日常的に使われている「キャリア」という言葉ですが、その意味を具体的に説明することはできますか?
実はキャリアという言葉は、単に「職歴」という以外にも様々な意味を内包しています。
また、日本でも転職が一般的になってきている近年、キャリアの形は人によって様々です。
今回は、キャリアの定義や構成要素、自分のキャリアを磨くための方法などをお伝えしていきます。
この記事の目次
キャリアの意味・定義
「キャリア」は、一般的に仕事・経歴・就職・出世などのイメージで使われることが多い言葉ですが、その認識には人によってばらつきがあります。
また、終身雇用や年功序列制度が消えつつある現代では、キャリアの構築方法も一方向的ではなくなってきています。
まずは、キャリアの定義や具体的な内容について知っていきましょう。
キャリアの定義
キャリアという言葉の語源は、ラテン語の「carrus(車輪の付いた乗り物)」と言われています。
そこから転じた、車などの車輪が通った跡(わだち)を意味するフランス語(carriere)やイタリア語(carriera)が、現在の「キャリア」という言葉に繋がっていると考えられます。
車が通った跡、つまり「自分がこれまで進んできた道のり」が「キャリア」なのです。
また、厚生労働省は、キャリアの概念について
と「キャリア形成を支援する労働市場政策研究会」報告書で発表しています。
外的キャリア
外的キャリアとは、職歴、資格、年収など、外から見たキャリアのことです。
一般的には、この外的キャリアのみを指して「キャリア」と呼ぶことも多いですが、実は外的キャリアの成功は本人の満足度と直結しているとは限りません。
次に解説する「内的キャリア」を充実させる方が、本人の満足度が高いと言われています。
内的キャリア
内的キャリアとは、その人自身が持つ働きがいや生きがいのことです。
例えば、一番の生きがいが「家族と一緒に過ごすこと」という人が、忙しい仕事に就いて家族との時間が取れないと、社会的に成功していても内的キャリアが充実しているとは言えません。
内的キャリアは自身の中にあり、キャリア形成の基礎となる部分です。
「なぜその仕事をしたいのか」「なぜその会社で働きたいのか」という内的キャリアを分析することで、適切に外的キャリアを築いていくことができます。
キャリアを形成する要素
キャリアを形成していくためには、まず自己分析をして自分の現状を評価する必要があります。
その上で「今後どうなりたいのか」を考えることが大切です。
キャリアを構成する要素としては、以下の4つが挙げられます。
(1)価値観・マインド
自分の価値観やマインドは、キャリアを形成していく基礎となる部分です。
先にお伝えした「内的キャリア」という要素でもあります。
これまで積み上げてきた経験や、人・社会との関わり方、また「自分にとって大事なもの・ことは何か」という基本的な価値観が、キャリアの全体的な方向性を決定づけます。
(2)行動・思考特性
人はそれぞれ、異なった行動や思考の特性を持っています。
知識・資格・技術といった職務遂行能力は誰でもある程度同じように学ぶことができますが、個人の行動・思考特性はなかなか学んだり、変えたりできるものではありません。
また、役職やチーム内での立場によって、必要とされる特性は異なります。
自分の行動や思考のクセや傾向を知ることは、組織の中でどう動くべきか、またどんな組織に所属するべきかを選ぶ基準となります。
(3)知的資産・業務遂行能力
知的資産・業務遂行能力は、具体的に仕事をするのに役立つ知識・資格・技術などのこと。
仕事をする中で築いてきた人脈も、ある意味で資産・業務遂行能力のうちと言えます。
キャリア形成について考える際には、自分が持つ資産価値を客観的に評価し、把握することが必要です。
また、基本的な価値観や行動・思考特性とは違い、この要素は努力次第で伸ばしたり、自分で方向性を決めることができます。
自分が目指すキャリアにあった能力や、自分に欠けている能力を伸ばしたり、周りの人材に足りない部分を強みにすることで、自分の資産価値を高めていくことが可能です。
(4)目標・理想イメージ
目標や理想イメージは、キャリアプランを描くときのゴールです。
会社や社会にとってどういう人材でありたいか、また自分は将来どんな人になりたいかというゴールを定めることで、現時点から目標達成までの道筋を立てることができます。
ただし、キャリア形成には個人で左右できる要素以外にも、「心身の健康」「景気状況」「自然災害」といったコントロール不可能な要素もあります。
自分の内面と目指すゴールだけではなく、それを取りまく環境や不確定な要素も考慮に入れて、実現可能なプランを描くことが重要です。
「キャリア」関連の用語
ここでは、キャリアに関連する様々な用語の意味や定義を解説します。
◆キャリアアップキャリアアップには、2種類の捉え方があります。
①社内での昇進や転職などで、より高い地位・高い給料を得られるようになること
②特定分野の知識・スキルを向上させ、経歴を上げること。
総じて、人材として市場価値を高める経歴を積み上げていくことと言えます。
また、非正規雇用から正社員雇用になるなど、雇用形態の変化もキャリアアップと表現することが多いです。
◆キャリアデザイン
キャリアデザインとは、「自分にとって理想のキャリアを計画すること」。
似た言葉に「キャリアプラン」もありますが、キャリアプランは「5年後にマネージャー昇格が目標。そのために必要なスキルは…」など、具体的な中長期計画を意味することが多いです。
対して、キャリアデザインはより幅広い意味合いで「どう生きたいか」を意味し、経験やスキルの他に性格・ライフスタイル・価値観などの内的キャリアも考慮して計画します。
◆キャリアショック
キャリアショックとは、「予期せぬ社会や環境の変化によって、描いてきたプランや積み上げてきたキャリアが崩れること」です。
例えば会社の倒産や、残業禁止による収入減、リストラ、転職失敗など、主にネガティブな変化のことを言います。
キャリアショックのダメージを小さくするためには、自分のスキルを磨いて市場価値を高めておくことが重要です。
◆キャリアチェンジ
キャリアチェンジとは、「未経験の業界・職種・職務に移ること」を指します。
転職以外にも、会社内で異動する時に使われることもある言葉です。
キャリアチェンジをすると、キャリアがゼロからのスタートになるため給与が下がったり、仕事を覚えるための負担が大きくなります。
ただし、新しい挑戦ができたり、それまで築いたキャリアが自分に合っていなかった場合はやり直すことができるというメリットもあります。
転職市場で評価されるキャリアとは
それでは、転職市場では、キャリアはどのように評価されるのかを解説していきます。
人事担当者が評価するポイント
キャリアを判断するポイントは、以下の5つがあります。
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- 年齢
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- 技術・知識を示す経験
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- 転職回数や社格など含めた転職履歴
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- 人となりを表す考え方・人間性
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- 景況感とトレンド
この5つの要素のバランスや掛け合わせで、キャリアの評価が決まります。
例えば、年齢が若く、考え方や人間性が素直でこれから伸びるポテンシャルが高ければ、就業経験が少なくても高く評価される可能性が高いです。
逆に年齢が高い場合には、それなりの経歴や最先端の知識などがあると評価されやすいでしょう。
安易に転職を考えるのは禁物
近年は日本でも転職が当たり前になってきていますが、それでも安易に転職を考えるのは禁物です。
なぜなら、転職回数が多く、1つの会社での勤続年数が少ないと、継続したキャリアが築けていないと判断されやすいため。
同業界・同職種での経験であっても、継続して携わる期間が短ければスキルが育ちません。
具体的には、20代なら3回、30代なら5回以上転職していると、「多い」と思われやすいです。
自分のキャリアを磨く4つのポイント
最後に、自分のキャリアを磨くための4つのポイントをお伝えします。
①自分を良く知る
キャリアプランの第一歩は、自分をよく知ることです。
自分がどういう人間か、何が強み・弱みで、将来的にはどうなりたいのかを徹底的に分析しましょう。
漠然と考えるだけでは答えが出にくいので、「Will(将来像)・Can(今できること)・Must(今すべきこと)」をリストにして書き出してみると考えが整理できます。
また、ネットなどでもテストできる性格・適職診断「エニアグラム」なども役立ちます。
②具体的な目標を立てる
次の段階で、具体的な目標を立てていきます。
あまり長期目標を立てても景気の変動など不確定な要素で計画が崩れやすいので、まずは5年先の自分をイメージしてみましょう。
職種や役職、収入額や、ライフプランも加味して、実現可能な目標を立てることが重要です。
③様々な人・様々な価値観に触れる
自分が漠然と思い描いているキャリアプランや、会社から提示されているキャリアが、必ずしも自分にあっているとは限りません。
「理系だから研究職に就かないといけない」「話すのが好きだから、営業職に向いているはず」「男は大黒柱として家計を支えないといけない」など、キャリアに関する思い込みは意外に多いです。
様々な人や、その価値観に触れることで、自分にあった新たなキャリアが見えてくる可能性があります。
④アウトプットの機会を持つ
自分のキャリアについて家族・友人・上司などに話して、アウトプットの機会を持つことも重要です。
自分ではしっかり自己分析をしたつもりでも、客観的に見ると無謀なプランになっているということもありえます。
その場合は自分をよく知る人からアドバイスをもらうことで、キャリアプランをブラッシュアップできるでしょう。
また、人に自分の将来像を話しておくことで、希望の職種を紹介してもらえるなどの縁に繋がることもあります。
まとめ
日本でも転職が一般的になり、キャリアの形は「入社した会社で昇進していく」という画一的なものではなくなってきています。
自分にとって理想の将来を実現するため、また景気の変動や自然災害などでダメージを受けないためにも、自分のキャリアについて考えておくことは重要です。
自己分析や業界の研究を通して、自分の市場価値を高める方法について、一人ひとりが考えていきましょう。