会社を辞める理由は、人それぞれ。やむを得ない事情を抱えている人、自分のキャリアのために退職・転職する人、今の会社の人間関係や待遇に不満がある人など様々です。
しかし、上司から退職理由を尋ねられたときは、人間関係の悪化を恐れて聞こえのいい理由を言ってしまう人が多くいます。
今回は、退職理由の建前と本音や、日本で働く外国人の退職理由についてまとめました。
退職理由で本音は見えない?
会社を辞める際、本来は就業規定や法律で定められた期日より前に「退職したい」と申し出れば、理由を問わず退職することができます。
しかし、現在の日本企業では、退職を申し出があった際には退職理由を尋ねることがほとんどです。
ただし、退職すれば関わらない相手とはいえ、上司や同僚との関係を損ねず円満に退職したい人が多いのは当然。「給料が低い」「仕事が辛い」「苦手な人がいる」など、言いにくい理由をそのまま回答する人は少ないのです。
以下の項目で、建前に使われることが多い退職理由と、本音の退職理由について見ていきましょう。
建前上の退職理由で多いもの
建前上の退職理由として多いものは、以下の通り。
・家庭の事情(結婚・出産・育児・転居・介護など)
・体調不良
これらの退職理由はプライバシーに関わるものなので、打ち明けられた側もそれ以上は追求しにくく、建前として使われやすいです。
また、職場に対する不満を退職理由として回答した場合、「改善するから残ってほしい」と引き止めにあうことも考えられます。
それに比べて、上記の理由は個人的な事情なので会社側で調整しにくく、引き止めにあいにくいのが建前として使われる理由となっています。
これらのやむをえない個人の事情以外には、ポジティブな理由も建前の退職理由としてよく使われます。
・スキルアップのための転職・留学
・他にしたい仕事が見つかった
・独立を決意した
これらの理由は、退職時に送り出す側・出される側が暗くなりにくいのがポイント。
すでに退職後にしたいことが決まっている場合、引き止めがしづらいのも建前として使われがちな理由です。
ただし、これらの理由が実は嘘で、今後の予定がしっかり決まっていない場合、深掘りした質問をされるとしどろもどろになってしまう可能性もあります。
本当の退職理由とは?
建前ではない本当の退職理由は、現在の職場に対する不満からくるものが多いです。
全てに満足している会社から自ら退職しようとは思う人はいないため、退職理由にネガティブな声が多くなるのは当然と言えるでしょう。
退職理由の本音として多いのは、以下のようなものです。
・給与や福利厚生がよくない
・休日や残業時間など待遇がよくない
・転勤や長距離通勤を避けたい
・人間関係がよくない
・仕事にやりがいを感じない
・評価制度に不満がある
・会社・業界に将来性がない
退職に至る理由は人それぞれなので、ここで全てを挙げることは到底できません。
しかし、その人が退職したいと思ったなら、それだけで正当な退職理由です。
退職者が本当の退職理由を隠すのは、引き止めにあったり、社内の人間関係を壊したくなかったりするためです。
もし、あなたが企業の人事担当者で、自社の離職率を減らしたいと考えているなら「引き止め・他者への公開はしない」という条件で本音の聞き取りを行ってみるといいでしょう。本当の退職理由を知ることで、自社の意外な欠点が見えてくるかもしれません。
退職理由から見えてくる会社の弱みと、改善方法については後の項目でご紹介します。
外国人労働者の退職理由とは
ところで、退職者が外国人の場合、日本人と退職理由に違いはあるのでしょうか。
外国人に多い退職理由や、在日外国人特有の悩みについて解説していきます。
辞めたい理由は日本人と同じ
外国人の退職理由として多いものは、以下の4つ。
・給与への不満
・職場の人間関係
・能力やスキルが活かせない
・休日が少ない・残業時間が多い
大枠でいうと、外国人の退職理由も日本人と同じです。
ただし、外国人は「わざわざ外国(日本)まで来て就職したのに給与が低い」「ビザ取得の難しさに則した仕事が与えられていない」など、来日した労力に見合わない労働環境に不満を感じることが多いようです。
また、外国人はワークライフバランスを重視する人が多く、日本企業の休日の日数や残業時間には満足できないケースがあります。
外国人特有の悩みも
もちろん、言葉や文化が違う外国人ならではの退職理由もあります。
日本で働く外国人特有の退職理由は、以下の通り。
・言葉の壁
・日本の文化に馴染めない
・外国人扱いをされてしまう
・日本という国自体に疑問がある
まず、外国人は日本語でのコミュニケーションが難しいことで退職を考えてしまうことがあります。
日本語は世界の言語の中でも習得するのが難しく、ネイティブ以外の人が言外の意味や微妙なニュアンスまで的確に読み取るのは相当難易度が高いです。
また、日本語能力に壁がある限り、絶対に日本人社員より良い評価は得られないとなると、モチベーションが下がって退職に至る外国人もいます。
次に、日本の文化に馴染めなかったり、良い意味でも悪い意味でも職場で「外国人扱い」をされてしまったりすることが退職理由となることも。
本来、人種や出身国の違いだけで待遇に差をつけることは許されません。しかし、日本企業の中には、外国人であるということが昇進や昇給、キャリアパスなどに影響を及ぼすことも。
そのため、「結局、日本人と全く同じには扱われない」ということに失望して、退職を選ぶ外国人も多いのです。
最後に、外国人労働者には母国や日本以外の外国に転職するという選択肢もあります。
日本の政治や経済競争力・文化などに疑問を抱いた場合、勤めている会社自体に不満はなくても、日本を去りたいと思う人もいることを知っておきましょう。
退職理由から離職率を改善しよう
本当の退職理由がわかると自社に足りない部分が見えてくるため、企業にとっては貴重な情報となります。
例えば、退職理由として多いものと、そこから考えられる改善方法は以下の通り。
・人間関係が悪い→管理職に対するマネジメント講習、セクハラ・パワハラ講習、ホットライン設置などのトラブル予防策
・給与に不満がある→基礎給与・昇給条件の見直し、インセンティブ導入、新たな福利厚生の導入など実質的に社員の利益となる対策
・社内の雰囲気・社風が合わない→上司との個人面談、匿名の意見箱等、社員同士の意見交換ができる制度を整える
・仕事内容に不満がある→教育制度の強化、資格取得の支援、社内公募制の導入など社員の成長を支援、自主性を重んじる
これらの対策を実施して、実際に20%以上も離職率を改善した企業もあります。退職理由に基づいた社内環境の改善は、かなり有効な手段と言えますね。
まとめ
退職する際、本当の退職理由を上司にそのまま伝える人は少ないです。
家庭の事情などやむを得ない理由で退職する人ももちろんいますが、多くの人の退職理由は職場への不満。建前ではなく、本当の退職理由を知ることで、社内の改善点が見えてくる場合もあります。
また、外国人労働者は、日本人とは違った悩みを抱えていることも。
外国人の退職理由を知ることで、より風通しがよく幅広い人材が働きやすい環境を整えることができます。