就労ビザの職種について【最も申請の多い職種とは?】

全ての在留資格のなかで、就労が認められている「就労ビザ」は全部で22種類。そのうち16種類のビザでは、就くことができる職種に制限があります。

不法就労を防ぐためには、外国人本人も会社側も、就労ビザの種類や職種をきちんと把握しなければいけません。
今回は、就労ビザの種類や、それぞれに該当する職種について解説していきます。

就労ビザの職種について

「就労ビザ」という言葉は一般的に浸透していますが、実は就労ビザというもの自体があるわけではありません。
就労ビザというのは、「就労が認められている在留資格」の総称です。

就労が認められている在留資格は、職種に制限がある17種類のビザと、「高度専門職」「永住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「定住者」を合わせた22種類。
それぞれ取得の条件や就ける仕事の範囲が異なり、資格の範囲外の仕事をしてしまうと不法就労になることもあります。

外国人を雇用するときには、就労ビザの職種をしっかり確認することが必要なのです。

就労ビザの職種一覧

就労ビザには、大きく分けて以下の3種類があります。

  • 職種や業種が限定的な就労ビザ
  • 高度な資質・能力を持つ人限定の就労ビザ
  • 職種・業種問わず就労可能なビザ

それぞれのビザの特徴や、就くことができる職種を解説していきます。

職種や業種が限定的な就労ビザ

職種・業種が限定的な就労ビザは、以下の17種類。
それぞれが就業可能な職種も合わせて見ていきましょう。

  • 教授:大学教授・助教授・助手など
  • 芸術:作曲家・画家・著述家など
  • 宗教:宣教師・僧侶など
  • 報道:記者・カメラマンなど
  • 経営・管理:経営者・役員・取締役など
  • 法律・会計業務:弁護士・会計士・税理士など
  • 医療:医師・歯科医師・看護師・薬剤師など
  • 研究:政府関係機関や日本企業の研究者
  • 教育:小・中・高校の教師
  • 技術・人文知識・国際業務:エンジニア・デザイナー・通訳など
  • 企業内転勤:同じ企業内で日本の支社に転勤する社員
  • 介護:介護福祉士
  • 興行:俳優・タレント・プロスポーツ選手など
  • 技能:調理師・職人・パイロットなど
  • 特定技能:介護・建設・造船・農業など政府が定めた「特定分野産業」に従事する人
  • 技能実習:日本で技能・技術を習得するために一定期間就労する人
  • 特定活動:個別に特定の就労活動が認められた人

高度な資質・能力を持つ人限定の就労ビザ

高度専門職ビザは、「高度外国人材」と呼ばれる優れた能力を持つ人にのみ交付される就労ビザです。特に職種は限定されていませんが、その人を受け入れることで日本に大きな利益があると認められた人のみが取得できます。

高度専門職ビザには、「1号」と「2号」があり、1号はさらに職種や研究分野によって3つに分けられます。

高度専門職1号(イ)
高度学術研究活動
高度専門職1号(ロ)
高度専門・技術活動
高度専門職1号(ハ)
高度経営・管理活動

高度専門職2号は1号の職種よりも幅広く、一般的な職種はほぼ全て含まれています。
また、高度専門職ビザには、職種が限定されるビザとは違い、以下の特典があります。

  • 複合的な在留活動ができる(複数の職種に就くことができる)
  • 5年(1号)または無期限(2号)の在留期間が与えられる
  • 永住許可要件の緩和が受けられる
  • 配偶者の就労が可能になる
  • 一定の条件の下で、親・家事使用人の帯同が可能になる
  • 入国・在留手続が優先的に処理される

高度専門職ビザは、学歴・職歴・年収・研究実績などによるポイント制。「大学卒業」で10ポイント、「年収1,000万円以上」で10ポイントなど、それぞれの条件ごとのポイントを合算し、70ポイント以上になれば高度専門職ビザの取得が可能になります。

職種・業種問わず就労可能なビザ

職種を問わず就労可能なビザは、以下の4種類。

  • 永住者
  • 日本人の配偶者等
  • 永住者の配偶者等
  • 定住者

これらのビザを持つ人は、就労に限らず日本国内での活動に制限がありません。日本人と同じように自分が働きたい職種を選び、入社試験に受かりさえすればそのまま働くことができます。

また、転職や退職するときにもビザの変更は必要ありません。

就労資格のないビザは?

就労資格のないビザは、上で挙げたもの以外の在留資格。具体的には、以下のものが該当します。

  • 留学
  • 家族滞在
  • 短期滞在
  • 特定活動(就労活動以外の目的で交付されたもの)

ただし、留学ビザや特定活動ビザは「資格外活動許可申請」をして受理されれば、本来の在留目的を妨げない範囲(週28時間以内)のアルバイトが可能になります。

申請の多い就労ビザの職種は?

就労ビザの中で、もっとも申請が多いのは「技術・人文知識・国際業務」。2018年末時点で、189,273人もの外国人がこの就労ビザで日本に在留しています。
「技術・人文知識・国際業務」の就労ビザの申請が多い理由は、以下の通り。

  • ほとんどの文系・理系の知識を生かした職種が含まれる
  • 語学力を生かした職種が含まれる
  • 該当する職種の幅が広い

「技術」に含まれる職種は、機械工学の技術者やシステムエンジニアなどです。
「人文知識」は企画・営業・経理などオフィスワーカー系の職種。「国際業務」は語学教師・通訳・翻訳・デザイナーなどが主な職種として挙げられています。

外国人が日本企業で専門職以外に就く場合、ほとんどが「技術・人文知識・国際業務」ビザとなるため、就労ビザの中でも非常に申請数が多くなっているのです。

就労ビザが取れない職種もある

就労ビザには様々な種類があり、幅広い職種をカバーしていますが、実は就労ビザが取れない職種もあります。
それは、いわゆる単純労働。具体的な職種としては、スーパーやコンビニのレジ担当や、工場のライン工などが挙げられます。

これは、現在日本が移民を受け入れていないため。優れた知識や技術を持ち、日本で働いてもらうことに意義がある外国人は受け入れていますが、誰でもできる単純労働に従事する外国人には在留資格は与えられないということです。
そのため、留学生がアルバイトなどでこれらの仕事に従事し、卒業後に正社員として就職を望んだとしても、就労ビザが下りないため入社はできないということになります。

しかし、2019年4月に新設された「特定技能」ビザには一部単純労働の職種も含まれています。
これにより、以前は外国人を正社員登用することができなかった飲食業・宿泊業・清掃業などで、外国人の労働力を受け入れられるようになりました。

就労ビザの職種を変更する場合は?

繰り返しになりますが、ほとんどの就業ビザは就ける職種に制限があります。
そのため、現在取得している就労ビザの資格範囲外の仕事に転職する場合には、就労ビザの変更が必要です。

例えば、コックとして「技能」の就労ビザを持っていた外国人が、同じ就労ビザのまま事務職に就くと資格外活動になってしまいます。企業の事務職に就くためには、就労ビザの種類を変更して「技術・人文知識・国際業務」ビザを取得しなければいけません。

また、「技術・人文知識・国際業務」など幅広い職種に該当するビザの場合、同じビザの資格範囲内でも就ける仕事と就けない仕事があります。エンジニアも通訳も同じ「技術・人文知識・国際業務」ビザですが、就労ビザの職種変更をしないと職種を超えた転職はできないのです。

さらに、学校の語学教師は「教育」ビザですが、民間企業の語学講師は「技術・人文知識・国際業務」ビザになるなど、似た職業でも就労ビザの種類が違う場合も。
資格外の職種に転職することはできないため、外国人が転職・退職する時には必ず在留資格の確認申請が必要となります。

まとめ

就労が認められている在留資格は、全部で22種類。うち16種類のビザは就業できる職種に制限があり、資格外の仕事に就くことはできません。
優れた人材のみが取得できる「高度専門職ビザ」、永住者・定住者やその家族のビザは職種に制限がなくなります。

就労ビザの資格外の仕事に就くと不法就労になってしまうため、外国人を雇用するときは必ず在留資格の範囲をチェックするようにしましょう。

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