日本で就労している外国人は、日本人同様、様々な理由で退職することがあります。
外国人が退職した場合、就労ビザの扱いは?必要な手続きは?など、多くの疑問がありますよね。
今回は、就労ビザを持つ外国人が退職した場合の手続きや規定を詳しく解説いたします。手続きを怠るとビザ更新に影響を及ぼすこともあるため、しっかりチェックしておきましょう。
この記事の目次
退職したら就労ビザはどうなる?
まずは、日本で就労している外国人が退職した時、就労ビザはどのような扱いになるのかを見ていきましょう。
求職活動を行っていれば一時帰国の必要がない
就労ビザを持つ外国人は、日本に在留する目的が「働くため」なので、退職して無職になるとその資格がなくなってしまったことになります。
しかし、職を失った途端に在留資格がなくなるわけではありません。日本に在留しながら、就労ビザの目的である「働くため」の活動をしていれば在留資格があると見なされます。
具体的には、ハローワークに通うなどの求職活動をしている実態があれば就労ビザは取り消されません。
そのため、退職後も求職活動を行なっていれば、一時帰国をする必要はないのです。
退職後3か月以内に再就職すればOK
2012年7月の入管法改正で、「技術・人文知識・国際業務」「技能」などの就労ビザを持つ外国人が退職すると、「3ヶ月以上本来の活動がない場合」に就労ビザが取り消しになるという内容が加わりました。
つまり、退職後3ヶ月経っても就労を再開していない場合は、就労ビザが取り消されてしまうということ。
逆にいうと、退職後3ヶ月以内に再就職をすれば、前職での就労のために取得したビザをそのまま引き継げます。
ただし、退職後、就職活動中に就労ビザの満了日が来た場合は、就労の実態がないため同じ就労ビザを更新することはできません。
また、再就職ですでに持っている就労ビザの活動範囲外の仕事に就く場合は、在留資格の変更手続きが必要になります。
なお、もし3ヶ月間の間に就職活動が実らなかった場合、会社訪問をしているなど具体的な求職活動をしている実態があれば、就労ビザが取り消しにならないケースもあります。
退職後の就労ビザの手続きは?
それでは、就労ビザを持つ外国人が退職した場合、会社側や本人がどのような手続きをする必要があるのかを解説していきます。
14日以内に退職報告をする
就労ビザを持つ外国人が退職した場合、14日以内に入国管理局に届け出なくてはいけません。
退職報告の届け出は、以下の3つの方法で行うことができます。
- 届出書を窓口に提出
- 届出書を郵送
- インターネットでの手続き
原則として、退職報告は外国人本人が行うものなので、会社側は特に何もする必要はありません。
しかし、外国人はこの手続きを知らない、または忘れてしまうということも多いです。退職時には、会社側から本人に退職の届け出をするよう促した方が親切でしょう。
退職後3か月以内に再就職する
先にもお伝えしましたが、退職後、就労ビザを取り消されたくない場合には3ヶ月以内に再就職する必要があります。
就職活動の実績があれば取り消しまではされませんが、次回の就労ビザ更新時に「3ヶ月以上の無職期間」は不利になってしまいます。
面接で「なぜ無職期間があるのか?」「この期間は何をしていたのか?」などの質問をされることが考えられますので、正当な理由を説明できるよう準備した方がいいでしょう。
日本で継続して働きたいなら、無職期間が3ヶ月以上空かないように調節して退職するのが大切です。
再就職先が決まったら入国管理局に届出を
再就職先が決まったら、退職時と同じように入国管理局に届け出を行います。
再就職の報告手続きの期限は、入社から14日以内。届出をしないと、後のビザの変更・更新手続きに影響することがあるので忘れてはいけない手続きです。
再就職先の業種や職務内容が退職前の仕事と違う場合には、就労ビザの確認・変更手続きが必要になることもあります。
また、就労ビザの期限が3ヶ月以内に迫っている場合には、再就職先で継続して働くために更新手続きをする必要があります。
退職後の就労ビザの注意点は?
最後に、外国人が退職した場合の、就労ビザに関わる様々な注意点を解説していきます。
必ず退職報告を行うこと
繰り返しになりますが、就労ビザを持つ外国人が退職したら、14日以内に入国管理局に届け出なければいけません。この手続きを怠ると、罰則として20万円以下の罰金が課せられる可能性があります。
また、3年・5年など長期の就労ビザは、取得の条件に「入管法上の届出義務を履行している」というものがあります。
退職時の報告手続きも、この「入管法上の届出義務」にあたります。そのため、退職の届け出をしなかった場合は、次回取得できる就労ビザの期間が短縮されてしまう可能性があるのです。
手続き自体はオンラインでもできる簡単な内容ですが、「忘れていた」では済まされない重要な手続きです。外国人本人に日本の法令の知識がない場合は、会社側が手続きをきちんと済ませられるよう促す必要があります。
退職中のアルバイトは不可
退職後の無職期間に生活費を稼ぐためにアルバイトをするというのは、日本人にはよくあることです。
しかし、就労ビザを持つ外国人は、無職期間のアルバイトは原則禁止。なぜなら、外国人は就労ビザの内容によって、就労できる職務内容が定められているためです。
就労ビザで定められている以外の仕事をしてしまうと、資格外活動となって罰則や就労ビザ取り消しの対象になります。例えば、「技術・人文知識・国際業務」ビザで在留している外国人は、コンビニや飲食店での接客、工場のライン作業などの単純労働に就くことはできません。
ただし、自己都合ではなく会社都合での退職の場合は、資格外活動許可を申請することにより資格外のアルバイトが認められるケースも。
また、この場合は3ヶ月以内に再就職先が見つからなくても、求職活動を目的とする在留のために「特定活動」ビザの取得ができる場合もあります。
再就職時の申請を行おう
再就職時の申請も、退職時の申請と同じくらい大切です。なぜなら、退職報告後に再就職の申請をしなければ、ずっと無職期間が続いていることになってしまうため。
また、退職時には原則的に外国人本人が手続きを行いますが、再就職時には会社側が手続きを行うこともあり、再就職手続きを怠ると必ず入国管理局にバレてしまいます。
再就職の報告手続きも、退職報告と同じく「入管法上の届出義務」に含まれるので、再就職時の報告を忘れてしまうと次回に取得できる就労ビザの期間が短くなる可能性も。再就職の報告も、退職報告と同じくらい重要な手続きなのです。
失業保険をチェックしよう
就労ビザを持つ外国人が雇用保険に加入していた期間が12ヶ月以上あれば、日本人と同じように失業保険の給付を受けることができます。
給付を受けるための手続きや、給付金額・期間は、日本人と全く同じ。ハローワークに本人確認書類や、退職時に貰う「雇用保険被保険者離職票」を持参して、手続きを行います。
ちなみに、外国人も日本人と同様、失業保険の給付を受けるには再就職の意思が必要です。そのため、給付手続きと同時に求職のための登録も行います。
ただし、失業期間中に就労ビザの満了日が来ると、在留資格が失われて一時帰国しなければならなくなり、失業保険の給付も打ち切られます。
そういった場合、日本に留まって求職活動を続けるには、「短期滞在」や「特定活動」ビザへの切り替えが必要です。
まとめ
就労ビザを持つ外国人が退職・再就職した場合には、14日以内に入国管理局への報告が必要。外国人本人が行う手続きですが、手続きの存在を知らない人も多いため、届出義務があることを会社が知らせてあげる方がスムーズです。
また、退職後は3ヶ月以内に再就職しないと、就労ビザが取り消されることもあります。
それぞれの手続きと期限を、会社側・外国人本人ともにしっかり把握しておくのが大切です。