外国人の高度人材とは?ポイント制度や手続き・申請方法を解説!

日本国内では様々な場所で外国人労働者を目にする機会が増えていますが、その中でも特に政府が積極的に受け入れを進めているのが、「高度人材」と呼ばれる優秀な人材です。
今回は、外国人本人にも受け入れる企業側にも相互にメリットがある高度人材制度についてご紹介していきます。申請方法やポイント表の計算方法も解説するので、ぜひ最後までお読みください。

高度人材とは?

法務省では、高度人材を「国内の資本・労働とは補完関係にあり、代替することが出来ない良質な人材」「我が国の産業にイノベーションをもたらすとともに、日本人との切磋琢磨を通じて専門的・技術的な労働市場の発展を促し、我が国労働市場の効率性を高めることが期待される人材」と定義づけています。少し難しい言い回しですが、「日本国内にはない技術や知識を持っていて、日本の産業に良い影響を与える外国人」といった意味です。
外国人に発行されるビザは、外国人の日本滞在をある程度制限するためという意味もありますが、高度人材に発行されるビザは最も待遇が良く、優遇してでも日本に来てもらいたい優れた人材と言えます。
高度専門職ビザには3種類ありますが、その詳しい内容や優遇措置については後の項目で解説していきます。

高度人材を採用するメリットとは?

高度人材を採用する最も大きなメリットは、優れた人材を採用することで海外の新たな技術を取り入れ、利益を拡大できることです。高度人材はポイント表に設定されている内容から、若くて高学歴の優秀な人材が多く、日本で長く職歴を積むことができます。
また、高度人材の外国人が入社することで既存の社員が刺激を受け、切磋琢磨してさらに社内環境が良くなるというのもメリットです。

実は、既に通常の就労ビザで働いている外国人の中にも、高度専門職ビザに該当する人はいます。しかし、ポイント表を使って計算し自ら申請しないと高度専門職ビザに切り替わることはありません。そのため、細かな手続きを知らない外国人は高度人材ビザを取得していない場合もあります。
高度専門職ビザを取得する外国人側へのメリットは、後の項目で解説する優遇措置や永住権の審査で有利になることです。将来的に永住権を取得したいと考えている外国人は、高度人材の制度を知っておくことが永住権取得への近道です。
また、永住権を早く取得することで職務内容に制限がなくなるので、永住権審査で有利になる高度人材は、外国人を採用する企業側のメリットにもなります。

高度人材ポイント制とは?

高度人材に該当するかどうかは、ポイント表を使った計算で決定します。ここでは、ポイント表の詳しい内容や計算の仕方について、解説していきます。

高度人材ポイント制度の概要

詳しい計算方法は後の項目で解説しますが、専用のポイント表で学歴や職歴、年収の額や年齢に基づいてポイントの割り振りがあり、その合計が70以上になることが高度専門職ビザ取得の条件です。
ポイント表の内容は年度によって細かな違いがあるので、ビザを申請する年度のポイント表を元に計算します。

高度外国人材の3つの活動類型

高度人材が取得する「高度専門職」には、3つの種類があります。それぞれが該当する職務内容や、ポイント表の内容を解説していきます。

高度学術研究活動「高度専門職1号(イ)」

入国管理局ホームページによると、「高度専門職1号(イ)」の高度学術研究活動とは、「本邦の公私の機関との契約に基づいて行う研究、研究の指導又は教育をする活動」と定義づけられています。つまり、研究者や研究の指導を行う教授などがこのビザに該当します。
高度専門職1号(イ)に認定されるための計算の元となるポイント表は以下の通りです。

【学歴】
修士号:30
博士号:20
大卒または同等の教育を受けたもの:10
複数の分野で修士号・博士号・専門職学位を有するもの:5

【職歴】
7年~:15
5年~:10
3年~:5

【年収】
年齢と年収額による:10~40

【年齢】
~29才:15
~34才:10
~39才:5

【ボーナス】
・ 研究実績(内容に応じる):20~25
・ イノベーションを促進するための支援措置を受けている機関における就労:10
・ 試験研究費等比率が3%超の中小企業における就労:5
・ 職務に関連する外国の資格等:5
・ 本邦の高等教育機関において学位を取得:10
・ 日本語能力試験N1取得者又は外国の大学において日本語を専攻して卒業した者:15
・ 日本語能力試験N2取得者:10
・ 成長分野における最先端事業に従事する者:10
・ 法務大臣が告示で定める大学を卒業した者:10
・ 法務大臣が告示で定める研修を修了した者:10

高度専門・技術活動「高度専門職1号(ロ)」

「高度専門職1号(ロ)」の高度専門・技術活動については、入国管理局では「本邦の公私の機関との契約に基づいて行う自然科学又は人文科学の分野に属する知識又は技術を要する業務に従事する活動」と定義しています。
つまり、生物学・化学・物理学といった自然科学、哲学・心理学・歴史学・社会学などの人文科学の専門家のことです。

高度専門職1号(ロ)に認定されるための計算の元となるポイント表は以下の通りです。

【学歴】
修士号:30
博士号:20
大卒または同等の教育を受けたもの:10
複数の分野で修士号・博士号・専門職学位を有するもの:5

【職歴】
10年~:20
7年~:15
5年~:10
3年~:5

【年収】
年齢と年収額による:10~40

【年齢】
~29才:15
~34才:10
~39才:5

【ボーナス】
・ 研究実績(内容に応じる):15
・ 職務に関連する日本の国家資格の保有:1つ5点
・ イノベーションを促進するための支援措置を受けている機関における就労:10
・ イノベーションを促進するための支援措置を受けている機関における就労:10
・ 試験研究費等比率が3%超の中小企業における就労:5
・ 職務に関連する外国の資格等:5
・ 本邦の高等教育機関において学位を取得:10
・ 日本語能力試験N1取得者又は外国の大学において日本語を専攻して卒業した者:15
・ 日本語能力試験N2取得者:10
・ 成長分野における最先端事業に従事する者:10
・ 法務大臣が告示で定める大学を卒業した者:10
・ 法務大臣が告示で定める研修を修了した者:10

高度経営・管理活動「高度専門職1号(ハ)」

入国管理局では、高度経営・管理活動を「本邦の公私の機関において事業の経営を行い又は管理に従事する活動」であると定義づけています。つまり、外国人の会社経営者や企業の役員が取得するビザです。

高度専門職1号(ハ)に認定されるための計算の元となるポイント表は以下の通りです。

【学歴】
修士号または博士号:20
大卒または同等の教育を受けたもの:10
複数の分野で修士号・博士号・専門職学位を有するもの:5

【職歴】
10年~:25
7年~:20
5年~:15
3年~:10

【年収】
3,000万円~:50
2,500万円~:40
2,000万円~:30
1,500万円~:20
1,000万円~:10

【ボーナス】
・ 代表取締役・代表執行役:10
・ 取締役・執行役:5
・ イノベーションを促進するための支援措置を受けている機関における就労:10
・ イノベーションを促進するための支援措置を受けている機関における就労:10
・ 試験研究費等比率が3%超の中小企業における就労:5
・ 職務に関連する外国の資格等:5
・ 本邦の高等教育機関において学位を取得:10
・ 日本語能力試験N1取得者又は外国の大学において日本語を専攻して卒業した者:15
・ 日本語能力試験N2取得者:10
・ 成長分野における最先端事業に従事する者:10
・ 法務大臣が告示で定める大学を卒業した者:10
・ 法務大臣が告示で定める研修を修了した者:10
・ 経営する事業に1億円以上の投資を行っている者:5

出入国管理上の優遇措置の内容とは?

高度人材には、永住権の審査で有利になる以外にも様々な優遇措置があります。
詳しい内容について、解説していきます。

複合的な在留活動の許容

通常の就労ビザで働く外国人は、就労内容が定められているのでそれを超える職務には就けません。しかし、高度専門職ビザでは複合的な在留活動が認められており、複数の在留資格にまたがるような活動ができます。
例えば、大学で教鞭を取りながら企業を経営したり、事業の運営に携わりながら研究も行ったりなどが可能です。

在留期間「5年」の付与

高度人材には、法律上で最長の在留期間である「5年」が与えられます。

在留歴に係わる永住許可要件の緩和

通常、永住権を申請するためには、日本に10年以上在留していることが必要になります。しかし、高度人材の場合、ポイント表で70点以上の人は3年、80点以上の人は1年で永住権の申請が可能です。
また、永住権の申請が可能なだけではなく永住権の審査でも有利になるため、許可が下りやすいです。

配偶者の就労

夫婦のうち1人が高度人材として認定されている場合、その配偶者は就労ビザを所得しなくても就労が可能です。

一定の条件の下での親の帯同の許容>

通常の就労ビザでは、在留資格者の親の帯同は認められていません。
しかし、高度人材ビザの場合は、
① 高度外国人材又はその配偶者の7歳未満の子(養子含む)を養育する場合
② 高度外国人材の妊娠中の配偶者又は妊娠中の高度外国人材本人の介助等を行う場合
という条件付きで親の帯同が認められます。
これは高度人材外国人本人だけではなく、配偶者の親も帯同可能です。

一定の条件の下での家事使用人の帯同の許容

通常の就労ビザでは、「経営・管理」「法律・会計業務」など一部の在留資格でしか家事使用人の帯同は認められていません。しかし、高度人材ビザの場合は、全ての種類で家事使用人の帯同が認められます。

入国・在留手続の優先処理

高度人材の入国・在留手続きの処理は、他のビザよりも優先して行われます。通常、ビザの申請や更新には1ヶ月以上かかりますが、高度人材ビザの入国申請は10日、更新申請は5日前後が審査期間の目安となります。

高度人材ポイント制の計算方法は?

先ほどご紹介した高度専門職ビザのポイント表に基づいてポイントを合計し、70点以上になると高度人材として認められます。

例えば、大学院卒(修士)・30才・勤続5年・年収800万円という条件の人材が高度専門職1号(ロ)に申請する場合、
・ 修士号:20
・ ~34才:10
・ 職歴5年:10
・ 年収800万円:30
で合計が70ポイントとなります。

年収がさらに高い場合や、働いている機関が一定の条件に該当する場合、優れた研究実績で特許を取得しているなどの場合は、さらにボーナスポイントが加算されます。

高度専門職を取得の流れ・必要な書類

最後に、高度専門職を取得するための申請の流れと、必要な書類について解説します。

申請手続きの流れ

高度専門職の在留資格を新たに申請・更新する場合は、地方入国管理局に書類を提出して手続きを行います。これは、本人・本人を受け入れる企業側どちらでも申請が可能です。
ポイント表で計算をして高度人材に該当することを確認し、必要書類を揃えて提出すると、入国管理局での審査が始まります。審査に通った場合「在留資格認定証明書」が交付されるため、本人が海外にいる場合には在外公館でこの証明書を提示して在留資格を受け取ります。
すでに日本国内にいる外国人がビザを更新・他の就労ビザから高度専門職ビザに切り替える場合には、ポイント表の計算とそれを立証する資料を提出すれば、そのまま高度専門職ビザが交付されます。

申請に必要な書類

高度専門職ビザを申請するために必要な書類は、以下の通りです。

・ 在留資格認定証明書交付申請書(新たにビザを申請・これから入国する場合)
・ 在留資格変更許可申請書・在留期間更新許可申請書(他のビザからの変更・現在持っているビザを更新する場合)
・ ポイント計算表
・ ポイントを立証する資料

家族や家事使用人を帯同する場合には、別途それぞれの申請書類も必要となります。

高度人材のまとめ

高度人材は、優秀な人材を招き入れて日本の産業を豊かにする、メリットの大きい制度です。また、外国人側にとっても、優遇措置や永住権申請で有利になるなど様々なメリットがあります。
高度人材に該当していても申請をしていない外国人も多いので、すでに外国人を雇用している場合には在留資格の定期的な見直しも必要となります。

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