
インターネットの発達や、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、リモートワークが注目されています。
ネット環境さえ整っていれば、海外在住の人材にリモートで仕事をしてもらうことも可能になりました。
しかしそこで心配になるのが、就労ビザについてです。
今回は、リモートワーカーには就労ビザが必要なのかどうか、ケース別に解説していきます。
この記事の目次
海外在住リモートワークに就労ビザは必要?
結論から言うと、海外在住のリモートワーカーに就労ビザが必要かどうかは、居住地の法律・仕事内容・取引先などによって異なります。
そのため、全ての例をここではご紹介しきれませんが、主な3つのケースについて解説していきます。
(1)海外在住の日本人を雇用する場合
日本人が海外で働いて暮らすためには、基本的には居住地の就労ビザが必要です。
しかし、海外拠点のない日本企業と契約する場合、ビザの申請を出しても通るかどうかは海外側の法律や審査基準によって異なります。
また、職種によっては就労ビザ自体が不要というケースもあるため、個々の条件ごとにビザの要不要を確認しましょう。
ただし、雇用する日本人が、外国で働く家族の帯同ビザ・外国人の配偶者ビザ・外国の永住権など就労可能な在留資格を持っていれば、改めて就労ビザの申請は不要ということも。
日本ではなく海外の就労ビザの場合、国や地域によって制度がまちまちなので、一概に言うことはできないのです。
(2)海外在住の外国人を雇用する場合
日本が発給する就労ビザは、原則的に「外国人が日本に入国・在住する場合」に必要になるものです。
そのため、来日する予定がない外国人リモートワーカーなら、就労ビザは不要ということになります。
税金に関しても、役員報酬以外の給与は源泉徴収は不要です。
ただし、一度日本に住んだことがある外国人が、日本に住所を残したまま母国に帰国してリモートワークを行う場合、日本の「居住者」ということになるので扱いが変わります。
居住者の給与は、発生したとき海外にいたとしても日本の課税対象なので、源泉徴収が必要です。
(3)国内在住の外国人を雇用する場合
外国人が、日本に入国して日本企業の仕事に従事する場合には、リモートワークか否かに関わらず就労ビザが必要です。
手続き方法やビザの種別は、仕事内容が同じなら、会社に出社して働く場合と変わりありません。
税金に関しても、日本国内に住所があれば日本人の社員と同じように課税されます。
海外ではリモートワーク向けビザも登場
新型コロナウイルスの影響から、リモートワークの需要が増加。
自宅の狭い部屋ではなく、開放的な環境でリモートワークをしたいというニーズが出てきました。
そのため、バルバドスやバミューダなどのリゾート地を中心に、リモートワーク向けのビザを発給する国や地域が登場しています。
このようなビザや短期居住プログラムを利用すれば、最大で1年ほどの期間、海外に居住しながらリモートワークが可能です。
参照:https://www.businessinsider.jp/post-221473
海外在住リモートワーカー雇用のメリット
それでは、海外在住のリモートワーカーを雇用するメリットについてお伝えしていきます。
海外の優秀な人材を雇用しやすい
リモートワークが前提の雇用なら、会社からの距離を考慮せずに人材を採用できます。
そのため、採用の間口が広がって、優秀な人材を確保しやすくなるのが第一のメリット。
また、配偶者の転勤などで海外移住する日本人社員がいる場合も、リモートワーク雇用に切り替えれば手放さずに済みます。
通勤時間・各種手当の削減
完全リモートワークなら、通勤時間と交通費が必要ありません。
海外から呼び寄せる予定の人材は、リモートワークなら来日する必要がなくなるため、飛行機代やビザ発給にかかる費用、住宅手当てなども不要になります。
社員の働きやすさを確保できる
自宅で働くリモートワークなら、通勤時間が不要になるため自由に使える時間が増えます。
さらに、休憩時間に家事をしたり、家族とコミュニケーションを取ることが可能で、出社必須の仕事よりもかなり働きやすくなるでしょう。
さらに元々海外在住の人材なら、居住地にいる家族や友人・知人と離れずにすむというメリットもあります。
海外の情報が入ってくる
海外在住のリモートワーカーがいれば、海外の文化やトレンド、最新技術など、海外の情報を素早くキャッチすることが可能。
日本国内では得づらい情報が入ることで、アイデアやビジネスチャンスが広がります。
時差を利用した無休経営も可能
日本と海外の時差を利用できるのも大きなポイント。
例えば、日本の昼間に指示を出し、夜の間に海外で作業を進めてもらって、翌日の昼にチェックする、といった仕事の進め方が可能になります。
無休やそれに近い経営ができることで、時間を効率的に使って、スピーディーに仕事を進められるというメリットもあります。
海外在住リモートワーカー雇用の注意点
海外在住のリモートワーカー雇用には、メリットが多い反面、注意点も。
法律に違反してしまったり、コミュニケーションの問題が起きないよう、気をつける必要があります。
居住地のビザ・税金などに関する法律を確認
先にもお伝えしましたが、海外から日本企業の仕事をリモートワークで行う際、居住地で就労ビザを取得する必要がある場合があります。
また、税金・年金・保険などの制度も、国や地域によって様々です。
海外在住のリモートワーカーを雇用する場合には、居住地の法律に違反することがないよう、しっかりルールを確認するようにしましょう。
ネット環境の整備
多くの国でインターネットが一般的に使える時代になっていますが、必ずしも日本と同じ水準の回線が整備されているとは限りません。
また、場所によっては、回線自体に問題がなくてもラグが生じてしまうこともあります。
特に、リモートワーカーの在住場所が先進国でない場合は、注意が必要です。
就労規定・評価基準の確認
出社の必要がなく、さらに時差もある海外在住リモートワーカーは、勤務時間の把握が難しいです。
そのため、評価基準は成果物になることが多いですが、それでは成果に繋がらなかった仕事や、他の人のアシストをした仕事が評価に繋がりづらいという側面も。
海外在住のリモートワーカーを雇用する際には、仕事内容や貢献度を平等に評価できるよう、新たな基準や就労規定を定める必要があるでしょう。
時差の把握と調整
日本と海外で、時差を利用して効率的に仕事を進められるのはメリットですが、逆に時差のせいでスムーズに連携が取れないケースも考えられます。
完全に稼働時間が被っていない国同士だと、些細な確認にも時間がかかってしまい、効率が悪いということも。
ミーティングの時間や仕事の締め切り時間などは、日本と海外どちらの時間を基準に設定するのかや、負担なく稼働可能な時間帯かどうかも把握しておきましょう。
コミュニケーションの取り方も工夫が必要
海外在住のリモートワーカーとの連絡は、基本的にメールやチャット、ビデオ通話などになります。
実際に顔を合わせないこれらのツールでは、表情や言葉のニュアンスが伝わりにくいです。
言語の壁もある外国人の場合、さらにコミュニケーションが難しくなります。
外国人リモートワーカーとのコミュニケーションは、なるべく平易な言葉でゆっくり話すよう心がけたり、節目ごとに理解度を確認したりといった工夫を取り入れましょう。
海外在住リモートワーカーへの報酬の支払い方
リモートワーカーへの報酬の支払い方法は、以下の3つが考えられます。
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- 個人口座に送金
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- 現金を送金
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- 電子マネーで送金
銀行口座や、現金の海外送金サービスを用いる場合、送金には毎回手数料がかかります。
電子マネーでの送金はスピーディーかつ送金手数料も安いですが、現金に換金する手間や、換金時の手数料がかかることも考慮に入れましょう。
継続的にかかっていくコストなので、なるべく安いサービスを見つけるのがおすすめです。
まとめ
リモートワーカーの就労ビザは、居住する国・地域によってルールが異なります。
海外在住のリモートワーカー雇用を考えている場合には、まず国ごとの法律を確認しましょう。
また、実際に顔を合わせることがないため、評価基準やコミュニケーション方法にも工夫が必要です。
とはいえ、企業・従業員の双方にメリットが多い勤務方法なので、海外在住リモートワーカーの採用を積極的に検討してみてはいかがでしょうか。