職業安定法改正!気をつけるべき4つの注意点とは?

ご存知の方も多いとは思いますが、昨年2017年3月に職業安定法が改正されました。すでに今年2018年1月より施行がされています。
職業安定法とは、企業が採用を行う際のルールを定める重要な法律です。
今回の職業安定法の改正で、企業が求人を募集する、掲載する際の「求人情報」に関するルールが従来よりも具体化、厳格化され、要注意の内容になっています。

今回は、法改正を踏まえて、企業が求人トラブル防止のためにおさえておく必要がある4つの注意点についてまとめました。

 

理解しておくべきリスクとは?

法改正後も今まで通りの求人をしていると、知らないうちに法律違反になってしまい、実際に雇用が決まってから求人票に掲載していた給与や仕事内容と労働条件に関して、求職者とトラブルになる危険。

最悪の場合、求職者が当初の求人通りの待遇を求め、企業に対して訴訟などの法的手続きをとるトラブルが発生する可能性があります。

また、求人に関する法律違反は、労働局による改善命令や企業名公表の対象となり、これらの罰則を受けると求人を出すこと自体が難しくなるため、企業としての存続も危うくなる可能性があります。

求人を出される場合は必ず確認しておくことが大切です。

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求人トラブルとは?

 

 

求人トラブルとは、企業が求人媒体やハローワーク、人材紹介会社に提示した求人の情報が、実際の労働条件と異なることによって発生する、企業と求職者の間のトラブルです。

 

具体的には、「採用が決まってから、求人票に掲載していた給与よりも低い給与を提示されるケース」や「採用が決まってから、求人票に掲載していた仕事内容と違う仕事内容を説明するケース」などがいわゆる「ブラック求人」などと呼ばれ社会問題化しています。特に昨今売り手市場といわれ、採用するのが難しい中、このような求人になると求職者からのイメージも悪いですし、掲示板やSNSなどで掲載され、採用が一層難しくなる可能性もあります。

 

このような求人トラブルの件数は、ハローワークでの求人に関するものだけでも、求職者側から全国で「10,937件」の苦情がハローワークにあったことが公表されています(2015年の統計)。

ハローワーク以外にも日本には様々な求人媒体がありますので、そのトラブルの数は計り知れないでしょう。そうならないためにもしっかりとした法改正に向けた対策が必要です。

 

 

<求人トラブル防止対策!

求人トラブル防止対策!2017年職業安定法改正で企業がおさえておくべき4つの注意点

 

 

2017年は「働き方改革元年」と呼ばれ、政府の重大な取り組みのひとつでもあります。プレミアムフライデーや残業時間規制など様々な改革を行ってきました。

ブラック企業や求人トラブルが社会問題化した経緯を踏まえて、2017年3月に職業安定法が改正され、企業が求人する際の求人情報に関するルールが従来よりも厳しく定められました。

 

この職業安定法の改正により企業がおさえておくべき注意点は以下の4つです。

 

  1. 固定残業代の内容の明示が義務化!
  2. 裁量労働制を採用する場合は求人情報での明示が義務化!
  3. 試用期間中の労働条件の明示が義務化!
  4. 求人情報変更の場合は変更内容の明示と理由説明が義務化!

 

 

1.固定残業代制度の内容の明示が義務化!

 

 

まず、はじめの注意点として、企業が固定残業代制度(みなし残業)を導入している場合は、求人情報の掲載にあたり、その内容を明示することが企業に義務化されました。

 

これによって、固定残業代制度を導入している会社が求人媒体や自社サイトに求人情報を掲載する際は以下の点を明示することが必要です。

 

固定残業代制度の導入に関して明示が必要な内容

  • 固定残業代の金額(いくら分なのか
  • 固定残業代の対象となっている残業時間数(何時間分なのか
  • 固定残業代の計算方法(総勤務時間の何割にあたるのか
  • 固定残業代を除外した基本給の額(みなし残業を除く金額
  • 固定残業代の対象となる時間数を超える残業の場合は残業代を支払うこと(みなし残業時間を超えた場合はきちんと支払うという記載

 

 

このように固定残業代制度の内容の明示が義務付けられた背景としては、固定残業代制度を採用していて、固定残業代も含めた月給が「30万円」という場合でも、求人情報では単に「基本給30万円」などと表示されているケースが多く、実際に雇用された際に記載よりも少ない金額と労働者が感じることが多かったためです。

 

固定残業代制度(みなし残業)が採用されている場合、残業をしても固定残業代の範囲内であれば別途残業代は支給されません。

 

そのため、「残業をした場合は基本給30万円とは別に残業代がつく」と考えて応募している求職者と企業の間で、求人トラブルが発生するケースがありました。

 

そこで今回の法改正で固定残業代制度の内容の明示が義務付けられたのです。

 

また、固定残業代以外でも、賃金関係では、以下の点について、求人情報掲載時に明示することが企業に義務付けられています。

 

  • 年俸制、月給、日給、時給などの賃金形態の区分
  • 基本給の額
  • 通勤手当に関する項目
  • 昇給に関する項目
  • その他住宅手当など全員に支給されるもの

 

 

この法改正は2018年1月から施行されています。

 

そのため、2018年以降に固定残業代制度を設けている会社が求人をする際は固定残業代制度の内容を求人情報において明示しなければならない点をおさえておきましょう。

 

 

 

裁量労働制を採用する場合は求人情報での明示が義務化!

 

 

次に、2つ目の注意点として、企業が裁量労働制を採用している場合は、求人情報でそのことを明らかにすることが義務化されました。

 

このような義務が設けられたのは、これまでは裁量労働制を採用している場合でも、求人情報では単に「始業時刻午前9時、就業時刻午後6時、休憩時間1時間」などと表示されているケースがあったためです。某広告会社や公共放送など大きな企業でも過労死する人が出ているため、業界を問わず記載することが義務化されました。

 

裁量労働制を採用している場合、終業時刻以降に仕事をしたとしても、原則として、残業代はつきません。

 

そのため、企業が裁量労働制を採用している場合、それが求人情報で明示されていなければ、「終業時刻を超えて残業をした場合は残業代がつく」と考えて応募している求職者と企業の間で、求人トラブルが発生するおそれがありました。
そこで、今回の改正で裁量労働制についての明示が義務付けられたのです。

 

また、裁量労働制以外でも、労働時間の関係では、以下の点についての求人情報における明示が企業に義務付けられています。

 

  • 始業時刻
  • 終業時刻
  • 残業の有無
  • 休憩時間
  • 休日

 

 

2018年以降に裁量労働制を採用している会社が求人をする際は、裁量労働制を採用していることを求人情報において明示しなければならない点をおさえておきましょう。

 

 

 

試用期間中の労働条件の明示が義務化!

 

 

次に、3つ目の注意点として、企業が試用期間を設ける意味合いで最初に有期雇用契約を結ぶときは、正社員として採用後の労働条件ではなく、試用期間である有期雇用の期間中の労働条件を求人情報に掲載することが義務付けられました。

 

例えば、企業が正社員として従業員を採用する前に、試用期間の意味合いで、まずは6ヶ月だけ有期雇用の契約をするケースなどを想定したものです。

 

このような求人の場合は、試用期間である有期雇用の契約期間中は、賃金等が正社員採用後と比べて低く設定されることが多くなっているという現状があります。

 

それにもかかわらず、求人情報として、正社員採用後の賃金を掲載すると、その賃金が試用期間中からもらえると思って応募した求職者との間で求人トラブルが発生するおそれがありました。

 

そこで、企業が試用期間を設ける意味合いで最初に有期雇用契約を結ぶときは、正社員として採用後の労働条件ではなく、試用期間である有期雇用の期間中の労働条件を求人情報に掲載することが義務付けられたのです。

 

いったん有期雇用で採用してから、正社員雇用を検討するという採用のしかたをしている企業は求人情報の掲載時に注意が必要です。

 

いつまでが有期雇用なのか、その期間中の給料は変動するのかを記載しなければなりません。

 

求人情報変更の場合は変更内容の明示と理由説明が義務化!

 

 

最後の注意点として、企業が一番はじめの求人の際に提示した労働条件を変更したり、あるいは削除や追加をする場合は、応募者に労働条件の変更内容を明示することが義務付けられました。

 

また、応募者の要求があれば最初の求人情報で提示した労働条件を変更した理由の説明をすることが必要となりました。

 

これは、求人情報が後から変更されると、変更前の求人情報を見て応募した求職者と企業の間で求人トラブルが発生するおそれがあることから、義務付けられたという内容です。

 

求人情報で掲載した労働条件を変更する場合の変更内容の明示の方法については以下の4通りとされ、変更が決まった際にできる限り早く明示することが企業に義務付けられています。トラブルを最小限に抑えるため、迅速に対応する必要があります。

 

求人情報で掲載した労働条件を変更する場合の変更内容の明示の方法4つ

  1. 変更前の労働条件と変更後の労働条件を比較対照できる書面を応募者に交付する方法
  2. 雇用契約書や労働条件通知書において、変更部分にアンダーラインを引いて応募者に交付する方法
  3. 雇用契約書や労働条件通知書において、変更部分を着色して応募者に交付する方法
  4. 雇用契約書や労働条件通知書において、変更内容について注意書きをして応募者に交付する方法

 

いずれにせよ、応募者にわかりやすく提示することが義務化されました。変更した内容に関して理由や応募者が理解できていない場合は職業安定法違反となり、罰せられる可能性があります。

 

なお、応募者が新卒者の場合は、原則として求人情報の変更は許されず、やむを得ず変更する場合は、内定を出すまでに上記4つの方法のいずれかで変更内容を伝えなければならないとされました。

 

このように求人情報に掲載した労働条件を後日変更することが全く許されないというわけではありませんが、変更する場合は書面でその内容をわかりやすく明示することが義務付けられましたのでおさえておきましょう。

 

 

職業安定法改正!トラブル防止のための注意点まとめ

今回は、2017年に改正された職業安定法により、企業が求人を行う場合の求人情報に関するルールが厳格されたことについて以下の点をご説明しました。

 

  1. 固定残業代に対応する労働時間数の明示が義務化!
  2. 裁量労働制を採用する場合は求人情報での明示が義務化!
  3. 試用期間中の労働条件の明示が義務化!
  4. 求人情報変更の場合は変更内容の明示と理由説明が義務化!

 

 

この改正は2018年1月より既に施行されています。

 

今回の改正により求人情報に掲載することが義務化された項目は、固定残業代制度や雇用契約書の整備ができていなければ、掲載すること自体が困難です。もし、その改正をする前の内容で募集をし、応募者が疑問を持った場合、罰せられる可能性があります。

 

そのため、今回の改正は、固定残業代制度や雇用契約書の整備ができていない企業は求人が困難になるということを意味しているといえるでしょう。この機会に労働環境や採用状況についてみなしをしてみるのはいかがでしょうか?

 

固定残業代制度や雇用契約書の内容にあいまいな点が残っている会社は、なるべく早く対応し、整備をして置く必要があります。

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