
「採用した社員がすぐに辞めてしまう…」というのは、企業にとって悩みの種。人材が定着しないと業務に支障が出ますし、採用コストもかさんでしまいます。
今回は、人事担当者が知っておきたい離職率の計算方法や、離職率を下げるための方法・施策をご紹介します。
退職者の離職理由を知ることが、離職率を改善するヒントにつながります。
この記事の目次
離職率とは
まずは、離職率の定義や調べ方、計算方法について知っていきましょう。
離職率の定義
離職率の定義は、「特定の時点で在籍していた人数のうち、一定期間後に退職した人の割合」です。ほとんどの企業では、期初から期末までの1年間のデータを元に計算されます。
全社員のうちの離職者の数だけではなく、「新卒者の離職率」「入社◯~◯年社員の離職率」など、一定の対象ごとに区切って計算することもあります。
離職率の逆の言葉として、定着率というものもあります。定着率とは、「起算日から一定期間後に離職していない人の割合」を指します。
この一定期間は離職率とは違って決まりや一般的な数値はなく、「入社後3年の定着率」など、調べたい期間に合わせて設定します。
離職率の計算方法
一般的な企業で離職率を計算する場合、計算式は以下の通りです。
離職率(%)=(一定期間に退職した人数)÷(起算日に在籍していた人数)×100
例えば、起算日に100人在籍していた企業で、1年間のうちに5人が離職したとしたら、年間の離職率は5%です。
ちなみに、日本企業の離職率の平均値は、以下のようになっています。
平成24年:14.8%
平成25年:15.6%
平成26年:15.5%
平成27年:15.0%
平成28年:15.0%
ただし、業界や業種によって、転職が盛んな業界や妊娠・出産を経ても働きやすい業界があり、従業員の性別・年齢層といった傾向も異なります。
そのため、1つの会社の離職率を一概に日本全体の平均と比較することはできません。
また、新規事業開始に合わせて大量採用を行なったり、経営戦略として早期退職者を募ったりした場合には、一時的に離職率が高くなりがちです。離職率が高い=悪い企業とは、必ずしも言い切ることはできないのです。
離職率が高い6つの原因
特定の原因がないのに離職率が高い場合、労働環境に問題があるケースが多いです。
離職率が高くなりがちな6つの原因について、知っていきましょう。
①休日・休暇が少ない
休日・休暇が少ないというのは、転職したくなる原因の一つです。
忙しさに比例して給与が高ければ留まる社員も多いですが、離職率が高いということは業務内容に給与が伴っていないということでしょう。
休日・休暇が少ないのが原因で離職率が高い企業は、根本的な就業規則の変更や社員の増員、業務の効率化などが必要です。
②教育制度の不備
教育制度が不十分で、新入社員が業務についていけないと、人材が定着しづらく早期離職者が増えやすいです。
「教えず見て覚えさせる」「できないことをきつく叱る」「人によって指導方法が違う」など、仕事を覚えられない環境では社員が定着しません。
入社研修などでフォローを行うほか、教育担当側にも教育方法についての指導が必要です。
③売上ノルマがある
きついノルマやノルマ未達成のペナルティがある会社は、離職率が高くなりがちです。
会社の業績向上のために必要なこととはいえ、常にノルマを意識して仕事をするのは大変なプレッシャーです。
営業や販売担当の離職が目立つ企業では、ノルマ撤廃も一つの改善策。ノルマがなくなれば、逆に伸び伸びと仕事ができて業績が上がることもあるのです。
④労働基準法違反がある
長時間残業、残業代未払い、給与の遅配など、労働基準法違反がある企業も離職率が高いです。
そもそも法律違反ですから、労働基準法違反は許されることではありません。
慣習化している違反であっても、目をつぶらずコンプライアンスを遵守していくことが大切です。
⑤ハラスメントがある
セクハラ・パワハラといったハラスメントは、離職率を高める大きな要因です。
相手が上司で糾弾できない、相談できる人がいないなどの理由で、被害者が「自分が去るしかない」と離職するケースが多いのです。
たった一人のハラスメントのせいで、周囲の社員が立て続けに離職してしまうことも。
こういった会社には、ハラスメント講習の充実や、いざというとき相談できるホットラインの設置といった制度の整備が必要です。
⑥求人内容と実際の業務が違う
求人内容と実際の業務や待遇に違いがあると、入社したものの納得できないという理由で早期離職者が増えてしまいます。
求人を出すときは実際の業務に則した内容にし、面接等でも業務内容について詳しく説明するのが大切です。
ミスマッチを防ぐことは、人事担当者にできる重要な離職率対策といえます。
離職率を下げるには
最後に、離職率を下げるためにできる有効な施策をご紹介していきます。
働き方に多様性を持たせる
離職率を下げて人材を定着させるためにもっとも有効なのは、一人ひとりが働きやすい環境を整えることです。
具体的な施策としては、育児・介護世代が働きやすくなる時短勤務や、遠方でも働けるテレワーク、時間の使い方が自由になるフレックス出勤などの導入が考えられます。
家庭の事情で離職する社員が多い場合は、どのような働き方であれば残留できるのか聞き取り調査を行うといいでしょう。
給与・福利厚生を見直す
給与と福利厚生も、離職者を引き止める大きな要因となります。
全社員の給与のベースアップは難しくても、インセンティブや評価制度の見直しなど、努力次第で報酬が増えるシステムを導入すれば業績の向上にも繋がります。
また、福利厚生については、社員が本当に利用したいと思える制度を導入することで、「社員のことをよく見ている」という信頼感が生まれます。
コミュニケーションの改善
風通しが悪く、コミュニケーション不全な企業では、どんなに離職率を改善する努力をしても的外れな施策ばかりということも。上司との1対1の面談を実施したり、社員が意見を言いやすい雰囲気を作ったりすることで、各社員の本音が見えてきます。
離職者の本当の離職理由を知ることが、根本的な離職率の改善に繋がるのです。
外国人労働者の離職率を改善するには
外国人従業員の離職理由は、日本人とは少し違う場合があります。
外国人特有の離職理由や、離職率を下げるための方法を見ていきましょう。
退職理由から分析
外国人特有の離職理由には、以下のようなものがあります。
・言葉の壁
・日本人従業員との賃金格差
・日本の企業風土に馴染めない
など
日本語が母国語でない外国人にとって、自分の日本語能力を超えたビジネス会話を行うというのはとてもプレッシャーです。
言葉の壁が原因で仕事の評価が低く、周囲の日本人より給与が低いというのもストレスになります。
さらに、日本特有のビジネスマナーや「空気を読む」というコミュニケーションが難しく、馴染めないと感じて離職してしまう外国人も多いのです。
離職率を下げるためのポイント
外国人従業員の離職率を下げるためには、外国人が日本の生活や仕事に馴染めているかどうか気にかけ、フォローすることが大事です。
仕事に慣れるまでは、業務の進め方や指示を十分理解できているかどうか、周囲の日本人が十分に確認する必要があります。
仕事以外の私生活についても、困ったことがあった時に相談できる窓口があるといいでしょう。不安や困りごとの種は早期に相談してもらい、離職を決意する前に解決するのが大切なのです。
まとめ
離職率が高い企業は、企業体質のどこかに社員が働きにくい要因があることがほとんど。
労働環境を根本的に改善するのは簡単なことではありませんが、長期的に見ると採用コストの削減に繋がります。
日本人・外国人問わず、離職理由を分析することが、効率的な離職率の改善に役立ちます。