増加している外国人エンジニア採用。日本語能力はどれくらい必要?

近年、日本では少子高齢化により人材不足が問題となっており、企業の人材不足を補う方法の1つとして外国人労働者の活躍が期待されています。特に、エンジニア職は単純労働ではないため、優秀なスキルを持った人の採用に注目が集まっています。

しかし、実際に日本で働くとなるとほとんどの企業で日本語でのコミュニケーションが必要となります。せっかく企業に必要なスキルをもっていても、言語の問題によって採用を見送るケースも考えられます。

この記事では、実際に外国人労働者が日本で働く時には、どの程度の日本語レベルが必要なのかを紹介していきます。

日本語能力を測る「JLPT」

日本語能力を測定する基準として「JLPT」があります。「JLPT」は日本語能力試験(Japanese-Language Proficiency Test)を略したもので、2011年の受験者数が全世界で約61万人にのぼる世界最大規模の日本語試験です。

JLPTの結果は学校での単位・卒業資格認定、企業での優遇、社会的な資格認定のようなさまざまなメリットがあり、日本語の文字や語彙、文法の知識以外にも、知識をコミュニケーションで使うための力を測定します。

どのような試験?

JLPTは7月と12月の年2回行われ、日本の全国主要都市や海外の指定された都市で受験することができます。受験の際にN1〜N5のレベルを選択することでレベルに合った問題が出題されます。

試験はマークシート方式で行われるので、面接で話したり、筆記試験で書いたりする能力を測る科目はありません。試験内容はコミュニケーション上の課題を解決するために必要な以下の3つの要素を測定します。

① 言語知識
② 読解
③ 聴解

N1〜N3までは、3つそれぞれに60点ずつ配分され合計180点満点です。N4〜N5では「言語知識」と「読解」が1つになっており、点数配分は言語知識+読解が120点、聴解が60点となっています。

5段階のレベルに分けられる

試験問題は5段階のレベル(N1、N2、N3、N4、N5)に合わせて作られています。N1が最も難しく、N5が最も易しいレベルで、詳しくはそれぞれ以下のように定義されています。

N1:幅広い場面で使われる日本語を理解することができる
N2:日常的な場面で使われる日本語の理解に加え、より幅広い場面で使われる日本語をある程度理解することができる。
N3:日常的な場面で使われる日本語をある程度理解することができる
N4:基本的な日本語の理解することができる
N5:基本的な日本語のある程度理解することができる

具体的なイメージとしては、N4とN5は教室で使う日本語のレベルの理解、N1とN2は日常的な幅広い場面での日本語の理解、そしてN3はその中間に位置する橋渡しのレベルです。

外国人エンジニアの望ましい日本語レベルとは?

外国人エンジニアを採用するにはどの程度の日本語能力があればいいのでしょうか?優秀なスキルがあったとしても、コミュニケーションがスムーズにできないとスキルを発揮することができません。ここから、外国人エンジニアを採用する時の基準を紹介していきます。

基本的にはN2以上

基本的な基準としては、N2以上の人材の採用がおすすめです。N2の基準は「日常的な場面で使われる日本語の理解に加え、より幅広い場面で使われる日本語をある程度理解することができる。」ですが、「読む」と「聞く」に分けると以下のようにもう少し細かい基準となっています。

「読む」
・幅広い話題について書かれた新聞や雑誌の記事・解説、平易な評論など、論旨が明快な文章を読んで文章の内容を理解することができる。
・一般的な話題に関する読み物を読んで、話の流れや表現意図を理解することができる。

「聞く」
・日常的な場面に加えて幅広い場面で、自然に近いスピードのまとまりのある会話やニュースを聞いて、話の流れや内容、登場人物の関係を理解したり、要旨を把握したりすることができる。

日本語だけではなくスキルと共に判断する

N2以上に絞るとそれだけ高度な日本語能力を兼ね備えた人材だけが対象になるので、スキルはあっても日本語能力の問題で優秀な人材を逃すこともあります。そのような機会を失わないためには、数字だけにとらわれず、スキルを共に考慮して判断することが大切です。

優秀なエンジニアを採用するためには?

N2以上の日本語能力があるとコミュニケーションの問題は解消できますが、日本語能力が不足していても社内環境で補うことができればN3以上から採用基準にしても良い場合もあります。

エンジニア職でスキルに長けており、コミュニケーションが基準に達していなくても業務を継続するなかで日本語能力の向上が期待できそうな場合や、社内のコミュニケーションに英語を利用する場合には、日本語の能力が求めるレベルに達していなくても業務に支障なくコミュニケーションができます。

近年の外国人の日本語レベルは?

ひと昔前では外国人労働者は割合も少なく、街中でも見る機会はあまり多くありませんでしたが、近年ではコンビニや飲食店・エンジニア職とさまざまな業種で貴重な人材として活躍しています。

外国人労働者が増えていることから考えると外国人の日本語レベルが高くなっていると予想できますが、実際に、日本語能力試験を受けている外国人のレベルがどの程度なのか見ていきましょう。

日本語レベルの割合

現状の外国人の日本語能力を判断するには、過去5回分のJLPTの各段階での認定者割合を見ると参考になります。

<日本語能力試験「JLPT」の過去5回の認定者割合>
・N1:19%
・N2:30%
・N3:24%
・N4:13%
・N5:14%

つまり、N1とN2で約半数、N3まで合わせると3/4程度を占めることがわかります。N2以上は日常的な幅広い場面での日本語を理解できると定義されていますので、JLPTを受ける外国人の日本語レベルはかなり高いことがわかります。

日本語教育は採用後も重要になる

日本語教育は採用してからも必要になります。採用後の日本語教育をすることで、社内でのコミュニケーションの円滑化だけではなく、多様性を活かして企業価値をあげることも期待できます。

さらに、日本語教育の仕組みが企業であることで、採用段階での日本語能力の基準を他社よりも下げて、採用の対象となる母数を増やすことができるので強みにもなります。ここからは、採用後の日本語教育として考えられる方法を3つ紹介します。

社員による日本語教室

採用後の日本語教育の1つ目として、社員が講師となり日本語教室をする方法があります。社内の人材で日本語教育ができるので、コスト面での負担を小さくすることが可能です。さらに、社内での教育なので実践的な業界の専門用語なども教えることができます。

また、日本語教室を通じて社員同士のコミュニケーションも円滑になるので、業務の円滑化も期待できます。しかし、デメリットとして、社員は日本語教育の専門家ではないので、ゼロからノウハウを蓄積する必要があります。

講師を呼ぶ

次に、外部から講師を呼ぶ方法です。外部の講師に日本語教育を依頼することで、報酬が発生する分、質の高い確立されたノウハウで日本語を学ぶことができます。

外国人エンジニアにとっては、講義を直接聞くことができて疑問点などをすぐ質問できるのでスピード感をもって日本語教育をすることができます。また、学習環境が整っているので個人のモチベーションによる依存度が低く、計画的に日本語教育ができます。

オンライン講座を利用する

最後は、オンライン講座を利用する方法です。最近では、オンライン教育のサービスも充実しており、自宅にいながら専門性の高い講義で学ぶことができます。自分の好きな時間や場所で学ぶことができたり、繰り返し学べる点がメリットとしてあります。
デメリットとして、自由度が高い分、個人のモチベーションに効果が左右されるのでオンラインであってもやり抜くための環境や制度を整える必要があります。

参照:https://www.jlpt.jp/about/purpose.html

まとめ

ここまで、外国人エンジニアの採用では、どれくらいの日本語能力が必要なのかについて解説しました。ほとんどの企業ではある程度の日本語能力を求めることは避けられませんが、「JLPT」試験の結果が全てではありません。スキルと日本語能力の両方を見て、採用の可否を判断することが重要になってきます。

採用したあとの日本語教育も視野に入れつつ、自社が必要としているスキルをもったエンジニアかどうかを見極め、優秀な人材を育てていきましょう。

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