現代の日本では、少子高齢化・労働者の人材不足により外国人労働者を採用する動きが高まっています。
中国人や韓国人の他、インドネシア人も増加しています。しかし、いざインドネシア人を採用しても、うまくいかず苦労している日系企業も多いです。
外国人労働者を採用する上で特に知っておかなければならないのは、その国の歴史や文化、習慣などです。ここでは、インドネシアの歴史や文化の特徴や習慣、日本との違いやタブーとされていることをご紹介いたします。インドネシア人の採用を検討している企業の方はぜひご覧ください。
この記事の目次
インドネシア文化の特徴
インドネシアは、東南アジアにある人口約2.55億人の国です。歴史は古く、7世紀に建国されたスンダ王国から始まるとされています。
赤道にまたがる13,000あまりの島からなり、マレー系はじめとする約70の民族からなる多民族国家です。言語は全部で707あり、その数は世界第2位です。707言語の中で公用語として定められているのが「インドネシア語」で、海上交易のための共通語のためで習得が簡単な言語であるとされています。
しかし、インドネシア人はインドネシア語だけでなくインドネシア語と地方語の2つ以上の言語を話します。スンダ語やジャワ語、英語などを話せる人が多いです。
インドネシアでは、イスラム教が87.21%、キリスト教9.87%、ヒンドゥー教が1.69%、仏教0.72%という割合になっていますが、有名なバリ島では90%の人がヒンドゥー教徒です。インドネシアにはいろいろな宗教があり宗教を非常に重んじているため、インドネシア人に気軽に宗教の話をするのは控えた方が良いでしょう。
インドネシアと日本の文化の違い
インドネシアと日本の文化、習慣の違いはどのようなことがあるのでしょうか。日本では良いことだがインドネシアではタブーなこと、またその逆もありますので正しく理解しておきましょう。
仕事にまつわる文化・習慣
仕事に関する文化・習慣の違いは共に働く上では最も重要です。後からトラブルにならないよう、しっかり理解しておきましょう。
時間の感覚の違い
インドネシア人は、「ゴムの時間」と呼ばれるほどのんびりしており、30分遅れるのは当たり前で、中には雨で濡れたから今日は休むといって帰る人もいるようです。また、時間にルーズですが、終業時間にはきちんと帰ります。
働き方改革などで見直されつつあるとはいえ、日本は時間に厳しいところがあります。インドネシア人を日本の企業で採用する際は、時間の感覚をお互いに理解しておく必要があります。
給与に関する考え方
日本人にとっては、仕事の結果(評価)や勤めた期間で給与が上がるという考えが一般的です。しかし、インドネシア人は逆の考え方をしていて、給与に応じた仕事だけをこなします。給与の減額は有り得ないし、アップが基本だと考えている人が多いです。
また、同じ仕事で給与に差があることが分かると感情的になり、突然退職してしまうこともあります。トラブルにならないためにも、これらのインドネシア人の給与に対する姿勢を理解しておきましょう。
転職はキャリアの証
インドネシア人は転職をよくします。日本人は一つの会社にずっといるという人も珍しくありませんが、インドネシアでは逆で転職をたくさんしている方が優秀と評価されます。
会社に対する不満を言わない
日本人は会社に対する不満をよく漏らす人が多いですが、インドネシア人は会社に対する不満があっても、誰かに言わずストレスをため込んでしまう傾向があります。何も言わないからと安心せず、こまめにヒアリングするなどのフォローが必要です。
生活にまつわる文化・習慣
インドネシアの生活にまつわる分が・習慣の特徴はどのようなことがあるのでしょう。
トイレ事情
インドネシアでは、トイレではトイレットペーパーを使わず、手動で水が出るホースかバケツで水を汲んで手でお尻を洗います。日本のトイレとは大きく違っているため、初めは戸惑ってしまうかもしれません。
子供の頭を撫でるのはタブー
インドネシアでは、子供の頭を撫でることはタブーとされています。ヒンドゥー教では頭は神聖なもの、イスラム教では頭を撫でるとその子の成長が止まってしまうと考えられているためです。インドネシア人の子どもと会うことがあっても、頭を撫でることは絶対にやめましょう。
郵便物が届かない
インドネシアでは、ほとんどの地域で自宅まで郵便物が届きません。自分で郵便局まで出向き郵便物を受け取ることが多いです。また、海外からの荷物の受け取りには、手数料が1個につき日本円で約210円かかります。
バドミントンが人気
インドネシアの人気スポーツはサッカーとバドミントンです。サッカーは国内のチームがあまり強くないため、ヨーロッパのリーグの人気が高いです。バドミントンはインドネシアの国技となっており、インドネシアでは街中でバトミントンを楽しむ人が見られます。
食にまつわる文化・習慣
インドネシアの食にまつわる文化・習慣は日本と違う点が多いようです。食事は欠かせないものなので、インドネシア人を採用する際はこういった点も気にかけてあげましょう。
お米が主食
インドネシアも日本と同じくお米を主食としていますが、1日3食お米でもよいほどお米を食べます。しかし、日本ではもっちりとした食感が好まれるのに対し、インドネシアのお米はパサパサとした食感をしています。
インドネシア料理というものがない
実は、インドネシア料理といったものは存在していません。ジャワ料理(甘め)、パダン料理(辛め)、スンダ料理(生野菜が出る)など地域によって違っています。また、日本食の人気も高く、インドネシアにはジャパニーズレストランも多いです。
食器を持ち上げてはいけない
日本では、お茶碗を持ってご飯を食べるよう躾けられますが、インドネシアでは食器を持ち上げて食べることはありません。
コミュニケーション・恋愛にまつわる文化・習慣
インドネシア人と仕事をする上では、コミュニケーションの取り方はとても重要になってきます。インドネシアと日本のコミュニケーション・恋愛にまつわる文化・習慣の違い、同じことはどのようなことがあるのでしょうか。
フレンドリー・楽観的
インドネシア人は日本人のように内向的でなく、社交性に優れておりオープンな性格をしている人が多いのが特徴です。また、インドネシア人は困難なことがあっても「何とかなる」などと楽観的に考えます。
日本人とは対照的で、明るく仕事ができるでしょう。
人前で怒るのはタブー
インドネシアでは、人前で叱ると侮辱したと思われます。仕事で注意しなければならないときも、人前ではなく別室で行うようにしましょう。
人に触れる際は右手で
インドネシアでは、左手でお尻を洗うため「左手は不浄」とされています。右手は良いことに使うので、たとえ左利きであっても、他人に触れるときは右手を用いなければなりません。
恋愛=結婚
日本では恋愛と結婚は別と考えている人も多いですが、インドネシア人は違います。恋愛=結婚と考える人がほとんどなので、軽々しい気持ちで付き合ったり恋愛したりしている人はいません。
お金にまつわる文化・習慣
お金にまつわる文化・習慣の違いはどのようなことがあるのでしょう。
物価が安い?
インドネシアの最低賃金は約1万5千円から約3万円で地域によって違うため、地域によっても物価が変わります。
水は約2円~30円、ガソリンは1L40~70円です。マクドナルドや日本食は100~500円です。
細かいお金が返ってこない?!
インドネシアでは、500ルピア(約4円)以下の釣銭が不足した場合、コインでなく飴玉を渡されることがあったそうです。現在ではなくなったようですが、スーパーなどでは寄付に充てるよう求められたりすることも多いようです。
インドネシアでは、チップがある
インドネシアには、チップ文化があります。料金にサービス料が含まれている場合には不要ですが、レストランなどでは店の格によっては5~10%の額を支払い時に渡したり小銭をテーブルに置いたりといったマナーがあります。
交通にまつわる文化・習慣
交通に関する文化や習慣の似ている点や違う点はどのようなところがあるのでしょう。
世界一の渋滞
インドネシアは交通渋滞が多く、世界一とも言われています。特に首都ジャカルタでは、朝7時から8時前後、お昼、夕方18時頃には渋滞がひどくなり、車が動けなくなることもあります。
交通ルールは??
インドネシアは日本と同じ左側通行ですが、交通ルールはほぼないと言われています。主張の強い人が優先という考え方で、無理な追い越しや信号無視、スピード違反は当たり前です。
教育にまつわる文化・習慣
インドネシアの学校制度は日本と同じく6-3-3-4制で、小学校と中学校の9年間が義務教育となっていますが、新学期は9月からです。また、義務教育の就学率は100%ではなく、学校に通えていない人がいるのも現状です。そんなインドネシアの学校制度ですが、日本と違うところはあるのでしょうか。
日本より学歴社会
近年のインドネシアは、日本より学歴社会で教育熱心です。学生は塾に行き遅くまで勉強しています。また、日本のように部活動を積極的に行う習慣がなく、勉強に時間を割いています。
水泳の授業がない
日本ではほとんどの学校にプールがあり水泳の授業もありますが、インドネシアの学校にはプールがありません。月に1度学校外のプールに行き、そこで授業を受けます。
教科書は無償支給ではない
日本は義務教育では教科書は無償支給されますが、インドネシアでは公立・私立ともに実費で購入しなければなりません。現在、インドネシアでは私立校の数が増えていますが、私立の方が科目も多く教科書の費用は高いです。
結婚にまつわる文化・習慣
インドネシア人の結婚にまつわる文化・習慣の違い、特徴はどのようなことがあるのでしょう。
宗教問題
インドネシア人の結婚で避けて通れないのが宗教問題です。インドネシア人にとって宗教は生活の一部であり、インドネシア人と結婚する場合は同じ宗教でなければなりません。
家父長制
日本では、男女平等の考えが浸透してきていますが、インドネシアは完全な家父長制で、亭主関白、父親が絶対です。結婚前は尽くしてくれていても、結婚後は亭主関白になる人が多いです。
一夫多妻制が認められている
インドネシア人の多くが信仰するイスラム教では、一夫多妻制が認められているため、浮気をされても責任が問えません。また、日本では許されていないため裁判になるケースもあります。
インドネシアはイスラム教徒が多い
インドネシア人はイスラム教徒が多く、その歴史も古いです。イスラム教徒であるインドネシア人を日本の企業で採用する際、どのようなことに注意しなければいけないのでしょうか。
豚肉・アルコールは禁止
基本的にイスラム教徒は豚肉を食べてはいけません。豚由来、動物由来、乳化剤などの動物性にも注意が必要です。アルコールは禁止ですが、料理に使う場合はOKなど、食べる本人によっては摂ることができるそうです。
しかし、豚肉を取り扱う仕事やアルコール類を製造する仕事は不快に思います。製造業などで豚肉やアルコール類を取り扱うことがある会社は、事前によく確認をしておきましょう。
お祈りは1日5回
イスラム教では、通常1日5回のお祈りをします。就業時間内でも2~3回のお祈り時間が必要となります。場所は清潔であれば基本的にどこでもよいですが、場所があるとありがたいそうです。
男女の接触に厳しい
イスラム教では、家族以外の異性に肌を見せることや身体接触を避けることが戒律で定められています。そのため、同性はOKですが、異性とは握手であっても相手が求めない限り避けた方がよいでしょう。
男性は髭を生やす
イスラム教では男性は髭を生やすことを推奨されていますが、必須ではありません。しかし、髭を生やしている人は多いです。
日本の企業は髭が禁止であるところが多いので、お互いに理解できるようなフォローが必要です。
まとめ
インドネシアの最大の特徴は、宗教が生活の一部でもあることです。日本の企業でインドネシア人を採用する際は、宗教に対する理解深めなければいけません。宗教上のタブーなどにも注意しましょう。
また、仕事に対する考え方、時間の考え方も違うため注意が必要です。契約時にきちんと説明し、採用後もフォローする必要があります。
しかし、インドネシア人は社交的でバイリンガルの人が多く、語学力を活かした仕事や人と接する仕事にとても向いています。今後インドネシア人を採用する企業はさらに増えると考えられるので、インドネシアの歴史・文化、習慣をきちんと理解しておきましょう。