IT市場の拡大により、エンジニアやIT人材のニーズは急速に高まっています。
しかし、日本は少子高齢化の影響で、労働力自体が減少傾向。今後、企業がエンジニアを確保するためには、様々な工夫が必要になります。
今回は、日本の現在のエンジニア人口と将来の見通し、企業がIT人材を確保するための方法などについて解説いたします。
この記事の目次
IT人材・ITエンジニアの定義
中小企業庁では、広義のIT人材とは「クラウドや各ツールを使って情報システムの導入・推進・運用をする人材」としています。
その中で、ITエンジニアとは、コンピューターやデータ通信の企画・研究開発・プロジェクト管理・運用保守・サポートなどを行う技術者のこと。
具体的な職種を挙げると、以下のようなものがあります。
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- システムエンジニア(SE)
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- プログラマー(PG)
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- ネットワークエンジニア
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- テストエンジニア
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- サーバーエンジニア
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- セキュリティエンジニア
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- データベースエンジニア
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- IoTエンジニア
など
エンジニアのニーズは、技術の進歩によって急速に増加・細分化しています。
ところが、業界の拡大速度に人材の育成速度が追いつかず、IT人口が不足しているのが日本の現状です。
ITエンジニアの人口推移と今後の見通し
ITエンジニアは、そのニーズの高さが注目を集めていて、決して志望者が少ない職業ではありません。
しかし、日本は少子高齢化によりITエンジニア人口は不足しており、今後も時間が経つにつれて人口不足は深刻になっていく見込みです。
ITエンジニアの現状
ITエンジニアの人口は、2008年には79万人でした。
それから増加傾向が続き、2018年には109万人に達しています。
10年で30万人も増加したことになり、人口推移だけを見るとかなりITエンジニアは増えています。
しかし、ITエンジニアのニーズは、ITエンジニアの人口増加よりも急速に高まっています。
ITエンジニア有効求人倍率は、2013年には1.64倍だったものが、2018年には2.61倍になりました。
業界の拡大速度にエンジニア人口の増加スピードが追いつかず、2020年にはすでに約37万人のITエンジニアが不足していると言われています。
ちなみに、都道府県ごとのITエンジニア人口でいうと、1位~3位は東京都・神奈川県・大阪府で、45~47位は高知県・島根県・鳥取県。
最上位の東京都は484,000人、最下位の鳥取県は19,000人と25倍もの差があり、ITエンジニア人口は大都市に集中していることがわかります。
今後のITエンジニアの人口予測
これまで増加を続けてきたITエンジニアの人口ですが、今後は減少していく見込みとなっています。
なぜなら、2019年をピークに入職率が退職率を下回るようになっていくため。
少子高齢化の影響で、人口の減少とともにITエンジニア人口も減り、2030年には約59万人ものIT人材が不足すると言われています。
特にエンジニアが不足すると思われる分野
ITエンジニアの中でも、特に不足すると思われる分野はAI(人工知能関連スキル)やビッグデータ管理。
これらの分野は、ITの中でも最先端の分野で、扱えるエンジニアが少ないことが問題視されています。
その上、汎用性が高い技術なので今後様々なシステムとの融合が予想され、需要と供給の差はさらに開いていくでしょう。
エンジニア不足の7つの原因
それでは、なぜ日本ではITエンジニアが不足しているのか、その7つの原因について解説します。
①IT市場の急成長
ITエンジニアが不足している原因として、まずIT市場の急成長があります。
これは日本に限らず、世界のどの国でも同じことです。
今や日本の会社で、全くIT技術を活用していない企業はないと言っていいでしょう。
従来はアナログ管理されていたものも、次々にデジタル化が進み、コンピューターやITシステムがほぼ全てのものを管理している時代です。
当然、新たなシステム開発やその運用・保持には人手が必要となり、ITエンジニアの需要が伸びているのです。
②現エンジニアの高齢化
2つ目の理由として、日本の少子高齢化社会が挙げられます。
エンジニアの減少と、需要の高騰の差の開きが、エンジニア不足の大きな要因になっているのです。
先にもお伝えしましたが、2019年にはITエンジニアの入職率が退職率を下回ります。
現エンジニアが高齢化し、退職していくスピードに若いエンジニアの数が追いつかず、ITエンジニア人口は徐々に減少していきます。
③エンジニアの収入の低さ
日本のエンジニアは、仕事が過酷なわりに低賃金です。
近年は、大手企業やベンチャー企業を中心に、エンジニアを高待遇で募集する企業も増えてきましたが、それはあくまで一部の話です。
IT業界は「多重下請け構造」であり、下請け企業になるほど単価が安くなります。
下請け企業では技術に見合った報酬が得られず、ITスキルを持っていながら他の仕事に転職するIT人材も少なくないのです。
④IT業界・エンジニアへのネガティブイメージ
IT業界やエンジニアの仕事は、「きつい」「厳しい」「帰れない」の新3Kと言われることがあります。
「ブラック企業」「IT土方」といった、エンジニアと繋がるネガティブな言葉もネットで拡散され、エンジニアという仕事に悪いイメージを持つ若者も。
少子高齢化の影響で、若者はエンジニアに限らずどの業界でも歓迎されるため、わざわざイメージの悪い業界に就職する人は少ないのです。
⑤IT技術の多様化・変化の速さ
IT技術の多様化と変化の速さも、ITエンジニアが不足する一因です。
先に挙げたAIやビッグデータ、IoTなど、IT技術は日々進歩し細分化しています。
その技術を扱えるエンジニアを育成するためには、教育機関や企業がそのノウハウを知り、学生・若手社員に教育を施さなければなりません。
しかし、先端技術は日々変化するため情報が一定ではなく、人材育成がしにくい分野です。
スキルを覚えた頃にはさらに新しい技術が生まれ、古いスキルは役立たなくなっているということもあり、人口補填を技術の進歩に追いつかせることが難しいのです。
⑥エンジニアのフリーランス化
企業で仕事のノウハウを身につけた後で独立するフリーランスエンジニアが増え、企業は正規社員のエンジニア確保が難しくなっています。
先にお伝えしたように、エンジニアは就労環境によってはスキルに見合った報酬を得られません。
しかし、フリーランスエンジニアであれば、自分が持つ技術を企業に高く売ることができます。
さらに、独立前提だと教育する甲斐がないと考えて、新人を育てない企業が出てくることも考えられ、これもエンジニア人口の不足に拍車をかける要因です。
⑦海外への人口流出
優秀なエンジニアほど海外に流出し、すでに国内で不足しているエンジニア人口が、さらに減少してしまう傾向があります。
日本では年功序列主義の会社が多く、スキルに見合った報酬を得られないエンジニアも多いです。
しかし、海外には実力主義の会社も多いです。
また、ITスキルは全世界共通なので、エンジニアは言葉の壁があっても比較的働きやすい業種です。
エンジニア確保のために企業ができること
最後に、人口が不足しているエンジニアを確保するためには、企業はどんな施策を取るべきなのかを解説していきます。
外国人エンジニアの受け入れ
少子高齢化により、日本国内のエンジニアが減少していくのは、一企業の努力では止められないことです。
そこで有効なのが、外国人エンジニアを受け入れること。
日本のエンジニアの海外流出でも触れたように、エンジニアは比較的言葉の壁があっても働きやすい職種です。
中国・インド・ベトナムなどは若い働き手も多く、日本のエンジニアに負けないくらい優れたスキルを持つ人材も増えています。
外国人エンジニアについて、メリットなど詳しくは「外国人エンジニアを採用する企業が急増?【採用方法を解説】」をご覧ください。
柔軟な採用方法・働き方の導入
柔軟な採用方法・働き方を導入することも、エンジニア確保に役立ちます。
ここまでお伝えしてきたように、エンジニアはニーズが高いにも関わらず、労働環境の厳しさが課題となっている仕事です。
逆にいうと、他社より良い環境を整えられれば、エンジニアも集まりやすくなります。
賃金を上げるのはもちろん、フリーランスエンジニアの活用、テレワーク・時短勤務・副業許可など柔軟な働き方を取り入れることで、エンジニアが働きたいと思える会社づくりが可能です。
まとめ
エンジニアの人口は、現在までは増加傾向となっています。
しかし、少子高齢化の影響により、2019年を境として、これから徐々に減少傾向となっていく見込みです。
また、IT業界自体の市場拡大により人材の需要は高まり、エンジニアは深刻な人口不足が進んでいきます。
今後、企業がエンジニアを確保するためには、外国人エンジニアの受け入れや、これまでと違う採用方法・働き方の導入といった工夫が必要です。