近年、人事領域で「エンゲージメント」という言葉を耳にすることが多くなってきました。
日本で認識されだしたのは最近ですが、エンゲージメントは海外では以前からポピュラーな考え方です。
人材の流動性が高まっている昨今、エンゲージメントは人材確保のためにとても重要な要素。
日本人・外国人問わず、従業員の定着率・従業員満足度や生産性を上げるために、ぜひご一読ください。
この記事の目次
エンゲージメントとは
「エンゲージメント」は、日本企業の人事領域で近年広まってきた言葉です。
まずは、「耳にしたことはあるけれど、いまいち意味がわかっていない」という方のために、エンゲージメントとはそもそも何を意味するのかを解説していきます。
人事におけるエンゲージメント
日本の企業が「エンゲージメント」という言葉に注目し始めたのはごく最近ですが、海外では以前からポピュラーな考え方です。
エンゲージメントは、直訳すると「約束」「契約」「雇用」など多様な意味を持つ言葉です。
このうち、人事領域で使われるのともっとも近い意味合いなのは、「(歯車などの)かみ合い」。従業員の会社に対しての愛着心や思い入れ、会社と従業員との繋がりの強さなどを意味する言葉です。
もっと踏み込んだ考え方だと「個人と組織が一体となり、双方の成長に貢献しあう関係」という捉え方もあります。
従業員エンゲージメント
エンゲージメントと似た言葉として、「従業員満足度」「ロイヤルティ」などの言葉があります。
それぞれの用語の意味は、以下の通り。
・従業員満足度:従業員の、待遇や環境、報酬などに対する満足度を示す
・ロイヤルティ:「忠誠心」を意味し、従業員の企業に対する忠実度を指す
これらの言葉との違いは、エンゲージメントが「双方向的な関係」であることです。
従業員満足度は会社が一方的に従業員に与えるものに対して、従業員がどのように感じているかという指標。
逆にロイヤルティは、従業員が一方的に会社に抱いている忠誠心の指標となっています。
エンゲージメントはこれらとは違い、会社と従業員が双方向に信頼・貢献しあい、愛着心や思い入れを持っているかどうかの指標として使われます。
マーケティングにおけるエンゲージメントとは
人事領域だけではなく、マーケティング領域でも「エンゲージメント」という言葉が使われることがあります。
これは、企業や商品と消費者との結びつきを表す言葉です。
今回は、人事におけるエンゲージメント(従業員エンゲージメント)について解説しますので、マーケティング領域のエンゲージメントについては触れずにおきます。
従業員エンゲージメントが上がることによる効果
それでは、従業員エンゲージメントが上がると、どのような効果があるのでしょうか。
従業員エンゲージメントが高い会社では、単に従業員が満足して働けるだけではなく、業績や顧客満足度にも良い影響を及ぼします。
従業員のモチベーションがアップする
エンゲージメントが高まるのは、従業員が仕事を通じて成長し、組織に貢献できている、期待を受けたり必要とされたりという実感があるときです。
このような状態だと、より仕事に対する意欲が高まるのは誰でも同じ。従業員のモチベーションとエンゲージメントには、切っても切れない繋がりがあるのです。
離職率が下がる
エンゲージメントが高い企業は、離職率が低いです。
「エンゲージメントが高い=従業員が会社に愛着・思い入れを持っている」という状態なので、その会社を自ら離れたい人が少ないのは当然ですね。
離職率の高さに悩んでいる企業は、エンゲージメントに注目した施策を実施するといいでしょう。
生産性が改善され、売上が上がる
エンゲージメントが高い企業では、従業員が企業の方向性やビジョンに共感していることを示します。
自分と企業が目指している方向が同じなので、従業員は自然と職務上やるべきことを自発的に探し、積極的に課題解決に取り組む姿勢を持つことになります。
一人ひとりが自主性を持って業務に当たることが、生産性や売上の向上に繋がるのです。
顧客満足度が上がる
エンゲージメントの強化は、顧客満足度の向上にも繋がります。
従業員に「自分の会社の商品やサービスを、自信を持って勧められない」という気持ちがあると、どうしても顧客側にもそれが伝わります。
繰り返しになりますが、エンゲージメントが高い状態とは、会社と従業員が同じ方向を向いて仕事をしているということ。
エンゲージメントが高まると、仕事に対する意欲が自然と顧客にも伝わり、顧客満足度も同時に向上するのです。
エンゲージメントの測定方法とは
エンゲージメントには、はっきりした定義や基準がないため、決まった測定方法もありません。
まずはそれぞれの企業が、自社にとってのエンゲージメントの定義を定め、それに即した方法で調査をする必要があります。
アンケート調査を行う
エンゲージメントには従業員一人ひとりの主観が大切になるので、基本的な調査方法はアンケートとなります。
頻度としては、月1回〜半年に1回くらいの企業が多いです。
アンケートでは本心ではない回答もできることから、心拍数や体温といった生体データから体調・仕事に対する意欲などを測る方法も。
他には、タイピングの速度や、仕事中の表情から集中度や没頭具合を測定する方法もあります。
ただし、これらの方法は導入コストが高く、従業員のプライバシーにも関わることなので、現実的には実施が難しい企業が多いでしょう。
そのため、やはり低コストかつすぐ導入可能なエンゲージメントの調査方法としては、アンケート調査がメインとなります。
エンゲージメント調査の設問例
アンケート調査は、質問される側にとっても集計する側にとっても、質問数が少ないほど時間的コストが節約できます。
設問数が100を超えるようなアンケートもありますが、実際は2〜15問程度が妥当でしょう。
エンゲージメント調査の設問例としては、以下のようなものがあります。
【スケール評価・フリーコメント制の設問】
・あなたはこの職場を友人・知人にどの程度すすめたいですか?(10段階評価)
・上記の質問でそのスコア選んだ理由を教えてください。(フリーコメント)
【YES・NOの2択の設問】
・職場で自分が何を期待されているのかを知っている
・仕事をうまく行うために必要な材料や道具を与えられている
・職場で最も得意なことをする機会を毎日与えられている
・この7日間のうちに、よい仕事をしたと認められたり、褒められたりした
・上司や誰かが、自分をひとりの人間として気にかけてくれている
・職場の誰かが自分の成長を促してくれる
・職場で自分の意見が尊重されているようだ
・会社の使命や目的が、自分の仕事は重要だと感じさせてくれる
・同僚・上司が真剣に質の高い仕事をしようとしている
・職場に親友がいる
・この6カ月のうちに、職場の誰かが自分の進歩について話してくれた
・この1年のうちに、仕事について学び、成長する機会があった
エンゲージメントを上げるには
最後に、エンゲージメントを高めるために、会社ができる施策を4つご紹介します。
企業理念やビジョンを明確にする
企業理念やビジョンが明確であることは、エンゲージメントを高めるための第一歩です。
エンゲージメントは会社と従業員が同じ方向を向いて仕事をすることから生まれるので、会社の方向性が定まっていないとそもそもの基準が曖昧になってしまいます。
普段、会社のトップが現場と関わることが少ないなら、メッセージや考えていることを積極的に従業員に伝えていきましょう。
また、会社の方向性を理解し、共感してくれる社員を採用することも、エンゲージメント強化に繋がります。
企業の慣習や労働環境を見直す
どんなに素晴らしい理念を持っている会社でも、悪しき慣習があったり、労働環境が厳しかったりすると社員の共感を集めることができません。
会社の理念の実現を目指しつつ、従業員が快適に働ける環境を整えることで、エンゲージメントが高まるのです。
会社の考えを押し付けるだけではなく、従業員の意見も取り入れる双方向的な施策が、エンゲージメント強化には重要です。
評価やフィードバックを適切に行う
エンゲージメントには、「仕事のやりがい」や「成長・貢献できている実感」が深く関わっています。
そのため、一人ひとりに対する評価やフィードバックを実施することで、従業員のモチベーションアップに繋がります。
ただし、評価の基準が曖昧、甘すぎ・厳しすぎの評価は「不当」と感じられ、エンゲージメント低下の原因になることも。
妥当かつ平等な評価基準を定め、適切に従業員を評価していくことが大切です。
コミュニケーションを積極的にとる
エンゲージメント強化には、会社が従業員の考えを知っていることが大切です。
従業員の本音を知らないまま新制度を実施しても、従業員にはまったくありがたくない的外れな施策ということも。
先にお伝えしたアンケート調査を含めたコミュニケーションを積極的に取り、従業員が本当に求めていることを知る必要があるのです。
まとめ
エンゲージメントは、企業と従業員の双方向的な繋がりを示すものです。
まずは企業の理念やビジョンを明確にし、従業員にそれに共感してもらうことがエンゲージメント強化の第一歩となります。
その上で、正当な評価制度や従業員の成長サポートなどの施策で、エンゲージメントを高めることが大切です。
エンゲージメントが高まると、人材の定着率や仕事に対するモチベーション、顧客満足度の向上など、様々な良い効果が生まれますよ。