外国人技能実習制度とは?概要・メリット・問題点を解説!

日本で就労する外国人の数は、平成30年10月末時点で約146万人となっています(※)。これら外国人の就労のカテゴリーは主に5つに分けられますが、そのうちの1つが「外国人技能実習」です。
では、「外国人技能実習制度」とはどのような制度なのでしょうか。「外国人技能実習制度」の概要・メリットやデメリットを解説します。

「外国人技能実習制度」には分かりにくい部分もあり、職種や作業範囲で注意すべき点もあります。外国人技能実習生の採用を検討している採用担当者の方は、ぜひ参考にご覧ください。

厚生労働省ホームページより

外国人技能実習制度とは?

「外国人技能実習生」は、外国人労働者全体の5分の1以上を占めています。しかし、その目的は日本で不足している労働力を補うことではありません。

制度の概要

「外国人技能実習制度」とは、『我が国が先進国としての役割を果たしつつ国際社会との調和ある発展を図っていくため、技能、技術又は知識の開発途上国等への移転を図り、開発途上国等の経済発展を担う「人づくり」に協力することを目的』(※)と定義されています。

つまり、発展途上国の人々に日本で技術や知識を身につけてもらい、母国に戻って国の発展に役立ててもらおうという、国際協力の精神から生まれた制度だと言えます。

厚生労働省ホームページより引用

外国人技能実習制度の実態は?

平成30年10月末の時点で、技能実習生の数は、約30.8万人。業種別に見ると、全部で77の職種で技能実習が行われており、受け入れ人数が多いのは、「機械・金属関係」、「建設関係」、「食品製造関係」です。また受け入れ人数の多い国は、1位がベトナム(41.6%)、2位が中国(31.8%)、3位がフィリピン(10.2%)となっています。(※)

参考資料:厚生労働省「外国人技能実習制度の現状、課題等について」

対象となる職種と作業範囲

技能実習生の対象となる職種と、職種の作業範囲は、80職種・144作業となっており、その内訳は以下の通りです。

※参考資料:厚生労働省「技能実習制度 移行対象職種・作業一覧

農業関係(2職種6作業)

•耕種農業※…施設園芸、畑作・野菜
•畜産農業※…養豚、養鶏、酪農

漁業関係(2職種9作業)

•漁船漁業※…かつお一本釣り漁業、延縄漁業、いか釣り漁業、まき網漁業、ひき網漁業、刺し網漁業、定置網漁業、かに・えびかご漁業
•養殖業※…ホタテガイ・マガキ養殖

建設関係(22職種33作業)

•さく井…パーカッション式さく井工事作業、ロータリー式さく井工事作業
•建築板金…ダクト板金、内外装板金
•冷凍空気調和機器施工…冷凍空気調和機器施工
•建具製作…木製建具手加工
•建築大工…大工工事
•型枠施工…型枠工事
•鉄筋施工…鉄筋組立て
•とび…とび
•石材施工…石材加工、石張り
•タイル張り…タイル張り
•かわらぶき…かわらぶき
•左官…左官
•配管…建築配管作業、プラント配管
•熱絶縁施工…保温保冷工事
•内装仕上げ施工…プラスチック系床仕上げ工事、カーペット系床仕上げ工事、鋼製下地工事、ボード仕上げ工事、カーテン工事
•サッシ施工…ビル用サッシ施工
•防水施工…シーリング防水工事
•コンクリート圧送施工…コンクリート圧送工事
•ウェルポイント施工…ウェルポイント工事
•表装…壁装
•建設機械施工※…押土・整地、積込み、掘削、締固め
•築炉△…築炉

食品製造関係(11職種16作業)

•缶詰巻締※…缶詰巻締
•食鳥処理加工業※…食鳥処理加工
•加熱性水産加工食品製造業※…節類製造、加熱乾製品製造、調味加工品製造、くん製品製造
•非加熱性水産加工食品製造業※…塩蔵品製造、乾製品製造、発酵食品製造
•水産練り製品製造…かまぼこ製品製造
•牛豚食肉処理加工業※…牛豚部分肉製造
•ハム・ソーセージ・ベーコン製造…ハム・ソーセージ・ベーコン製造
•パン製造…パン製造
•そう菜製造業※△…そう菜加工
•農産物漬物製造業※△…農産物漬物製造
•医療・福祉施設給食製造※△…医療・福祉施設給食製造

繊維・衣服関係(13職種22作業)

•紡績運転※△…前紡工程、精紡工程、巻糸工程、合ねん糸工程
•織布運転※△…準備工程、製織工程、仕上工程
•染色…糸浸染、織物・ニット浸染
•ニット製品製造…丸編みニット製造、靴下製造
•たて編ニット生地製造※…たて編ニット生地製造
•婦人子供服製造…婦人子供既製服縫製
•紳士服製造…紳士既製服製造
•下着類製造※…下着類製造
•寝具製作…寝具製作
•カーペット製造※△…織じゅうたん製造、タフテッドカーペット製造、ニードルパンチカーペット製造
•帆布製品製造…帆布製品製造
•布はく縫製…ワイシャツ製造
•座席シート縫製※…自動車シート縫製
機械・金属関係(15職種29作業)
•鋳造…鋳鉄鋳物鋳造、非鉄金属鋳物鋳造
•鍛造…ハンマ型鍛造、プレス型鍛造
•ダイカスト…ホットチャンバダイカスト、コールドチャンバダイカスト
•機械加工…普通旋盤、フライス盤、数値制御旋盤、マシニングセンタ
•金属プレス加工…金属プレス
•鉄工…構造物鉄工
•工場板金…機械板金
•めっき…電気めっき、溶融亜鉛めっき
•アルミニウム陽極酸化処理…陽極酸化処理
•仕上げ…治工具仕上げ、金型仕上げ、機械組立仕上げ
•機械検査…機械検査
•機械保全…機械系保全
•電子機器組立て…電子機器組立て
•電気機器組立て…回転電機組立て、変圧器組立て、配電盤・制御盤組立て、開閉制御器具組立て、回転電機巻線製作
•プリント配線板製造…プリント配線板設計、プリント配線板製造

その他(14職種26作業)

•家具製作…家具手加工
•印刷…オフセット印刷
•製本…製本
•プラスチック成形…圧縮成形、射出成形、インフレーション成形、ブロー成形
•強化プラスチック成形…手積み積層成形
•塗装…建築塗装、金属塗装、鋼橋塗装、噴霧塗装
•溶接※…手溶接、半自動溶接
•工業包装…工業包装
•紙器・段ボール箱製造…印刷箱打抜き、印刷箱製箱、貼箱製造、段ボール箱製造
•陶磁器工業製品製造※…機械ろくろ成形、圧力鋳込み成形、パッド印刷
•自動車整備…自動車整備
•ビルクリーニング△…ビルクリーニング
•介護…介護※
•リネンサプライ※△…リネンサプライ仕上げ

社内検定型の職種・作業(1職種3作業)

•空港グランドハンドリング※…航空機地上支援、航空貨物取扱、客室清掃△

※…「技能実習評価試験の整備等に関する専⾨家会議」による確認の上,人材開発統括官が認定した職種
△…2号まで実習可能

(中見出し)外国人技能実習生を受け入れるメリット

外国人技能実習生を受け入れるメリットとしては、「会社のグローバル化」、「日本人社員の意識の向上」、「会社の海外進出・新たな外国人採用」などが挙げられます。

社員の意識が向上

外国人技能実習生を受け入れるには、受け入れ前に社内で様々なルールやマニュアルを作らなければなりません。日本人が当たり前だと思っていることでも、外国人には理解しにくいことがあります。「言葉の壁」もあり、説明や表示を外国語で表記しなければならない場合もあります。マニュアルの見直しや、情報の共有化を図ることにより、日本人社員の会社や仕事に対する意識の向上が期待できます。

組織のグローバル化

外国人技能実習生を受け入れると、外国人がそれまで住んでいた国の言葉や文化、習慣に触れる機会が増えます。日本人とは異なる考え方や価値観を知ることは、会社のグローバル化への第一歩になります。

会社の海外進出や新たな外国人採用のきっかけ

外国人技能実習生を受け入れることで、受け入れた国とのコネクションができ、海外進出のきっかけになるかもしれません。また、技能実習生を受け入れることで、その国の外国人をさらに採用するチャンスが増えます。

技能実習生の入国から帰国までの流れ

技能実習生の入国から帰国までの期間は最短で1年、最長で5年です。

入国~1年

在留資格は「技能実習1号」

監理団体で約1ヶ月、講習を受講(雇用関係なし)

受け入れ企業で実習(雇用関係あり)
※監理団体による訪問指導・監査

入国より1年後

技能検定基礎級相当の学科および実技試験を受検

合格すれば、在留資格を「技能実習2号」へ変更(不合格なら帰国)
※技能実習2号の在留資格は2年

入国より3年後

・在留期間を更新しない人は帰国
・技能検定3級相当の実技試験を受検

合格すれば、在留資格を「技能実習3号」へ変更

一旦帰国(1ヶ月以上)

再入国

入国より5年後

技能検定2級相当の実技試験を受検(実習修了)

帰国
※「技能実習3号」の在留資格は2年

特定技能への移行

2019年4月1日に入管法の改正に伴い、「特定技能」という新しい在留資格ができました。改正された入管法では、「技能実習2号」を修了した人は、その在留資格取得に必要な日本語能力や技術水準に関わる試験などを免除され、「特定技能1号」へ移行することができます。

・特定技能1号(14業種):「特定産業分野に属する相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格」
•在留期間は通算5年(家族の帯同は不可)
•介護、ビルクリーニング、素形材産業、産業機械製造業、電気・電子情報関連産業、自動車整備、航空、宿泊、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業

・特定技能2号(2業種):特定産業分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格」
•家族の帯同可能、在留期限なし
•建設業、造船・舶用工業

参考:出入国在留管理庁

「特定技能1号」を取得した外国人は、日本に滞在中に試験に合格すれば、「特定技能2号」を取得することができます。

外国人技能実習制度の受け入れ方式と人数

技能実習制度の受け入れ方法には、「企業単独型」と「団体監理型」の2つのタイプがあります。法務省のデータによると、2018年末時点で、「団体監理型」の受入れが96.6%と大部分を占めています(※)。

それぞれどのような特徴があるのでしょうか。

OTIT 外国人技能実習機構

企業単独型

日本の企業が、海外に子会社のある企業の職員や、合弁会社、取引先の常勤職員を直接受け入れる方法です。主に大企業で採用されている方法で、実習生の多くは帰国後、日本で身につけた技能を活かして活躍しています。

「企業単独型」で受け入れる要件は以下の通りです。

•日本の公私の機関の外国にある支社、子会社、合弁会社の常勤職員
•日本の公私の機関と1年以上の国際取引の実績、または過去1年間に10億円以上の国際取引の実績がある取引先の常勤職員
•日本と国際的な業務提携を行っており、法務大臣及び厚生労働省が認めているもの

企業単独型の場合に設定されている受け入れ人数枠は以下の通りです。なお、実習生に対する実績・待遇などが優れている「優良基準適合者」であると認められた企業であれば、より多くの実習生を受け入れることができます。

•技能実習1号(1年間)…常勤職員総数の20分の1
•技能実習2号(2年間)…常勤職員総数の10分の1

※優良基準適合者
•技能実習1号(1年間)…常勤職員総数の10分の1
•技能実習2号(2年間)…常勤職員総数の5分の1
•技能実習3号(2年間)…常勤職員総数の10分の3

団体監理型

事業協同組合や商工会等、営利を目的としない監理団体が技能実習生を受け入れ、傘下の企業等(実習実施者)で技能実習を実施する方法です。

監理団体型で技能実習生を受け入れるには、外国人技能実習機構に対し、監理団体の許可申請(初めて受け入れる場合)と技能実習計画の認定申請を、また入国管理局に対し、在留資格認定証明書交付申請を行なう必要があります。

団体監理型の受け入れ人数は以下の通りです。

・技能実習1号(1年間)
(実習実施者の常勤職員総数/技能実習1号)
•30人以下…3人
•31~40人…4人
•41~50人…5人
•51~100人…6人
•101~200人…10人
•201~300人…15人
•301人以上…常勤職員総数の20分の1以下

・技能実習2号(2年間)…1号基本人数枠の2倍

※優良基準適合者
•技能実習1号…基本人数枠の2倍
•技能実習2号…基本人数枠の4倍
•技能実習3号…基本人数枠の6倍

企業単独型、団体監理型ともに、下記の人数を超えることはできません。ただし、介護職種等については事業所管大臣が定める告示で定められる人数となります。

•技能実習1号:常勤職員の総数
•技能実習2号:常勤職員数の総数の2倍
•技能実習3号:常勤職員数の総数の3倍

外国人技能実習制度の問題点

外国人技能実習生の受け入れが増えている一方で、幾つかの問題点も浮上しています。外国人技能実習制度の問題点についてご紹介します。

労働環境が整えられていない

技能実習生の労働環境が不適切であることが問題になる場合があります。労働基準に違反するような過度な労働を強制したり、安全の確認されていない機械の操作をさせたりしている企業もあります。

低賃金で雇われている人が多い

技能実習生の平均的な賃金は、日本人就労者や、技能ビザで働いている外国人に比べると低く抑えられています。企業によっては、安い賃金で日本人労働者を集めることが難しいために、外国人を不正に雇用している場合もあります

本来であれば、技能実習生の報酬は「日本人が従事する場合に受ける報酬と同等以上の報酬」と規定されていますが、実際には技能実習生の平均賃金は約12万円です。これは最低賃金、中学卒(15歳)などに近い水準です(※)。

※参考資料:厚生労働省「技能実習制度の現状と課題等について」

事件・事故が多発?

法務省調査によると、2017年の技能実習生の失踪者は過去最高の7,089人(2016年より2,031人増)となっています。失踪者を見ると、特に「建設」と「農業」分野での失踪者が多く、その理由としては賃金の安さや労働環境の悪さなどが考えられています。

※参考資料:法務省「技能実習制度の現状(不正行為・失踪)」

外国人犯罪が増加する可能性も?

警察庁の発表によるち、2012年~2014年の間で、外国人技能実習生が摘発されるケースが約3倍に増加しています。

時間と費用をかけて日本に来たものの、受け入れ先の賃金不払いといった不正行為により、実習以外の仕事をする「資格外活動」や、空き巣や万引などの窃盗といった犯罪に加担するケースが多いようです。

まとめ

2019年4月に入管法が改正されたことにより、外国人技能実習生にとっては就労に関する可能性が大きく広がりました。とはいえ制度の本来の目的を正しく把握せず、不当な条件で雇用している企業が多いのも現状です。

外国人技能実習生を採用するにあたっては、企業にとっても実習生にとってもプラスになるように制度を利用しましょう。

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