定着率とは、会社に入社した社員の勤続者・離職者の割合から算出する指標。
定着率の高い企業ほど、離職者が少なく働きやすい会社ということになります。
今回は、定着率の計算方法や定着率向上のメリットを解説。
定着率が高い会社の特徴や、定着率の改善のためにできる施策についてもお伝えします。
この記事の目次
定着率の概要
定着率とは、「入社した社員がどのくらいの確率で会社に定着しているか」を表す数値。
定着率が高い会社ほど、長く勤める社員が多い優良企業ということになります。
定着率と離職率
定着率と逆の意味を持つ言葉が、離職率です。
例えば10人の新入社員のうち、1年後に残っている社員が7人、辞めた社員が3人だとすると、1年目の定着率は70%・離職率は30%になります。
このように、対象となる集団と期間が同じ場合、定着率と離職率を足すと100%になります。
定着率の計算方法と現状
定着率は、以下の式で計算できます。
「一定期間」は特に定められておらず、1年・3年・5年など必要に応じて決めて算出します。
また、対象となる集団も「会社全体」「新入社員」「管理職」など様々です。
ちなみに、離職率は「一定期間で辞めた人数÷一定期間の開始時の人数×100」または「100−定着率(%)」で求めます。
もちろん業界や年代によって異なりますが、平成30年度の日本の平均離職率は14.6%。
定着率は、85.4%が平均ということになります。
外国人労働者の定着率
外国人労働者は、もともと将来的には帰国する予定で日本で働いていたり、ビザの更新ができないと帰国せざるを得なかったりして、日本人よりも定着率が低いです。
また、海外では日本より人材の流動性が高く転職が当たり前で、最初に入社した会社への平均勤務年数は3年未満といわれています。
そのため、入社から3年以内にステップアップの目処が立たないと会社を離れる人材が多く、「若い頃は下積み」という考えの企業では外国人の定着率が低くなりがちです。
定着率を上げる4つのメリット
それでは、人材の定着率を上げることの4つのメリットをお伝えします。
①採用・教育コストを下げる
定着率を上げるメリット1つ目は、採用と教育のコストが節約できること。
離職者が出ると、穴埋めのための人材を再度採用し、教育し直さなければいけません。
人材1人あたりにかかる採用コストの平は、新卒採用で72.6万円、中途採用で84.8万円です。
さらに研修費用や、教育担当になる社員の生産性の低下、人材が戦力になるまでの期間なども考えると、離職者を出さないことで節約できるコストはかなり大きくなります。
②優秀な人材の流出を防ぐ
定着率が高ければ、優秀な人材を長期間自社に留めることができます。
人材の流出は、労働力の不足を招くだけではなく、仕事ノウハウの流出にも繋がります。
また、経験豊富な社員が多ければ生産性も高くなりやすく、業績の向上が期待できます。
離職者が出てしまうことは、単に人がいなくなるという以上の損失なのです。
③従業員のモチベーションを保つ
離職者が出ると、周囲の社員のモチベーションが下がり、さらなる離職者を呼ぶと言われています。
その理由は、「あの人が辞めるなら自分も」と転職に意識が向きやすくなることや、離職者の仕事を押し付けられて負担がかかることなど様々。
定着率が高ければ、離職の連鎖を防ぐことができ、さらなる定着率の向上に繋がるのです。
④企業の組織力を強める
長く働いている人材が多いと、当然のことながら社内の人間関係や仕事の連携が強固になります。
また、社内に仕事のノウハウが蓄積しやすくなり、生産性の向上にも繋がります。
逆に定着率が低ければ、社員間の信頼関係も仕事のノウハウもなく、生産性や業績は低下していきます。
定着率を向上することで、企業の組織力を強くすることができるのです。
定着率が高い会社・低い会社の特徴
それでは、どのような要因が定着率の向上・低下に繋がるのかを、定着率が高い会社・低い会社の特徴から知っていきましょう。
定着率が高い会社の特徴
定着率が高い会社の特徴は、当然のことながら「社員が長く働きたいと思える、働きやすい会社」です。
重視するポイントは人それぞれですが、「働きやすさ」を構成する要素は以下のようなもの。
-
- 同業他社より賃金が高い
-
- 福利厚生が整っている
-
- 業界・会社に将来性がある
-
- 過重労働がない
-
- 社内の人間関係が良い
-
- ライフスタイルに合わせた働き方ができる
など
- ライフスタイルに合わせた働き方ができる
このように、就労環境を整え、一度入社したら離れたくないと思える企業は、定着率が向上していきます。
定着率が低い会社の特徴
定着率が低い会社は、就労環境に問題があり、社員が働き続けたくない会社ということです。
定着率が低い会社の特徴として、以下のことが挙げられます。
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- 賃金水準・福利厚生が充実していない
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- キャリアパスが明確になっていない
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- 労働基準法などの法律を遵守していない
-
- 業界・会社に将来性がない
-
- ハラスメントが横行している
など
また、「採用時の条件と実際の条件が違う」「若手や入社間もない社員に意義のある仕事を任せない」など早期離職を招く会社も、定着率がなかなか向上しないでしょう。
定着率向上のために企業が行えること
最後に、企業が定着率向上のために行える8つの施策についてお伝えします。
入社までにできること
そもそも、早期離職をする社員が入社することがなければ、定着率を底上げすることができます。
まずは入社前に、採用時点で見極めを行うことが重要です。
①企業の方向性を明確にする
企業の方向性が曖昧だと、そもそもどんな人材を採用すれば良いのかも曖昧になります。
採用活動を始める前に、会社が目指す姿や、そのために必要な人材像などを明確にするのが重要です。
「とにかく人数を揃える」という考え方の採用では、ミスマッチが多く効率が悪くなってしまいます。
②採用サイトの充実
採用したい人材像が決まったら、その人材に効果的にアピールすることが重要になります。
多くの求職者にとって、最初の窓口となるのが採用サイト。
採用したい人材に訴求できるデザインにしたり、会社の理念・求める人物像などを詳細に伝えることで、長く働ける優秀な人材の獲得に繋がります。
③募集・選考でミスマッチを防ぐ
定着する人材を見極めるためにもっとも重要ともいえるのが、募集や選考です。
表面を取り繕って人材を採用しても、入社後の社内実像とかけ離れていると早期離職を招きます。
採用フローの中で、会社の実情をできるだけリアルに知ってもらい、納得した人材に入社してもらうことも大切です。
入社後にできること
入社後のフォローも、定着率の向上のためには重要となります。
④能力にあった部署に配置
離職理由として「仕事が自分に合っていない」と言う人は、とても多いです。
人材の性格や能力を見極め、その人の個性を活かせる部署に配属することで、ミスマッチによる離職を防ぐことができます。
また、活躍しきれていない社員がいる場合や、離職の打診があった時には、配置換えを検討するのも一つの方法です。
⑤社員間のコミュニケーションの充実
社内の人間関係は、離職理由にも、離職を踏み留まる理由にもなります。
社員間のコミュニケーションを活発にし、良い人間関係を作ることで、定着率の向上が図れます。
もちろん社員同士の相性も重要ですが、面談の機会を設定する、交流イベントを開催する、会食や飲み会の予算を増やすなど、会社側からコミュニケーションを促すことも可能です。
⑥労働環境・昇給制度の整備
働きやすい労働環境や、長く勤めたいと思える昇給制度の整備は、何より定着率を高める要素になります。
例えば、産休・育休制度が充実した会社であれば、子供を持ちたいと考えている社員も安心して勤められ、20〜40代の子育て世代の定着率向上に繋がるでしょう。
また、若手社員にも責任ある仕事を任せたり、スキル向上に繋がる研修を行ったりと、やりがいや成長を感じられる環境作りも重要です。
他にも、他社の先進的な制度を参考にしたり、社員にアンケートを行ったりと、社員が求める制度を取り入れていくことで働きやすい環境が作れます。
⑦長期的かつ具体的なキャリアプランの共有
将来的な昇給や昇格が具体的に見えていれば、長く働き続けるモチベーションになります。
実際の社員のキャリアパスや、社内試験の通過条件、資格取得による手当てなど、自分自身の将来像が具体的に想像できるキャリアプランを共有しましょう。
また、社員個人だけではなく会社としての成長プランを提示していくことも重要です。
⑧ワークライフバランスの充実
やりがいがある仕事でも、私生活を犠牲にしてまで勤めたくないという人は多いです。
仕事が多すぎてプライベートの時間を取れない会社では転職者が多くなりがちですし、体調や精神面を崩しての離職も考えられます。
勤怠管理などで過重労働を防止することも、定着率の向上には重要なのです。
まとめ
会社は社員が形作るものですから、定着率の向上はさまざまな形で会社の業績や組織力に影響します。
コスト面や効率面でのメリットも大きいので、定着率の改善にはどの企業も積極的に取り組むべきです。
今回ご紹介した定着率向上のポイントを、ぜひ参考にしてみてください。