フレックスタイム制とは?導入のポイントを解説

従業員が、始業・終業時刻を自分で決めることができるフレックスタイム制
QOLの向上、多彩な人材の活用、残業代の削減などメリットが多いフレックスタイム制ですが、実は注意すべき点やデメリットも存在します。

今回は、フレックスタイム制の概要や関連用語の意味、導入方法やルールなど、フレックスタイム制について幅広く解説していきます。

フレックスタイム・コアタイムとは

フレックスタイム制とは、従業員が始業・終業時刻を自分で決めて働くことができる制度です。
ただし、所定労働時間さえ守ればいつ働いてもいいというわけではなく、必ず出勤していなければならない「コアタイム」を設ける会社も多いです。

まずは、フレックスタイム制の仕組みや、関連する言葉の意味について知っていきましょう。

フレックスタイム制の仕組み

フレックスタイム制とは、出勤時間・退勤時間や、1日の労働時間数を社員自身が決めることができる制度です。
1ヶ月や3ヶ月など期間を定め、その中で働かなければいけない時間数(所定労働時間)のみが決まっています。

例えば、1ヶ月の所定労働時間が160時間と決まっていたら、月間の合計労働時間数が160時間以上になれば、短時間しか働かない日や、丸1日休む日があっても問題ありません。
逆に、通常は1日8時間以上の労働は時間外となり、賃金が割増になりますが、フレックスタイム制だと1日8時間以上働いたとしても、直ちに時間外労働にはなりません。
月間の所定労働時間を超えた部分が、時間外労働として計算されます。

働く時間帯についても、従業員の自由です。固定時間制のように「9時から5時まで」といった定時はありません。
「朝の方が集中できるから早朝に出勤する」「子供のお迎えがあるので早めに退勤する」など、労働時間をライフスタイルに合わせて決められます。

コアタイム・フレキシブルタイムとは

フレックスタイム制の大きな魅力は、働く時間帯を一人一人が決められること
しかし、例えば深夜から早朝に働くことを選ぶ社員などが出てくると、固定時間制の取引先とのコミュニケーションが難しくなります。

また、チームで会議を行いたいとき、出勤時間帯がバラバラだと予定を合わせられません。
そのため、コアタイムフレキシブルタイムを設けて、ある程度働く時間帯を揃える企業がほとんどです。

コアタイム

コアタイムとは、必ず出勤している必要のある時間帯のこと。
例えば、コアタイムが13時~15時と決まっていた場合、13時~15時の間は必ずオフィスにいなければいけません。
このコアタイムがないフレックスタイム制は、「スーパーフレックスタイム制」と呼んで区別します。

フレキシブルタイム

フレキシブルタイムとは、「その時間の範囲内で、自由に労働時間を選んでいい」という時間帯のことです。
例えば、フレキシブルタイムが7時~21時と決まっている場合、7時より前や21時以降に出勤するということはできません。
会社によっては、「出勤は7時~10時、退勤は15時~19時」という風に、細かく規定している場合もあります。

フレックスタイム制が合法になる条件

フレックスタイムは、どんな形でも自由に導入していいというわけではありません。
一定の条件を満たさないと、労働基準法違反になります。

フレックスタイム制が合法になる条件は、以下の通りです。

    • 対象労働者の範囲を定める:「全従業員を対象とする」「○○課所属の正社員を対象とする」など

 

    • 清算期間(フレックス制の単位となる期間)と起算日を定める:「毎月1日から月末までの1か月」など(最長3ヶ月)

 

    • 清算期間において働くべき総所定労働時間(総枠)を定める:1週間あたりの所定労働時間を40~44時間として定める

 

    • 標準となる1日の労働時間の長さを定める:「1日の標準労働時間は、7時間とする」など

 

 

また、上記の条件は労働組合との間の労使間協定で定め、これを定める労働者の代表は民主的な方法で選ばれている必要があります。

最後に、就業規則に「始業時間・終業時間を労働者に委ねる」のように、フレックスタイム制の採用を明記するのも、合法となる条件です。

フレックスタイム制と似ている制度

フレックスタイム制と似ている制度に、「裁量労働制」「変形時間労働制」というものもあります。

裁量労働制

裁量労働制は、働く時間数を労働者自らが決められる制度です。
フレックスタイム制とは違い、実際の労働時間は計算せず、あらかじめ決めてある時間は働いたものとみなして、給与を支払います。
例えば月間のみなし労働時間が160時間だった場合、実際に働いたのが150時間でも170時間でも給与は同じです。

ただし、裁量労働制が導入できるのは、「専門業務型」と「企画業務型」という、仕事の進め方や仕事にかける時間が労働者本人に委ねられる職種のみとなっています。

変形時間労働制

変形時間労働制は、労働時間の計算を、1日ではなく月・年単位で行う制度です。
このフレックスタイム制も、変形時間労働制の一種と言えます。

しかし、フレックスタイム制の清算期間は最長3ヶ月ですが、変形時間労働制は年単位での清算が可能。
1年の間で、繁忙期と閑散期の差が大きい業種では、変形時間労働制の方が残業代のコストを減らすことができます。

フレックスタイム制のメリット・デメリット

次に、フレックスタイム制のメリット・デメリットを解説していきます。

働きやすさが向上する

フレックスタイム制のメリットは、労働者の働きやすさが向上すること
働く時間を自由に選べることで、各々のライフスタイルに合わせた働き方ができます。
「早朝出勤して早く退勤し、夕方から習い事をする」「朝ゆっくりトレーニングをしてから出勤する」など、時間の使い方が自由になることでQOLが向上します。

また、子育て中や介護中の社員が、家族の都合に合わせて休みを取ったり中抜けしたりしても、フレックスタイム制なら欠勤扱いになりません。
固定制だと正社員としての就労が難しい人材も活用でき、人員不足の解決にも繋がります。

向き・不向きがある

フレックスタイム制を成立させるには、労働者自身が総労働時間を計算し、自己管理をしながら働かなければなりません。
そうなると、なかなか出勤する気が起きないルーズな社員や、逆に時間を決めずズルズルと働き続けてしまうような社員も発生することが考えられます。

また、労働者同士が顔を合わせる時間が減ることで、コミュニケーション不足になったり、急な仕事への対応が難しくなったりすることも、フレックスタイム制のデメリットです。

フレックスタイム制における労働時間管理

それでは、フレックスタイム制ではどのように労働時間を管理すればいいのかを知っていきましょう。

フレックスタイム制のモデルスケジュール

フレックスタイム制の規定をどのようにするのが良いかは、企業ごとの事情によって異なります。
ですが、「9時から17時まで」という一般的な固定時間制の取引先と関係がある場合は、日中にある程度のコアタイムを設けた方が良いでしょう。

とはいえ、コアタイムが長すぎても、フレックスタイム制のメリットは活かせません。
コアタイムの時間数は、休憩時間以外で4時間程度が限度と言われています。

それを踏まえて、フレックスタイム制のモデルスケジュールは以下のようになります。

  • コアタイム:10:00~15:00(休憩1時間)
  • フレキシブルタイム:6:00~10:00、15:00~22:00
  • 1日の標準労働時間:8時間

このように定めると、6時に出勤して15時に退勤したり、10時に出勤して19時に退勤したりと、好きな時間帯を選ぶことができます。
午後のフレキシブルタイムが長めに設定されていることで、中抜けして子供のお迎えに行くなど、様々な働き方が考えられます。

総労働時間の計算方法

総労働時間の計算方法は、「清算期間の暦日数÷7×40時間」です。
例えば、月の暦日数が28日なら160時間、30日の場合は171.4時間、31日の場合は177.1時間となります。

遅刻・早退・欠勤の場合の取り扱い

コアタイムがないスーパーフレックスタイム制の場合、月の所定労働時間さえ満たしていれば、遅刻・早退・欠勤という概念はありません。
もし、実際の労働時間が月の所定労働時間を下回る場合は、不足時間分の賃金がカットになります。

コアタイムがある場合、この時間帯の不就労時間を遅刻・早退として取り扱うことができます。
しかし、総労働時間が月の所定労働時間を上回っていれば、賃金のカットはありません。

ただし、就業規則にて「正当な理由なくコアタイムに遅刻・早退、欠勤してはならない」などと制裁規定を設けている場合、就業規則違反や職場規律違反として、減給処分などのペナルティを設けることは可能です。

フレックスタイム制でも残業代は出る?

フレックスタイム制でも、残業代は出ます。
フレックスタイム制における残業とは、月の所定労働時間を超えた時間のことです。
例えば、月間で180時間働き、職場規定の所定労働時間が160時間なら、20時間分の残業代が支払われます。

残業代の計算方法

残業代の計算方法は、会社が定める所定労働時間を上回ったのか、国が定める法定労働時間を上回ったのかで異なります。
所定労働時間は、労使協定で会社が独自に決めた基準、法定労働時間は、国がフレックスタイム制の上限労働時間数を定めたものです。

所定労働時間を超えた部分の賃金
1時間あたりの基礎賃金×時間数
法定労働時間を超えた部分の賃金
1時間あたりの基礎賃金×時間数×1.25

で計算します。

また、フレックスタイム制でも、22時~5時の深夜労働には1.25倍の割増賃金が発生します。

フレックス制度導入のポイント

最後に、フレックスタイム制を導入する際の4つのポイントを解説します。

労使協定の締結

先にも解説しましたが、フレックスタイム制は、その制度の内容を労働組合または労働者の代表と話し合い、労使間協定を定めないと違法です。
経営者側・労働者側がそれぞれ納得できる条件で労使協定を締結しましょう。

制度を誰に適用するか明確にする

フレックスタイム制導入の際は、全ての社員に適用しなくても問題ありません。
適用される範囲を明確にしないと労使間協定を締結できないので、誰に適用するべきかを最初に決定し、就業規則も定めましょう。

コアタイム設定など一定の制限を設ける

コアタイムなしのフレックスタイム制をいきなり導入すると、取引先との連絡や社員同士のコミュニケーション不足など、問題が発生しがちです。
業務が活発になる時間帯に一定のコアタイムを設け、労働時間帯がばらつきすぎないようにする工夫が必要です。

管理者の適切なマネジメント

フレックスタイム制では、労働者一人一人が自己管理をしていかなければなりません。
しかし社員の性格や能力によっては、それが難しいこともあるでしょう。

フレックスタイム制の導入にあたって、管理職は部下に目を配り、勤務時間やタスク管理などを適切に行なっていくべきです。

まとめ

フレックスタイム制は、時間の使い方が自由になり、様々な人材が活躍できる新しい働き方です。
残業代の削減にも繋がり、メリットが多いですが、社員の自己管理が必要になるなどデメリット面も。

管理者が適切にマネジメントを行ったり、ルールの定め方を工夫したりするなどして、フレックスタイム制を有効活用できるようにしていくことが大切です。

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