厚生労働省の発表によると、2019年時点で日本国内の外国人労働者数は165万8804人。
この数字は前年比+13.6%で、外国人労働者の数はこれまでになく急増しています。
少子高齢化の影響で、外国からの労働力の受け入れが必須になっている昨今ですが、文化の違いやコミュニケーション不足によって問題が発生することも。
今回は、外国人労働者にまつわる問題やその原因、有効な解決策についてお伝えします。
この記事の目次
外国人労働者の現状
2019年から新設された特定技能ビザにより、従来は外国人が就けなかった職種でも外国人労働者の受け入れが可能になりました。
これにより、外国人労働者の数はこれまでにないスピードで増加しています。
少子高齢化が問題になる中、海外に労働力を求めるのは自然な流れで、今後も外国人労働者の受け入れは増えていくでしょう。
外国人労働者は日本社会を助ける反面、ニュースなどで外国人労働者をめぐるトラブルが報じられることも多くなっています。
関連する論文や本なども多数発表されていて、外国人労働者を取り巻く問題については日本全体で考えていく必要があります。
外国人労働者問題とその原因
それでは、外国人労働者やその周りで起こりがちな問題、なぜそのような問題が起こってしまうのかをお伝えしていきます。
外国人労働者に起こりがちな問題
外国人労働者は、日本人に比べて過酷な労働環境に置かれたり、コミュニケーション不足や文化の違いからトラブルになりがちです。
長時間労働
長時間労働は日本社会全体が抱える問題ですが、外国人労働者は特に過酷な状況に置かれていることが多いです。
会社によっては、外国人労働者や技能実習生を「使い捨ての労働力」と捉え、過労死ラインを遥かに超える労働を強いていることもあります。
そして、外国人はビザの制限があるため、日本人よりも転職のハードルが高いです。
労働環境に納得がいっていなくても働き続けるしかなく、その結果過労死や労災死に繋がることもあるのです。
低賃金・賃金未払い
低賃金や賃金未払いも、深刻な問題です。
各都道府県が定める「最低賃金」は、当然ながら外国人労働者にも適用されます。
これは、技能実習生や、ビザのない外国人の不法就労だったとしても同じです。
しかし、雇い主側がそれを把握していなかったり、外国人が日本の法律に明るくないことから、最低賃金以下の給与で働かされる外国人労働者も。
もし最低賃金以下の給与で外国人を働かせていた場合、それが双方の合意に基づく契約だったとしても無効となり、遡って適正な賃金の支払いが必要となります。
いじめ・パワハラ
外国人労働者は、いじめやパワハラの標的にもなりやすいです。
原因は、文化の違いによる違和感や差別意識、コミュニケーションが取れないストレスなど。
どんな理由があったとしても、いじめやパワハラは許されるものではありません。
外国人労働者を受け入れる際は、外国人側への教育だけではなく、上司や周りの日本人従業員にも、外国人受け入れのための教育が必要です。
在留資格の悪用
日本は、世界の中で就労ビザの取得基準が厳しい国の一つです。
しかし、どんな制度にも抜け穴はあります。
難民認定制度や日本人との偽装結婚といった、正規ルート以外の在留・就労資格の取得、在留カードの偽装など、不正な方法で日本に在留する外国人も。
もちろんごく一部ですが、そういった外国人が原因となり、治安の悪化や犯罪の増加を懸念する声も多いです。
犯罪
外国人労働者の中には、文化や生活習慣、倫理観などが、日本人とは違う人もいます。
また、先にお伝えしたような労働環境の悪さから、貧困層の外国人も増加。
もちろん、外国人だから犯罪を犯しやすいというわけではありませんし、総検挙数の中の外国人率は1990年代以来ずっと2%前後で、人口比率から見ても特別多くはありません。
しかし、トラブルの種が多ければ犯罪に発展する機会も多いため、外国人労働者の急増に不安を感じる人もいるのです。
外国人労働者問題ーその原因とは
それでは、外国人労働者にまつわる問題は、どのような原因から起こるものなのか解説していきます。
契約書の不備
日本の法律では、従業員を雇用するときに、雇用契約書を用意することが義務にはなっていません。
そのため、中には賃金や労働時間などを口約束だけで決めたり、しっかり確認や同意を取らずに人を雇用する事業主もいます。
また、契約書を用意していたとしても、外国人労働者は日本語の理解が不十分で、内容をしっかり確認できていない場合があります。
こういった契約書の不備が、外国人労働者の労働環境の悪化や、双方の認識の違いによるトラブルに繋がるのです。
受け入れ態勢の不備
外国人労働者を受け入れる時には、周りの従業員にも周知と教育が必要です。
受け入れる外国人の国の文化や生活習慣、双方が理解しやすいコミュニケーションの取り方などについて、事前に説明や研修を行いましょう。
また、コンプライアンスについても再確認し、外国人労働者に限らず、ハラスメントや差別のない職場作りが必要になります。
外国人労働力雇用への知識不足
外国人を雇用する際には、日本人とは違った法律や制度が適用される部分もあります。
そのため雇用者側は、外国人の雇用手続きや入国管理法について理解し、適切な手順を踏んで雇用しなければいけません。
もしどこかにミスがあると不法就労となり、最悪の場合は退去強制となってしまいます。
不法就労させてしまうと、外国人労働者側と雇用者側の双方にデメリットがあるため、正しい手続き方法を知っておきましょう。
地域社会の理解不足
社内で外国人労働者の受け入れ態勢を整えることは比較的容易ですが、周辺の地域の理解まで得るのはなかなか難しいです。
人によっては、外国人の受け入れに反発したり、積極的な行動は起こさなくても「なんとなく怖い」と感じることもあります。
そういった意識は、外国人労働者を受け入れている企業のイメージダウンにも繋がりかねないため、雇用者側も何らかの工夫をする必要があります。
会社によっては、地域のお祭りに出店したり、清掃活動などのボランティアを通じて、外国人労働者と地域住民の交流の場を作ることもあるようです。
日本人との生活格差
外国人労働者は、法定内の賃金であっても、日本人より低水準な条件で雇用されることが多いです。
また、言語能力などがハンデとなり、社内での昇進が日本人より遅れるケースも多いでしょう。
その影響で、日本人と外国人労働者の生活格差が生まれます。
さらにそこから、「〇〇人は貧乏」「〇〇人街は治安が悪い」といった偏見に繋がり、トラブルの種になるのです。
問題の解決策は?外国人労働者受け入れの注意点
最後に、外国人労働者に関する問題を未然に防ぐ方法や、もし問題が起きてしまった時の解決策についてお伝えします。
ニーズにあった労働者を雇用する
仕事に必要な能力は、仕事の内容によってそれぞれ違います。
例えば、日本語力に不安がある外国人に、日本人相手の接客や営業の仕事は不向きですが、海外の取引先への営業なら日本人より活躍できる可能性もあります。
労働者本人も、雇用主や周りの従業員もストレスなく働くために、ニーズに合った労働者を雇用しましょう。
労働環境の整備
外国人を雇用する時には、既存の就業規定を変える必要が出てくるかもしれません。
例を挙げると、昇級や昇進の基準に外国人用のスケールを設けたり、日本人と外国人を平等に評価できる仕組み作りが必要になります。
また、就業規定や仕事のマニュアルなどの外国語版を作成したり、案内板などに外国語を併記したりといった準備も労働環境整備のうち。
外国人の視点で、どんな環境なら安心して働けるかを考える必要があります。
明確な雇用契約と各種届出
外国人を雇用するときには、双方が納得して契約できるよう、契約内容を明確にするのが重要です。
口頭での説明ではなく書面にし、できれば外国人の母語でも同じ内容の書類を作成できると良いでしょう。
また、在留資格の確認や、ビザの更新・変更手続きも、不法就労を防ぐために重要になります。
外国人本人に任せず、雇用者側も制度や必要な手続きを理解して、サポートするようにしましょう。
コミュニケーション
積極的にコミュニケーションを取ることは、様々な問題の根本的な対策になります。
日本人にとっては違和感がある外国人の行動も、外国の文化では当たり前ということも。
モヤモヤやストレスを溜めるのではなく、「なぜそうしたのか」と聞いてみたり、「日本で働く時はこうしてほしい」と伝えることで、相互理解に繋がります。
トラブルの種が小さいうちに解決しておくことで、後の大きな問題を防ぐことができるのです。
まとめ
外国人労働者は、日本の社会の助けになる一方、様々な問題が発生していることも確かです。
外国からの労働力の受け入れは社会の維持のために必要なことですから、今後さらに大きな問題に発展する前に、対策を考える必要があります。
最低限、法律を遵守することはもちろん、差別意識の撤廃や積極的なコミュニケーションは、誰にでもできる問題解決の方法です。