めてしまい、後に法律違反があると判明したりする場合もあります。

これから採用を検討する際、また現在の雇用方法で良いのか疑問が生じた際などには、その旨、外国人雇用管理アドバイザーに相談しましょう。

現状が適正かどうかのチェックはもちろん、より良いマッチングを目指した採用活動の展開に役立つ制度や、まず何から着手すれば良いかといった準備内容のアドバイスなど、有益な情報や知見を提供してもらえます。

外国人労働者の職場育成に関する相談

雇用した外国人労働者が一定の日本語能力を有していても、業務で用いる専門用語や特殊な用語は理解しづらく、それらが頻繁に行き交う中で仕事を覚えるのは困難という場合もあります。

せっかくの高い能力や知見を保有していても、それを運用するノウハウが日本語ベースにない、日本語で仕事をしてきていないために対応が分からず、実力を発揮できないということは多いのです。

こうした言葉の問題や国によって異なる背景を乗り越え日本で活躍してもらうため、職場育成・教育が必要となります。

ここでは本人に指導するだけでなく、業務指示の出し方を工夫するなど、互いが学び、歩み寄りつつ発展していく姿勢が重要となるでしょう。

何が分からないのか分からない、どう指示を出せば分かってもらえるのか、人材として育成する際に気をつけるべきポイントを知りたいなど、外国人雇用管理アドバイザーは、こうした企業の相談にも示唆に富むアドバイスをくれます。実践的内容で、すぐに現場の問題を解決することに役立てられるでしょう。

安全衛生にかかる教育や、労働災害を防止するために必要な指導は、互いの確認合図をスムーズにとれるよう早急に対応しておかなければ、重大事故の発生につながる可能性もあります。留意点や効果的な工夫・配慮方法などを相談し、早期に対応を完了しておくようにしてください。

雇用中に発生したトラブルに関する相談

言葉の壁による問題ももちろんですが、幼い頃から当たり前として育ってきた生活習慣や価値観、物事の捉え方など、大きく異なったバックボーンを持つことも多い外国人労働者には、日本の職場で働くようになって初めて知ることy、母国ではありえなかったことが自然に通用しているさまに直面することなど、カルチャーショックに日々遭遇することが考えられます。

自身がまったくの異文化である海外の環境で突然働くようになったことを想像すれば、それがいかに大変なことかが理解できるでしょう。そうした環境下では、日々新鮮な驚きがある一方で、抱えるストレスも多くなりがちです。

こうした背景から生じた職場内でのトラブルや、コミュニケーションエラーに起因するさまざまな問題に対処したり、それらの発生を未然に防いだりするため、受け入れ側の企業としては、接し方の工夫や発生しやすいトラブルの解決方法などを知り、自社環境に反映させておくことがベストです。

外国人雇用管理アドバイザーは、そのノウハウや、すでに発生してしまったトラブルをどうするか、速やかな解決に向けた有効な対処方法などを指導してくれる存在でもあります。

トラブルはこじれる前にすぐ対処しておくことが基本です。迷った時、困った時はぜひ相談してみましょう。

外国人労働者に対しての母国言語による相談対応や、該当する外国人労働者と雇用主である事業者との調停なども行ってもらえます。

労働契約や福利厚生、退職・解雇時の問題についての相談

労働条件や契約に関しては、きちんと書面を交付して取り交わして締結することが必要とされています。

その際には、国内人材の時とは異なり、英語やその他本人の母語など、外国人労働者が無理なく使いこなせる言語に翻訳したものを用意する事前準備や工夫が必要となります。

しかし、それらの対応が難しい場合や、対応しても本人の理解が得られないなど、つまずきが生じることもあります。こうした労働契約をめぐる問題についても、外国人雇用管理アドバイザーに相談することが可能です。

また、社会保険や納税についてはどのように対応・処理すれば良いかといった問題、本人が行う手続きの支援に関する問題などについての相談も、一定以上の専門知識を持ったアドバイザーが、ケースに応じた指導や実施支援を行っています。

福利厚生や、外国人材だからこそ生活面で必要になるサポートについても考えねばならず、初めての雇用ケースなどでは、この点を難しく感じられる事業者の方も多いでしょう。

生活支援では、日本で当然とされるマナーや生活常識についても適宜教え、円滑な日本での暮らしをサポートします。

ゴミの出し方や医療機関の利用の仕方、賃貸物件で暮らす際の注意点、交通ルールなど、日本人の視点では盲点になるポイントも多いため、外国人雇用管理アドバイザーへの相談を通じて初めて必要性が理解されたり、何が問題であったのか明らかとなったりすることもしばしばあります。

残念ながら人材として定着しなかった場合や、期間満了などで退職・解雇とする際にも、あらかじめ知っておくべき注意点や必要準備・支援があります。

これらについても、外国人雇用管理アドバイザーは専門知識を有しているため、事業者は悩んでいる点、不明点などについて、気軽に相談してみることができます。

まとめ

外国人雇用管理アドバイザー制度について、その概要と活用方法を中心にご紹介してきました。

そもそも、そういった制度があること自体知らなかったという方も多かったかもしれません。外国人雇用を検討、実施している事業者の方には非常に有用な仕組みなので、ぜひこの機会に理解を深め、活用してみましょう。

(画像はPixabayより)

 

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