特定技能評価試験とは?技能試験や日本語試験についても紹介

入管法の改正により、2019年4月から在留資格「特定技能」が新設されました。「特定技能」は14分野で新しく認められた在留資格で、これによる2019年から2024年までの受け入れ人数は34万5,150人にも上ると見込まれています。

ただし、「特定技能」を取得するには「特定技能評価試験」を受けなければなりません。ここでは、「特定技能評価試験」とは具体的にどんな試験で、どんなレベルであれば合格するのかをご紹介いたします。在留資格「特定技能」での外国人雇用を考えている採用担当者の方は、ぜひ参考にご覧ください。

特定技能評価試験とは

在留資格「特定技能」は14分野の産業に認められています。法務省によると、対象としているのは「一定の専門性・技能を有し、即戦力となる外国人材」です。
つまり、学歴・実務経験は問われていませんが、雇用された後に特に教育を受けなくても即戦力として働ける能力を持っている必要があるということになります。これを判断するための試験が「特定技能評価試験」です。

技能試験と日本語試験を併せての呼び方

「特定技能」の在留資格を取得するには、「技能試験」と「日本語試験」の両方に合格する必要があります。この2種類を併せて「特定技能評価試験」と呼んでいます。

在留資格「特定技能1号」を取得するための要件

特定技能には「特定技能1号」と「特定技能2号」の2種類があります。まず、「特定技能1号」を取得するための要件は以下の通りです。

■18歳以上であること
■健康状態が良好であること
■特定技能1号で従事しようとする業務(14業種)における知識・技術を有していることが、技能試験で証明されていること
■日本で生活に必要な日本語能力を有していることが日本語検定で証明されていること
■特定技能1号で通算5年以上在留していないこと
■本人及び本人の親族が、保証金の徴収や財産の管理、違約金契約を締結されていないこと

技能実習2号を修了していれば特定技能試験を免除

平成30年に閣議決定された「骨太の方針2018(経済財政運営と改革の基本方針 2018)」によると、「技能実習(3年)を修了した者については、上記試験等を免除し、必要な技能水準及び日本語能力水準を満たしているものとする」とされています。つまり、技能実習2号を修了している人は必要な技能水準及び日本語能力水準を満たしているものとみなされ、「特定技能1号」へ移行できるということになります。
しかし、新設制度であるため、日本に在留したまま申請ができるのかどうかなどはまだ明確になっていません。

ベトナムやフィリピンなどでも実施

特定技能評価試験は2019年よりすでに実施されていて、日本語試験はフィリピンやベトナムなど国外でも実施されました。業種ごとに実施国が異なりますが、技能試験に関してもフィリピンやベトナム、中国やインドネシアなどで実施することが予定されています。
分野ごとの実施予定国は以下の通りです。

14分野共通(国際交流基金日本語基礎テスト):フィリピン、ベトナム
介護:フィリピン、ベトナム
ビルクリーニング:ベトナム
製造:ベトナム、中国、フィリピン、インドネシア、タイ
建設:ベトナム、フィリピン
造船・船用工業:中国
自動車整備:ベトナム、フィリピン
航空:フィリピン(航空グランドハンドリング)、モンゴル(航空機整備)
宿泊:ベトナム、ミャンマー
農業:中国、ベトナム、フィリピン、インドネシア、カンボジア、タイ、ミャンマー
漁業:ベトナム、中国、フィリピン(養殖業)、インドネシア(漁業)
飲食料品製造業:中国、ベトナム等の5ヶ国
外食業:ベトナム

出典:法務省ホームページ特定技能評価試験

技能試験について

技能試験は、特定技能として働く分野で即戦力として働くことができるかを見極めるための試験です。どのような要領に基づいて行われているのか紹介いたします。

学科試験および実技試験の実施が原則

業種ごとに試験内容が異なりますが、学科試験および実技試験の実施が原則とされています。

試験問題等は各業種所管の省庁が管轄

技能試験は各業種所管の省庁が管轄しています。管轄は以下の通りです。

厚生労働省…介護、ビルクリーニング
経済産業省…素形材産業、産業機械製造業、電気・電子情報関連産業
国土交通省…建設、造船・舶用工業、自動車整備、航空、宿泊
農林水産省…農業、漁業、飲食料品製造業、外食業

業種ごとに試験内容が異なる

技術試験の名称や試験内容は業種ごとに異なります。詳しい試験内容については関係する業種を管轄する省庁のホームページで確認してください。

それぞれの業種の試験日程や申し込み時期は?

技能試験の試験日程や申し込み時期は、業種によって異なります。2019年7月時点で、決定・予定されている試験日程について紹介します。

介護・外食・宿泊の3分野の試験開始は2019年4月

2019年4月より、介護・外食・宿泊の3分野の技能試験は開始されています。2019年4月時点で分かっている内容をご紹介します。

(介護)
■技能試験名称:介護技能評価試験
■受験費用:1,000円程度
■試験言語:現地語
■試験時間:60分
■問題出題数:45問
■合格基準:次の全てを満たす場合(得点合計が満点の60%以上・0点となった試験課題がない・すべての評価項目を実施している)
■試験結果:試験後1か月以内を目途にEメールでスコアレポート
詳細:厚生労働省ホームページ

(外食)
■技能試験名称:外食業技能測定試験
■実施言語:日本語を基本とし、一部問題については試験実施国の現地語
■試験問題:45問
■試験時間:90分
■受験費用:7,000円
■合格基準:満点の65%以上
■試験結果:ウェブサイトで公表
詳細:一般社団法人外国人食品産業技能評価機構

(宿泊)
■技能試験名称:宿泊業技能測定試験
■受験費用:2,000円
■試験問題:筆記30問(60分)、実技3問(5分程度)
■合格基準:65%を基準
■試験結果:ウェブサイトで公表
詳細:一般社団法人宿泊技能試験センター

飲食料品製造業の試験開始は2019年10月

介護・外食・宿泊の次に試験開始が早いのは飲食料品製造業で、2019年10月を予定しています。

■技能試験名称:飲食料品製造業技能測定試験
■開催場所:国内は未定(技能試験は2019年10月以降)・国外は中国・ベトナムなど5か国で実施予定(技能試験は2019年10月実施予定)
■実施言語:現地語
詳細:農林水産省ホームページ

ビルクリーニング業の試験開始は2019年秋以降

ビルクリーニング業の試験については、2019年秋以降の開始が発表されています。

■技能試験名称:ビルクリーニング分野特定技能1号評価試験
■開催場所:国内は未定(技能試験は2019年秋以降に実施)、国外はベトナム。他は検討中(技能試験は2019年秋以降に実施予定)
■実施方法:実技試験
■実施言語:日本語
■実施回数:年に1~2回実施予定
詳細:公益社団法人ビルメンテナンス協会

残りの9業種は2020年3月までの予定

2019年7月段階で試験の概要が発表されているのは5業種のみで、残りの9業種については今後順次発表されます。詳細はそれぞれ該当する業種の省庁のホームページに掲載されます。

詳細は法務省ホームページ特定技能評価試験を参照してください。

日本語試験について

日本語の能力については「国際交流基金日本語基礎テスト」「日本語能力試験」のどちらかで判定されます。介護分野の場合はこの2つの日本語試験とは別に、「介護日本語評価試験」も必要となります。

国際交流基金日本語基礎テスト

国際交流基金日本語基礎テストは、外国人労働者が来日後生活をしていく上で必要な言語能力を測定するものです。ある程度の日常会話が日本語でできるかどうか、生活に差し支えのない程度の能力があるかを判定します。合格すると「特定技能」に必要なA2レベルが取得できます。

日本語能力レベルA2とは?

・ごく基本的な個人的情報や家族情報、買い物、近所、仕事など、直接的関係がある領域に関する、よく使われる文や表現が理解できる
・簡単で日常的な範囲なら、身近で日常の事柄についての情報交換に応ずることができる
・自分の背景や身の回りの状況や、直接的な必要性のある領域の事柄を簡単な言葉で説明できる。

独立行政法人国際交流基金ホームページより引用

試験概要・評価方法

試験名称:国際交流基金日本語基礎テスト
実施方法:コンピュータ・ベースト・テスティング方式
試験の構成:「文字と語彙」「会話と表現」「聴解」「読解」の4セクションで約60問、60分
試験の回数:実施回数は年度あたり5回
詳細:独立行政法人国際交流基金

日本語能力試験

日本語能力試験は日本国内外で実施されており、30年の歴史がある試験です。特定技能以外の就労ビザ取得にも採用されています。
5つのレベル(N1、N2、N3、N4、N5)があり、数字が小さいほど高難易度です。一般的には、「特定技能」を取得するにはN4レベルが必要とされていますが、業種によってはそのレベルまで求められない場合もあります

N4のレベルとは?

N4は、「基本的な語彙や漢字を使って書かれた日常生活でも身近な文章を、読んで理解できる」「日常的な会話でややゆっくりと話される日本語であれば、ほぼ聞いて理解できる」(※)というレベルです。

試験名称:日本語能力試験
実施方法:マークシート方式
実施会場と実施回数:国内外で実施。国外で80か所、地域239都市で年に1~2回実施(地域によって異なる)
詳細:日本語能力試験公式ウェブサイト

日本語能力検定N1~N5の基準より引用

介護分野の場合は介護日本語評価試験も必要

特定技能の介護分野を取得する場合は、日本語能力検定N4もしくは日本語試験に加え、「介護日本語評価試験」にも合格する必要があります。介護に関する内容や介護をする上で最低限必要な日本語の評価が行われます。

試験名称:介護日本語評価試験
実施言語:日本語(指示文は現地語)
実施回数:2019年度は国内外で5~6回
国外試験:フィリピン、ベトナムなど9ヵ国を予定
受験料:1,000円程度
詳細:厚生労働省

まとめ

特定技能の在留資格取得には、特定技能評価試験と呼ばれる技能試験と日本語能力試験の両方に合格しなければなりません。(介護分野は介護日本語評価試験も必要)
詳細がまだ決定していない分野も多いですが、2020年3月までには14業種すべての技能試験が実施される予定です。今後「特定技能」での採用を考えている採用担当者の方は、採用する業種に必要な試験の詳細を該当する省庁のホームページでこまめに確認しておきましょう。

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