現在(2018年末時点)、日本に住む在留外国人は256万1,848人で、過去最高の数字となっています。(※)そのうち、在留資格「技術・人文知識・国際業務」を取得している外国人の数は18万9,273人で、前年比17.5%アップと大幅に増加しています。
そんな「技術・人文知識・国際業務」とはどのような在留資格なのでしょうか。ここでは、技術・人文知識・国際業務それぞれに該当する業務と職種、また申請に必要な手続きについて紹介します。外国人の採用を考えている採用担当の方は、ぜひ参考にしてください。
※ 法務省ホームページより参照
在留資格「技術・人文知識・国際業務」とは
「技術・人文知識・国際業務」は、日本で外国人が自然科学や人文科学の知識が求められる仕事に就く場合に取得できる在留資格です。以前は「技術」と「人文知識・国際業務」に分けられていましたが、2015年の入管法改正により区分が廃止されました。
日本で働く外国人には在留資格(就労ビザ)が必要
外国人が日本で働くにはビザが必要です。そのうち、特に就労を目的としたものをまとめて就労ビザといい、2019年7月現在17種類に分類されます。
17種類の就労ビザのうち、会社(または個人事業主)が外国人従業員を雇用する場合に最も多いものが「技術・人文知識・国際業務」です。その頭文字をとって「技人国」と呼ばれることもあります。
技術とは
日本の会社と契約し技術系の専門職に従事する場合には、在留資格「技術」に該当するとみなされます。具体的な業務や職種を紹介します。
該当する業務
入管法によると、「技術」に該当する業務は「公私の機関との契約に基づいて行う理学、工学その他の自然科学の分野に属する技術または知識を要する業務に従事する活動」と定義されています(※)。
該当する職種
「技術」に該当する具体的な職種としては以下が挙げられます。
■システムエンジニア
■技術開発
■建築系エンジニア
■プログラマー
■設計
人文知識とは
「人文知識」とは、人文科学の分野の知識を必要とする在留資格です。「技術」は理系であるのに対し、「人文知識」は文系分野の知識となります。
該当する業務
人文知識とは、入管法では「法律学・経済学・社会学その他の人文科学の分野に属する技術者もしくは知識を要する業務」と定義されています(※)。
該当する職種
人文知識に該当する具体的な職種としては、以下の例が挙げられます。
■総務
■経理
■マーケティング
■企画
■生産管理
■品質管理
国際業務とは?
国際業務とは、外国人が外国で培った素養を使って働く在留資格のことです。
該当する業務
入管法によると、国際業務は「外国の文化に基盤を有する思考又は感受性を必要とする業務」と定義されています(※)。
該当する職種
国際業務に該当する具体的な職種としては、以下の例が挙げられます。
■翻訳
■通訳
■語学教師
■広報
■宣伝
■海外取引業務
■服飾またはインテリアデザイン
■商品開発
申請の条件
在留資格「技術・人文知識・国際業務」を取得するには、以下のいずれかに該当する必要があります。
「技術」「人文知識」
一 申請人が自然科学又は人文科学の分野に属する技術又は知識を必要とする業務に従事しようとする場合は、従事しようとする業務について、次のいずれかに該当し、これに必要な技術又は知識を修得していること。ただし、申請人が情報処理に関する技術又は知識を要する業務に従事しようとする場合で、法務大臣が告示をもって定める情報処理技術に関する試験に合格し又は法務大臣が告示をもって定める情報処理技術に関する資格を有しているときは、この限りでない。
イ 当該技術若しくは知識に関連する科目を専攻して大学を卒業し、又はこれと同等以上の教育を受けたこと。
ロ 当該技術又は知識に関連する科目を専攻して本邦の専修学校の専門課程を修了(当該修了に関し法務大臣が告示をもって定める要件に該当する場合に限る。)したこと。
ハ 十年以上の実務経験(大学、高等専門学校、高等学校、中等教育学校の後期課程又は専修学校の専門課程において当該技術又は知識に関連する科目を専攻した期間を含む。)を有すること。
※技術の専門知識一覧
数理科学、物理化学、化学、生物科学、人類学、地質科学、地理学、地球物理学、科学教育、統計学、情報学、核科学、基礎工学、応用物理学、機械工学、電気工学、電子工学、情報工学、土木工学、建築学、金属工学、応用化学、資源開発工学、造船学、計測・制御工学、化学工学、航空宇宙工学、原子力工学、経営工学、農学、農芸科学、林学、水産学、農業経済学、農業工学、畜産学、獣医学、蚕糸学、家政学、地域農学、農業総合科学、生理科学、病理科学、内科系科学、外科系科学、社会医学、歯科学、薬科学
※人文知識の専門知識
語学、文学、哲学、教育学、体育学、心理学、社会学、歴史学、地域研究、基礎法学、公法学、国際関係法学、民事法学、刑事法学、社会法学、政治学、経済理論、経済政策、国際経済、経済史、財政学、金融論、商学、経営学、会計学、経営統計学
「国際業務」
申請人が外国の文化に基盤を有する思考又は感受性を必要とする業務に従事しようとする場合は、次のいずれにも該当していること。
イ 翻訳、通訳、語学の指導、広報、宣伝又は海外取引業務、服飾若しくは室内装飾に係るデザイン、商品開発その他これらに類似する業務に従事すること。
ロ 従事しようとする業務に関連する業務について三年以上の実務経験を有すること。ただし、大学を卒業した者が翻訳、通訳又は語学の指導に係る業務に従事する場合は、この限りでない。
就労ビザについて知っておくべきこと
外国人を雇用する上で必要な「就労ビザ」ですが、2019年7月時点で就労できる在留資格は17種類あり、外交ビザ、公用ビザを含めると全19種類にもなります。
これらの就労ビザを適切に申請するために、知っておくべきことを紹介します。
日本にいる外国人を採用する際の手続き
日本にいる外国人を採用する場合、その外国人はすでに在留資格を取得しているはずです。まずは在留資格の種類と有効期限を確認し、在留資格変更申請が必要かどうかを判断しなければなりません。
必要書類
在留資格変更許可申請を行うには、以下の書類を管轄する地方入国管理官署に提出します。申請には約2週間から1か月かかります。
■在留資格変更申請書(法務省ホームページよりダウンロード)
■写真1枚(縦40×横30mm、申請前3ヶ月以内に撮影されたもの。写真の裏面に氏名を記入し、申請書に添付して提出)
■日本での活動内容に応じた資料(会社によって4つの種類に分けられ、それぞれ提出書類が異なる。詳細は法務省ホームページにて確認可能。)
■在留カード
■資格外活動許可書を提示(同許可書の交付を受けている者のみ)
■旅券又は在留資格証明書を提示(旅券又は在留資格証明書を提示することができないときはその理由を記載した理由書)
■手数料4,000円(収入印紙で納付)
■身分を証する文書等の提示(申請取次者が申請を提出する場合)
外国にいる外国人を採用する際の手続き
一般的に、外国人が来日する場合は、企業側が先に入国管理局に在留資格の認定を申請(在留資格認定証明書交付申請)し、認定が認められたら外国人を呼び寄せる方法をとります。これにより、その外国人の在留目的が在留資格に合致していることが入国前に証明されるので、上陸後に不許可となることもなくスムーズに手続きできます。
認定が認められた時に発行されるのが「在留資格認定証明書」です。これには3か月の有効期限があり、交付から3か月以内に入国しないと失効してしまいます。
必要な書類
在留資格認定証明書交付申請の際は、以下の書類を職場の地方入国管理官署の窓口に提出します。申請処理期間は約1~3ヶ月とされています。
■在留資格認定証明書交付申請書
■写真2枚(縦40×横30mm、申請前3ヶ月以内に撮影されたもの。1葉は申請書に貼付、1葉は裏面に氏名を記入した上で提出)
■返信用封筒1枚(定型封筒に宛先を明記の上、392円分の切手(簡易書留用)を貼付したもの)
■専門学校の卒業証明書(専門学校を卒業し、専門士または高度専門士の称号を付与された者の場合)1通
■日本での活動内容に応じた資料(会社によって4つの種類に分けられ、それぞれ提出書類が異なる。詳細は法務省ホームページにて確認可能。)
■身元保証書…入管法別表第二で定められている在留資格に該当する人のみ。日本語版・英語版の2種類を提出
■質問書…日本人の配偶者、永住者の配偶者、日系人の配偶者の場合
■申立書…演劇・演芸・歌謡・舞踊または、演奏の興行に関わる活動に携わる場合
■外国人患者に係る受入れ証明書(入院で日本に滞在する予定の場合)
転職時に注意すべきこと
就労ビザは在留資格の規定しているカテゴリーでのみ有効です。そのため、日本の他の企業で働いている人を転職などで雇用する場合、仕事の内容が大きく異なる場合は在留資格を変更する必要があります
例えば、エンジニアとして働いていた外国人が翻訳者に転職する場合、「技術」から「国際業務」へ在留資格を変更します。
配偶者や子どもの扱いは?
就労ビザを取得した外国人の配偶者や子どもにも在留資格は認められます。制限はありますが、働くことも可能です。
ここでは、就労ビザを取得した外国人の配偶者や子どもの就労について解説します。
配偶者や子どもは家族滞在ビザ
日本で就労している外国人の配偶者や子どもは、「家族滞在ビザ」によって日本国内で生活することができます。ただし、両親や兄弟姉妹は「家族滞在ビザ」では滞在することができません。
資格外活動許可で週28時間のアルバイトが可能
「家族滞在ビザ」だけでは就労することはできません。家族滞在ビザとは別に「資格外活動許可」を得ることができれば、週28時間以内のアルバイトが認められます。
在留可能期間は4種類
在留期間は就労ビザの在留資格によって異なります。「技術・人文知識・国際業務」では、5年、3年、1年又は3ヶ月という4種類の期間が定められています。
特定技能との違いは?
2019年4月から新設された「特定技能1号」「特定技能2号」という在留資格は、就労ビザとは要件が異なります。特定技能とこれまでの就労ビザはどう違うのでしょうか。
学歴での条件がない
就労ビザの要件には学歴の項目もありますが、特定技能1号・2号とも、学歴に関する条件は不要です。また、実務経験も必要ありません。
特定技能1号は最長5年間(更新不可)、家族帯同不可
就労ビザと特定技能の最長在留期間は、どちらも5年です。
ただし、就労ビザでは在留期間を更新できますが、特定技能1号では更新することができません。そのため、特定技能1号の人は在留期間が満了すると帰国しなければなりません。
また、就労ビザと特定技能2号は「家族滞在ビザ」で配偶者や子どもを呼び寄せることが可能ですが、特定技能1号では認められていません。
2号は更新可能だが、建設業・造船に制限
特定技能1号の在留期間の更新はできませんが、特定技能2号であれば更新可能です。しかし、特定技能1号が14業種あるのに対し、特定技能2号は建築業と造船・舶用工業の2種類に制限されています。
申請=必ず許可ではない!不許可事例紹介
就労ビザは、申請すれば必ず許可されるという訳ではありません。不許可になる事例もあります。
ここからは、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を適切に申請するポイントを紹介します。
在留資格(ビザ)に該当性がない
まず、仕事内容が技術・人文知識・国際業務の業務に該当していなければ、在留資格を取得することができません。外国人を雇用する際は、企業の職種や業務がどの在留資格に該当するか確認する必要があります。
人材と業務内容の専門性が不一致
技術・人文知識・国際業務の在留資格を取得する外国人は、大学もしくは日本の専門学校で「在留資格に関連した知識」を習得していなければなりません。大学や日本の専門学校で学んだことと従事する職務内容が違えば、不許可になる可能性が高くなります。
企業に問題がある場合
外国人を雇用する場合、同じ業務内容であれば日本人と同等以上の報酬を払わなければなりません。
また、雇用する外国人が行う業務が雇用側にとって必要なものでなければなりません。つまり、何のために外国人を雇用するのか分からない場合もNGとなります。
外国人自身に問題がある場合
日本に在留している外国人を雇用する場合、在留中の素行も審査の対象となります。入国管理局にはこれまでの在留状況がすべて記録されています。過去に入管法違反を犯していたり、過去の在留中に犯罪を働いたりしていれば不許可になる可能性が高くなります。
工場のライン作業や建設業の単純労働である
技術・人文知識・国際業務の在留資格を取得する人は、技術や知識などの「専門性が必要な労働」を行わなければなりません。工場のライン作業や建築業といった単純業務は、「技術・人文知識・国際業務」とは認められません。
まとめ
在留資格「技術・人文知識・国際業務」を取得するには、知識と業務との関連性や企業側の条件など様々な基準を満たす必要があります。
また、日本に在留している外国人を雇用する場合と、外国より招聘して雇用する場合では申請方法が異なります。外国人を雇用する際には、これらの条件をよく確認し、適切に申請しましょう。