接客・介護・工場作業など、様々な分野で注目されているフィリピン人の労働力。
フィリピンは人口に比べて国内の働き口が少なく、海外で働く人が多いです。
そのため、フィリピン人のビザ取得や雇用には、他の外国人にはない独自のルールがあります。
フィリピン人のビザ取得や雇用に関して、必要な手続きやルールを知っていきましょう。
この記事の目次
フィリピン人の来日にビザは必要?
フィリピンは日本が定めるビザ免除国ではありません。そのため、フィリピン人が日本に入国するには、目的・滞在期間を問わずビザの取得が必要です。
まずは、90日以内の滞在で必要な短期ビザや、その取得方法を解説します。
短期で滞在する場合
フィリピン人が日本に90日以内の短期間滞在をする場合、「短期滞在ビザ」が該当します。
フィリピン人が取得できる短期滞在ビザには、次の3種類があります。
- 1次有効の短期滞在ビザ
- 数次有効の短期滞在ビザ(商用目的・文化人・知識人等)
- 数次有効の短期滞在ビザ(一般短期)
1次有効のビザは、日本に1回のみ入国できるビザ。数次有効のビザとは、有効期限内なら何度でも日本に出入りできるビザです。
数次有効の短期滞在ビザは、滞在目的や取得者のカテゴリーによって2種類あります。
数次有効の短期滞在ビザ(商用目的・文化人・知識人等)に該当するのは、
・大企業や日系企業の社員
・過去3年間にビジネス目的で日本やG7への渡航歴がある人
・芸術家・スポーツ選手・士業・教授などで相当程度の業績が認められる人
など。
以前は、この条件はもっと厳しかったのですが、2018年に日本とフィリピンの関係を強化するために緩和されました。
上の条件に該当しない、その他の一般のフィリピン人は一般短期のビザを取得します。
数次有効の短期滞在ビザの有効期限は1年・3年・5年・10年の4種類があり、満期が近づくと延長・更新手続きもできます。
短期滞在ビザの取得方法は2つ
フィリピン人のビザを取得する方法は、以下の2パターンがあります。
・フィリピン人側主体で取得
・日本で協力者を立てて取得
フィリピン人が自分で申請書類などを用意し、短期滞在ビザを取得するには、審査要件となる経済力の保証などは自分自身で行うことになります。
安定的な収入やまとまった貯蓄があり、渡航費用や滞在費用を支払えると証明できるフィリピン人のみ、審査を通過できます。
日本で協力者を立てて取得する場合には、そのフィリピン人を日本に呼び寄せる日本人が、保証人になります。
万が一、フィリピン人が渡航費や滞在費を支払えなくなった場合には保証人が金銭的な負担を担い、申請通りにフィリピン人を来日・帰国させることを保証します。
短期滞在ビザ申請から来日までの流れ
フィリピン人が短期滞在ビザを取得するまでの流れは、以下のようになっています。
フィリピン人側主体で取得する場合
1.申請書類の作成(短期滞在ビザ申請書・経済力の証明など)
2.フィリピン国内の日本大使館・総領事館に提出
3.審査後、ビザ発給
4.3ヶ月以内に来日
日本で協力者を立てて取得する場合
1.日本側で申請書類を作成(短期滞在ビザ申請書・招聘理由書・身元保証書など)
2.完成書類をフィリピンへ郵送
3.フィリピン国内の日本大使館・総領事館に提出
4.審査後、ビザ発給
5.3ヶ月以内に来日
フィリピン人が日本で就労する場合のビザは?
フィリピン人が日本で就労する場合、就職先の職務内容と合致する「就労ビザ」の取得が必要です。
日本で就労できるビザの種類
就労ビザの種類は、以下の16種類。
・教授
・芸術
・宗教
・報道
・経営・管理
・法律・会計業務
・医療
・研究
・教育
・技術・人文知識・国際業務
・企業内転勤
・介護
・興行
・技能
・特定技能
・技能実習
これらの職種別就労ビザと、特に優秀な人材に交付される「高度専門職ビザ」を合わせたものを、一般的に就労ビザと呼びます。
永住権や日本人の配偶者の在留資格にも就労資格がありますが、制度や取得方法が違うので、就労ビザとは別で考えることが多いです。
就労ビザの資格外の仕事に就いてしまうと不法就労になるため、フィリピン人を雇用する際には必ず就労ビザの種類を確認します。
就労ビザの申請から取得までの流れ
来日するフィリピン人の就労ビザ申請は、本人がフィリピン国内で行うケースと、日本に招く日本人が日本国内で行うケースがあります。
フィリピン人本人がビザを申請する場合
1.日本に渡航する計画を立てる
2.就労ビザ申請に必要な書類を用意する
3.フィリピンにある日本大使館・総領事館で審査を受ける
4.審査終了後、旅券を取りに行く
5.就労ビザが交付された場合、3ヶ月以内に日本に渡航する
フィリピン人を招聘する日本人・日本企業が就労ビザを申請する場合
1.フィリピン人を日本に招く計画を立てる
2.地方入国管理局に「在留資格認定証明書」の交付を申請する
3.交付された在留資格認定証明書を、フィリピン人本人に送付する
4.本人が、フィリピンにある日本大使館・総領事館で審査を受ける
5.審査終了後、本人が旅券を取りに行く
6.就労ビザが交付された場合、3ヶ月以内に日本に渡航してもらう
ビザ以外の注意点!フィリピン人雇用の独自ルール
フィリピン人を雇用するには、ビザ以外にも様々なルールがあります。
これは、他の外国人には該当せず、フィリピン人雇用の際のみの独自ルールです。
フィリピン人の採用を考えている方は知っておきましょう。
①雇用は現地エージェントと
一般的に外国人を採用するときは、現地エージェントが仲介する方法と、直接雇用する方法の2種類があります。
ところが、2017年8月の法改正以降、フィリピン人を直接雇用することはできなくなりました。
フィリピン人を雇用する際は、フィリピン海外雇用庁(POEA)認定の現地エージェントを通さなくてはいけない決まりになっています。
フィリピン人は、人口に比べて国内の仕事が少ないため海外就労する人が多いです。
しかし、海外で働くフィリピン人の過酷な労働環境が社会問題になったことから、フィリピン人の適正な雇用を監視するためこのようなルールができました。
②POLO審査・POEA登録とは
フィリピン人を雇用したい日本企業は、POLO審査・POEA登録という手続きを行います。
POEAとは「フィリピン海外雇用庁」のことで、フィリピン人を雇用するにはこのPOEAに認定されている現地エージェントを通す必要があります。
POLOは「フィリピン海外労働局」という、POEAの海外支部のようなもの。各国の企業の経営者と面接を行い、フィリピン人を適切に雇用できる企業かどうかを判断します。
POEA認定の海外エージェントと契約を結んだ後、POLOの審査を受けるための書類を提出し、その審査を通過するとフィリピン人の雇用がスタートできるのです。
③CFOセミナー受講
CFOは「海外居住フィリピン人委員会」のことです。海外で就職や結婚をするフィリピン人を対象に、海外居住について説明や情報交換を行うセミナーを実施しています。
セミナーの内容は、日本の文化や生活の基礎知識、問題に巻き込まれた時の対処法や連絡先、海外渡航や生活のために必要な事務手続きなど。フィリピン人が外国人と結婚して海外移住する場合には、このセミナーの受講が義務付けられています。
セミナー受講済みを証明するステッカーがパスポートに貼られていないと、フィリピンからの出国や日本への入国ができなくなります。
ちなみに、このセミナーが必須なのは海外で結婚する場合のみで、結婚せず就労する場合には特に受講の必要はありません。
フィリピン人のアルバイトでもビザは必要?
フィリピン人が日本でアルバイトをしたい場合は、ビザの他に「資格外活動許可書」が必要になります。
短期滞在ビザではアルバイトを含めた報酬を得る活動が認められていないので、日本国内でアルバイトができるのは「留学ビザ」や「特定活動ビザ」を持つフィリピン人となります。
これらのビザを持つ人が、アルバイトを目的とした資格外活動許可申請を行い受理されると、アルバイト就労ができます。
そのため、フィリピン人をアルバイト採用したい場合には、ビザとともに資格外活動許可書の確認を行いましょう。
もちろん、ビザなしや短期滞在ビザのフィリピン人を採用すると不法就労になるため、絶対に雇ってはいけません。
また、フィリピン人を含む外国人は、アルバイトと正社員では就ける職業の制限範囲が異なります。
レジ打ち・工場のライン作業などの単純作業は、アルバイトはできても正社員として就職することはできないので注意しましょう。
まとめ
日本国内でも見かけることが多いフィリピン人は、ビザの取得や雇用に独自のルールがあります。
海外就労するフィリピン人の過酷な労働環境は社会問題にもなっているため、フィリピン人を雇用する場合にはルールをしっかり守りましょう。