近年、若い労働力の確保が、多くの企業で課題になっています。
そこで役立つのが、リクルーター制度。リクルーター制度は、若手社員が新卒採用に携わることで、学生と近い立場でアピールやフォローを行なっていく手法です。
今回は、リクルーター制度の概要やメリット・デメリット、具体的な活用事例についてお伝えしていきます。
この記事の目次
リクルーター制度とその役割
リクルーター制度は、通常とは違った面から求職者にアピールできる採用方法です。
まずは、リクルーター制度の概要についてお伝えしていきます。
リクルーター制度とは
リクルーターとは、直訳すると「人員の補充や募集をする人」という意味。
日本の会社で使われる「リクルーター制度」という言葉は、主に人事担当者以外の社員が新卒採用に携わることを意味します。
例えば、社員が学校の後輩に自社をアピールしたり、入社希望者にリクルーターを紹介し、話をする中で入社後のイメージを掴んでもらったりといった関わり方があります。
新卒者に親近感を持ってもらうため、リクルーターは入社1~5年目程度の若手社員が勤めることが多いです。
リクルーターの役割
リクルーターの役割は、新卒採用への関わり方によって様々なものがあります。
求職者を集める
リクルーターの役割1つ目は、求職者を集めること。
大学・大学院の後輩や、その周囲の学生などに働きかけ、志望度とマッチング度の高い母集団形成を目指します。
無作為にたくさんの人を集めても意味がないので、リクルーターには人事担当から「どんな人に入社してもらいたいのか」を伝え、ペルソナをよく理解してもらうことが重要です。
自社のプロモーション
自社のプロモーションも、リクルーターの大きな役割です。
自社の事業や働きやすさについて伝えるのはもちろん、自身がモデルケースとなって「ここに入社すれば、こんな社会人生活が送れる」と学生に伝えることにもなります。
説明会などで多数の学生にアピールするのではなく、1対1または少人数で話して伝えることで、より一人一人にあったアピールポイントを伝えることができるのがメリット。
ただし、会社の顔となる存在だけに、伝える情報の正確性は大切です。
また、リクルーターの態度によって会社全体のイメージが左右されるので、自社の代表として自信を持って送り出せる社員を選定する必要があります。
一次面接
リクルーターは、実際に面接に参加したり、一次面接の代わりとして人材の選抜を行ったりすることもあります。
求職者と個人的に関わった上で面接に進む学生を選べるので、志望度・マッチング度の低い学生が選考に残ることがなく、採用フローの効率化が期待できます。
また、「正式な面接」というかしこまった場以外での態度を見られることで、実際に採用した後のミスマッチを防ぐことにも繋がります。
内定辞退を防止する
リクルーターは、より新卒者に近い立場から、入社後の不安を取り除くことができます。
リクルーターがサポートすることで欲しい人材を囲い込み、内定辞退を防止することができるのです。
また、リクルーター経由での採用者は、大学のOG・OBという繋がりがあるケースも多いです。
「入社後も○○さんがいるなら安心」あるいは「お世話になっている手前、断りにくい」という個人的な感情も、内定辞退の防止に繋がります。
内定辞退対策については、「内定辞退を防ぐためにできること【新卒・中途採用・外国人人材】」で詳しくご紹介しておりますので、ぜひご覧ください。
リクルーター制度のメリット・デメリット
リクルーター制度のメリット・デメリットを、企業側・就活生側それぞれから見ていきましょう。
企業側
リクルーター制度の企業側のメリットは、自社にマッチする人材にいち早く出会えること。
就職サイトなどで広く呼びかけるより、社員のコネクションを使ってピンポイントに声をかけることで、質の良い母集団形成に繋がります。
候補者の人柄や価値観をより深く把握でき、内定辞退や入社後の早期離職を防げることも大きなメリットです。
デメリットとしては、リクルーターの選定や教育に時間と手間がかかることが挙げられます。
人事に携わったことがない若手社員に、的確なアピール方法や人材の見極め方を教育するのは難しいですし、もし失敗した時には優秀な人材を逃してしまうことにもなります。
また、リクルーターは通常業務と並行して学生の募集・選定・相談対応などをしなければいけないので、社員に負荷がかかるということもデメリットです。
就活生側
就活生側のメリットは、気になる会社の社員に実際に会って話を聞けること。
具体的な情報収集ができることで業界理解が深まり、自分の就活を悔いのないものにすることができます。
リクルーターに好印象を与えて推薦してもらうことで、他の就活生に差をつけることも可能です。
デメリットとしては、リクルーターの扱いが各社で異なり、関わり方のスタンスに戸惑ってしまうこと。
参考程度に話を聞けばいいのか、採用フローの一環としてしっかり対応するべきなのかわかりにくく、またリクルーターとの関係がどの程度採用に影響するのかも不明瞭です。
面接に繋がることなくリクルーターにフェードアウトされてしまうことも考えられ、時間の無駄になることもあります。
リクルーター面談(リク面)のポイント
それでは、リクルーター面接ではどんなことに気を配るべきなのか、企業側の視点でお伝えしていきます。
リク面とは
リク面とは、リクルーターが学生とカジュアルな雰囲気で面談を行うこと。
オフィスに学生を招くこともありますが、カフェなど外部に場を設けることもあります。
正式な採用フローに含めるかどうかや、求職者全員をリク面するかどうかは、会社によって異なります。
リク面は、一般的な就職活動期間より早めに始め、大学3年生の冬~大学4年生の春くらいの学生を対象とすることが多いです。
リク面のポイント
リク面は、まずリクルーターの選定と教育から始める必要があります。
若手社員であれば、誰でもすぐにリクルーターになれるという訳ではありません。
特に、一次面接の代わりとして合否判断の権限を与える場合などは、しっかり教育を行いましょう。
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- 自社の強みと課題
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- リク面で伝えたいアピールポイント
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- 求める人物像(ペルソナ)
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- リク面で行う質問と合否基準
少なくとも、上記4点は人事担当者からリクルーターに伝えて理解してもらいます。
リクルーターが複数人いる場合には、認識を共通させ、人によって伝える内容や判断にばらつきがないようにしましょう。
また、リク面の後にリクルーターと連絡が途絶えてしまうと、学生は不安を感じたり、ないがしろにされていると思って志望度が下がったりしてしまいます。
リク面が終わったらメールでお礼を送り、正式な面接に進んでもらえるようフォローを行いましょう。
リクルーター制度導入の注意点
次に、リクルーター制度導入にあたっての注意点をお伝えしていきます。
経営陣の協力を得る
リクルーター制度を導入する際に、いきなり若手社員に働きかけるのはおすすめできません。
まずはリクルーターに適した社員を選ぶため、各部署の部長など管理職の協力を得る必要があります。
「リクルーターに期待すること」や「リクルーターの選定基準」を記載した説明資料を作成し、客観的に条件に合うと思う社員を推薦してもらうと良いでしょう。
リクルーターとしての活動が始まると、通常業務に加えて学生の対応をすることになって忙しくなります。
そのことについても、事前にリクルーターの上司に理解を求める必要があるでしょう。
採用基準の明確化
人事経験のない若手社員は、学生の評価をする時に自分の主観が入りがちになります。
迷いなく会社の方針にあった判断ができるよう、採用基準を明確化しておくといいでしょう。
また、選考状況を随時人事担当者に報告してもらうなど、密にコミュニケーションをとってサポートしていくことも大切です。
リクルーターの育成・人選
リクルーターの選出方法には、自薦と他薦の2つの方法があります。
基本的には、現場での働きぶりを知っている上司から推薦してもらい、その上で本人にやる気を問うのが良いでしょう。
また、リクルーターとして活動してもらう社員には、人事の一端を担うための教育が必要となります。
自社のアピール方法や求める人材像に加え、近年の人材市場や学生の傾向、会社の顔としての振る舞い方などを、資料配布や研修で伝えるのがおすすめです。
リクルーターの活用事例
最後に、リクルーターの具体的な活用事例をご紹介します。
【 株式会社ビズリーチ 】
株式会社では、リクルーターを活用し、内定者に対して「内定を出した理由」や「入社後どのような活躍を期待しているか」などを詳しく伝えています。
会社から見た自分の魅力を自覚することで、内定辞退防止と入社後の活躍に繋がるほか、入社前から会社と内定者の信頼関係を築くことができます。
常日頃から社員に新しい人材が持つ可能性を周知することで、リクルーターの募集に対して手をあげる社員が多く、積極的な制度活用が可能になっています。
その他、リクルーター制度を活用している会社には、以下のような企業があります。
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- 東京三菱UFJ銀行
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- みずほフィナンシャルグループ
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- 三井住友銀行
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- 東京海上日動
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- 第一生命
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- 住友生命
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- 野村證券
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- 大和証券
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- NTTコミュニケーションズ
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- NTT東日本
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- NTT西日本
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- JR東日本
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- JR西日本
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- キャノン
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- トヨタ自動車
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- 旭化成
まとめ
リクルーター制度は、若手社員の協力により、新卒者の心をつかむことができる採用方法です。
新卒者と近い立場で相互理解を深めることで、入社後のミスマッチや内定辞退、早期離職を防ぐことができます。
若い社員の確保が課題となっているのであれば、一度導入を検討してみてはいかがでしょうか。