
日本で働く外国人の数は年々増加しています。厚生労働省の調査によると、平成30年10月末時点の外国人労働者数は約146万人で、去年に比べ約18万人(14.2%)の増加となっています。平成19年に届出が義務化されて以降、この数字は過去最高を更新しています(※)。
外国人を日本で採用する側として絶対に知っておくべきなのが、「在留資格」や「在留期間」についてです。正しく理解し、採用の際にチェックしておかないと、採用側の企業が罪に問われる場合があります。
「在留資格」とはどのようなものなのでしょうか。在留資格の申請の流れ、変更手続きについて解説します。外国人の採用を検討している方は、ぜひ参考にご覧ください。
この記事の目次
在留資格とは?
「在留資格」とは、外国人が日本に合法的に滞在するために必要な資格です。日本に来るすべての外国人は、この資格を取得しなければ入国することができません。また、就労などの滞在中に行えることも「在留資格」によって大きく異なります。
在留資格には、大きく分けて2つのタイプがあります。就労を目的とした「活動類型資格」と、定住者などの「地位等類型資格」で、現在、約30種類の在留資格があります。
活動類型資格
「活動類型資格」は、就労が認められている資格と、就労できない資格、制限付きで就労が認められている資格があります。
就労できるもの
外交…外国政府の大使、公使等及びその家族
公用…外国政府等の公務に従事する者及びその家族
教授…大学教授等
芸術…作曲家、画家、作家等
宗教…外国の宗教団体から派遣される宣教師等
報道…外国の報道機関の記者、カメラマン等
高度専門職 …高度の専門的な能力を有する人材
経営・管理…企業等の経営者、管理者等
法律・会計業務…弁護士、公認会計士等
医療…医師、歯科医師、看護師等
研究…政府関係機関や企業等の研究者等
教育…高等学校、中学校等の語学教師等
技術・人文知識・国際業務…機械工学等の技術者等、通訳、デザイナー、語学講師等
企業内転勤…外国の事務所からの転勤者
介護(※)…介護福祉士
興行…俳優、歌手、プロスポーツ選手等
技能…外国料理の調理師、スポーツ指導者等
技能実習…技能実習生
※介護の在留資格は、平成29年9月1日施行されています。
就労できないもの
文化活動…日本文化の研究者等
短期滞在…観光客、会議参加者等
留学…大学、専門学校、日本語学校等の学生
研修…研修生
家族滞在…就労資格等で在留する外国人の配偶者、子
制限付きで就労できるもの
特定活動…外交官等の家事使用人、ワーキングホリデー等
就労が認められていない在留資格でも、「資格外活動許可」を受けた場合は、一定の制限付きで就労が認められます。また、「特定活動」については法務大臣が特に指定する活動とされており、就労の可否も法務大臣によって決められます。
地位等類型資格
身分・地位に基づく在留資格は、就労に活動制限がありません。
永住者…永住許可を受けた者
日本人の配偶者等…日本人の配偶者・実子・特別養子
永住者の配偶者等…永住者・特別永住者の配偶者、日本で出生し引き続き在留している実子
定住者…日系3世、外国人配偶者の連れ子等
参考資料:入国管理局ホームページ
ビザ(査証)との違い
在留資格とビザ(査証)は同じ意味で使われがちですが、法的には異なります。ビザ(査証)はパスポートが有効であり日本へ入国しても良いとする「上陸許可」のことで、在留資格は入国後に在留するための資格です。
発行場所も異なります。ビザ(査証)は日本へ入国する前に外国にある日本大使館や日本公館で発行され、パスポートに印刷されます。一方、在留資格は日本国内で審査・発給するもので、法務省が発行を行います。
さらに、有効期間も異なります。ビザ(査証)は1回の入国に限り有効で、有効期間は発給の翌日から3か月です。その間に入国審査を受け、入国審査が通ればビザ(査証)の効力は失われます。在留資格の有効期限は資格の種類によって様々で、更新する場合は有効期間が切れる前に申請が必要です。
在留資格取得の流れ
外国人が就労を目的として日本に在留する場合、在留資格を取得することが必要です。長期の在留資格を取得する場合は、短期滞在に比べて審査に時間がかかります。
在留資格(長期の場合)
基本的には、在留資格は自国でビザを取得してから日本国内で取得するものです。しかし、自国にいる時点で、日本にいる代理人(雇用主や配偶者など)に取得してもらうこともできます。事前に「在留資格認定証明書」を取得してもらえば、ビザの発給や入国許可がスピーディに行えます。
申請に必要な書類は、在留資格によって異なります。詳しくは法務省ホームページ「在留資格認定証明書交付申請必要書類一覧」 でご確認ください。
代理人が在留資格を申請する方法
(国内)日本にいる代理人が必要書類を揃え、企業がある地域・外国人が日本で住む地域の地方入国管理局に申請
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(国内)「在留資格認定証明書」が日本の代理人に届く
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(国内)代理人が「在留資格証明書」を海外(本人)に送付
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(国外)本人が在外日本公館で「在留資格認定証明書」を提示し、ビザを申請
↓↓
(国外)本人が在外日本公館にてビザを交付される
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(国内)入国する際、「在留資格認定証明書」とビザを提示
(国外)本人が自国にある日本公館へビザを申請
↓↓
(国内)入国時、入管の審査を受け、入国が認められると在留資格を得る
↓↓
(国内)「在留資格認定証明書」を発給される
在留資格(短期の場合)
日本に短期間滞在して、観光、保養、スポーツ、親族の訪問、見学、講習または会合への参加、業務連絡、その他これに類似する活動を行う場合、在留資格「短期滞在」が必要です。
「短期滞在」の在留期間は90/30/15日のいずれかと規定されています。基本的に就労活動はできません。
査証免除国の外国人が、「短期滞在」で日本に来る場合は、空港などで直接入国審査官へ上陸許可申請を行います。
一方、査証免除協定のない国から来る場合は短期滞在用のビザが必要です。「在留資格認定証明書」は交付されないので、日本側の「招へい人」や「身元保証人」等から必要書類を送ってもらい、国外の日本大使館・領事館で、直接ビザの申請を行わなければなりません。必要な書類は、申請人の国籍、渡航目的に応じて異なります。
詳しくは、外務省ホームページ「短期滞在を目的とする場合(国籍別)」 でご確認ください。
在留資格の変更方法
留学後に日本で就職する、仕事内容が大きく変わる、日本人と結婚するなどで在留目的が変わった場合は、本人又は代理人が住んでいる場所を管轄する地方入国管理局に在留資格変更を申請します。なお、「短期滞在」からの在留資格変更は基本的にはできません。
通常、在留資格の変更等には2週間~2ヶ月程度かかります。在留期間が満了するまでに変更できるよう、早めに申請しましょう。変更許可時には4,000円を収入印紙にて支払います。
必要書類
本人が必要なもの
本人名義のパスポート(または渡航証明書)及び在留カード
在留資格変更許可申請書
申請理由書
写真
日本での活動内容に応じた資料
会社が必要なもの
法人登記事項証明書
雇用契約書のコピー
雇用企業等の決算報告書のコピー
年度の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表のコピー
会社案内
雇用理由書
留学の場合
卒業証明書(または卒業見込証明書)
詳しくは、法務省ホームページ在留資格の変更手続きでご確認ください。
在留資格が取り消しになる例
一度「在留資格」を所得しても、取り消される場合があります。法務省の調査によると、2017年に在留資格の取り消しになった件数は385件で、前年に比べ91件(31.0%)増加となり、過去最多となっています(※)。
在留資格が取り消されるのは、不正な方法で上陸許可を受けた場合や、在留資格に基づく本来の活動を行わずに在留していた場合などです。さらに、認められている範囲外の労働を行ったり、在留資格の更新手続きを行わずに働いていたりしても在留資格取り消しとなる場合があります。
実際の取り消し事例をご紹介します。
上陸拒否事由に該当しないものと偽り、上陸許可を受けた(入管法第22条の4第1項第1号)
過去に出国命令を受けて出国し上陸拒否期間中だったのに、氏名などを変更し、不正に上陸許可を受けた
上陸申請時、覚醒剤等の薬物を持っていないと申告したのに、税関で覚醒剤等の薬物を所持していたことが判明した
偽りその他不正の手段により、上陸許可等を受けた(入管法第22条の4第1項第2号)
在留資格「日本人の配偶者等」を得るために、日本人との結婚を偽装。実際は結婚していないのに戸籍謄本等を提出し、在留期間を更新した
食店のホール業務に従事する予定を偽って、別の職務内容で申請し、在留資格を変更した
在留資格があれば在留カードが交付される?
「在留カード」にはどんな役割があるのでしょうか。ビザや「在留資格認定証明書」とはどう違うかなども含めて解説いたします。
在留カードとは?
在留カードとは、日本で中長期(90日以上)滞在する外国人の在留資格を証明するもの、つまり、身分証明書の役割を果たします。氏名・在留資格・在留期間・資格外活動の有無等が記載されています。
在留カードが交付される条件
在留カードは90日を超える日本に滞在する外国人に交付されます。そのため、90日未満の滞在の人、短期滞在ビザを取得後、期間を延長した人には交付されません。
在留カードとビザ(査証)の違い
「ビザ(査証)」は、パスポートが有効であることを証明し、日本に入国するための許可を与えるものです。一方、「在留カード」は、90日以上日本に在留する外国人が在留資格を持っていることを証明するものです。また、「在留資格認定証明書」は、滞在理由や期間を証明します。
まとめ
「在留資格」は外国人の日本での在留・就労には欠かせません。外国人を採用する際には、必ず在留資格を確認し、採用後も、必要に応じて変更することが必要です。
手続きには煩雑な面もありますが、在留資格と異なる就労であることが分かった場合、不法就労助長罪として企業側も罪に問われます。うっかりではすまないので、何度もチェックしましょう。場合によっては、法律事務所など専門家に相談し、お互いに安心して働ける職場環境を作ることが大切です。