【2021年】有効求人倍率はどう変化する?コロナショックで動く採用市場

少子高齢化により、2019年まで上昇傾向だった有効求人倍率ですが、新型コロナウイルスの影響によって2020〜2021年は下降しています。

今回は、有効求人倍率の定義や仕組み、コロナ禍中での変化などについて解説。

2020年、新型コロナの影響で起こった採用動向の変化や、2021年の見通しについてもお伝えします。

有効求人倍率とは

有効求人倍率とは、公共職業安定所(ハローワーク)が毎月調査・発表している数値
雇用動向を示す重要指標のひとつで、景気とほぼ一致して動くため、景気動向指数の一致指数にもなっています。

まずは、有効求人倍率の意味や動き方の基礎知識について解説していきます。

有効求人倍率とは「1人当たりの求人数」

有効求人倍率は、企業からの求人数(有効求人数)を、公共職業安定所(ハローワーク)に登録している求職者(有効求職者数)で割った値のことです。
仮に、100人の求職者に対して100件の求人があれば、1人あたり1件の仕事があるということになり、有効求人倍率は「1」となります。

有効求人倍率が高いほど、求職者が仕事を見つけやすい「売手市場」、逆に低いほど企業側が人材を選びやすい「買手市場」です。

ちなみに「有効」とは「ハローワークでの求人数や求職者数が有効期間内にある」という意味です。
ハローワークの求人の有効期限は2ヶ月間なので、算出をする時点で実際に求人を出している企業、求職をしている人の動向を知ることができます。

景気が良くなると、高くなる

有効求人倍率は、景気が良くなると高くなります
なぜなら、景気がいいと事業規模を拡大する企業が多くなり、採用活動が活発になるためです。
また、景気がいい時には失業者も減るので、相乗的に有効求人倍率が高くなります。

ただし、有効求人倍率に現れるのはハローワークでの雇用動向のみで、正社員だけではなく非正規雇用の求人も数に含まれるため、完全に景気を反映しているとは言い切れません。

また、少子高齢化の影響により、労働力(求職者)自体の数も減少しているため、仮に有効求人倍率が同じでも、過年度と現在では景気動向は異なります。

20~21年 採用・求人市場の変化

2020年〜2021年は、新型コロナウイルスの感染拡大により、日本経済は未曾有の打撃を受けました。
その影響は、求人市場にも現れています。

コロナ禍による求人数の減少

2020年初めごろまでは、少子高齢化の影響による労働力不足で、有効求人倍率は上昇してきていました。

しかし、新型コロナウイルスの影響で、業績が悪化した企業が採用活動の停止や人員の整理などを行ったため、有効求人倍率は全体的に下降。
2019年12月には全国平均が1.57だった有効求人倍率が、2020年12月には1.06になっています。

採用手法・スケジュールも変化

新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、人同士の接触を減らした新たな採用手法が注目されています。
2021年度卒の新卒採用に関する調査では、81%の学生がweb面接を経験したと回答しました。
面接以外にも、説明会や内定後の研修・フォローをオンライン化している企業も増えています。

また、システムの導入や緊急事態宣言への対応などのため、採用スケジュールを遅らせる企業もありました。

参照:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000091.000029286.html

20~21年 有効求人倍率の変化

ここからは、2020年〜2021年における有効求人倍率の変化についてお伝えします。

中でも、IT業界の求人倍率について詳しく知りたい方は、こちらのページをご覧ください。

求人倍率と内定率

先にもお伝えしたように、現在、新型コロナウイルスの影響で有効求人倍率は下降しています。
過去の不況時との比較や、内定率の変化について見ていきましょう。

有効求人倍率はリーマンショック以上の急降下

過去に日本経済が大きな打撃を受けた出来事といえば、2007年に起こったリーマンショック
この時の有効求人倍率は0.7倍前後で、失業者が増えたため求人数に対する求職者数が非常に多くなりました。

対して2020年、コロナ禍中の有効求人倍率は、1.0倍程度。
倍率自体はそれほど落ち込んでいませんが、短期間で急激に倍率が下がり、降下のスピードはリーマンショック時以上になっています。

21年卒 新卒内定率は男女差がみられる

2020年10月1日時点での、2021年卒の学生の就職内定率は88.7%
採用スケジュールの遅れにより、6月時点では前年同期比13.4%も落ち込んでいましたが、その後は前年と近い水準まで回復してきています。

しかし男女別で見ると、2020年卒の10月時の内定率は男性93.1%、女性94.6%だったのに比べ、2021年卒は男性90.9%、女性86.3%
男性より、女性の内定率の落ち込みが大きくなっています。
これは、航空会社、旅行会社、ブライダル、ファッション業界など、女性人気の高い業界に、新型コロナウイルスの打撃が大きかったことが理由と考えられます。

企業採用動向

次に、企業側から見た採用動向の変化についてお伝えします。

採用活動は全体的に停滞~やや減少

マイナビによる調査では、2020年は求人数・掲載企業数ともに、前年同月比60%ほどとなっています。
新型コロナの影響による業績悪化を受け、採用活動は停滞〜やや減少している企業が多いようです。

中小企業で採用中止の割合が上昇

企業規模別で見ると、中小企業では新卒採用を「中止」または「停止」した企業が21%
大企業に比べて体力のない中小企業では、事業の維持や現在いる人員の確保のために、新規採用を見合わせる割合が多くなっています。

参照:https://www.hrpro.co.jp/research_detail.php?r_no=268

職種・エリアで差が出る採用状況

コロナ禍の中でも、これまで通りの採用を行っているのは「ITエンジニア、webサイト運営」「営業」「設計・施工管理」など。
求人数や応募数が減少しているのは、「接客(ホテル・旅館)」「イベント運営」「接客・販売(飲食)」などで、やはりコロナ禍の影響の強さが採用にも表れています。

エリア別だと、これまで通りなのは「北陸」「甲信越」、採用計画の変更を検討している企業が多いのは「関東」「九州」。
こちらにも、地域別の感染者数や人口密度が影響しています。

2021年の求人・採用動向予測

最後に、2021年の求人・採用動向予測をお伝えします。

中途採用の拡大

2021年は、未経験者や新卒採用よりも、中途採用の拡大が予想されています。
これは、業績悪化の影響により、教育に時間とコストを割く余裕がある企業が減り、即戦力が求められるようになるため。

新卒採用は中止・停止する企業も多い中、中途採用は「変わらない」と答えた企業が半数以上になっています。

参照:https://www.profuture.co.jp/mk/recruit/column/10533

柔軟な働き方に対応

Withコロナ時代の新しい生活様式が求められる中で、リモートワークフレックスタイム制などの柔軟な働き方が注目されるようになりました。

コロナ禍で大手企業の早期退職者募集などを受け、学生アンケート等でも大手=安定ではないとの実感があり、企業規模よりも事業の将来性スキルの向上ワークライフバランスの充実などを重視して求職活動をする人が増えています。

コロナ禍の中でも採用活動を成功させるには、そういった点にも注目する必要があるでしょう。

フレックスタイム制について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。

オンライン採用の拡大

インターネットを用いたオンライン説明会やweb面接は、新型コロナウイルスの感染防止に役立つだけではなく、コストや時間の節約にもなります。
そのため、コロナ禍の中で導入したシステムを今後も利用して、オンライン採用を拡大させていく企業が増えるでしょう。

オンライン採用のノウハウやメリットについて知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

改正される人事関連の法律への対応

2021年4月には、高年齢者雇用安定法が施行されます。
この法律では、

  • 60歳未満の定年禁止
  • 65歳までの雇用確保措置
  • 70歳まで就業機会確保の努力義務

が課せられるため、多くの企業で高年齢者の活用が課題となるでしょう。

また、同じく2021年4月、雇用制度改革の一環として中途採用比率の公表が義務付けられます
新卒一括採用に偏重した慣例を打開するための方策で、特に定められた目標数値などはありませんが、中途採用の積極化が求められています。

まとめ

2020年〜2021年の有効求人倍率は、新型コロナウイルス流行の影響で下降しています。
今後も、感染拡大の度合いや景気動向によって、随時変化していくでしょう。

業績悪化や失業者の増加など、企業・求職者双方に厳しい局面ではありますが、オンライン採用や柔軟な働き方などの新たな施策で、Withコロナ時代の採用を考えていく必要があります。

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