ベトナム人は器用で向上心旺盛という国民性を持ち、日本では技能実習生としての受け入れが多くなっています。
ベトナム人の労働力が重用されている反面、技能実習生の過酷な労働環境が問題になることも。
今回は、ベトナム人を雇用したいと考えている方向けに、ベトナム人が取得するビザの種類や手続き方法を解説していきます。
この記事の目次
ベトナム人が取得できるビザとは
ベトナムは日本が定めるビザ免除国ではないので、ベトナム人が来日する時には、目的・期間を問わずビザ取得が必要です。
ベトナム人が来日時に取得するビザを、滞在の目的別に見ていきましょう。
短期の商用・観光の場合
90日以内の短期滞在かつ、日本国内で報酬を得る活動を行わない場合、ベトナム人は「短期滞在ビザ」を取得します。
ベトナム人に発給される短期滞在ビザには、以下の7種類があります。
- 1次・2次ビザ(親族訪問・知人訪問・個人観光・パッケージツアー・通過)
- 1次・2次ビザ(短期商用・学術交流等)
- 1次・2次ビザ(日本人の配偶者・特別養子)
- 数次ビザ(一般数次)
- 数次ビザ(商用等数次)
- 数次ビザ(日本人の配偶者・特別養子)
- 医療滞在
1次・2次ビザとは、取得すると1回または2回のみ日本に入国できるビザのこと。
有効期限(一般5年・商用等10年)の間なら、日本に何度でも出入国できるビザが数次ビザです。
それぞれ、来日の目的別に取得するビザが異なります。
日本人の配偶者・特別養子とは、ベトナムに合法的に在住している日本人の配偶者や子供が対象となるビザです。
日本で就職する場合
ベトナム人が日本で就職する場合、他の外国人と同じく「就労ビザ」が必要です。
就労ビザとは、在留資格のうち就労資格があるものの総称です。就職できる職種が限定されている16種類のビザと、特に優れた人材にのみ交付される「高度人材ビザ」を合わせて一般的には就労ビザと呼びます。
日本人の配偶者や永住権の在留資格でも就労はできますが、制度や取得方法が違っているため、就労ビザとは別で考えられることがほとんどです。
職種別の就労ビザは、その外国人が日本国内でどんな職業に就けるのかが厳密に決まっていて、もし資格外の仕事をすると不法就労となります。
そのため、ベトナム人を日本で雇用する場合には、事前に就労ビザの種類や本人の資格・学歴等を確認し、職種にあった就労ビザを取得できるか確認する必要があります。
留学する場合
ベトナム人が日本に留学する場合は、「留学ビザ」を取得します。
ベトナム人留学生が日本でアルバイトをしたい場合には、留学ビザの取得の他に「資格外活動許可書」の申請が必要になります。
ベトナム人に限らず、留学生が資格外活動でできるアルバイトは、学校がある時期は「週28時間以内」、夏休み期間などは「1日8時間以内」と定められています。
【大見出し】短期滞在ビザの申請から取得までの流れ
ベトナム人が短期滞在ビザを取得する方法は、ベトナム人本人が主体になって行う方法と、ベトナム人を日本に呼ぶ日本人が主体になって行う方法があります。
ベトナム側で必要な手続き
ベトナム側で短期滞在ビザを取得するための手続きは、以下のような流れです。
1.日本へ渡航する計画を立てる
2.必要書類を用意する(旅券・ビザ申請書・渡航費用の支払い能力を証明する書類など)
3.ベトナム国内の日本大使館・総領事館に提出・審査
4.審査終了後、旅券を取りに行く
5.3ヶ月以内に入国
日本側で必要な手続き
ベトナム人を日本に招く日本側は、招聘理由書やベトナム人との関係を証明する書類を用意します。
また、渡航費用や滞在費用を支払えない場合に、代わりに負担する保証人も用意します。
1.ベトナム人を呼び寄せる計画を立てる
2.必要書類を用意する(招聘状・滞在予定表・身元保証書など)
3.書類をベトナムに郵送する
以降の手続きは、ベトナム国内でベトナム人本人が行います。
4.ベトナム国内の日本大使館・総領事館に提出・審査
5.審査終了後、旅券を取りに行く
6.3ヶ月以内に入国
期間の延長は可能?
現在、原則的にはベトナム人の短期滞在ビザの期間延長・更新は認められていません。
以下のようにやむを得ない事情がない限りは、帰国後に再度申請する必要があります。
ビザ更新が認められる可能性があるケース
・人道上の真にやむを得ない事情
・上記に相当する特別な事情
これらに当てはまる例としては、子供の世話や病気・怪我の治療などが挙げられます。
ベトナム人の短期滞在ビザは更新ができませんが、2014年には短期滞在数次ビザの最長期間が5年に伸び、発給要件も緩和されました。
これ以前は数次ビザの最長期間が3年だったので、実質的には2年間ビザの有効期限が伸びたことになります。
ベトナム人が日本で就職するためのビザは?
ベトナム人が日本で就労するためには、「就労ビザ」の取得が必要です。
日本で就労できるビザの種類
ベトナム人に限らず、日本で外国人が取得できるビザには、以下のものがあります。
・教授
・芸術
・宗教
・報道
・経営・管理
・法律・会計業務
・医療
・研究
・教育
・技術・人文知識・国際業務
・企業内転勤
・介護
・興行
・技能
・特定技能
・技能実習
これら16種類と、高度専門職ビザを合わせた17種類を、一般的に就労ビザと呼びます。
現在、日本で働いているベトナム人は、ほとんどが「技能実習」ビザです。
技能実習ビザとは、日本で一定期間働きながら実習を行い、日本企業の技術や知識を学ぶ目的で来日する外国人に発給されるビザのことです。
他には、エンジニアが取得する「技術」ビザの取得者も多くなっています。
就労ビザ取得までの流れ
就労ビザの申請は、就職するベトナム人本人が行う場合と、ベトナム人を雇用する企業側が行う場合の2パターンがあります。
それぞれの申請の流れは、以下の通り。
ベトナム人本人が就労ビザを申請する場合
1.日本に渡航する計画を立てる
2.就労ビザ申請に必要な書類を用意する
3.ベトナムにある日本大使館・総領事館で審査を受ける
4.審査終了後、旅券を取りに行く
5.就労ビザが交付された場合、3ヶ月以内に日本に渡航する
ベトナム人を雇用する企業側が就労ビザを申請する場合
1.ベトナム人を日本に招く計画を立てる
2.地方入国管理局に「在留資格認定証明書」の交付を申請する
3.交付された在留資格認定証明書を、ベトナム人本人に送付する
4.本人が、ベトナムにある日本大使館・総領事館で審査を受ける
5.審査終了後、本人が旅券を取りに行く
6.就労ビザが交付された場合、3ヶ月以内に日本に渡航してもらう
ビザが取れない職種もある?
日本では現在、スーパーやコンビニのレジ打ち、工場のライン作業など、単純労働に就職するためのビザを発給していません。
これは、技術や学歴を持たない移民の流入を防ぐためです。
ただし、アルバイトなら外国人もこれらの単純労働に従事することが可能です。
しかし、単純労働には該当する就労ビザがないため、アルバイトでこれらの仕事を経験したベトナム人がそのまま新卒として就職を希望したとしても、雇用することはできません。
また、単純労働ではなくても、美容師・ネイリスト・保育士など、該当するビザがない職種には、外国人は就職することができなくなっています。
ベトナム人アルバイト雇用の注意点
ベトナム人をアルバイトとして雇用するには、ビザではなく「資格外活動許可書」が必要です。
留学ビザを持つ留学生や、特定活動ビザで就活中のベトナム人などがアルバイトする場合、就労ビザではなく資格外活動の許可を得るとアルバイトが可能になります。
また、就労ビザを持っているベトナム人も、在留資格と違う職種でアルバイトをする場合には資格外活動許可が必要になります。
もちろん、ビザなしのベトナム人は不法滞在者ということになるので、アルバイトであっても採用してはいけません。
まとめ
ベトナム人が日本に入国する際には、目的・期間に沿ったビザの取得が必要です。
・就労目的:就労ビザ
・留学目的:留学ビザ
・3ヶ月以内の滞在:短期滞在ビザ(1次・2次・数次)
日本に在留しているベトナム人は、ほとんどが技能実習生。ベトナム人技能実習生の過酷な労働環境は、近年特に問題になっています。
ベトナム人を適正に雇用するためには、ビザの確認と就労環境の見直しをしっかりと行いましょう。