介護、飲食の外国人雇用が急伸中!特定技能の採用を成功させるには?インバウンドテクノロジー株式会社 林秀乃佑社長インタビュー

長期化する新型コロナウイルスの感染拡大から、介護業界や飲食業界は深刻な人材難に悩まされるようになりました。苦境から脱出するためには従業員の確保が重要ですが、接客による感染を恐れて募集をかけても人材が集まらない状況です。

しかし、外国人雇用が人材不足を突破する解決策のカギになります。インバウンドテクノロジー株式会社では、外国人雇用に特化した人材紹介サービスを提供。介護業界や飲食業界など、特定技能領域の外国人紹介が強みです。林秀乃佑社長に、外国人雇用の現状と成功させるためのノウハウを伺いました。

7年間でおよそ1,000人の外国人を紹介、特定技能領域がメイン

シロフネ編集部:外国人の人材紹介サービスが事業の9割を占めているそうですね。事業概要を教えていただけますか。

林社長:特定技能領域の人材紹介とITエンジニアの人材紹介です。特定技能領域では主に介護、飲食、食品製造、農業になります。集客から各特定技能の試験対策講座とご紹介ならびに管理をワンストップで提供しています。事業を始めて7年になります。

シロフネ編集部:7年間で変化はありましたか。

林社長:最初はコンビニエンスストアや外食のアルバイトの紹介から始めたのですが、紹介料がひとりあたり2~3万円というビジネスモデルだったので厳しかったですね。特定技能による雇用が始まってからは、フロアやキッチンなど単純労働の正社員をご紹介できるようになりました。現在は、正社員の紹介だけです。

一方、エンジニアの紹介は順調に伸びてきています。こちらも需要が加速したタイミングは、やはり特定技能による雇用開始の時期でした。2019年の4月頃から外国人の人材紹介はそれまでの2倍ぐらいに拡大した印象です。

シロフネ編集部:最近の動向はいかがでしょう。

林社長:コロナ禍の時期には飲食業界が打撃を受けましたが、逆に介護業界が伸びて8割を占めていました。しかし、2021年の12月からは飲食業界が回復しています。

シロフネ編集部:ご紹介されている外国人はどのような方が多いのですか?

林社長:外国籍では、ミャンマー、ネパール、インドネシアの方が7~8割です。年齢は20代が中心。性別では男女半々。留学生です。

コロナ禍でも求人を止めなかった飲食業界、外国人の即戦力が必要

シロフネ編集部:飲食業界の現状について教えてください。

林社長:飲食業界では、コロナ禍で人材を雇えなくなる状況がありました。第5波の時期には時給1,600円を出しても集まらない状況。人手不足は避けらないので採用しなければなりませんが、どのような問題が起こるかといえば、これまで1,100円の時給で働いていたアルバイは、当然「なぜ?」と疑問が生じます。不満が生じて負のスパイラルになります。

シロフネ編集部:給与を調整する必要がありそうです。

林社長:アメリカでは、スターバックスのアルバイト料金が1,900円や2,000円になっています。既に雇用している従業員の給与も上げなければならない状況です。

しかし、2021年の11月や12月の新型コロナウイルスの感染拡大時期に危機感を抱いた経営者のみなさんは、休業しても人材募集は止めませんでした。経営を立て直すときに人材が必要だからです。2022年の4月になると、飲食業界の求人数はかなり伸びるだろうと予測しています。

シロフネ編集部:飲食業界の外国人雇用の傾向を教えてください。

林社長:とにかく「明日、人材がほしい」です(笑)

人材確保が急務。お話をいただいたら、即日で面接に行かせて採用を決めています。スピード感が介護業界とは違います。介護業界の場合は、理事長からアライアンス担当、施設担当のように案件化するまで3か月かかります。けれども飲食は早い。

シロフネ編集部:外国人の需要があり、相性がよい店舗はありますか?

林社長:居酒屋とラーメン店でしょうか。すぐ人材がほしい代表です。コロナ禍には、夜8時以降は売上がなくても協力金がもらえるので人材は確保しておきたい店が多かったですね。もちろん、すぐにほしいといっても面接と精査のフローは変わりません。

介護業界うけする外国人の「感謝のこころ」

シロフネ編集部:続いて介護業界の求人について伺いたいのですが、大変な労働環境の業界のひとつではないかと。外国人も大変な仕事を敬遠しがちではないでしょうか。

林社長:実はそうでもないんですよ。まず文化の違いがあります。外国人には大変な感覚が日本人ほどありません。インドネシアやフィリピンではお手伝いさんがいて、大家族で暮らしています。生活のなかに、おじいちゃんやおばあちゃんがいるのが当たり前なんです。

シロフネ編集部:言葉の壁が気になります。

林社長:日本語能力検定のN3レベルの外国人も紹介していますが、なんとなく気持ちが伝わっているのではないでしょうか。

シロフネ編集部:受け入れる日本の企業側としてはいかがでしょう。

林社長:介護業界では、まだ様子見という企業が多いです。日本人限定でいく企業もありますが、そうは言っていられない状況にあります。大手企業さんの介護事業の部門ともお話させていただいているのですが、とにかく人材が不足しているので採用を真剣に考えていらっしゃいます。

シロフネ編集部:おじいちゃん、おばあちゃんは外国人で大丈夫ですか?

林社長:要介護の80歳や90歳のおじいちゃん、おばあちゃんは戦争経験から抵抗があるという点も気がかりかもしれませんが、もう忘れていますよね。日本人よりも外国人のほうがよい接客をしてくれるのであれば、高齢者の皆さんもそのほうがよいのでは。

シロフネ編集部:介護業界で働く外国人の特長として何かありますか。

林社長:外国人の留学生たちは、生活を維持するために「両親にお金を送りたい」という動機、マインドを持って働いています。外国人ならではの感謝のこころがあり、感謝のレベルが日本人と違うんです。お金をもらうだけではなく、働く目的がしっかりしている点において、日本人とは大きく異なります。

シロフネ編集部:マインドが何か働き方に影響するのでしょうか。

林社長:ピュアな外国人を雇用したときに「ああ、こんな小さなことにも感謝するんだ」という発見があります。「忘れかけていた日本人の思いやりを取り戻しましょう」という提案が、いま企業のみなさんに共感をいただいています。

シロフネ編集部:雇用で地域差はありますか?

林社長:地方の介護施設のほうに需要があります。雇用される外国人にとっても、寮が完備されていれば家賃が浮くので、両親に仕送りが増えますよね。都内で20万円もらっていても10万円しか残らない場合、寮が完備されている地方の施設なら全体の給与が18万円で少なくても18万円まるまる全部が残る。そう考えると地方が有利です。

IT業界では外国人エキスパートが中心、今後は派遣も視野に

シロフネ編集部:飲食や介護とまったく異なる人材だと思うのですが、事業の別の軸であるIT業界に対する外国人の人材紹介について教えてください。

林社長:DX(デジタルトランスフォーメーション)の流れから拍車がかかってきて、エンジニアの採用が難しくなっていますが、これから3年間に渡って加速されていくと考えています。

当社もいわゆるメガベンチャー企業に人材を紹介していますが、派遣会社も日本人の採用できないことから外国人にシフトしています。ベンチャー企業では特にネームバリューがないので必死ですね。今後はさらに伸びるでしょう。

シロフネ編集部:今後、手掛けられたい事業はありますか?

林社長:外国人の人材派遣を考えています。一部でSES(System Engineering Service)もやっていますが、社員としての外国人雇用の次は外国人エンジニアの派遣があるだろうなと。あと2~3年ぐらいかかると思いますが。

まず外国人雇用を体感すること、経営者の決断力がポイント

シロフネ編集部:最後に、これから外国人雇用を考えている企業の皆さんに成功の秘訣があれば教えていただけますか。

林社長:あらゆることに言えますが「食わず嫌い」は残念だと思います。まず、外国人をひとり雇用してみること、外国人雇用の体験が必要ではないでしょうか。日本の労働人口はどんどん少なくなっているのに、日本人だけで解決しようとする考えが問題です。

いま介護業界で外国人を紹介しているクライアントの7割は、これまで外国人を雇ったことがない施設です。ただ、外国人と接している中で不安が解けていくのではないでしょうか。そういったクライアントとは永続的に取引が続いています。また、介護業界に務める外国人は離職率も低いのが現状です。

シロフネ編集部:そうはいってもなかなか変われませんよね。

林社長:トップの決断が重要です。外国人雇用の体験に踏み出していただきたい。不安があるかもしれませんが、われわれもしっかり面接して外国人をご紹介しています。また、感謝のマインドを持った外国人の雇用を契機として、社内の文化や社風を変える可能性があります。

シロフネ編集部:本日はお忙しいところ、ありがとうございました。

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