日本国内に在留する技能実習生は、現在41万人以上。
法令の改正によって、受け入れ可能な職種の幅は随時広がっていて
今後も技能実習生は増加していく見込みです。
そこで今回は、現在認定されている技能実習生を受け入れ可能な職種を一覧で掲載。
技能実習生制度の基礎知識や、号以降の手続き方法についてもお伝えします。
この記事の目次
外国人技能実習生制度の基本
まずは、外国人技能実習生制度の基礎知識をお伝えします。
技能実習の目的
技能実習制度の目的は、日本で開発され培われた技能・技術・知識を開発途上地域等への移転を図ること。
開発途上地域の経済発展を担う人材を育てるという、国際協力の一環です。
日本の企業や事業主は技能実習生と雇用関係を結び、実際の仕事を通じて業務に必要な技能を教育していきます。
最長5年の実習期間後、実習生は帰国して自国で技能を生かして働き、自国の経済発展に貢献するのが本来の目的です。
そのため、技能実習法の基本理念として「技能実習は、労働力の需給の調整の手段として行われてはならない」と定められています。
技能実習生の受け入れ方式
技能実習生の受け入れ方式には、「企業単独型」と「団体監理型」の2種類があります。
企業単独型
企業単独型とは、日本の企業等(実習実施者)が海外の現地法人・合弁企業・取引先企業などの
職員を受け入れて技能実習を実施すること。
実施割合は全体の2.8%で、実質的には次で解説する「団体監理型」が主な方式です。
団体監理型
団体監理型は、技能実習生の総人数のうち97.2%を占めるポピュラーな方式。
事業協同組合や商工会など、営利を目的としない団体(監理団体)が技能実習生を受け入れ
その傘下の企業等(実習実施者)に配属して技能実習を実施します。
技能実習は3段階
技能実習には、技能の習熟度別に3つの段階があります。
それぞれ、「第1号」「第2号」「第3号」と呼び、数字が大きいほど習熟度が高いです。
第1号:入国1年目。技能等を修得する段階
第2号:入国2〜3年目。技能等に習熟する段階
第3号:入国4〜5年目。技能等に熟達する段階
技能の段階を移行するためには、1号から2号、2号から3号それぞれの移行時に所定の試験に
合格する必要があります。
技能実習生の転職は可能?
従来、技能実習生の転職は不可とされていましたが、2020年4月から特例として可能になりました。
これは、新型コロナウイルスの影響で実習が継続困難になったり、実習が終了したのち帰国が困難になったりした技能実習生が発生したためです。
在留資格の変更手続きを行えば別の業種や職種へ転職が可能になり、状況が落ち着くまで1年間の就労が可能になっています。
技能実習生受け入れ可能な職種
技能実習生の受け入れが可能な職種を、一覧で掲載いたします。
分野は農業、漁業、建設、自動車整備、機械・金属など多岐に渡りますが、詳しい作業内容まで定められていて、それに含まれない作業は技能実習生に行わせてはいけません。
参照:外国人技能実習機構「技能実習制度 移行対象職種・作業一覧」
農業関係(2職種6作業)
・耕種農業:施設園芸、畑作・野菜、果樹
・畜産農業:養豚、養鶏、酪農
漁業関係(2職種10作業)
・漁船漁業:かつお一本釣り漁業、延縄漁業、いか釣り漁業、まき網漁業、ひき網漁業、刺し網漁業、定置網漁業、かに・えびかご漁業、棒受網漁業
・養殖業:ほたてがい・まがき養殖
建設関係(22職種33作業)
・さく井:パーカッション式さく井工事作業、ロータリー式さく井工事作業
・建築板金:ダクト板金作業、内外装板金作業
・冷凍空気調和機器施工:冷凍空気調和機器施工作業
・建具製作:木製建具手加工作業
・建築大工:大工工事作業
・型枠施工:型枠工事作業
・鉄筋施工:鉄筋組立て作業
・とび:とび作業
・石材施工:石材加工作業、石張り作業
・タイル張り:タイル張り作業
・かわらぶき:かわらぶき作業
・左官:左官作業
・配管:建築配管作業、プラント配管作業
・熱絶縁施工:保温保冷工事作業
・内装仕上げ施工:プラスチック系床仕上げ工事作業、カーペット系床仕上げ工事作業、鋼製下地工事作業、ボード仕上げ工事作業、カーテン工事作業
・サッシ施工:ビル用サッシ施工作業
・防水施工:シーリング防水工事作業
・コンクリート圧送施工:コンクリート圧送工事作業
・ウェルポイント施工:ウェルポイント工事作業
・ 表装:壁装作業
・建設機械施工:押土・整地作業・積込み作業、掘削作業、締固め作業
・築炉:築炉作業
食品製造関係(11職種18作業)
・缶詰巻締:缶詰巻締
・食鳥処理加工業:食鳥処理加工作業
・加熱性水産加工食品製造業:節類製造
・加熱乾製品製造、調味加工品製造、くん製品製造
・非加熱性水産加工食品製造業:塩蔵品製造、乾製品製造、発酵食品製造、調理加工品製造、生食用加工品製造
・水産練り製品製造:かまぼこ製品製造作業
・牛豚食肉処理加工業:牛豚部分肉製造作業
・ハム・ソーセージ・ベーコン製造:ハム・ソーセージ・ベーコン製造作業
・パン製造:パン製造作業
・そう菜製造業:そう菜加工作業
・農産物漬物製造業:農産物漬物製造作業
・医療・福祉施設給食製造:医療・福祉施設給食製造作業
繊維・衣服関係(13職種22作業)
・紡績運転:前紡工程作業、精紡工程作業、巻糸工程作業、合ねん糸工程作業
・織布運転:準備工程作業、製織工程作業、仕上工程作業
・染色:糸浸染作業、織物・ニット浸染作業
・ニット製品製造:靴下製造作業、丸編みニット製造作業
・たて編ニット生地製造:たて編ニット生地製造作業
・婦人子供服製造:婦人子供既製服縫製作業
・紳士服製造:紳士既製服製造作業
・下着類製造:下着類製造作業
・寝具製作:寝具製作作業
・カーペット製造:織じゅうたん製造作業、タフテッドカーペット製造作業、ニードルパンチカーペット製造作業
・帆布製品製造:帆布製品製造作業
・布はく縫製:ワイシャツ製造作業
・座席シート縫製:自動車シート縫製作業
機械・金属関係(15職種29作業)
・鋳造:鋳鉄鋳物鋳造作業、非鉄金属鋳物鋳造作業
・鍛造:ハンマ型鍛造作業、プレス型鍛造作業
・ダイカスト:ホットチャンバダイカスト作業、コールドチャンバダイカスト作業
・機械加工:普通旋盤作業、フライス盤作業、数値制御旋盤作業、マシニングセンタ作業
・金属プレス加工:金属プレス作業
・鉄工:構造物鉄工作業
・工場板金:機械板金作業
・めっき:電気めっき作業、溶融亜鉛めっき作業
・アルミニウム陽極酸化処理、極酸化処理作業
・仕上げ:治工具仕上げ作業、金型仕上げ作業、機械組立仕上げ作業
・機械検査:機械検査作業
・機械保全:機械系保全作業
・電子機器組立て:電子機器組立て作業
・電気機器組立て:回転電機組立て作業、変圧器組立て作業、配電盤・制御盤組立て作業、開閉制御器具組立て作業、回転電機巻線製作作業
・プリント配線板製造:プリント配線板設計作業・プリント配線板製造作業
その他(19職種35作業)
・家具製作:家具手加工作業
・印刷:オフセット印刷作業、グラビア印刷作業
・製本:製本作業
・プラスチック成形、圧縮成形作業、射出成形作業、インフレーション成形作業、ブロー成形作業
・強化プラスチック成形:手積み積層成形作業
・塗装:建築塗装作業、金属塗装作業、鋼橋塗装作業、噴霧塗装作業
・溶接:手溶接、半自動溶接
・工業包装:工業包装作業
・紙器・段ボール箱製造:印刷箱打抜き作業、印刷箱製箱作業、貼箱製造作業、段ボール箱製造作業
・陶磁器工業製品製造:機械ろくろ成形作業、圧力鋳込み成形作業、パッド印刷作業
・自動車整備:自動車整備作業
・ビルクリーニング:ビルクリーニング作業
・介護:介護作業
・リネンサプライ:リネンサプライ仕上げ作業
・コンクリート製品製造:コンクリート製品製造作業
・宿泊:接客・衛生管理作業
・RPF製造:RPF製造作業
・鉄道施設保守整備:軌道保守整備
・ゴム製品製造:成形加工、押出し加工、混練り圧延加工、複合積層加工
社内検定型の職種・作業(1職種3作業)
社内検定型の職種・作業は、他の技能実習生受け入れ職種とは異なり、ミャンマーの運輸・通信省航空局からの支援を受けて追加認定された少し特殊なものです。
・空港グランドハンドリング:航空機地上支援作業・航空貨物取扱作業、客室清掃作業
移行できない職種・作業
上記の職種は、号を移行することによって2年ずつの滞在期間が追加されるため、技能実習生は最大5年間の滞在が可能です。
しかし、以下の職種・作業は2号から3号への移行ができず、滞在期間は最大でも3年となります。
・築炉
・農産物漬物製造業
・医療・福祉施設給食製造
・紡績運転
・織布運転
・カーペット製造
・グラビア印刷
・リネンサプライ
・空港グランハンドリング(客室清掃作業)
・宿泊
・棒受網漁業
また、移行対象職種・作業に該当しない仕事であっても、開発途上地域等への技能移転や経済発展に寄与する技能であれば、技能実習1号の在留資格が認められる場合があります。
この場合、号の移行ができないので滞在期間は最大1年間です。
技能実習生の号移行の流れ
最後に、移行対象職種で技能実習生の号移行をする際の流れをご紹介します。
技能実習生就労後の手続き
技能実習生を受け入れる際、実習実施者は外国人技能実習機構(OTIT)へ計画認定を申請します。
その後、出入国管理局に在留資格の申請をして許可が下りると技能実習生が日本に入国できるようになり、雇用(実習)を開始します。
この際の在留資格は「技能実習1号」で、滞在できる期間は最大1年。
それ以上の期間をかけて教育する場合には、以下で解説する号移行の手続きが必要です。
技能実習1~2号移行の条件と流れ
技能実習1号から2号に移行する条件は、以下の4点です。
- 技能実習1号と同一の機関で、同一の技術等について実習が行われること
※同一の実習実施機関で実習ができない場合は除く - 技能実習計画に基づき、さらに実践的な技能等を修得しようとするものであること
- 所定の技能評価試験(技能検定基礎級相当)の学科試験及び実技試験に
合格した者であること - 移行対象職種は省令で定められた職種、作業であること
続いて、手続きは以下の流れで行います。
- 技能検定2級の受験:入国後8か月目を目安に、2号移行試験(学科・実技)を受験する
- 結果の通知:試験に合格すると、2号移行の条件を満たしたことになる
- 2号技能実習計画認定の申請:実習生の入国後6~7ヶ月目を目安に「2号技能実習」の
計画書を準備し、OTITに提出する - 認定通知書の交付:OTITが計画を認定すると、認定通知書が交付される
(審査は3週間~2ヶ月程度が目安) - 在留資格変更の申請:管轄の入国管理局に、1号から2号への在留資格変更の申請を行う
技能実習2~3号移行の条件と流れ
技能実習2号から3号に移行する条件は、以下の5点です。
- 移行対象職種は省令で定められた3号移行可能な職種、作業であること
- 3年間の実習終了後(2号修了後)、1ヶ月以上1年未満の一時帰国を行うこと
- 所定の技能評価試験(技能検定3級)の実技試験に合格した者であること
- 過去に技能実習3号を利用したことがないこと
- 主務省令で定められた優良基準に適合していると認められた監理団体および実習実施者であること
続いて、手続きは以下の流れで行います。
- 技能検定3級の受験:在留期限の2~3ヶ月前を目安に、技能検定3級または専門級の試験を受験する
- 結果の通知:試験に合格すると、3号移行の条件を満たしたことになる
- 2号技能実習計画認定の申請:「3号技能実習」の計画書を準備し、OTITに提出する。
- 認定通知書の交付:OTITが計画を認定すると、認定通知書が交付される
(審査は3週間~2ヶ月程度が目安) - 一時帰国:3年目の実習終了後、1か月以上1年未満の一時帰国を行う
- 在留資格変更の申請/交付:管轄の入国管理局に、2号から3号への在留資格変更の申請を行う。一時帰国が3ヶ月以上になる場合、在留資格の新規交付手続きとなる
まとめ
技能実習生の職種(移行対象職種)は80種類以上が認定されていて、かなり幅広い分野で技能実習生の受け入れが可能です。
移行対象職種以外であっても、号移行が必要ない1年以内の実習であれば技能実習生を受け入れられる可能性があります。
国際貢献の一環として、技能実習生の受け入れを検討してみてはいかがでしょうか。