
日本に在住している外国人は約260万人を超え、日本企業も外国人を必要としています。日本に住んでいる外国人で、在留資格の更新をせず長期間日本で暮らしたいという人は、永住権(永住ビザ)を取得すると在留期間や活動内容への制限がなくなり、日本で生活しやすくなります。
しかし、日本の永住権の審査は世界の中でも難しく、細かい条件が必要とされます。
外国人の永住権とはどのようなものなのでしょうか。申請方法・条件も含め徹底解説します。
この記事の目次
永住権とは?
外国人が日本に在住するには、ビザ(就労ビザなど)が必要です。しかし、永住権を取得すると、滞在の期限や目的を心配せずにずっと住めるようになります。
一方で、永住権を取得していても再入国許可を得ずに1年以上離日した場合には、永住権を取り消されてしまうことがあります。犯罪などでも永住権を取り消されることもあるため、無条件で半永久的に取得できるという訳ではありません。
永住権を得るメリット
日本に在住する外国人が永住権を取得すると、どんなメリットがあるのでしょう。紹介します。
ビザを取得する必要がなくなる
通常のビザは、それぞれに3ヶ月・1年・3年・5年と滞在期間が決まっています。それ以降も滞在する場合は、期限が切れる前に新たなビザを取得する必要があります。
大変なビザの取得や申請の手間がなくなり、ビザが下りなかったらと不安に感じるなることもないため、負担が減ります。
働く場所に制限がなくなる
就労ビザや留学ビザで働く際は、働く場所によっては許可が下りなかったり、働く場所に条件があったりします。
永住権があれば、正規雇用の場合は会社によって副業禁止などの規定はありますが、基本的には場所・業種の制限なく働くことができます。また、扶養家族が働く際も条件や制限がなくなります。
銀行などの信用が高まる
永住権を取得していると、銀行からの信用も高まり、家や車などの高価な買い物をする場合にローンを受けやすくなります。多くの銀行では、ローンを組む際の条件に永住権取得としています。
永住と帰化の違いは?
永住権とは、外国人が日本で在留期間の制限を受けずに住み続けられる権利のことです。
在留資格を持っている外国人が永住権を得るには、入国管理局へ永住許可申請を行う必要があります。
帰化は、日本国籍を取得することです。世界には2つの国籍を持っている人もいますが、日本では国籍は1つしか認められないため、帰化すると外国籍はなくなり日本人となります。
永住権と同じでビザの申請はなく、帰化した人は選挙権や日本人の名前を持つことができます。また、パスポートも日本で申請することができます。
なお、帰化した外国人同士で結婚し子が生まれた場合、その子どもは日本国籍となります。
外国人が永住権を申請できる条件
外国人が永住権を申請できるには様々な条件がありますが、どのようなものがあるのでしょうか。詳しくご紹介いたします。
10年以上日本に住んでいること
永住ビザ(永住権)を申請するには、原則として10年間継続して日本に滞在している必要があります。ビザが一度切れて母国に戻り、再度ビザを取得し来日した場合は継続とはみなされないため、注意が必要です。
5年以上日本で働いていること
継続した10年のうちの5年は就労ビザで働いている必要があります。留学ビザの3年は10年継続の中に入りますが、留学ビザ・家族滞在ビザでの短期間で限定的の労働は含まれないため注意が必要です。
現在のビザが3年以上のビザであること
永住権を取得申請する時点のビザが長期間でなければいけません。中には5年を最長期間としているビザもありますが、現在は3年があれば申請ができます。
素行が良いこと
永住権取得の重要な条件として、日本の法律に違反せず生活していることが挙げられます。過去に法に触れていないこと、不法滞在していないこと、税金をきちんと納められていることなどが審査の対象になります。
生計が安定していること
日本に長く滞在できるというだけの収入や資産があることも審査の対象になります。現在から将来において、安定した生活が送れる見込みがあるということが見極められます。そのため、生活保護を受給している人は難しくなります。
10年住んでなくても、永住権が申請できる例
10年以上在住していなくても、申請が可能なケースを解説いたします。
在留期間1年
日本人・永住者・特別永住者の配偶者、日本人・永住者・特別永住者の実子/特別養子、高度専門職ポイント80点以上
※高度専門職ポイント80点以上は素行要件、独立生計要件が必要となります。
※日本人・永住者・特別永住者の配偶者は、1年以上日本に滞在していることに加え、結婚生活を3年間継続していることが求められます。
在留期間3年
高度専門職ポイント70点以上
※素行要件、独立生計要件が必要となります。
在留期間5年
難民認定者、インドシナ定住難民、定住者ビザ保有者、貢献ガイドライン該当者
※すべて素行要件、独立生計要件が必要となります。
在留期間10年
日本人・永住者・特別永住者の養子
永住権の申請に必要な書類
永住権の申請に必要な書類を、共通の書類と永住権取得時の対象ビザによって異なる書類に分け、それぞれご紹介いたします。
共通書類
・ 永住許可申請書
・ 本人写真
・ 在留カード
・ パスポートまたは在留資格証明書
・ 身元保証書(押印付き)
・ 身元保証人に関係する資料
・ 申請人の身分を証明する書類(戸籍謄本、出生証明書、婚姻証明書等)
・ 家族全員の住民票
・ 申請人または扶養者の職業を証明する書類
・ 申請人または扶養者の所得を証明する書類
それぞれのビザに必要な書類
・ 日本の貢献にかかる資料(ある場合のみ)…定住者、就労ビザ、高度専門職のみ
・ 高度専門職ポイント計算表…高度専門職のみ
・ ポイント計算の各項目に関する疎明資料…高度専門職のみ
・ 申請人の資産を証明する資料(預金通帳の写し、不動産の登記証明書等)…定住者、就労ビザ、高度専門職のみ
永住権の身元保証人とは?
永住権の申請には、身元保証人が必要となります。身元保証人になれるのは、「日本人または永住権をもった外国人の方」です。
「永住者の配偶者等」「日本人の配偶者等」のビザを持っている方が申請するときは、その配偶者が身元保証人になることができます。
永住権の申請に身元保証人が必要なのは、外国人が日本に滞在するにあたり、滞在費、帰国旅費、法令の遵守の保証が求められるためです。銀行などの保証人とは違い、永住権を取得した人が法を犯しても責任が問われることはありません。
身元保証人の必要な書類
身元保証人として必要な書類はどのようなものがあるのでしょうか。雇用する側が保証人になる場合もありますので、きちんと把握していると申請が早く行うことができます。
・ 課税証明書
・ 住民票
・ 納税証明書
・ 在職証明書
・ 身元保証書
課税証明書と納税証明書は一番新しいものの準備が必要です。住民票は、身元保証人だけでなく、住民票は必ず世帯全員分(家族全員分)の住民票が必要です。
永住権の身元保証書の書き方・記入例
①日付
身元保証書を記入した作成日を記入します。西暦・元号のどちらを使用しても構いません。
(記入例)2016年1月1日/平成28年1月1日
②国籍
ビザ申請人(永住ビザ申請を希望している人)の国籍を記入します。
(記入例)アメリカ合衆国/中華人民共和国
③申請者の氏名
ビザ申請人(永住ビザ申請を希望している人)の氏名をパスポートの上から順に記入してください。アルファベットなど、文字のスペルを間違えないように注意しょう。漢字もしくはアルファベット(大文字)で記入します。
(記入例)JOHN SMITH
④氏名
身元保証人本人が署名・捺印を行う必要があります。必ず署名は自筆で行ってください。なお、印鑑はシャチハタ不可です。結婚後に名前が変わった方は、旧姓の印鑑を使用してもかまいません。
(記入例)山田 花子
⑤住所
身元保証人の住所と電話番号を記入してください。
(記入例)大阪府大阪市中央区大阪城1
⑥職業
身元保証人の職業を記入します。仕事をしていない場合は無職と記入しましょう。仕事をしている場合は、勤務先名を正確に記入する必要があります。電話番号は、勤務先のものを記入してください。
(記入例)無職/さくら株式会社 みどり支店 06-1234-5678
⑦国籍(在留資格)
身元保証人の国籍(在留資格や期間)を記入します。身元保証人が日本人であれば「日本」、日本人以外の場合は国籍と在留資格とその期間を記入しましょう。
(記入例)日本/アメリカ合衆国 永住
⑧被保証人との関係
ビザ申請人に対して身元保証人がどういう関係の人物であるか、関係性を記入してください。例えば、申請者が夫で身元保証人が妻の場合は、「妻」となります。
(記入例)妻/夫
永住権に関するよくある質問
最後に、日本での永住権についてのよくある質問をご紹介いたします。
Q1.永住許可をもらうのは、難しいですか?
全国入国管理局総計によると、5年で許可率が20%下がっているため「難しくなってきている」とも考えられます。しかし、どのような理由で永住権取得を申請しているかよるところが多いため、一概には言えないのが事実です。
Q2.1年のうち何日位、日本滞在している必要がありますか?
目安の日数は半分以上です。海外に出張することが多い人も、1年のうち半分以上に滞在していれば許可が下ります。出張記録(会社からの指示書など)・業務内容の報告書・事情を説明する「上申書」などの書類を揃えて申請すると良いでしょう。
Q3.私は永住者で、日本人と離婚しました。ビザは変更になりますか?
永住者であれば、離婚してもビザを変更する必要はありません。ただし「配偶者に関する届出」を出す必要があります。
永住権があれば日本での生活の幅が広がる!
これまで、永住権の取得、永住権とは何かについて紹介してきました。永住権は、国籍を変更する帰化するより申請しやすく、外国籍を取得したままで活動の幅が広げられます。
しかし、申請には身元保証人が必要で、審査も細かく行われます。身元保証人は雇用側や日本人が記入する場合も多いため、日本人も申請方法を把握しておいた方が良いでしょう。
一度申請が通り、一定の条件のもと日本に在住していれば更新を行う必要がなく、新しいビザの申請も必要ありません。永住権があれば日本での生活に幅が広がることは間違いないため、正しく永住権の意味を理解し申請してくださいね。