2018年に大きな話題を呼んだ入国管理法の改正に伴い、外国人を採用する企業が更に増えることが見込まれています。
しかし、文化や言葉の壁、スキルの問題など企業からすれば気になる点も多く残りますよね。
この記事では外国人採用を検討している方の疑問を解消すべく、メリットやデメリットを解説しています。採用を考えている方は、ぜひご覧ください。
この記事の目次
外国人の採用を検討している企業が急増中?
企業分析のパイオニア、四季報が2018年に発表した「外国人従業員が多くいる会社ランキング」では、上位を電子機器メーカーが占めており、外国人労働者の採用には業種によって偏りがあります。
しかし、政府がこの法案を通して人材を流入させたいのはメーカーだけではありません。介護、飲食、建設など人手不足に悩む業種への流入を目指しています。
外国人法案とも呼ばれる「出入国管理法」の改正案が提出された2018年は企業の人事にとって大きな波乱を生んだ年と言えるでしょう。
世間では移民政策などと呼ばれいまだ不安が拭えませんが、慢性的な人手不足に喘ぐ日本経済にとって、海外の労働力人口の流入は救世の一手となるのでしょうか。
今回は、外国人労働者を採用することで得られるメリットや実際の採用プロセスについて解説し、その疑問を晴らしていこうと思います。
外国人を採用するメリット
ここからは、外国人労働者を雇うことでどのようなメリットが生まれるのかについて具体的に解説していきます。
これまでに外国人を雇った経験がない企業にとっては、外国人の採用はまさに暗中模索。ぜひここに挙げるメリットやデメリットを参考にしてみてください。
社員のモチベーションが高まる
現在海外への展開を行っていない企業であっても、外国人労働者を雇うことで社内に新たな風を吹かせることができます。今まで日本人しか在籍していなかったオフィスに海外からの労働者が加わることで、異なる文化に触れる機会が与えられることになります。
これまでは比較対象となる同僚や部下、上司が日本人でしたので、日本の中での自社の位置づけや自分の能力に視野が向いていたはずです。しかし、海外からの労働力流入によってビジョンがグローバルなものにアップデートされ、新たな刺激を受けてモチベーションが高まる可能性があります。
若年層の労働者を雇える
近年の労働市場では売り手市場が続き、新卒学生を雇いたくても雇えない企業が続出しました。
また、中には人出不足で倒産する企業が出てきたり、意欲に欠ける新入社員が増えてしまったりと、行き過ぎた売り手市場の弊害が表れています。
そうした状況を打破するのが、海外からの若い労働力の流入です。
日本で働きたいと考える諸外国の若者は数多く、そういった若い労働力を新卒として雇うことができれば、人手不足を解消しつつモチベーションの高い若手を育成できるメリットがあります。
イノベーションのきっかけになる
良くも悪くも日本人はマナーやルールを尊重し、伝統を重んじる傾向にあります。
しかし、それが必ずしもビジネスの場で好影響となるかといえば、決してそうとは言い切れません。ときには突飛なアイディアが必要になりますし、これまでのように旧態依然とした社風では、グローバル化した経済のなかではとても戦うことはできません。
海外の労働者を雇うことで、異なる文化や言語を背景に斬新なアイディアの創造が期待できます。
日本人では到底思いつかないような企画が飛び出すことで、企業、ひいては業界そのものにイノベーションを引き起こせる可能性を秘めています。
外国人を採用する前に知っておくべき7つのこと
さて、このように良いことが多い外国人採用ですが、採用時に気をつけるポイントなどはあるのでしょうか?
ここからは、実際に採用を考える際に気をつけなければならないポイントについて解説していきます。
先ほども述べたように暗中模索での採用活動となりますので、慣れた日本のようには行かないことも多々あります。採用をお考えの際はこちらをぜひ参考にしてください。
2種類の高度専門職ビザについて
外国人が日本で生活する上で必要不可欠な「ビザ」ですが、全部で28種類あることはご存知でしょうか?
28種類あるビザの中でも、2種類の「高度専門職ビザ」というものが存在します。
それぞれ1号、2号と分けられており、1号は5年、2号は無期限の滞在が許されています。いずれも日本の公私の機関に在籍して研究や指導に当たる高度な知識、経験を持った人にだけ許可される特別なビザです。
まずは1号の高度専門職ビザを取得して活動し、在留が日本の利益に貢献していると認められた場合のみ、2号の取得が認められます。
18種類の就業ビザについて
「就業ビザ」は、外交、公用といった行政に関連するものから経営、興行、介護といった職に至るまで、幅広い業種で取得が認められています。
外交を理由とするビザ取得については外交期間を在留期間とし、他のビザについては最大で3年、最短で15日の在留が認められます。雇用の期間について定めのある「有期雇用」として就労することになりますが、永住権を取得することで正社員(無期雇用)として日本で働き、生活することができます。
なお、永住権を取得するには法務大臣の許可が必要になります。
技能実習生を含む一般ビザについて
上記以外の一般ビザは全部で10種類あり、その中には留学やワーキングホリデーといった比較的身近な滞在者や技能実習生なども含まれています。
滞在できる期間は様々ですが、永住権を取得すれば定めのない滞在が可能になります。
配偶者などが対象になる特定ビザについて
日本人の配偶者やその子供については就労の期間、職種の定めなく滞在することが可能です。
最大で5年、最短で6ヶ月の滞在が許可されています。
国外の外国人を採用する場合の流れ
まずは、人事を行う上で「なぜ外国人労働者を雇うのか」を明確にしておきましょう。理由を固めておかないと、採用の段階で選ぶ基準が曖昧になり、不本意な採用になりかねません。軸の部分は人事だけでなく会社全体で共有しておく必要があります。
メリット、デメリットを勘案した上で採用することを決定し、踏み切る形となります。
次に、国外の労働者を雇用する場合、日本へ来て働いてもらうのか、現地で働いてもらうのかを決めます。
日本へ呼び寄せる場合は、上記のビザが取得できる人材かどうかを確認し、雇用契約を結んでいくことになります。入国審査を行い、日本で住居などの取得を済ませた上で、日本人の雇用と同様に保険への加入や労働契約の締結を行います。
国内の外国人を採用する場合の流れ
国内にいる外国人を雇用する場合は、すでにビザが取得済で、住居も確保されている状態であるため、さほど手間はかかりません。
日本人と同様に雇用契約を結びますが、ハローワークへ雇用状況の届け出を行う必要があることは気をつけなければならないポイントです。先ほどご紹介した就労ビザのうち、外交・公用以外の職種で就労する、日本以外の国籍を持つ人材を雇用する場合は必ず届け出が必要になりますので注意しましょう
ただし、在日韓国人、朝鮮人、台湾人といった特別永住者については届け出の必要はありませんので確認しておきましょう。
採用する外国人の給与相場
技能実習生として雇用する場合の平均給与額は、11~14万円程度です。
多くの場合住み込みでの就労であり、家賃や生活費が会社負担である分給与が低めに設定されていると考えられます。
就労ビザを持って就業している場合でも、日本で雇用する場合は日本人と同様に年齢や職能によって賃金を定めることが一般的です。また、国籍が日本でないからといって不当な給与で雇用することは決して認められていません。
日本人の新卒と同等の賃金が支払われるので、20代前半の労働力を雇った場合、月給20~24万円が相場になります。年収でいえば、240~300万円程度がひとつの指標となるでしょう。
外国人を採用する6つの方法
ここからは、具体的に外国人の労働者を雇用するための方法について見ていきましょう。
有名な企業であれば自社の採用情報ページなどから直接応募が来ることもあり得ますが、あまり一般的ではありません。多くの場合は人材紹介会社や求人サイトに登録することになります。
外国人紹介に特化した転職エージェントに依頼する
「転職エージェント」は企業と転職者の仲介を行うサービスです。「中国語と英語、日本語が話せるトリリンガルの事務職員がほしい」などとこちらの要望を伝えることで、条件にマッチした人材を紹介してくれます。
仲介を通して採用する際にはマージンを支払う必要がありますが、登録や募集をかける段階では無料であるところも多く、一度は依頼してみることをおすすめします。
外国人紹介に特化した転職サイトに求人掲載する
閲覧の手軽さや情報量の多さから、多くの人材が情報収集に用いる「転職サイト」。求人を掲載することで直接応募が寄せられることもありますし、セミナー等に参加することでモチベーションの高い求職者を企業の側から迎えに行くことも可能です。
掲載料はピンキリで、掲載無料のサイトから1ヶ月あたり20万円ほどの料金がかかるところまで様々です。
留学生や海外の大学生向けの求人サイトに掲載する
新卒を狙い撃つのであれば、「学生向けの就職サイト」に掲載することをおすすめします。
予めある程度業種や職種を絞っている学生が多いので、企業側もミスマッチを防ぎつつ優秀な新卒を採用できるというメリットがあります。
日本国内や海外にある日本語学校などと連携する
こちらも新卒などの若手採用に力を入れている企業におすすめの方法ですが、ポイントは「ある程度の日本語力が担保されている」ことです。
日本語学校では就職支援の一環として日本語で書かれたビジネス文書を読解することもあり、こうしたルートで採用した人材には即戦力が期待できます。
外国人向けの転職イベント・セミナーに参加する
国内外で開かれている転職イベントに参加することで、自社のサービスやブランドを知ってもらう事ができます。直接人材の確保にはつながりませんが、こうしたルートから採用に至った人材は自社についてしっかり理解した上で就業している可能性が高く、将来性や貢献度については期待できるでしょう。
ビジネス向けSNSを活用してスカウトを行う
ピンポイントで欲しい人材の要件が明確な場合には、こちらからスカウトをかけることでベストマッチする人材を確保できます。採用にかかる手間や費用を抑えられますが、人材が見つかるまで根気よく探す必要があり、また人材の要件を明確にするためには社内の問題点や課題について入念な下調べが必要になります。
外国人を採用する前に準備しておきたい4つのこと
ここまで人材の確保に使えるサービスをご紹介してきましたが、ここからは実際に外国人労働者を受け入れる前に行っておくべき準備について解説していきます。
見知らぬ土地での就業はかなり負担がかかりますので、お互いに働きやすい環境作りに努める必要があります。
外国人のための採用試験の準備
日本人の能力を検査する試験としてはSPIなどが有名ですが、SPIは数的理解や論理的思考力、基礎的な国語力を見るものです。
そのため、そもそも日本語に不自由な海外の労働者にとってはそのハードルは日本人の何倍にも跳ね上がってしまいます。もともと論理的思考力が備わっている優秀な人材であっても、SPI試験だけでは日本語という壁が立ちふさがることで本来の能力が発揮できず、最大のパフォーマンスを出せない可能性があります。
つまり、外国人の採用にあたっては、SPIではなく個別に能力を検査することが必要となります。
言語を使わずに知能を調べるのであれば「ウェクスラー成人知能検査」などを用いることをおすすめします。これは世界中で用いられている、IQを調べることができる知能検査法です。
また、技術職など専門性の高い企業であれば社内で独自に試験を用意するのも一つです。
いずれにせよ、外国人労働者がもともと持っているポテンシャルを潰さないような試験の形を模索する必要があります。
日本滞在時の住居のサポート
日本で働くには、日本に来てからの生活基盤を整える必要がありますが、海外で暮らしながら日本の住居を借りるのは現実的には難しいです。
その背景には、大家さんのリスクを懸念している原因が挙げられます。やはり外国人の入居については難色を示されることが多いため、最初の住居は社宅という形で会社が借りるなどのサポートが必要になるでしょう。
英語人材向けの社内体制
日本語を学んでいたとしても、母国語が外国語だと多くのやりとりで齟齬が生まれてしまう可能性があります。
社内に英語の研修が存在しない場合には、この機会に簡単な研修を設けるなどして受け入れ体制を整える必要があります。
今後、英語は公用語としての勢いをさらに拡大していくことが予想されるため、外国人材の受け入れを機に社内体制を見直すことをおすすめします。
外国人が入社するまでの必要な手続き
もし一括採用で外国人労働者を雇用するのであれば、気をつけなければならない手続きがあります。10名以上の外国人労働者を雇用する事業所には、「外国人労働者雇用労務責任者」を設置しなければならないということです。
これは職場の管理職のなかから選任し、外国人が働く上で生じうる問題についての適切な対処を目的とした「外国人労働者の雇用・労働条件に関する指針」の中で定められています。
なお、外国人労働者が10名に満たない場合は選任の必要はありません。
まとめ
日本人を雇うよりいくらか煩雑な手順を踏まなければならない外国人労働者の受け入れですが、その分雇用に応じて助成金がもらえるなど行政からのサポートも用意されています。
更に少子高齢化が進む日本の人手不足に差す光明となるのか、今後の動向から目が離せません。