平成30年時点で、日本に在住している外国人約263万人のうち留学生は約29万8千人で、前年より約12%増加しています。
労働者不足の影響もあって、日本では外国人労働者の採用を積極的に行っています。外国人労働者を採用するには、外国で人材を集めて日本に来てもらったり、日本に在住している外国人を雇用したりといった方法があります。
日本に在住している外国人を採用する上で大きなウエイトを占めるのが、外国人留学生の存在です。外国人留学生を採用するためには、どのような準備が必要なのでしょうか。
ここでは、ビザの変更や在留資格などの注意点を解説いたします。外国人留学生の採用を考えている採用担当者の方はぜひ参考にご覧ください。
※本記事はDISCO社の「外国人留学生の採用に関する企業調査」アンケート結果を参考としています
外国人留学生の就職状況
まずは、日本での外国人留学生の就職状況をご紹介いたします。
2015年時点では、およそ半数(50.3%)の企業が外国人留学生を採用しています。1,000人以上の大手企業での採用率は、約7割(69.1%)です。この数字を見ても、外国人留学生の採用ニーズは年々拡大傾向にあることが分かります。
それでは、外国人留学生の就職先は、どのような業種・職種のところが多いのでしょうか。
就職先の業種
外国人留学生の就職先で一番多いのは、2014年時点で製造業です。二番目はIT・通信関係(28.9%)で、製造業やIT・通信関係といった技術関係での採用が多くみられます。
職種
外国人留学生が製造業で就く職種上位3位は、「研究・開発・設計関連」「国内営業関連」「海外営業関連」です。語学力や高い技術力を活かした職種への採用が多いですね。具体的な就職先はどのようなところなのでしょうか。
就職先
外国人留学生に人気の企業第1位はP&G Japan(プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン)です。2位以降は、三菱商事、Google、デロイト トーマツ、PwC、Amazonと続いていきます。
ランキングから伺えるように、世界的なグローバル企業の人気が非常に高いです。
採用規模と属性
2014年度に外国人留学生を採用した企業の採用人数の分布を調べてみたところ、1名採用のところが52.7%と過半数を占めています。2~3名採用は35.2%で、採用している外国人留学生の人数が3名以内の企業が87.9%ということになります。
採用人数は従業員規模が大きくなるにつれ増える傾向にありますが、従業員1000人以上の大手企業でも2~3名のところがほとんどで、それほど多い訳ではありません。
日本で採用される外国人留学生に最も多いのは文系(学部卒)で47.3%ですが、文系の採用は減少傾向にあります。採用が増えてきているのは理系で、修士課程修了が36.3%、博士課程修了は11.0%となっています。これは、IT企業の求人の増加が要因とみられています。
出身国
外国人留学生の出身国を見てみましょう。約70%が中国と圧倒的に多く、東南アジア(29%)、韓国(9.7%)、ヨーロッパ(7.5%)、台湾(5.4%)と続いていきます。
配属先
日本で採用されて外国人留学生の配属先は、語学力を活かせる国内・海外での営業、技術を活かした研究・開発・設計の部門が多いです。
外国人留学生の種類
外国人留学生を採用する際の注意点としては、一言で留学生といっても様々なタイプがあることです。日本で学ぶ外国人留学生の5つのタイプをご紹介いたします。
短期留学生
短期留学者とは、主に学位取得を目的せず、母国の大学に在籍しながら他国の大学等で1学年以内教育を受けて単位を修得する人のことを指します。留学修了後は母国に帰るため、採用する場合は基本的に母国の大学を卒業してからとなります。
交換留学生
交換留学とは、現在の学校にそのまま在籍しながら海外で一定期間(1年間程)学ぶ形式のことです。留学先の学校ではなく、帰国後に母国の学校を卒業します。
短期留学と同じく交換留学生も母国へ帰るため、採用は母国の大学を卒業してからとなります。
専門学校への留学生
外国人が日本の専門学校に入学するには、日本語学校で6か月以上勉強するか、日本語能力の証明を受けされ、修行年数2年(高度専門士は4年)以上専門学校で専門的技術を学びます。卒業後は専門士もしくは高度専門士の称号が与えられ、ほとんどの人が日本人と対等の待遇で就労します。
語学留学生(日本語学校)
日本語学校に通う語学留学生は、卒業後は日本で就労する人や母国に帰国する人など様々です。日本語を勉強し、母国で活かすために留学する人も多いです。
その他
他には国費留学生が挙げられます。国費留学生は、日本と世界各国の教育水準を相互に向上させることを目的としており、政府から学費・渡航旅費を支給されています。ほとんどの国費留学生は、留学後は帰国し母国で働いています。
外国人留学生を採用するメリットとは?
日本の企業が外国人留学生を採用するにあたっては、大きく分けて5つのメリットが考えられます。
優秀な人材を確保する
一番のメリットは、何と言っても優秀な人材を確保できることです。日本人の就職希望は大手企業に集中していて、中小企業の志望者が少ないのが現状です。日本語でのコミュニケーションや日本の価値観を理解できるかなどの注意点に気をつければ、様々な分野で優秀な人材を確保することができるでしょう。
外国人としての強みを活かせる
異国での就職を希望するだけあって、外国人留学生はハングリー精神が強くモチベーションが高いです。また、日本語+1か国語以上の語学力などの外国人ならではの特性を生かし、企業としても成長できることが多いです。
海外の取引先に関する業務が行える
外国人留学生なら、海外との取引に関する業務において語学力やその国に関する知識を活かすことができます。海外のトレンドや、国民性、法律などに精通している外国人留学生であれば、両者間に生じたズレを是正することができます。
企業にとっては強い後ろ盾になるため、海外進出のために外国人留学生を積極的に採用しているところは多いです。
日本人社員を中心とした社内活性化
外国人留学生を採用すれば、おのずと社内に異文化を取り入れることができます。これまでなかった考え方や働き方が浸透し、企業全体の活性化にも繋がります。
日本では確保できない人材を補える
人手不足の日本では、留学経験があるなどのグローバルな視点を持っている人材の確保はなかなか難しいのが現状です。優秀な人材を採用したいのであれば、日本人ではないから、日本育ちではないからと敬遠せず、外国人留学生を積極的に採用することをおすすめします。
外国人留学生の採用に必要な準備
外国人留学生を採用する際には、どのようなことを準備する必要があるのでしょうか。注意点も含めてご紹介いたします。
外国人留学生の採用を考えている人事担当の方などは、特に注意してご覧ください。
在留資格変更申請
大きな注意点は、外国人留学生が日本で就職するためには、就労ができる在留資格(就労ビザ)が必要でこれがないと違法な滞在・就労となってしまうことです。外国人留学生は「留学」という在留資格で日本に滞在しているため、ビザを変更しなくてなりません。
就労ビザに変更する際は、在留資格変更許可申請書を入国管理局に提出する必要があります。新卒採用の場合は4月入社が多いですが、春先は混雑しがちなため、多くの入局管理局は12月より就職内定者の変更申請を受け付けています。
在留資格変更申請の審査ポイント
在留資格変更申請では、留学生と企業の両方が審査されます。留学生は在留資格「就労」にふさわしいか、実務経験などはあるか、企業は外国人を雇う上で経営に安定性や継続性が見込まれるか、本人の専門知識を活かすことができる業務であるかなどがみられます。
在留資格変更申請の期限
原則として、在留資格変更の申請には約2か月かかります。許可であれば本人宛に通知書と書かれたハガキが郵送されるので、卒業後に入国管理局に通知書、卒業証明書、パスポート、在留カード、収入印紙代4,000円を持参し、在留資格の変更を行います。
在留資格変更申請が間に合わなかったら
外国人留学生は、採用の内定があっても就労の在留資格が許可されるまで働くことはできません。就労ビザが発行されていないうちから働くと、後で許可が下りても不法就労とみなされ強制帰国しなければならなくなることもあります。
万が一間に合わなければ、在留資格が許可されるまで入社日をずらす必要があるため、在留資格変更申請はなるべく早めに行いましょう。
提出が必要な書類(留学生)
留学生が準備しなければならない提出書類は以下の通りです。
・在留資格変更許可申請書(申請人等作成用)
・顔写真1部
・パスポート、在留カード(入国管理局で提示する必要がある)
・申請理由書
大学から入手する必要がある書類(留学生)
・卒業証明書(または卒業見込み証明書)※必要な場合は成績証明書
留学生に渡す書類(企業側)
企業が留学生に渡さなければならない書類は以下の通りです。
・在留資格変更申請書(所属機関等作成用)
・雇用契約書または採用内定通知書(職務内容、雇用期間、地位、報酬などを明記)
・法人登記事項証明(発行後3か月以内のもの)
・決算報告書
・給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表(財務省受領印のある写し)
・会社案内
・雇用理由書
平成21年9月から上場企業や年間で1,500万円以上の所得税を払っている会社は申請書類の大半が免除されるようになりました。しかし、中には申請後に書類の追加提出を求められる個々のケースもあるため注意が必要です。
外国人の採用におすすめのサービス
最後に、外国人を採用したい企業におすすめの採用サービス、人材紹介・派遣サービスをご紹介いたします。
JELLYFISH
JELLYFISHは、IT・エンジニア系を中心とした外国人人材紹介会社です。48か国から2万人以上の登録がおり、約7割が日本に在住しています。登録者のおよそ70%が35歳以下、日本語検定N1もしくはN2のため、若くて優秀なエンジニアを採用したい企業にぴったりです。
また、エンジニア以外にも、営業・販売、通訳、ホテル・サービスなどの職種の人材も豊富なため、外国人の雇用を考えている企業にもおすすめです。
NINJA
NINJAは、日本語の話せる優秀な外国人を紹介しているサービスです。3か月以上の長期派遣や、外国人留学生の新卒紹介、中途採用紹介、アルバイト求人などを取り扱っています。
登録者数も非常に多いので、まずは一度登録してみてはいかがでしょうか。
Bridgers
Bridgersでは海外で面接会を開くことができます。登録している外国人は日本語能力検定N1かN2レベルの人がほとんどで、言葉の面での心配は少ないでしょう。日本への留学やワーキングホリデー経験があり、日本で働きたいという意欲の高い人が多いため、利用した企業の満足度も高いのが特徴です。
現地への渡航から面接会運営のサポート、内定後の在留資格変更、就労ビザの取得などアフターフォローまでトータルコーディネートしてくれます。完全成果報酬のため、適切な人材を求めている、初めて外国人採用をするといった企業におすすめです。
まとめ
外国人留学生は、日本に一定期間滞在しているため外国で採用する人より日本の文化や生活に馴染みやすいです。また、日本語能力も高く即戦力として期待できます。
しかし、日本人と違い、採用が決まったらそれで終わりではありません。きちんと在留資格を変更し、就労ビザを取得しなければ不法就労となるため注意が必要です。事前の準備、採用後の手続をきちんと把握して、外国人の採用を進めていきましょう。