
法務省調査によると、在留外国人の数は平成30年末時点で273万1,093人。最も多いのが中国人、次いで韓国人で、第3位はベトナム人です。在日ベトナム人の数は33万人で前年度より約26.1%増加しています。
若者の割合が高いという背景もあって、少子高齢化・労働者不足の日本に働きに来るベトナム人は多いです。外国人を採用する際は、その国の文化や歴史、習慣やタブーを知っておく必要があります。
ここでは、ベトナムの文化・歴史、特徴について、日本との違いやタブーも含めてご紹介いたします。ベトナム人の採用を検討している企業の方はぜひご覧ください。
この記事の目次
ベトナム文化の特徴
ベトナムの歴史は紀元前から始まります。その後、中国に支配され、第二次世界大戦では日本とフランスの支配下に置かれていました。その後アメリカとの対立を経て、1975年に晴れて現在のベトナム国家が作られました。
ベトナムは多民族国家で、キン族(越人)が最も多く約86%、その他にモン族、ムオン族、ヌン族、クメール族など53の少数民族、計54民族がいます。
キン族の言語(キン語)のことをベトナム語といい、公用語として教育機関や政府機関で話されています。ベトナム語は発音が難しく、習得に時間がかかる言語と言われています。
約80%が仏教徒ですが、日本と同じように信仰心の薄い人が7割近くを占め、熱心な仏教徒は約1割程度だと言われています。
ベトナムと日本の文化の違い
ベトナムには、独自の習慣やタブーとされていることがたくさんあります。日本とはどう違うのか、似ている点はあるのか、特徴を含めご紹介いたします。
仕事にまつわる文化・習慣
ベトナム人の仕事にまつわる文化・習慣の違いはどのようなことがあるのでしょう。仕事の文化・習慣の違いは、ベトナム人を採用する上で重要になるので注目してご覧ください。
真面目で勉強熱心
ベトナム人の特徴の一つに、真面目で責任感が強いことが挙げられます。与えられた仕事は最後までやり通し、途中で投げ出すことはありません。また、向上心が高く勉強熱心と言われています。
プライドは高め?
ベトナム人はプライドが高く、自分のミスを他人に知られることが苦手です。皆の前で注意されることもとても嫌うので注意しましょう。
また、プライドが高いため、見栄っ張りなところもあります。すぐ「自信がない」「できない」と言う日本人と違って、少しでも自信があればできると回答します。
手先の器用な人が多い
昔から手工業が発展していたベトナムには、手先の器用な人が多いです。勤勉な性格もあって、バイクや自転車の修理など自分ができそうなことは何でも行います。
時間にルーズ?
ベトナム人は、日本人よりも時間にルーズです。5~10分遅れても悪いとは思っていないので、約束をする際には注意しましょう。
仕事より家族が大切
ベトナム人は仕事より家族を大事にしています。日本のような単身赴任は、そんなことをするなら会社を辞めるという人もいるほど考えられないことです。また、役職関係なく、家族に何かあったときや冠婚葬祭などで休暇をとることは当たり前で、それができなければ退職する人もいるくらいです。
生活にまつわる文化・習慣
ベトナムの生活に関する文化・習慣の特徴はどのようなことがあるのでしょう。日本と似ている点も含めて紹介します。
湯船に浸かることがない
ベトナムでは湯船に浸かる習慣がなく、入浴はシャワーのみです。そのため、ベトナム人が日本の銭湯や温泉などを見ると非常に驚くようです。
ベトナムのトイレ事情
ベトナムにトイレは、日本のようなウォシュレット機能はなくハンドシャワーがついています。また、トイレットペーパーを流すのはタブーで、流さずにゴミ箱に捨てます。
年長者を敬う文化
ベトナムでは、儒教の影響で年長者を尊敬する習慣があります。具体的には、夕食時は年長者から提供する・家でも職場でも年長者の意見を尊重するなどです。ベトナム人と仕事をする際は、関係性と年齢に注意が必要です。
昼寝の習慣がある
ベトナムには、昼寝の習慣があります。ベトナムでは朝早く市場へ買い物に行き、始業時間も早いです。朝早くから行動するため、ベトナム人の多くは昼寝をします。
旧正月は盛大にお祝い
中国や韓国と同じく、ベトナムも旧正月を盛大に祝います。その他にもお盆(ベトナムでは8~9月)や、南部解放記念日ベトナム戦争終結日(4月30日)などの祝日があります。
食にまつわる文化・習慣
生活していく上で欠かせないのが食事です。ベトナムと日本の食文化は似ているのでしょうか、それとも違っているのでしょうか。
日本と近い?食文化
ベトナムでは、日本と同じように箸やお茶碗を用いて食事を摂ります。米を主食とし、お茶を飲むのも日本と同じです。
ベトナムの食べ物と言えば「フォー」です。フォーはベトナムの伝統な食べ物で米粉を使ったライスヌードルで、市場などで買ったり自宅で作ったりして朝から食べます。
丼に口をつけるのはタブー
ベトナムでは、日本のように丼に口をつけて食べるのはタブーで、必ずスプーンを使います。
そのため、ベトナムでは食事の際はお箸だけでなくスプーンも準備しなければなりません。
料理は大皿で、直箸禁止
ベトナムでは、料理は大皿で提供され、それぞれ小皿に取り分けて食べます。自分で食べる分は自分の箸で取り分けてOKですが、他の人の分は直箸ではなく箸を逆さまにして取り分けるのがマナーです。
コミュニケーション・恋愛にまつわる文化・習慣
ベトナムのコミュニケーション・恋愛に関する文化・習慣はどのようなものなのでしょうか。コミュニケーションは、採用し一緒に働く上でも非常に重要です。
集団より個人優先なの?
ベトナム人は個人主義的なところがあります。身内はとても大切にしますが、身内以外にはそうでもありません。また、親族でも敵対関係があれば冷たい態度をとるようです。
純粋で素朴な人柄
ベトナム人は純粋で素朴な人が多く、褒められるととても喜びます。仕事においても、進んで良いところを見つけ褒めてあげるとコミュニケーションが取りやすくなるでしょう。
暗黙の了解は通じない
日本人同士では直接的に話すことはあまりありませんが、ベトナム人は違います。ベトナム人には、特にきちんと伝えることを心掛け、納得するまで説明をしましょう。
コミュニケーションが大切
ベトナムは日本と違い感情的なお国柄で、会話にて信頼関係を築きます。また、他人の目を気にし、噂話を好みます。
お酒を飲んで信頼関係を築く点は日本と同じなため、機会があれば誘ってあげるのも良いでしょう。
未婚の男女交際に厳しい
ベトナムの法律では、夜10時以降未婚の男女が同じ部屋に2人きりでいることを禁止しています。もしホテルに男女同室で泊まりたい場合は、結婚証明書を提出しなければなりません。また、同棲や授かり婚もよく思われていません。
レディファースト
ベトナムでは、田舎の農村など一部の地域を除きレディファーストです。スーパーで買い物かごを持ったりカートを引いたりするのは男性の役割です。ベトナム人の男性は女性に対しとても優しい対応をしてくれます。
お金にまつわる文化・習慣
ベトナムのお金にまつわる文化・習慣の特徴はどのようなものでしょう。
チップの習慣がない
ベトナムに滞在すると至る所でチップを要求されます。しかし、基本的にはチップを払う習慣はありません。気持ち良いサービスを受けたと感じたらチップを払うと喜ばれますが、必ず払うものという訳ではありません。
ベトナム人は銀行にお金を預けない
日本人は銀行にお金を預けるのが当たり前ですが、ベトナム人は基本的にタンス貯金です。戦争が長く、生活に必要なインフラや銀行・政府も崩壊していたため、未だに政府や銀行を信用してないところがあります。
割り勘は、半分当てはまる
日本人はよく割り勘をしますが、ベトナム人は違います。学生は割り勘ですが、会社勤めでは誘った方、恋仲を意識する男女では男性が払うことが当たり前です。男性がデートで割り勘にするとふられてしまうこともあるそうです。
交通にまつわる文化・習慣
ベトナムの交通にまつわる文化・習慣は日本と違う点が多いようです。
歩行者優先ではなく車優先
日本は歩行者優先ですが、ベトナムは自動車優先です。特にバスなどの大型車優先で、バスはとてもスピードを出して走行しています。ベトナムでは歩行者は自身で身を守らなければなりません。
子供は乗車人数に含まない?!
ベトナムでは、バイクに3人・4人と大人数が乗っている姿をよく見かけます。ベトナムには子どもは2人までは乗車人数に含めないというルールがあり、違法ではありません。
交通渋滞が多い
バイク大国のベトナムは、日本とは比べ物にならないくらいの交通渋滞が発生します。平日の朝と夕方のラッシュ時は普段の3~4倍の時間がかかります。
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教育にまつわる文化・習慣
ベトナムと日本の教育にまつわる文化・習慣の同じ点・違う点はどのようなものがあるのでしょう。
教育制度について
ベトナムは、基本的には5-4-3-4制で義務教育は9年間ですが、一部地方では小学校課程終了(5年)までが義務教育となっています。なお、2学期制で、日本は4月ですが9月始まりです。
学歴社会
ベトナムの大学進学率は20%と日本に比べて低いですが、著しい経済成長に伴って学歴の重要度が増しています。ベトナムでは、大学を卒業している=キャリアであり、中にはいくつかの大学を卒業している人もいます。
結婚にまつわる文化・習慣
人生の一大イベントである結婚。ベトナムの結婚事情についてご紹介いたします。
結婚できる年齢
ベトナムの結婚年齢は女性満18歳以上、男性が満20歳以上と定められています。女性16歳、男性18歳の日本とは違っていますね。
男性は怠け者?女性は働き者?
ベトナム人は、男性が怠け者、女性は働き者と言われています。結婚・出産後も働いている女性は多いです。このこともあって、ベトナムでは結婚後も女性が強いと言われています。
バイク大国ベトナムの交通・移動事情とは
ベトナムでバイクを保有している世帯は80%以上で、タイに次ぐバイク大国です。自動車を持っている家庭は一部の富裕層のみに限定されていますが、それでもここ数年で4~5倍に増えています。
先ほどもご紹介しましたが、ベトナムでは交通渋滞が問題となっています。人口の増加によりバイク・自動車の数が増え、道路拡張やインフラ整備が追い付かない状態です。
また、移動手段としては、タクシーやバイクタクシー、タクシーのように現在から目的地まで自動車及びバイクを配車してくれる配車アプリサービスがあります。配車アプリは料金が安く、後から追加で請求されることもありません。ドライバーの評価制度があるため、タクシーよりもドライバーの態度は良いそうです。
タクシー・バイクタクシーは高額な請求をされるなどのトラブルになる可能性があるので、注意が必要です。
なお、バイク・自動車に乗る際に必要な免許ですが、加盟している国際条約がベトナム(ウィーン条約)と日本(ジュネーブ条約)で異なるため、国際運転免許が有効とならないので注意しましょう。
まとめ
ベトナムは植民地・戦争時代が長く、そのためかベトナム人には最後までやり遂げる力、器用さなどが備わっており、かつ真面目で勉強熱心なので採用したいという企業は多いです。
ベトナム人の採用には気をつけるべきこともありますが、ここでご紹介したポイントを念頭に置き十分な配慮ができれば、きっと優秀な人材として活躍してくれるでしょう。