納税は「国民の3大義務」ですが、外国人の納税はどのようなシステムになっているのか知っていますか?外国人の税金は、日本に生活の拠点を持っている「居住者」か、一時滞在の「非居住者」かによって異なります。
今回は、外国人が支払う税金について詳しく解説。外国人が受けられる税金の控除や、短期滞在者免税についてもご紹介いたします。
この記事の目次
外国人でも税金を納める義務がある?日本の税制度をおさらい
まずは日本の税制度を簡単におさらいして、外国人に納税の義務がある場合・ない場合について考えていきましょう。
納税の義務
「納税の義務」は憲法で定められている国民の3大義務です。外国人は日本国籍がないため「国民」ではないという見方もありますが、日本に在留する外国人にも納税の義務はあります。
日本に在留する外国人が支払う税金は、主に「所得税」「相続税」「法人税関係(事業者のみ)」「住民税」「事業税」の5つ。事業主ではなく、相続関係の所得もない外国人の場合、「所得税」「住民税」の2つを理解しておけばいいでしょう。観光などで短期滞在する外国人も、消費税や関税などの「間接税」は支払うことがあります。
外国人は居住者と非居住者で違いあり
外国人の納税の義務の範囲は、「永住者」「居住者」「非居住者」のどのカテゴリに該当するかによって異なります。居住者と非居住者の定義は、以下の通りです。
つまり、日本で家を持ったり賃貸契約をしたりしている人や、日本に1年以上続けて滞在している外国人が「居住者」。滞在が1年未満の人や、いずれ海外に戻ることが明確で住所を持っていない人が「非居住者」ということになりますね。なお、居住者の中には、永住権をもつ「永住者」も含まれます。
そして、それぞれの外国人が支払う所得税や住民税は、以下の収入に課税されます。
つまり、日本との繋がりが深いほど課税される範囲が広く、納税額も高くなるということですね。
滞納するとどうなるか
税金を滞納すると、外国人にも日本人と同じペナルティを課せられます。会社勤めをしている場合、税金は給与から天引きされるので滞納の心配はありませんが、自営業やアルバイトなどの場合はうっかり払い忘れてしまう可能性があります。
まず、所得税を法定期限内に納められない場合、延滞税がかかります。支払いが遅くなればなるほど金額が膨れ上がるので、確定している税金は早く支払うに越したことはありません。
住民税を滞納すると、まず督促状が届き、その後電話や戸別訪問で支払いを促されます。それでも支払わないと、給与・預貯金・自動車・不動産などを差し押さえられて強制徴収される恐れがあります。
相談は市区役所・町村役場の窓口へ
生活が苦しくて税金を支払えない場合は、黙って滞納するのではなく市区役所・町村役場の窓口に相談しましょう。事情を説明して妥当性が認められた場合、分納や減免に応じてもらえる可能性があります。
外国人の税金について|所得税編
それでは、外国人が支払う所得税について、詳しく見ていきましょう。
居住者①…国内所得のある場合
国内で会社勤めをしたり個人事業主として利益を生んでいたりする場合、その所得に対して所得税が課せられます。永住者・居住者は、所得税の制度や税率は日本人と同じです。所得額に応じて税率が変わる「累進課税制度」で以下の税率が課せられます。
- ~195万円:5%
- 195~330万円:10%
- 330~695万円:20%
- 695~900万円:23%
- 900~1,800万円:33%
- 1,800~4,000万円:40%
- 4,000万円~:45%
居住者②…海外所得のある場合
海外で所得がある場合(海外の企業から海外の口座に給与が支払われている場合)は、永住者のみが所得税を課せられます。税率は、日本国内の所得の場合と同じです。
ただし、日本と海外で二重に所得税が課せられる場合は、外国で課税された額をその年の所得税から差し引くことができます。これを「居住者に係る外国税額控除」といいます。
居住者③…国内への送金の場合
海外の企業から日本国内の口座へ送金されている所得には、永住者を含む居住者に所得税が課せられます。税率は日本国内の所得の場合と同じです。
研修生や留学生の所得税は?
研修ビザで来日した研修生は、実際の収入が入国時に申告した研修手当を超えない場合には課税されません。
留学生がアルバイト等をした場合は、履修期間が1年以上の場合は通常の日本人と同じ扱いで課税され、1年未満なら給与支払い時に20.42%源泉徴収されます。ただし、日本と「租税条約」を結んでいる国からの留学生の場合、生活費や学費に充てる程度のアルバイト代は所得税が減免される場合があります。
非居住者の所得税は?
非居住者の場合、所得税の税率は所得金額に関わらず「20.42%」です。日本国内での所得にのみ、この税率が課せられます。
所得税の還付申告方法
日本人と同じく、外国人も所得税を納め過ぎている場合は、確定申告によって還付されます。還付申告が必要になるのは、以下のようなケースが考えられます。
年の途中で退職し、年末調整を受けていない場合
一定の基準を満たす住宅を購入し、住宅ローンがある場合
多額の医療費を支払った場合
また、還付申請・還付金が給付されるときに日本にいない場合や、本人が居住者ではない場合はこの手続きを「納税管理人」に委託する必要があります。個人や法人を納税管理人に選任し、「納税管理人に関する届出書」を提出して手続きを代行してもらいます。
外国人の税金について|住民税編
住民税は、国ではなく住民票を置いている市区町村に支払う「地方税」です。
居住者の住民税
在留外国人の中でも、永住者・居住者は住民税を支払う必要があります。永住者の場合は全ての所得、居住者の場合は国内の所得と海外から国内に支払われた所得に課税されます。
ただし、住民税は前年の所得に対して課税されるので、日本に来た最初の年は住民税を支払う必要がありません。住民税の税率は自治体ごとに異なるため、詳しくは住民票を置いている市区町村に問い合わせましょう。
非居住者の住民税
非居住者は、住民税を支払う必要がありません。
納税証明書の取得方法
外国人がビザを更新するときは、納税証明書が必要になります。各自治体の役所の窓口か、郵送で請求して取得しましょう。
外国人の税金について|免税・控除編
最後に、外国人が受けられる免税・控除について解説していきます。
居住者と非居住者で受けられる控除に違いあり
所得税には様々な控除があります。
- 雑損控除
- 医療費控除
- 社会保険料控除
- 小規模企業共済等掛金控除
- 生命保険料控除
- 地震保険料控除
- 寄附金控除
- 障害者控除
- 寡婦(寡夫)控除
- 勤労学生控除
- 配偶者控除
- 配偶者特別控除
- 扶養控除
- 基礎控除
外国人のなかでも、居住者は日本人と同じく全ての控除を受けることができます。非居住者が受けられる控除は「雑損控除」「寄附金控除」「基礎控除」のみです。
基礎控除
基礎控除は納税をする日本人・外国人が全員受けられる控除です。金額は一律38万円となっていて、誰でも収入額のうち38万円は非課税です。
扶養控除
扶養控除は、収入がない、または少ない家族を扶養することで控除されるものです。その条件と、金額は以下の通りです。
・6親等内の血族及び3親等内の姻族
・納税者と生計を一にしている
・年間合計所得金額が38万円以下(給与のみの場合は103万円以下)
・70歳以上(同居している):58万円
・70歳以上(同居していない):48万円
・それ以外:38万円
配偶者の場合は、配偶者控除・配偶者特別控除で、納税者と配偶者の所得額に応じた控除を受けられます。
また、「納税者と生計を一にしている」の条件として「同居」は含まれていないので、故郷に仕送りをしている場合には海外の家族も扶養家族としてカウントできます。ただし、外国人が海外の家族の人数を実際よりも多く申告しているケースなどが増えており、審査が厳格になってきています。
外国税額控除
先にも少し触れましたが、外国税額控除は税金の二重払いを防ぐための制度です。例えば、海外で得た2,000万円の所得に対し、海外の所得税が50%、日本の所得税が40%かかると、残りはたった200万円になってしまいます。その場合、海外に納税した1,000万円は申告により控除されるというのが外国税額控除の仕組みです。
ただし、所得税には控除限度額があるので、全額は戻ってこない場合もあります。
所得税の控除限度額は、以下の計算式で算出できます。
所得税の控除限度額=その年分の所得税の額×(その年分の国外所得金額/その年分の所得総額)
短期滞在者免税
非居住者の外国人で、日本が「租税条約」を締結している国の国籍を持っている人の所得は、一定の基準を満たすと免税されます。この制度を、通称「短期滞在者免税」と呼びます。条件は国ごとに異なりますが、概ね「短期滞在」とは「183日以下」のことを指し、この期間以下しか日本に滞在しない外国人は、日本で収入を得ても課税されません。
まとめ
外国人の税金は、「永住者」「居住者」「非居住者」という区分によって納税の義務がある範囲が異なります。「永住者」「居住者」は、細かな条件は違うものの、ほぼ日本人と同じ税金を納めなければなりません。
「非居住者」は住民税を支払う必要がなく、所得税も「短期滞在者免税」や「租税条約」により減免される可能性があります。