在留資格「特定技能」(特定技能ビザ)とは?外国人材受け入れ企業への影響まとめ

2018128日に改正法が成立した出入国管理法(入管法)。その際の与党と野党が激しいやりとりをしていたことでも注目が集まっていました。「日本人の雇用を脅かすのか?」という論点ばかりが取り上げられていましたが、出入国管理法(入管法)改正によって外国人の雇用を考えている企業にとってどのような影響があるのでしょうか。

気になるポイントをまとめましたので、2019年4月からスムーズに対応できるよう参考にして頂ければ幸いです。

■出入国管理法(入管法)とは?

出入国管理法(及び難民認定法)は日本という国の入国・出国を管理するもので、簡単にいうと日本という国の安全を保つために作られた法令です。

◯改正の背景から見える日本の現状

平成30年2月20日に内閣府が出した「外国人労働力について」によると、日本の生産年齢人口(1564歳の人口)は1997年から減少。2016年時点では総人口の60%と半数に近づいてきていることがわかります。

有効求人倍率は2018年9月に1.64倍となり、5月の1.60倍に続いて44年ぶりの高水準となりました。

出典:厚生労働省 「外国人労働力について」我が国における外国人材数の推移

人口減の中有効求人倍率は上昇。人手不足が深刻化していきます。そんな中外国人材の推移がどうなっているかを見てみると2008年時点には約49万人、2017年の時点では約128万人に増加しています。

このデータから見ても外国人材の受け入れが急務と考え、改正にいたった背景が見えるのではないでしょうか。

■今回創設される在留資格の「特定技能」とは?

最近国会で論じられているのは、新たな在留資格(ビザ)として創設された「特定技能」。日本国内は少子化・超高齢化社会となっていること、人口減少も激しいことなどから、人手不足が深刻な状態になっているのは皆さんもご存じのとおりです。

その人手不足を解消するべく、これまでは専門分野しか受け入れていなかった外国人材という基準を少し緩やかにし、一定の専門性や技術を持っている外国人材をもっと受け入れていこうという方針に変えるためにこの「特定技能」ビザが創設されました。

この「特定技能」は1号と2号に分かれており、対象は深刻な人手不足に悩む業種に絞られています。

◯「特定技能1号」

【対象】建設、宿泊、農業、介護、造船、ビルクリーニング、漁業、飲食料品製造業、外食業、素形材産業、産業機械製造業、電子・電気機器関連産業、自動車整備業、航空業の14業種を検討。中でも宿泊業、介護業、外食業の3業種は技能試験を来年4月から開始し、飲食料品製造業、ビルクリーニング業、他9業種は2019年内か年度内に追って開始というスケジュールを予定しています。

5年間の受け入れ見込み人数は約35万人(最大34万5,150人)。日本語レベルは日常会話とされており、試験があります。レベルはJLPTのN4レベル相当とされているので覚えておきましょう。

・特定技能1号で可能になること

最長5年日本で勤めることができますが、家族を一緒に連れてくることはできません。そのため、家族を連れてくるためには、業所管省庁が定める一定の試験に合格して特定技能2号になることが必要です。

◯「特定技能2号」

【対象】建設業、造船・舶用工業の2業種。移民政策だということで議論が紛糾し、2018/12/17時点では「この2業種で2021年度から試験を開始」ということ以外は発表されていません。

・特定技能2号で可能になること

特定技能2号の場合は、配偶者と子どもを連れてくることができ、在留期限が無制限。つまり定住が可能になることから、議論が先送りとなっています。特定技能2号の場合は、特定技能1号が受ける日本語試験を受けなくても大丈夫です。

■外国人材の受け入れはどう変わる?

今回の改正で外国人材の受け入れがどう変わるかをまとめると、下記の2点となります。

・外国人材の受け入れを強化

これまで単純労働を認めない方針でビザを発行していましたが、今回の改正では知識や技能が一定レベル以上の外国人材を受け入れていくことが前提。そのため、最大34万5,150人を受け入れていくことを想定していることがすでに発表されています。

・外国人材が162万人程度まで増加

現状厚生労働省が出している「外国人労働力について」の資料を見ると、特定活動や専門分野等すべてをひっくるめた外国人材は2017年時点で127万8,670人となっていますので、これに最大人数を足すと、162万3,820人まで膨らむ予測ということです。

■外国人材を受け入れる企業が押さえておきたいポイント

では、特定技能1号の外国人エンジニア人材を受け入れたいと考えている企業にとってどのようなポイントが変わってくるのでしょうか。3つにまとめましたので、ぜひ参考にしてみてください。

外国人材の受け入れについてですが、登場するのは主にこの3者。受け入れ機関=企業、登録支援機関、そして外国人材です。

①受け入れ機関=企業の基準

外国人材を受け入れる場合、日本人よりも低い基準で契約をしようとする企業が多くいるため、下記のような規定が定められています。

・日本人と同等以上を基準とした契約

日本人と同等以上の報酬額を用意することが義務となっています。

・法令遵守

日本人と同様に社会保険・雇用保険・労災保険などの法令が義務となっています。

・適正な機関であること

支援体制が整えられる機関であるかどうかも基準となっています。②でご紹介する登録支援機関に外国人材の支援を委託することも可能です。

②登録支援機関の基準

 

・登録支援機関として適正か

所定の基準を満たした上で、受け入れ機関、もしくは出入国在留管理庁長官が登録をしないと支援機関として認められません。

 

・③の内容を行えるような体制と能力を整える

特にどのような機関かという指針は発表されていませんが、③でご紹介する支援内容を実施できる体制と能力を持っていることが求められます。

 

③外国人材への支援内容

(1)入国前の生活ガイダンスの提供

(2)外国人の住宅の確保

(3)在留中の生活オリエンテーションの実施

(4)生活のための日本語習得の支援

(5)外国人からの相談・苦情への対応

(6)各種行政手続についての情報提供

(7)非自発的離職時の転職支援

(8)その他

出典:法務省入国管理局「新たな外国人材の受入れに関する 在留資格「特定技能」の創設について」

外国人材を受け入れたい企業に必要なことは、支援と報酬・法令基準を日本人と同等以上にすることの2つです。日本人を採用するときと同じように動くこと+支援内容を実施できる体制を整えておくことが必要であるため、準備ができていない企業は今すぐに体制を整えられるようにしましょう。

外国人材を専門に紹介している企業であれば、受け入れ企業に対して何をすべきかを指南しながら人材紹介を行ってくれるのでまずは相談してみましょう。何からはじめればよいのかがわからないという企業の場合はそのファーストアクションを早くすることをおすすめします。

 

■まとめ

新しく創設された「特定技能」ビザについて、知っておきたいポイントをまとめてご紹介しました。外国人材を受け入れたいと考えているのであれば、今後特定技能1号・2号に関する対象分野・最大人数などの動向を注視しておくようにしましょう。

そして、登録支援機関もしくは自社で外国人材の支援が行える体制を整え、2019年4月を迎えられるように今から準備を始めておいてください。日本で働く外国人材が活躍できるような体制つくりをすることで、日本の発展にも大きく寄与していくものになると考えています。

おすすめの記事