現在、留学・就労を目的とした在留外国人が増加しています。厚生労働省の調査によると、平成29年末の在留外国人数は2,561,848人で、前年末に比べ179,026人(7.5%)増加となり過去最高となっています(※1)
外国人が日本に90日以上滞在する際、必ず必要になるのが「在留カード」です。特別永住者を除き、外国人は在留カードを持っていなければ就労することができません。
そんな在留カードには、どのような役目や目的があるのでしょうか。ここでは、その手続きや、更新、さらに在留カードが偽造かどうかを確認する方法についても徹底解説します。
外国人の採用を考えているなら、とても重要な知識となるので、ぜひ参考にご覧ください。
この記事の目次
在留カードとは?
在留カードとは、中長期在留者の外国人に対し、各種許可(在留資格の変更・在留期間の更新など)に伴って交付されるものです。在留に関する証明、就労に関する証明が記載されており、外国人の在留資格証明書でもあります。そのため、外国人採用にはまず在留カードの確認が絶対に必要となります。
在留カードは入国管理局から発行され、基本的には日本へ入国した際の空港で受け取ることができます。平成30年8月時点では、成田空港・羽田空港(東京国際空港)・中部国際空港・関西国際空港・新千歳空港・広島空港・福岡空港の7つの空港で受け取れます。船やそれ以外の空港を利用して来日した場合は、市区町村役場で住民登録後、10日ほどで登録住所宛に送付されます。
また、この在留カードを所持していると、帰国から1年以内に再入国する場合は基本的に再入国手続きが不要になります。
交付される対象はどんな人?
在留カードは中・長期間日本に在留する外国人に対して交付されます。具体的には、90日間以上滞在していて、日本人と結婚している人(在留資格:「日本人の配偶者等」)、日系人(在留資格:「定住者」)、日系企業で働いている人(在留資格:「技術」「人文知識・国際業務」)、そのほか技術実習生や、留学生、永住者などです。
観光などで滞在が90日未満の場合は、「短期滞在ビザ」を取得することになり、在留カードを取得できません。やむ得ない理由で90日より長く在留することになっても、それだけでは在留カードは発行されません。
どんな役目がある?
在留カードには、大きく分けて次の二つの役割があります。
中長期在留している「証明書」
パスポートになされる各種許可の証印等の代わりになる「許可証」
在留カードは法務省の入国管理局が発行を行っているので、適正に入国したという「証明」となります。また、在留カードには氏名・生年月日・性別・国籍・居住地・在留資格・在留期間・就労可否など、在留や就労に関することが記載されていますので、「許可証」としての役割も果たします。
在留カードには携帯義務がある
出入国管理及び難民認定法の第23条2項により、在留カードには携帯義務が義務付けられています(※2)。また、在留カードを携帯していなかった場合は、第75条3項にもとづき20万円以下の罰金が課せられます。
偽装かどうか確かめる方法はある?
偽造防止のため、在留カードにはICチップが搭載されています。有効期限については、入国管理局のホームページ(※3)で失効情報を照会できます。偽造かどうか怪しいと感じたときは、ここから確認してみましょう。
※3法務省入国管理局:在留カード等番号失効情報照会
在留カードの記載事項をチェック
外国人を採用する際、採用担当者は必ず在留カードを確認する必要があります。ここでは在留カードのチェック方法を説明します。一度覚えておくと、今後外国人を採用する際に役立つのでぜひご覧ください。
要チェックなのは「在留資格」
在留カードの表面には、在留カード番号、氏名、生年月日、性別、国籍・地域、住居地、在留資格、就労の可否・就労制限、在留期間(満了日)、許可の種類、許可年月日、交付年月日等が記載されています。16歳以上の人には顔写真も添付されています。
裏面には、居住地を変更したときの新住所、資格外活動の許可内容、在留期間更新といった記載がなされています。
外国人を採用する際にまず確認しなければならないのが、「在留資格」です。在留資格の欄には、「技術・人文知識・国際業務」「留学」「永住者」「技能実習生」「日本人の配偶者等」などの在留資格がどれか一つ必ず記載されています
有効期間の見方
次に必要なのは、在留期間(満了日)です。在留カードを見ると、「在留資格」の下に「有効期間」が記載されています。
・永住者・高度専門職2号
16歳未満の場合…16歳の誕生日まで
16歳以上の場合…交付の日から7年間
・永住者・高度専門職2号以外
16歳未満の場合…在留期間の満了日または、16歳の誕生日のいずれか早い日まで
16歳以上の場合…在留期間の満了日まで
在留期間が満了している場合は、裏面に「在留資格変更許可申請中」などの記載があるか確認しましょう。記載がなければ「無効」です。偽造防止のため、法務省入国管理局の「在留カード等番号失効情報照会」から確認しましょう。
法務省入国管理局:在留カード等番号失効情報照会
その他の項目
在留資格が「留学」「家族滞在」なら「資格外活動許可」が必要なので、裏面の資格外活動許可の有無を確認してください。
資格外活動許可が記載されていれば、就労時間や就労場所の記載をチェックします。
(例)
「原則週28時間以内・風俗営業等の従事を除く」など
「許可(資格外活動許可書に記載された範囲内の活動)」など
また、在留資格「留学」の外国人を正規雇用する場合は、在留資格を「技術・人文知識・国際業務」に変更する必要があります。
在留カードの変更手続き・届け出
在留カードの変更の手続きや届出は、どのように行えばよいのでしょうか。変更の内容によっては、届出の場所が変わりますので注意が必要です。
帰国するときはどうすればいい?
再入国の許可を受けている以外は、出国する空港(港)で返納しなければなりません。再入国許可により出国した場合は、再入国許可期限内に入国すれば在留カードを引き続き使用できます。
もし再入国許可期限内に入国しない場合、在留カードは無効となります。在留カードが無効となった後に入国する場合は、入国手続き時に返納しなければなりません。
紛失したとき
在留カードが紛失、盗難、著しい破損の状態となった場合は、その事実を知った日から14日以内に入国管理局に再交付の申請を行う必要があります。期間内に申請をしなかった場合、1年以下の懲役又は罰金20万円以下に処せられることがあります。
また、再交付には警察署での遺失届受理証明書や盗難届受理証明書、消防署で発行される罹災証明書などが必要です。そのため、入国管理局に行く前に、まずは警察などに届けを出さなければなりません。再交付の費用は無料ですが、著しい汚れなどがなく再交付する場合には手数料がかかります。
内容を変更したいとき
在留カードを変更する際は、その内容によって手続きの方法が異なります。
在留資格の変更
在留資格の変更の場合は、入国管理局へ手続きを行わなければなりません。
例) 「留学」から「技術・人文・国際業務」へ
住居地の変更
住居地の変更を行う際は、居住地の市町村窓口に届出を提出します。日本に住んでいて住居を変更する場合、新しい住居地が決まって14日以内に在留カードを持参して届出を提出します。
氏名、生年月日、性別、国籍・地域の変更
結婚して氏名が変わった場合などは、14日以内に入国管理局に変更の届出を提出しなければなりません。
期間を延長したいとき
在留カードの有効期間を延長・更新する場合は、有効期限が満了する前に入国管理局に在留カードの更新申請を行います。更新申請の期間は以下の通りです。
永住者
16歳未満…16歳の誕生日の6ヵ月前から同誕生日まで
16歳以上…有効期間の2ヵ月前から有効期間満了日まで
永住者以外
16歳未満…在留期間の満了日か16歳の誕生日いずれか早い方まで
16歳以上…在留期間の満了日まで
まとめ
これまで、在留カードについて説明してきました。日本に在留している外国人を採用するには、採用前に在留カードの以下の確認が必要です。
在留資格の種類
在留期間の満了日
就労制限の有無
裏面の資格外活動許可欄
在留期間が満了の場合は、裏面で更新手続き中かどうかを確認しましょう。有効期間が切れていると、どんな場合でも採用することができません。
また、留学生を採用する場合、雇用形態によっては在留資格の変更が必要です。留学生を採用する時は、特に注意して確認しましょう。
現在は在留カードの偽造が増加しています。もし偽造された在留カードを持っている不法就労者を雇用すれば、企業側は不法労働助長罪に問われ、逮捕されたり罰金を科せられたりします。時間や手間がかかってもしっかりとしたチェックを行いましょう。