
日本国内の労働力不足を受け、外国人労働者を受け入れる会社が増加しています。
新型コロナウイルス感染症流行の中でも、前年を上回る人数の外国人が日本で働いています。
今回は、外国人受け入れのメリット・デメリットや、具体的な採用フローについて解説。
外国人受け入れについての課題や、その解消方法についてもお伝えします。
この記事の目次
2021年の外国人労働者受け入れ状況
厚生労働省による令和2年10月の調査では、日本国内の外国人労働者数は496,954人。
国籍別だと、中国が170,176人と約1/3を占め、ベトナム、韓国、ネパール、フィリピンが続き、ここまでで約7割を占めています。
また、在留資格は「専門的・技術的分野」が最多の33.8%。
留学生アルバイトに多い「資格外活動」は2番目の32.8%で、近年増えている技能実習生は4.6%と比率自体は少ないものの、前年比11.3%増で伸び率はもっとも大きいです。
参照:「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和2年10月末現在)
外国人受け入れのメリット・デメリット
次に、日本企業が外国人を受け入れることのメリット・デメリットについてお伝えしていきます。
外国人受け入れのメリット
外国人受け入れのメリットは、国内で深刻になっている人材不足を解消し、会社に新たな価値観やスキルを導入できることです。
- 人材不足解消・若い人材確保
- 新しいアイデア・技術創出
- インバウンド対策
- 海外進出への足掛かり
①人材不足解消・若い人材確保
少子高齢化の影響で、日本国内の人材は若い世代ほど不足しています。
若くポテンシャルが高い人材が欲しいのはどの企業も同じなので、新卒採用は大手企業が有利になり、中小企業やベンチャー企業は苦戦しがちです。
そこで海外の人材に目を向けることで、若い人材を獲得することが可能。
言語スキルや仕事の進め方など教育が必要な部分もありますが、会社に長く根付く人材を採用できます。
②新しいアイデア・技術創出
日本人とは違った視点を取り入れることで、新しいアイデアや技術を生み出せるかもしれません。
既存の日本人社員にとっても良い刺激となるでしょう。
③インバウンド対策
2021年は、延期された東京オリンピックが開催予定。また、新型コロナウイルス感染症の影響で激減した外国人観光客も、感染拡大がおさまれば徐々に増えていくでしょう。
そういった訪日外国人に対応するためのインバウンド対策も、外国人人材の活躍の場です。
外国人労働者の就労先は1位が宿泊業・飲食サービス業、2位が卸売業・小売業で、この2つを合わせると全体の40%にもなります。
④海外進出への足掛かり
事業の海外展開や、海外支店・工場などの設置を考えているなら、その場所の言葉や文化に精通した外国人人材が欠かせません。
海外との交渉や調整、通訳などを外国人人材が担うことで、海外進出がスムーズになります。
外国人受け入れのデメリット
外国人人材の受け入れには、日本人にはないデメリットもあるため、その点も押さえておきましょう。
- 雇用手続きが煩雑
- コミュニケーションの問題
- 生活習慣・文化の違いによるトラブル
- 特別な研修が必要になることも
①雇用手続きが煩雑
外国人が日本で働くためには、職種に合わせた「在留資格」が必要です。
一般的に「就労ビザ」と呼ばれるものですが、取得手続きには様々な書類の準備や面談が必要で、日本人の雇用にはない手間がかかります。
また、ビザの取得後にも更新・変更などの手続きが必要になり、外国人本人はもちろん、受け入れ側の会社も協力して管理していく必要があります。
②コミュニケーションの問題
外国人が日本で働くにあたって、もっともハードルになりやすいのが言葉の壁です。
言葉がわからないと仕事の指示などが通じないのはもちろん、雑談も生まれず人間の構築が難しくなります。
外国人を受け入れる際には、外国人への日本語教育はもちろんのこと、日本人も外国人に伝わりやすい話し方を学ぶ必要があります。
③生活習慣・文化の違いによるトラブル
外国人は、根本的な価値観や習慣が日本人とは違うことも。
日本で働く以上、仕事上で必要な部分は日本のやり方に合わせてもらうのが望ましいですが、それ以外の文化や宗教観については尊重するべきです。
外国人側・日本人側それぞれに適切な研修などを行い、相互理解に努めましょう。
④特別な研修が必要になることも
ここまでも触れてきましたが、日本人とは違うバックグラウンドを持つ外国人には、日本人の新人社員とは違う特別な研修が必要になることもあります。
語学研修や日本のビジネスマナー講習などはもちろんですが、日本に初めて来日・居住する外国人の場合、日本の生活習慣や役所等での手続き方法がわからない人も多いです。
社内に外国人の相談先になる担当者や窓口を設け、実際のニーズを取り入れながら必要な研修を行いましょう。
外国人労働者受け入れの流れ
ここからは、実際に外国人労働者を受け入れる際の流れについてお伝えします。
外国人労働者の雇用フロー
外国人を雇用するためには、通常の採用フローの他にビザの手続きが必要です。
外国人採用の方法や具体的な流れについて、詳しくはこちらをご覧ください。
- 募集・面接
- 在留資格・就労ビザ(見込み)確認
- 内定・雇用契約書作成
- 就労ビザ申請・変更
- 受け入れ体制作り
①募集・面接
まずは、日本人の採用と同じく募集・面接をして採用する人材を決定します。
日本人向けの採用サイト等では外国人からの応募は集まりにくいため、以下のような場所で募集するのがおすすめです。
- 日本語学校、外国人が多く通う大学
- 外国人版ハローワーク「外国人雇用サービスセンター
- 在留外国人向けのサイト
- 外国語の新聞・雑誌
- 外国人に特化した人材紹介サービス
応募が集まったら、採用決定に向けて選考を進めていきます。
面接では、日本人にも質問するような内容の他に、日本で働きたい理由や今後の展望、帰国予定などについても確認しておくといいでしょう。
また、条件面は初回ではっきりと伝えておくこと、会話のやりとりを通して日本語スキルを測ることも大切です。
外国人候補者との面接については、こちらをご覧ください。
②在留資格・就労ビザ(見込み)確認
在留資格や就労ビザの取得見込みについては、採用する人材を決定する前に確認しておきましょう。
就労ビザは、種類によっては学歴や職歴要件があり、それを満たしていないと日本で働くことができません。
採用を決定してからビザが降りないことがわかると、選考の手間が無駄になってしまいます。
募集職種に必要なビザとその取得要件、応募者に取得見込みがあるかどうかは、早い段階で確認するのがおすすめです。
就労ビザについて詳しくは、こちらをご覧ください。
③内定・雇用契約書作成
採用したい外国人人材が決定したら、内定を出し、雇用契約書を作成します。
日本の法律では雇用契約書の作成は義務ではないのですが、外国人は契約書の内容を重視して働くことが多いため、用意した方が後のトラブルを防げます。
また、この雇用契約書は次の就労ビザ申請でも必要になります。
④就労ビザ申請・変更
採用する外国人人材が就労ビザを持っていない場合は新規申請、すでに持っているものの採用した職種と合致していない場合は変更手続きが必要です。
これらの手続きは、出入国在留管理局に必要書類を提出して行います。
現在の在留資格の内容や、外国人の経歴、会社の規模などによって必要な書類は異なるため、ケースごとに必要なものを確認しましょう。
提出後には審査が行われ、新規申請の場合はビザ発給までに1〜3ヶ月ほどの期間がかかります。
ビザの変更方法について詳しくは、こちらをご覧ください。
⑤受け入れ体制作り
ビザの手続きと並行して、社内に外国人の受け入れ体制を整えます。
既存の社員に外国人が入社することを周知し、特に直属の上司や指導係になる人は、外国人とのコミュニケーション方法を学ぶ必要があるでしょう。
日本に住居がない外国人の場合は、住居の用意も必要です。
また、外国人向けの仕事マニュアルや、社内掲示の外国語表記なども、受け入れ準備の一部です。
入社後に必要な届出
雇用対策法により、外国人(外交・公用ビザ以外)を雇用している事業者は、外国人の採用と離職の際にハローワークへの届け出が義務付けられています。
内容は採用した外国人の氏名・在留資格・在留期間などで、正社員・ アルバイト問わず必須です。
また、外国人に発行される就労ビザは、1年・3年・5年の期限付きです。
その期間を超えて外国人を継続雇用したい場合には、更新手続きを行わなければなりません。
もちろん本人も期限を把握しておく必要がありますが、企業側も定期的に見直しを行って更新手続きを促すなどのサポートを行いましょう。
外国人受け入れで受給できる助成金
外国人を受け入れる際、条件によっては以下の助成金を利用できる可能性があります。
- キャリアアップ助成金 諸手当制度共通化コース
- キャリアアップ助成金 正社員転換コース
- 時間外労働改善助成金 勤務間インターバルコース
- 時間外労働改善助成金 人材確保等支援助成金・働き方改革支援コース
- 人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)
また、自治体によっては独自の補助金・助成金を実施していることも。
申請するだけで採用コスト削減に役立つ可能性がありますので、助成金の利用も検討してみましょう。
外国人受け入れのポイント
外国人を受け入れる際には、まず就労資格の確認が必須になります。
就労資格がない外国人を働かせたり、実際の職種と就労ビザの種類が違ったりすると、不法就労になってしまいます。
そうなると、外国人は最悪の場合退去強制、雇用していた事業者側も3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、
またはその両方を課せられるため、注意が必要です。
また、外国人労働者が増えるのに比例して、トラブルの数も増えています。
もちろん国籍や人種差別はあってはならないことですが、日本人の中でも様々な考えがあるなかで、
全員の意識をアップデートするのは簡単ではありません。
また、悪気がなくても、文化の違いから日本人と外国人の間に溝ができてしまうことも。
研修や社内イベントなどを通して、地道に相互理解を深めていくよう努めましょう。
国内企業が現在抱えている外国人採用の課題については、下記の関連記事でも詳しく解説しています。
まとめ
外国人労働者を受け入れると、社内に新しい風を吹き込むことができ、人材不足の解消にもなります。
しかし、ビザの申請など日本人の採用にはないステップもあるため、採用担当者は受け入れの流れをしっかり理解しておきましょう。
また、外国人がトラブルなく働けるよう、適切な研修や社内の環境作りも重要です。









