外国人就労者の就労ビザを徹底解説!

就労ビザの取得は審査が厳しく、外国人を日本で雇用する場合の最も大きな壁でもあります。準備する書類や取得方法が複雑なため、外国人をスケジュール通り雇用するために行政書士に取得代行を依頼する企業も多いです。
今回は、外国人を雇用したい企業の人事担当の方向けに、そんな就労ビザの基礎知識や取得方法について解説していきます。

外国人が日本滞在に必要な就労ビザの基礎知識

まずは、外国人が日本で働く時に必要な就労ビザの基礎知識を解説していきます。

外国人が日本で働く場合「就労ビザ」が必要

そもそも、外国人は誰でも自由に日本に入国することはできず、入国するには「ビザ」が必要です。観光など短期滞在であればビザが必要ない国もありますが、労働したり学校に通ったりするための長期滞在にはビザが必要となります。
ビザには種類によってできる活動に制限があり、例えば日本の学校に通って学ぶことが本分の「留学ビザ」では、労働収入を得ることができません。外国人が日本に長期滞在し、労働して収入を得るためのビザの総称が「就労ビザ」です。
ただし「就労ビザ」という種類のビザはなく、その外国人自身が持つ資格等により細かに種類が分かれています。
就労ビザの細かな種類については、後の項目で解説します。

日本では在留カードを携帯することが義務

ビザを取得した外国人には、「在留カード」が発行されます。在留カードにはビザの種類や有効期限が記されていて、外国人は日本国内ではこれを携帯することが義務付けられています。入国審査官や警察官に提示を求められた際に提示できない場合、1年以下の懲役か20万円以下の罰金に処せられる可能性があります。
また、企業側も外国人を採用する際には必ず在留カードをチェックします。ビザの有効期限が切れている不法滞在の外国人を雇用すると「不法就労」となり、本人だけではなく企業側も罰せられます。

就労ビザは1種類のみ取得が可能

就労ビザは1人につき1種類のみ取得が可能です。1人で複数のビザに該当する資格や経験を持っていても、取れるのは1種類のみです。
また、取得したビザの種類以外の職業に就くことはできません。例えば、通訳者として国際業務ビザで入国した外国人が、ビザを切り替えないまま国内で起業することは認められていないのです。
雇用した企業側も罰せられる可能性があるので、自社の職種と違う種類のビザを持っている外国人は雇用できません。

68の国・地域がビザ免除国(短期滞在)

2017年7月の時点で、以下の国や地域の国籍を持つ外国人は、短期滞在の場合ビザが不要で、ビザを申請せずパスポートのみで入国できます。
短期滞在とは、90日以下の滞在(インドネシア・タイ・ブルネイは15日、アラブ首長国連邦は30日)かつその目的が商用、会議、観光、親族・知人訪問等の場合です。

・ アジア:インドネシア・シンガポール・タイ・マレーシア・ブルネイ・韓国・台湾・香港・マカオ
・ 北米:米国・カナダ
・ 中南米:アルゼンチン・ウルグアイ・エルサルバドル・グアテマラ・コスタリカ・スリナム・チリ・ドミニカ共和国・バハマ・バルバドス・ホンジュラス・メキシコ
・ 大洋州:オーストラリア・ニュージーランド
・ 中東:アラブ首長国連邦・イスラエル・トルコ
・ アフリカ:チュニジア・モーリシャス・レソト
・ 欧州:アイスランド・アイルランド・アンドラ・イタリア・エストニア・オーストリア・オランダ・キプロス・ギリシャ・クロアチア・サンマリノ・スイス・スウェーデン・スペイン・スロバキア・スロベニア・セルビア・チェコ・デンマーク・ドイツ・ノルウェー・ハンガリー・フィンランド・フランス・ブルガリア・ベルギー・ポーランド・ポルトガル・マケドニア旧ユーゴスラビア・マルタ・モナコ・ラトビア・リトアニア・リヒテンシュタイン・ルーマニア・ルクセンブルグ・英国

外国人が日本で働くために必要なビザの種類

外国人が日本に在留するためのビザには27種類ありますが、その中で労働が認められている就労ビザは21種類です。それぞれについて解説していきます。

高度専門職ビザ2種類

・ 高度専門職1号(イ・高度学術研究活動 ロ・高度専門・技術活動 ハ・高度経営・管理活動)
・ 高度専門職2号

法務省では、高度人材について、「国内の資本・労働とは補完関係にあり、代替することが出来ない良質な人材」であり、「我が国の産業にイノベーションをもたらすとともに、日本人との切磋琢磨を通じて専門的・技術的な労働市場の発展を促し、我が国の労働市場の効率性を高めることが期待される人材」と定めています。つまり、日本人では代えが効かず、日本の産業に大きな影響を与える良質な人材ということです。
そういった資格があると認められた人には「高度専門職ビザ」が与えられます。高度専門職ビザは、就業ビザのように職種別ではなく、それぞれの職種での経験や学歴、年収などについてポイント制で決定されます。

高度専門職ビザを持っている場合、職種をまたいだ複合的な活動が可能です。例えば、大学で教授として教える傍ら事業の経営に携わるなど、複数の就業ビザにまたがるような労働が可能になるのです。
また、5年の在留資格や、本人だけではなく配偶者の労働、家族や使用人の帯同が認められているなど、外国人に発行されるビザの中で最も優遇されているビザです。
なお、高度専門職2号は、高度専門職1号で3年以上活動していた外国人が対象となります。

就業ビザ17種類

・ 教授:大学教授、助教授、助手など
・ 研究:研究所等の研究員、調査員など
・ 芸術:作曲家、作詞家、画家、彫刻家、工芸家、写真家など
・ 宗教:僧侶、司教、宣教師等の宗教家など
・ 報道:新聞記者、雑誌記者、編集者、報道カメラマン、アナウンサーなど
・ 経営・管理:会社社長、役員など
・ 法律・会計業務:日本の資格を有する弁護士、司法書士、公認会計士、税理士など
・ 医療:日本の資格を有する医師、歯科医師、薬剤師、看護師など
・ 教育:小・中・高校の教員など
・ 企業内転勤:同一企業の日本支店(本店)に転勤する者など
・ 技術:理工系技術者、IT技術者など
・ 人文知識:コピーライター、デザイナーなど
・ 国際業務:外国語教師、通訳など
・ 興行:演奏家、俳優、歌手、ダンサー、スポーツ選手、モデルなど
・ 技能:外国料理の調理師、調教師、パイロット、スポーツ・トレーナー、ソムリエなど
・ 介護:介護福祉士の資格を有する介護士など
・ 技能実習:企業と雇用関係を結び、一定期間技能を学ぶために労働をする技能実習生

就業ビザは、職種別に上記17種類に分かれています。これらは、企業側が外国人を雇用するときもっとも多く目にする、いわゆる「就労ビザ」です。
就業ビザの有効期限は5年、3年、1年、6ヶ月、3ヶ月、1ヶ月など職歴や年収によって様々です。取得方法も申請するビザの種類により細かく異なります。
また、これらの専門的な就労ビザは、高度専門職ビザのように職種をまたいで掛け持ちの労働をすることはできません。

起業(スタートアップ)ビザ

起業(スタートアップ)ビザとは、日本で起業したい外国人をサポートするために発行される最長期間1年以内の在留資格です。
通常、日本で外国人が企業を経営するには経営・管理ビザが必要ですが、日本国内で今後起業したいと考えている外国人の中には、その資格を満たさない人もいます。そういった場合、6ヶ月以内に経営・管理ビザの資格を満たす見込みの外国人に発行されるのが起業(スタートアップ)ビザです。
ただし、実施されている地域が限られており、その地域内でしかこのビザは有効となりません。現在は東京都・福岡市・仙台市でこの制度が実施されています。
起業して経営者となるためのビザなので、企業側がこのビザを持つ外国人を雇用することは基本的にありません。

外交ビザ・公用ビザ

外交ビザは、日本が接受した外交団やその家族が日本に滞在するためのビザで、その外交の期間がそのまま有効期限となります。
公用ビザは大使館の駐在員など、外国政府や国際機関の公務に従事する者とその家族が取得するビザです。
これらビザを持っている外国人を雇用することは少ないので、外国人雇用を考えている企業側にはあまり関係はないと言えますね。

就労が認められていない在留資格6種類

・ 文化活動
・ 短期滞在
・ 留学
・ 研修
・ 家族滞在
・ 特定活動

これら6種のビザ取得者は、労働が認められていません。どれも日本入国時にボランティアや勉強、報酬を伴わない文化活動など、労働が目的の入国ではないと申請して取得するビザであるためです。
ただし、特定活動ビザについては個々の外国人について特に活動を指定しているビザのため、滞在の内容によっては就労が認められている場合もあります。
また、これらのビザは正社員としての就労はできませんが、許可を得ればアルバイトは可能です。

外国人就労ビザの手続きについて

それでは、外国人就労ビザの取得方法や手続きの方法を解説していきます。

就労ビザ取得に必要な書類は?

(1) 各ビザ取得の申請書:1通
(2) 写真(縦4cm×横3cm):1葉
(3) 受け入れ企業側の規模等を証明する書類:適宜

まず、就労ビザの取得にはこの3つの書類が必要です。「受け入れ企業側の規模等を証明する書類」とは、四季報の写し、主務官庁から設立の許可を受けたことを証明する文書、前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表などです。
また、提出の際にはパスポートか在留カード(外国人登録証明書を含む)も提示します。
外国人を受け入れる企業側の規模には4つのカテゴリーがあり、

カテゴリー1
・ 上場企業
・ 保険業を営む相互会社
・ 外国の国又は地方公共団体
・ 日本の国・地方公共団体認可の公益法人

カテゴリー2
・ 前年分の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表中、給与所得の源泉徴収合計表の源泉徴収税額が1,500万円以上ある団体・個人

企業側が以上の2カテゴリーに該当していれば、追加の書類はありません。

カテゴリー3
・ 前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表が提出された団体・個人(カテゴリー2以外)

カテゴリー4
・ 上記のいずれにも該当しない団体・個人

このカテゴリー3か4に該当している場合には、追加で以下の書類が必要です。

(4) 直近の年度の決算文書の写し:1通
(5) 住民税の課税(又は非課税)証明書及び納税証明書(1年間の総所得及び納税状況が記載されたもの):各1通
(6) 外国法人の源泉徴収に対する免除証明書その他の源泉徴収を要しないことを明らかにする資料:1通

カテゴリー3は(4)と(5)が、カテゴリー4の企業や個人が外国人を受け入れる場合には(4)~(6)全ての書類が必要となります。

日本国外の外国人の就労ビザを取得する場合

外国人の就労ビザ取得には、本人や企業側が自分で行う取得方法と行政書士に依頼する取得方法があります。どちらの場合も、用意する書類や取得方法は同じです。

海外にいる外国人を日本に呼び寄せて就労させる場合、上で解説した書類の他に追加で以下の書類が必要になります。

・ 身元保証書
・ 履歴書
・ 日本での居住を証明する書類

海外にいる外国人が日本で働く場合は、日本国内で本人か代理人が就労ビザの取得申請を行います。申請が通った後、来日する前に本人が在外日本公館で在留資格認定書を提示してビザ申請をし、在留カードを受け取るという取得方法となります。

日本国内の外国人の就労ビザを取得する場合

日本国内の外国人が就労ビザを申請する場合、「ビザの更新」「ビザの種類変更」の2種類の取得方法が考えられます。

すでに日本企業で働いている外国人のビザ有効期限が迫り、更新をする場合には追加で以下の書類が必要です。

・ 在職証明書
・ 履歴書
・ 学歴、職歴を証明する書類
・ 源泉徴収票
・ 所得税、住民税の納税証明書
・ 手数料4,000円

外国人留学生が日本の学校を卒業してそのまま日本で働く場合や、既に日本で働いていても全く違う職種に転職する場合には、ビザの変更手続きが必要となります。
就労ビザの変更手続きに追加で必要なのは、以下の書類です。

・ 資格外活動許可書(ある人のみ)
・ 所得税、住民税の納税証明書(転職する場合)
・ 卒業証明書、もしくは卒業見込み証明書(留学生が就職する場合)

これらの書類を本人か代理人が日本国内で入国管理局に提出し、新しいビザを受け取るという取得方法となります。

就労ビザの審査期間はどのくらい?

就労ビザの審査にかかる期間はおよそ1ヶ月ほどですが、申請内容や確認書類の不備などで、2~3ヶ月など大幅に遅れる場合もあります。
就労ビザの更新や変更の申請は、ビザの有効期限の3ヶ月前から始められます。万が一期間内に審査が終わらなかった場合も期限後2ヶ月間は日本国内に滞在できますが、ビザの申請は早めに始めるに越したことはありません。

就労ビザが不許可になる4つの理由

就労ビザが不許可となると、外国人社員を予定通り働かせられなかったり、不法滞在にならないよう帰国させる必要が出たりと、デメリットが多いです。就労ビザが不許可になってしまう4つの主な理由を解説していきます。

申請書類に不足や不備がある

申請書類に不足や不備がある場合、当然ですが申請は通りません。また、一般的に必要な書類を揃えていても、様々な要因で追加の書類を要請されることもあります。
手続きを外国人本人に任せた場合、言葉の壁により書類の書き損じや書類の不足が起こりやすいです。スムーズに外国人を雇用したい場合には、企業側の代理人や行政書士に申請を依頼する取得方法がおすすめです。

在留資格の要件が外国人の経歴と合わない

外国人が日本で行う職務内容は、本人の経歴と関連性がある必要があります。例えば海外で理系の学部を卒業している外国人を、通訳者など文系の職業で雇用しようとすると、経歴の不一致で不許可になる場合があります。

就労ビザを取得する外国人の経歴に問題がある

雇用する外国人自身の経歴に問題がある場合も、ビザが不許可になる可能性が高いです。母国で前科や税金の滞納、過去に入国管理局とトラブルになっているなどの経歴があると、ビザの認定や更新に不利となります。
また、外国人が日本で雇用されていた会社を退職した場合、14日以内に入国管理局に届け出る必要がありますが、それを怠っていた場合にもビザの審査に影響が出ます。

雇用側の雇用能力も関係がある

雇用する企業側の利益が安定しておらず、経営が不安定だとビザの申請が通りにくいです。取得方法や書類に不備がなくても不許可になる場合があるため、外国人を雇用するには、企業側の経営がある程度安定していることが必須となります。

不許可の理由は教えてもらえないことが多い

就労ビザが不許可となっても、入国管理局側から積極的に理由を教えてくれることは少ないです。
しかし、こちらから出向けば、面談で不許可の理由を教えてもらえます。面談は一回のみなので、本人が日本語に不慣れな場合や、ビザの取得方法に不安がある場合には、申請に慣れた企業側の代理人や行政書士が同行するのがおすすめです。

就労ビザの再申請は可能なのか?

就労ビザが不許可になった場合も、再申請は可能です。
ただし、2回目以降の審査は、初回よりもさらに厳しくなります。そのため、不許可の理由を改めて書類を不備なく用意し、正しい取得方法で臨む必要があります。

最後に

いかがでしたでしょうか?
外国人材の雇用が初めての企業の人事担当者にとっては、必須となるビザ手続きについて解説させて頂きました。折角採用のオファーを出してもビザが取得できなければ採用までの工数もすべて無駄になってしまう為、ここは慎重に確実にすすめたいところかと思います。
採用選考〜オファー〜入社までの一連のフローに不安を抱える場合は、外国人材紹介を行っている専門企業に依頼するか選考前に行政書士へ「当社がもとめる人材は○○の様な人材だが、ビザ取得は可能か?」を事前に確認されることをおすすめ致します。

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