外国人材とのコミュニケーションで気をつけること  -空気を読めは通用しない?!-

日本の人口が減少については、随分前からさまざまなメディアで報道されているため皆さんもご存じでのことかと思います。しかし、最近では高度外国人材だけでなく、新たな在留資格を創設することが閣議決定するなど、国家として幅広い外国人材を積極的に受け入れる動きが多く見られます。

外国人材をさらに受け入れていく方向性に大きく舵を切ったこれからの日本に求められる、外国人材とのコミュニケーション方法をご紹介します。「郷に入っては郷に従え」というコミュニケーションでお互いに疲弊することのないよう、外国人材の受け入れ時にぜひ活用してみてください。

■外国人材とのコミュニケーションについて

■日本の現状

外国人材とのコミュニケーションについてご紹介する前に、日本の置かれている状況についてご説明していきます。

・生産年齢人口の減少

出典:厚生労働省 「外国人労働力について」生産年齢人口等の推移

平成30年2月20日に内閣府が出した「外国人労働力について」という資料によると、日本の生産年齢人口(15~64歳の人口)は1997年から減少が続き、2016年までで1,034万人の減少となっています。1986年の時点では総人口の68%程度あった生産年齢人口が、少子高齢化により2016年時点では60%となり、生産年齢人口が減少。少子化は改善されていないため、高齢者や女性を活用する、テクノロジーで人材不足を解決する、外国人を受け入れていくことの3つしか現実的に労働力を補う方法がありません。現在の生産年齢人口は15~64歳までとなっていますが、今後は20歳程度~70歳程度までなど、現実に則した年齢に変えて人手不足を正しく測定できるように変えることが求められるようになるでしょう。

・有効求人倍率の上昇

出典:厚生労働省 「外国人労働力について」有効求人倍率の推移

人口が減少しているのに対して、有効求人倍率は2009年から引き続き上昇中。2017年12月時点では1.59倍となっています。人よりも求人数が多い状態が続き、人手不足が続いている業界も多いです。こういった状況がメディアで度々報じられることもあるため、ご存じの人も多いかと思われます。

・外国人材の増加

出典:厚生労働省 「外国人労働力について」我が国における外国人材数の推移

その人手不足と比例するように、外国人材数が増加していっていることを体感している人も多いのではないでしょうか。コンビニや外食業界などのサービス業で、外国人材に接客されたという経験は皆さんお持ちのはずです。

2008年時点では48万6,398人だった外国人材が、2017年には127万8,640人となっています。しかし、外国人材が増加しているとはいえ生産年齢人口の減少は1,000万人程度ですから、まだ10%程度の人数しか受け入れが進んでいないともいえます。たった10年程度で約2.6倍に膨れ上がっていることを見ると、これからさらに増加していくことが予想できるのではないでしょうか。

また、特に外国人IT人材受け入れの増加が顕著であることも知っておきましょう。在留資格「技術・人文知識・国際業務」の中で情報通信業に従事する外国人材の割合が多く、2014年から2016年にかけて約41%も増加しています。国家的に受け入れを進めるプロジェクトが行われていることを見ても、より外国人IT人材の受け入れが増加することは明白です。

■入管法改正案で増える外国人受け入れ

2018年11月2日に、入管法改正案が閣議決定されたことはご存じでしょうか。これまで高度外国人材といわれる、特殊な技能を持っている人の受け入れを進めてきました。しかし今後は一定の技能=特定技能と呼ばれる在留資格を設ける予定で、国家的に単純労働者の受け入れも進めていくという方針に切り替える方向へ動いたということです。

これまでも日本人の雇用を圧迫するのではという議論があり、なかなか進んでいなかった外国人材の受け入れ。しかし、日本人の労働者を確保するために取り組んでも人手不足が解消されない分野に限定して受け入れをする、という方向性を定めました。

高度外国人材に限らず、門戸を開いたことによってさらに日本へ外国人材が流入してくることは間違いなさそうです。

■外国人材受け入れで必要なコミュニケーションとは?

外国人材を受け入れていく上で気をつけたいのがコミュニケーションの取り方。さまざまな価値観が異なるため、すり合わせを行ってからでなければスムーズなコミュニケーションを取ることができません。

下記の3点を意識することで、日本人・外国人の双方にとって円滑なコミュニケーションが取れるはずです。

 

1.ハイコンテクスト・ローコンテクスト文化の違いを把握すること

エドワード.T.ホールというアメリカの文化人類学者が、ハイコンテクスト文化・ローコンテクスト文化という概念で世界を分類したことをご存じでしょうか。日本人は「察する」ことに長けているといわれますが、その特徴はハイコンテクストな文化として紹介されています。

※コンテクスト=共通の知識や体験・価値観などを指しており、ハイコンテクストとはこれらの共有によって言語を介さなくとも伝わる・察することができるようになること。

逆にローコンテクストな文化は体験・価値観などの共有をすることではなく、言語によって意図を伝える特徴を指します。国別に見ると、ドイツ・アメリカ・フランスなどは言語依存度が高く、日本人やアラブ人はコンテクストの依存度が高いとされているのです。

これらの違いによって、外国人材が部下などの場合「何を依頼されているのかわからない」逆の場合は「主張が強すぎてコミュニケーションが取りづらい」などの問題が生じます。

事前にコンテクストへの依存度が違うということがわかっていれば、お互いの状況を把握してコミュニケーションを取ることができます。しかし、そうでなかった場合は外国人・日本人といったくくりを作って、仕事がしづらいと敬遠し合ってしまうという問題が出てきてしまうのです。

こういった壁を取り払うためにも、コンテクストへの依存度を知ることが重要になってきます。

 

2.相互に言語や文化を知る機会を設けること

上記の文化以外にも、その国の文化や特性、あるいは挨拶の言葉を知っておくだけでも外国人材が「受け入れられている」という感覚を持てるかどうかは異なってきます。相互に知り合う機会を設けない場合、日本人同士で固まってしまい、英語が話せないから話しかけない、外国人の方も言語の壁があって話しかけられないという状況を生んでしまいます。

どうしても孤立する、あるいは理解されないことを辛く感じてしまえば、長期的に働いてもらえない可能性も高まるはず。せっかく日本に来てくれた外国人材に長く、生産性高く勤めてもらうためには、お互いを知る機会を設けることが重要です。

3.自社の価値観を説明すること

ハイコンテクスト・ローコンテクスト、言語や文化を理解することも大切ですが、同じ方向を向いて仕事をしてもらうために重要なのが、自社の価値観を説明することです。何を大切にしているのか、それはなぜか、どういった価値を社会に提供したいのか。これらを伝えることで、自社の価値観を外国人材にもインストールすることができます。

外国人材だけでなく、日本人にも日頃から伝えておくことで、両方の労働者が共通の価値観を持って仕事ができるため、コミュニケーションをスムーズにするきっかけにもなるはずです。

■最後に

日本の置かれている状況を含め、外国人材とのコミュニケーションで気をつけたいポイントをまとめてご紹介しました。働きやすい環境を作るための前提知識やコミュニケーションの工夫を身につけ、企業・従業員双方にとってよい状態を作れるようにしてみてください。

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