日本で働く外国人にとって欠かせない在留資格である「就労ビザ」。永住権ほど取得が難しくはありませんが、就労ビザの申請にもそれなりの知識と準備が必要です。
そこで今回は、外国人が日本の就労ビザを取得する場合の申請方法をご紹介いたします。
就労ビザ申請に必要な書類・期間・手続の流れなども詳しく解説。なかなか書き方がわからない「理由書」の例文も掲載します。
この記事の目次
就労ビザの申請方法について
就労ビザの申請は、外国人本人が行う場合と、外国人を雇用する企業などが行う場合の2パターンがあります。
それぞれの申請ステップは、以下の通りです。
外国人本人が就労ビザを申請する場合
1.日本に渡航する計画を立てる
2.就労ビザ申請に必要な書類を用意する
3.居住地にある日本大使館・総領事館で審査を受ける
4.審査終了後、旅券を取りに行く
5.就労ビザが交付された場合、3ヶ月以内に日本に渡航する
外国人を雇用する企業などが就労ビザを申請する場合
1.外国人を日本に招く計画を立てる
2.地方入国管理局に「在留資格認定証明書」の交付を申請する
3.交付された在留資格認定証明書を、外国人本人に送付する
4.本人が居住地にある日本大使館・総領事館で審査を受ける
5.審査終了後、本人が旅券を取りに行く
6.就労ビザが交付された場合、3ヶ月以内に日本に渡航してもらう
就労ビザの申請から取得までの期間
就労ビザの申請から交付されるまでの期間は、1~3ヶ月。
その時期に集まった処理件数や、就労ビザの種類によっても審査や事務処理にかかる期間が異なります。最短で1週間、最長だと6ヶ月かかるケースもあるそうです。
このビザの種類ごと・時期ごとの細かな標準処理期間は、法務省のホームページで確認可能です。
就労ビザが交付されないと外国人は日本で働くことができませんし、もし就労ビザを持たない外国人を働かせると不法就労となってしまいます。
そのため、外国人の雇用を予定している場合は、就労開始日まで余裕を持って就労ビザの申請手続きを済ませるようにしましょう。
就労ビザの申請に必要な書類は?
次に、就労ビザの申請に必要な書類を解説していきます。
会社側で準備が必要な書類
会社側で外国人スタッフを招聘する場合、就労ビザ申請に必要な書類は会社の規模によって異なります。
上場企業
- 四季報の写し、または日本の証券取引所に上場していることを証明する文書
前年分の源泉徴収税額が1,500万円以上の企業
- 前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表(受付印のあるものの写し)
前年分の源泉徴収税額が1,500万円未満の企業
- ・登記事項証明書
- 定款のコピー
- 会社案内(役員・沿革・業務内容・主要取引先・取引実績が記載されたもの)
- 直近年度の貸借対照表・損益決算書のコピー
- 前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表(受付印のあるものの写し)
- 雇用理由書(申請人の経歴と職務内容との関連性、事業の継続性や安定性、海外事業内容などを記載)
- 雇用契約書
新設企業
- 事業計画書
- 登記事項証明書
- 定款のコピー
- 会社案内(役員・沿革・業務内容・主要取引先・取引実績が記載されたもの)
- 給与支払事務所等の開設届書のコピー(受付印あるもの)
- 直近3ヶ月分の給与所得、退職所得等の所得税徴収高計算書(領収日付印のあるもの)のコピー、または源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書(受付印あるもの)のコピー
- オフィスまたは店舗の建物賃貸借契約書のコピー(不動産を所有している場合は登記事項証明書が必要)
- 会社の写真(ビル外観、入口、オフィス・店舗内部) ※オフィス内には机、PC、電話、キャビネットなどが設置されていること ※店舗の場合は内装済みで営業が開始できる状態であること
- 採用理由書(申請人の経歴と職務内容との関連性、事業の継続性や安定性、海外事業内容など)
- 雇用契約書
外国人スタッフ(内定者)で準備が必要な書類
外国人スタッフ側は、就労ビザ申請のために以下の書類を用意する必要があります。
- パスポート
- 査証申請書
- 就労ビザに記載する写真
- 学歴・職歴の証明書・成績証明書
- 本人の履歴書
- 日本語能力を証明する書類
- 資格の合格証(申請する就労ビザに関わるもの)
雇用理由書の内容が重要?
先の項目で触れたように、上場企業・源泉徴収税額が1,500万円以上の大企業は、そもそも雇用理由書が必要ありません。これは会社自体に信用があり、日本に害をなす外国人を招き入れることはないと思われるため。
雇用理由書は「当該外国人は日本にとって有益であり、かつ害のない人物である」ということをアピールするための書類です。
また、会社が雇用理由書を提出することで、当該外国人の来日を全面的に支援しているということになり、審査がスムーズになります。
そのため、雇用理由書はそれがあること自体が重要なのはもちろん、当然ながら内容も全て読まれて精査されます。他の申請書類がしっかり揃っていても、雇用理由書が不十分なら審査を通らないこともあるため注意しましょう。
就労ビザの申請手続きの流れは?
それでは、就労ビザの申請手続の流れをパターン別に見ていきましょう。
海外にいる外国人を採用する場合
海外にいる外国人を採用して日本に呼び寄せる場合には、まず採用する企業が地方入国管理局で「在留資格認定証明書」の交付を申請します。
- 1.日本企業が「在留資格認定証明書」の交付を申請
- 2.交付された証明書を外国人に送付
- 3.外国人が、現地日本大使館で「在留資格認定証明書」の交付を申請
- 4.交付された就労ビザを持ち、3ヶ月以内に入国・雇用
国内にいる外国人を採用する場合
国内にいる外国人を採用する場合、新規の就労ビザの申請ではなく、就労ビザの内容の確認または変更申請が必要となります。
- 1.就労ビザの内容を確認
- 2.就労ビザの変更許可申請(変更が必要な場合)
- 3.雇用契約書の作成
- 4.契約を締結し、雇用
就労ビザ申請の代行業者に依頼する場合
就労ビザ申請を代行業者に依頼する場合も、流れや用意する書類自体は同じです。
ただし、手続きは全て代行業者が行ってくれるので地方入国管理局などに出頭する必要がありません。
また、代行業者は就労ビザ申請のプロなので、必要書類は代行業者の指示に従うだけで全て集まります。書類の不備で審査に落ちるリスクが少なく、知識がない人が行うよりもかなりスムーズに申請が進みますよ。
業者によりますが、理由書や事業計画書などの書類をヒアリングした内容に合わせて代理作成してくれることもあります。
就労ビザの申請理由書の書き方・例文
就労ビザの申請理由書は、あくまでも任意の書類です。
しかし、その外国人を雇用したい理由について自ら説明することで、審査官の理解を得やすくなり審査がスムーズになります。
理由書に書くべき内容は、大きく分けて以下の4つです。
- 会社の概要・将来性
- 外国人の雇用理由
- 外国人が入社後に担う職務内容の詳細
- 外国人の学歴や職歴と職務内容の関連性
これらを含んだ例文は、以下のようになります。
国籍 :中国
生年月日:19○○年○月○日
1.当社の概要
弊社「株式会社○○」は平成○○年○月に設立し、東京を中心に10棟のホテルを運営しております。中国を中心とした訪日外国人客に多くご利用いただいており、今後は訪日外国人客に人気のエリアや海外への事業展開も予定しております。
2.申請人の配属先
総合職として入社いただき、以下のホテルへ配属いたします。
ホテル○○ 住所:東京都中央区銀座○-○-○
東京の中心地である銀座に位置するホテルです。銀座のメインストリートにほど近く、ショッピングを目的とした訪日中国人客が非常に多いことが特徴です。
・客室数:80室
・中国語圏からの年間宿泊者数:13,418名
3.申請人の担当する業務
担当する業務は、外国語を用いたフロント業務・訪日外国人客への近隣施設の案内業務などです。
日本、特に東京を訪れる中国人観光客は年々増え続けており、中国で長期休暇となる旧正月シーズンには宿泊客の半数以上が中国人のお客様となることもあります。
現在、当ホテルに在籍している中国語対応スタッフは1名のみで、語学が堪能なスタッフの採用は当社にとって最優先すべき課題です。
現在の状況を踏まえて、申請人にはフロントにて、中国を中心とした外国人顧客の応対に就いてもらう予定です。具体的な業務は、予約や問い合わせに関わるメールや電話のやりとり、宿泊客のチェックイン・チェックアウトやリクエスト対応などがあります。
4.採用申請を必要とする理由
申請人は、20○○年に中国の○○大学日本語学科を卒業。日本語能力検定(JLPT)のN1も取得しております。
卒業後は母国にて、日本人観光客も多く来店する○○百貨店に就職。語学力を生かして現地の中国人客や日本人観光客を接客しながら、お客様のリクエストに的確に対応するサービス業の基礎も培いました。
選考過程の面接においても優れたコミュニケーション能力を発揮し、ホテルの顔となるフロント業務での活躍に期待できます。
5.さいごに
中国を中心としたアジアの経済規模が拡大する中、外貨獲得が期待できるインバウンド誘致は日本の国益のために欠かせないものです。
2020年には東京オリンピックが開催され、海外の日本に対する注目は今後も高まり続けるでしょう。中国人観光客の増加への対応が遅れている弊社においては、一刻も早い対策が必要です。
上記理由をご審議のうえ、在留資格「技術・人文知識・国際業務」のご許可を賜れますようよろしくお願い申し上げます。
まとめ
就労ビザの申請方法と必要な書類は、申請者が本人かどうかや、企業の規模、外国人を呼び寄せるかどうかよってそれぞれ異なります。
いずれにせよ、就労ビザが下りなければ働くことはできません。
前もって計画的に申請を行ったり、申請代行業者に依頼したりなど、スムーズに就労が開始できるようにしましょう。