日本は、女性の大学進学率が非常に高いにも関わらず、世界的に見ても女性の正社員就職率が少ない国です。
少子高齢化による慢性的な人手不足の中で、女性の活躍推進は大きな課題となっています。
今回は、女性が就職しても短期間で離職してしまう理由について解説。
女性が活躍できない会社の特徴から見る改善方法や、女性社員を部下に持つ男性上司へのアドバイスも掲載します。
この記事の目次
女性社員の実態と離職理由
まずは、日本社会で働く女性の現状と、女性社員に多い離職理由についてお伝えします。
女性社員雇用のメリット
女性社員を雇用するメリットは、優秀な人材の獲得が比較的容易なこと。
日本は女性の大学進学率が世界第3位ですが、大学を卒業したものの就職しない女性は約31%。
日本の男性と比べると23%、先進諸国の女性と比べると11%の差があります。
採用活動における男女差別は本来禁止されていますが、慣例的に男性中心になっている職種でも女性活用に目を向けることで、優秀な社員を獲得しやすくなるのです。
実際の事例を挙げると、セブン&アイホールディングスは2012年から「ダイバーシティ推進プロジェクト」を設置し、2018年に女性管理職比率32.6%を達成。
顧客の中心となる女性に近い目線で、商品開発やサービスの展開を行うことで、業績を伸ばしています。
女性社員の割合
平成30年の厚生労働省の調査によると、労働力人口総数に占める女性の割合は44.1%。
しかし、そのうち非正規雇用の労働者の割合は56.0%で、正規雇用の女性社員は労働者全体の23.8%ということになります。
これに比べて、全体における男性労働者の割合は55.9%、そのうち非正規雇用の割合は22.2%なので、男性の正社員は労働者全体の43.4%。
正規雇用の女性社員の数は、正規雇用の男性の半分程度となっています。
参照:https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/josei-jitsujo/dl/18-01.pdf
女性社員はなぜ離職するか
女性社員の離職理由としては、以下のものが挙げられます。
-
- 結婚・出産・育児・介護など家庭の事情
-
- 賃金水準の男女差
-
- 女性のキャリアアップが期待できない
男女平等が推進され、共働きも当たり前になっている昨今ですが、やはり出産や育児には女性側の負担が大きくなることは避けられません。
産前・産後は働くことができないので、そのタイミングで離職する女性はとても多いです。
また、育児や介護などの都合で夫婦どちらかが仕事を辞めざるをえない場合、賃金水準の男女差から、妻側が仕事を辞めるケースが多数。
さらに、そのために女性の管理職が育ちにくく、前例がないことから女性が出世しにくい企業があるのも事実です。
女性社員が活躍できない企業の特徴
それでは、女性が活躍できない企業にはどのような特徴があるのかを知っていきましょう。
①女性が少ない
そもそも女性が少ない企業だと、女性の意見は少数派になるので通りづらく、制度などの整備が進みにくいです。
女性にとって働きにくい職場では、せっかく入社した女性社員も居付かず、いつまでたっても女性活用が進まない悪循環になります。
②女性管理職がいない
女性管理職がいない職場だと、長く働きたいと思って入社した女性社員も自分の将来像を描きにくいです。
昇進・昇格で男女差別をしないことはもちろん、中途採用などで発言力のあるポジションに女性を登用することで、女性活躍の実績を付けていくことができます。
③女性の平均年齢が低い
女性の平均年齢が低い企業では、女性が結婚や出産を機に退職するのが慣例になっていることが多いです。
女性社員の平均在籍年数が短い会社、20〜30代女性の離職率が高い会社では、産休・育休制度やリモートワークなど、既婚女性の働きやすい環境づくりが重要になります。
④産休育休制度の不備・利用率が低い
会社によっては、産休・育休制度があっても形だけで、利用実績がないというケースも珍しくありません。
また、既婚女性を責任のあるポジションから外したり、育休が明けて復帰しても元の役職には戻れなかったりと、不当な扱いをする会社も。
子供のいる女性社員が産前と同じように働くのは難しい場面もあるのも確かですが、そのリスクを前もって回避するような会社では女性が働きづらく、離職率が高くなってしまうのです。
⑤新卒重視主義
結婚によって住む場所が変わったり、子育てがひと段落して落ち着いたタイミングで働き始めたいと思っている女性は多いです。
しかし、日本では新卒社員を重視する傾向が強く、キャリアにブランクがあると就職が難しくなります。
年齢に見合う経験がなくても、新卒やそれに近い扱いで教育していく風土があれば、働きたい女性が活躍できるシーンは大きく広がるでしょう。
女性社員に信頼される上司とは?育て方のコツ
それでは、部下に女性社員を持った場合の、接し方や育て方のコツをお伝えします。
①話をよく聞く
もちろん個人差はありますが、女性は男性に比べてコミュニケーションを重視する人が多いと言われています。
相談ごとの場合、男性が求めているのは「解決策」、女性が求めているのは「共感」というのも、よく聞かれる言葉です。
上司として女性社員に接する時には、このことを頭に置いて話をよく聞き、共感を示しつつアドバイスなどをするとスムーズに話が進みやすいです。
②ねぎらいの言葉をかける
結果だけではなく過程を見て、うまくいかなくてもねぎらいの言葉をかけるのも女性社員を育てるコツ。
ただし、むやみに褒めても「舐められている」と思われかねないので、本当に評価するべき部分や、努力が見られる部分についてピンポイントでコメントしましょう。
女性はプロセスを大事にする傾向があるので、しっかり自分を見ていてくれている上司には信頼をおきやすいです。
③非があれば謝る
女性社員は、男性上司にとって「女性+部下」ということで特に弱い立場に置かれやすいです。
自分に非がある場合も、下に見ている相手にはプライドが邪魔して謝りにくいかもしれません。
しかし、そのようなことが一度でもあると、上司と部下の間の信頼関係は失われてしまいます。
すぐに非を認められるのが理想的ですが、時間が経ってしまった場合でも「あの時は悪かった」としっかり謝れるようにしましょう。
④みんなを平等に扱う
女性社員は、女性だからといって特別扱いされたいとは思っていません。
女性社員を下に見て、お茶出しや雑用をさせるといった時代錯誤な扱いはもちろん、女性だからといってむやみに持ち上げるのも軋轢の元になります。
もちろん、女性社員同士を容姿や年齢で比べるのももってのほかです。
同じポジションの社員は、性別や年齢にとらわれず平等に扱うべきです。
自分に直接関わらない状況でも、女性は不平等に敏感です。
個人的な理由で上司が部下を選んで接しているように見受けられる等、平等性のない上司は信頼を置かれにくいと言えます。
女性社員のモチベーションを下げる一言とは?
男性上司にとっては何気ない言葉でも、女性社員の受け取り方によってはモチベーションが下がってしまうNGワードも。
どんな言葉が女性社員のモチベーションを下げるのか、一例をご紹介します。
-
- (仕事の完了報告などを受けて)「あ、そう」:仕事を完了したプロセスに注目して、「ありがとう」「ご苦労様」などねぎらいの言葉を。
-
- 「今日は早く帰りなさい」:疎外感を与えないよう、「何の件で残っているの?」「残業続きだけど体調は大丈夫?」など、相手を気に掛ける言葉に変える。
-
- 「(他の人と比べて)まだまだだな」:能力は人それぞれなので、他の社員と比べることはしない。「まだミスはあるけど、いつかできるようになる」などプロセスを認めつつ励ましの言葉を。
女性社員を定着・活躍させるには
最後に、女性社員を定着・活躍させるための施策としては、以下のものが考えられます。
女性面接官登用
採用に女性面接官を登用すると、求職者の女性も自分のキャリアプランを描きやすいです。
また、選考フローの中で女性目線での就業状況などを伝えておくことで、入社後のミスマッチを防ぐことができます。
職場の環境・制度整備
女性が働きやすい職場の環境や制度整備も、重要なポイントです。
特に離職の理由となりやすい、結婚・出産・育児といったライフステージの変わり目に着目すると、若い女性社員の離職を防げるでしょう。
具体的には、育児休業はもちろん、フレキシブルな有給休暇制度、フレックスタイム制度の導入などが挙げられます。
他にも空調設備や、休憩室、トイレなどのスペース等の環境改善も女性にとっては非常に重要な要素となります。
定期的な面談
定期的な面談でコミュニケーションを取るのも、一人ひとりの女性社員の状況を把握するのに役立ちます。
家庭や子供の事情など、女性が抱える問題は常に変化していきます。
ですので、定期的に面談で状況を把握することが重要です。
希望するキャリアプランや、仕事中には話しにくい家庭の事情など、解決策を一緒に考えてくれる職場には安心して長く籍を置くことができるでしょう。
まとめ
女性社員の活用は、多くの企業で課題となっています。
出産や子育て、体力的な事情など男性と違った面はありますが、正社員として働くことを希望している女性は多いです。
女性が活躍できる職場環境を整えることも、労働力不足の中での人材確保に役立ちます。