外国人が高卒で就労ビザを取得するのは可能?日本で働くための必要条件を解説

就労ビザは、種類によって求められる条件が違います。
中には学歴要件が定められているものもあり、高卒の外国人には取得できないものも。

しかし、学歴要件を満たさない外国人も、職歴でカバーして就労ビザを取得する方法があります。
今回は、高卒の外国人の就労ビザ取得条件や、それぞれのビザに求められる学歴について詳しく見ていきましょう。

高卒で就労ビザを取得することは可能?

就労ビザの取得に求められる最終学歴は、ビザの種類によって異なります。
まずは、外国人が日本で就労ビザを取得するための基本条件を確認していきましょう。

就労ビザは28種類の在留資格のうちの18種類

就労ビザとは、外国人に与えられる在留資格のうち、就労資格が認められているものの総称です。
一般的には就労できる職種が限定されている17種類の就労ビザと、優れた人材のみが取得できる高度専門職ビザを合わせた18種類の在留資格を就労ビザと呼びます。

実際には、永住権や日本人の配偶者などの在留資格にも就労資格が認められていますが、制度や取得条件が違うため就労ビザとは分けて考えることが多いです。

就労ビザを取得するための条件

就労ビザを取得するための条件は、種類によって異なります。
しかし、全ての就労ビザに共通しているのは以下の条件です。

  • 職務内容に関する資格・学歴・職歴がある
  • 素行が良好である
  • 受け入れ企業に安定性・収益性がある
  • 雇用に必要性がある

この、「職務内容に関する資格・学歴・職歴」というのが、就労ビザの種類によって異なる点です。

例えば、「技術・人文知識・国際業務」に必要な学歴・職歴は、「大学・大学院の卒業または本国における同等の学校の卒業」または「10年以上の職歴」。つまり、高卒の外国人は、10年以上の職歴がない限り技術・人文知識・国際業務ビザは取得できないのです。

対して「特定技能」の就労ビザは、「特定技能試験」または「技能実習2号」に合格していれば学歴・職歴要件はありません。
就労ビザを取得するために必要な資格や学歴、高卒でも取得できるかどうかは、ビザの種類によって決まるのです。

卒業証明書の見方

外国人の卒業証明書を見れば、その人にどんな学歴があるかが一目でわかります。

Associate
準学士。短期大学または高等専門学校卒業。
Bachelor
学士。大学卒業。
Master
修士。大学院の前期課程を修了。
Doctor
博士。大学院の後期課程を修了。

高卒の学歴には上記のような称号はありませんが、高校の卒業証明書が提出できる外国人には高卒の学歴があると思っていいでしょう。
また、高校を卒業していない場合も、アメリカやカナダの「GED」のように高卒相当の学力を証明する試験もあります。

高卒では取得できない就労ビザ

就労ビザの中には、高卒では取得ができないものもあります。
それぞれの種類や、学歴が必要な理由を見ていきましょう。

大学以上の学歴が必要な在留資格の条件

大卒以外の学歴が必要な在留資格は、高度な知識を必要とする仕事です。

具体的には、

  • 人文知識・国際業務
  • 研究
  • 教育
  • 技術

の4つのビザで、大卒以上の学歴が取得の基本要件として定められています。

①在留資格:人文知識・国際業務

人文知識・国際業務ビザは、経理・営業・企画・デザイナー・通訳などの仕事が当てはまる就労ビザです。
日本で働く外国人のオフィスワーカーは、ほとんどこの就労ビザを持っています。

この就労ビザを取得するには、日本または海外の大学・大学院で、経済学・法律学など文系の学部を卒業する必要があります。

②在留資格:研究

研究ビザは、国や地方公共団体の機関・特殊法人と契約して、研究員として働く外国人が取得するものです。
研究ビザを取得するには、研究分野に関連した大学・大学院を卒業する必要があります。

③在留資格:教育

教育ビザは、小・中・高等学校、専修学校などで、教師として働く場合に必要な就労ビザです。
こちらも、教えようとする科目に関連した大学・大学院の卒業が必須条件です。

④在留資格:技術

技術ビザは別名エンジニアビザとも呼ばれ、理学や工学のエンジニアが取得するビザです。
従事する仕事に関連した大学・大学院の学歴が必要になります。

高卒でも就労ビザが取得できるケースも

学歴要件を満たしていない高卒の外国人でも、他の要件で就労ビザが取得可能な場合があります。
学歴以外で、就労ビザの取得に必要な条件を見ていきましょう。

大学卒業が条件にはなっていない在留資格

以下の就労ビザは学歴要件が定められていないため、高卒の外国人も問題なく取得できます。

  • 教授
  • 芸術
  • 宗教
  • 報道
  • 経営・管理
  • 法律・会計業務
  • 医療
  • 企業内転勤
  • 介護
  • 興行
  • 技能
  • 特定技能
  • 技能実習
  • 高度専門職

「教授」「法律・会計業務」など、実質的には高卒では取得が難しい就労ビザもありますが、ルール上は学歴要件がないため高卒でも取得可能です。

10年以上の実務経験が必要

前の項目で解説した「高卒では取得できない就労ビザ」では、取得要件が以下のように定められています。

・関連する科目を専攻し、大学を卒業し、またはこれと同等以上の教育を受けたこと
・関連する科目を専攻し「本邦」の専修学校の専門課程を修了したこと
・10年以上の実務経験を有すること
・以上のいずれかを満たしていること

求められている条件は、学歴か職歴の「いずれか」。つまり、10年以上の実務経験があれば学歴要件は不要で、高卒でもこれらの就労ビザを取得することができるのです。

在職証明書を発行してもらう

10年以上の実務経験は、自己申告だけでは証明できません。現在所属している会社、または過去に所属していた会社で、在職証明書を発行してもらう必要があります。

そして、日本で取得しようとする就労ビザと同じ職種で計10年以上の職歴が認められれば、職歴要件を満たしていることになります。
また、必ずしも学歴・職歴が必要でない就労ビザでも、在職証明書で仕事の経験が証明できれば審査で有利になります。

高卒で就労ビザありの外国人を雇う時に気をつけること

すでに就労ビザを持っていて日本に在留している外国人の場合、少なくとも取得時には就労ビザの取得要件を満たしていたということ。
そのため、学歴が高卒であっても、資格・試験・職歴などの要件をクリアしているということなので、雇用に問題はありません。

しかし、就労ビザで認められている職務内容とこれから就く職務内容が違う場合には、在留資格の変更申請が必要です。

すでにお伝えしたように、就労ビザは種類によって求められる条件が違うため、高卒の外国人は就労ビザの資格変更ができない場合があります。
例えば、「特定技能」ビザで飲食業に従事していた高卒の外国人を、新たに事務職として採用したい場合、変更後の「人文知識・国際業務」のビザには大卒以上の学歴が必須です。

このように、高卒の外国人は就労ビザの変更申請がスムーズにできない場合があります。
採用したい外国人が高卒の場合、在留資格の内容と、変更申請の可否には気をつけておきましょう。

まとめ

学歴要件のない就労ビザは高卒の外国人でも問題なく取得できます。ただし、「人文知識・国際業務」「研究」「教育」「技術」のビザには大卒以上の学歴要件があるため、高卒の外国人は取得できません。

しかしそれらのビザも、10年以上の実務経験があれば取得が可能です。
高卒の外国人を雇用する場合には、資格の変更がスムーズにできない場合があるため、就業ビザの資格と職務内容をしっかり確認するようにしましょう。

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