
平成30年6月の法務省在留外国人調査によると、日本に住んでいる在留韓国人の数は約45万人で、在留外国人の約17%(中国に続いて2位)を占めています。労働者不足が深刻化している現在の日本では、外国人労働者の雇用も年々増加しており、日本で働く韓国人もさらに増えていくと見込まれています。
韓国人労働者を採用する上で特に気をつけたいのは、文化・習慣の違いについてです。日本ではよくても韓国ではマナー違反であったり、逆に韓国では当たり前でも日本ではNGだったりといったことがあるかもしれません。
韓国人を採用する際、採用側も韓国の文化・習慣を学んでおくと、働きやすい環境を整えることができサポートもしやすいです。韓国人の採用を考えている人はぜひ参考にご覧ください。
この記事の目次
韓国文化の特徴
韓国の歴史や特有の文化にはどのような特徴があるのでしょうか。韓国の正式名称は大韓民国で、戦後の冷戦時に誕生した分断国家です。日本と言語が似ており、日本統治時代に作られた日本語由来の単語も多く、漢字文化圏でもあるので、日本語との親和性は高いです。
韓国では「儒教」の考えが広く浸透しており、年功序列や年上(お年寄り)を尊重するという文化が日本よりも強く、男尊女卑の思考も残っています。
また、韓国は外国人の受け入れが少なく、韓国にいる人の約97%が韓国人です。日本も約79%が日本人(法務省の平成30年調査在留外国人の統計調査による)と多くはないため、この点も似ています。
韓国と日本の文化の違い
距離こそとても近い韓国と日本ですが、文化や習慣、マナーには違いがあります。日本では当たり前だと思っていても、韓国ではそうでないことも多いようです。それぞれ分野に分けてご紹介いたします。
仕事にまつわる文化・習慣
まずは、韓国と日本の仕事に関する文化・習慣の違いからご紹介いたします。韓国人と仕事をしたり、韓国人を採用したりする上では、これらは知っておくべきポイントです。
「やりがい」より「給与」
給与よりも「やりがい」や「人間関係」を重視する日本人は多い様ですが、韓国ではそうではないケースがあるようです。賃金及び福利厚生、適切な勤務時間や休日を重視しています。韓国人は、適切な勤務時間でより高い賃金を受け取り、自分の生活を向上させることが大切だと考えている傾向にあります。
全てを完璧に行おうとするのではなく、とにかくやってみる
日本では、仕事を始める際は手順を全て確認してから着手しますが、韓国ではそうではありません。とりあえずやってみて、作業を行いながら修正をしていくというスピード重視の考え方です。スピード重視で行う分仕事は早いですが、後から多く修正が発生することもありえるため注意しましょう。
仕事の優先順位
上下関係が厳しい韓国では、仕事においても上司から与えられた仕事の優先順位が高くなります。日本ではケースバイケースで優先順位を変えますが、韓国人材は本来しなければいけないことがあっても、先に上司から与えられた仕事を行います。
人間関係を重視する
韓国社会では、日本よりも人間関係が重視されます。例えば、業績の良いA社と遠い親戚から紹介を受けたB社で内定をもらった場合、B社を優先するなどです。日本でも縁故採用や家族経営はありますが、韓国の方が圧倒的に多いようです。
転職が多い
韓国人は、転職をする人が多いです。勤めている期間が短くても、賃金が高い職に就くことができればそちらを優先します。長く同じ職場で働くと好印象を受ける日本と違い、韓国では職を一度もしないと他に行くところがないとみなされ評価されません。
以外にも時間にルーズ??
韓国は、日本の5分前行動のような習慣はなく、時間に遅れることもあるよね。という風潮があります。約束などの待ち合わせには注意しましょう。
生活にまつわる文化・習慣
仕事は生活の一部です。仕事とは直接関係のないことでも、生活面の違いを知っておくことは大切です。
煙草を吸う場所
儒教の教えが根強く残っていることから、韓国では女性が道端や公共の場所など人目につく場所で煙草を吸うことはほとんどありません。また、男性でも上司や目上の人などの前で吸うことはほぼありません。これらの場合トイレなどで喫煙をする人が多いため、韓国のトイレは煙草の匂いがするところが多いそうです。日本では禁煙のトイレが多いので、違う習慣であるといえます。
整形文化
韓国では容姿に対して過敏で、美容に対する意識がとても高いです。幼少期から外見を評価されるため、韓国人はルックスの優劣を強く意識しています。そのため整形も一般的で、子どもに整形を勧める親も多いようです。
お風呂の文化
韓国にも日本と同じように湯船に浸かる習慣がありますが、家庭でお風呂に入る習慣がありません。その代わりあかすりやサウナ、銭湯などによく行きます。
正月が違う
韓国では、1月1日よりも旧正月をメインでお祝いします。旧正月は太陽暦のため毎年日付は変わりますが、韓国では日本の年末年始と同様に旧正月に1週間ほどの休暇を取ります。
食にまつわる文化・習慣
日本では韓国料理の人気がとても高いですが、韓国の食文化は日本とはどう違っているのでしょうか。
お箸とスプーンの使い方
韓国では、日本と同じように麺や白米をよく食べます。お箸を使うところも同じですが、日本とは使い方が違い縦向きに置きます。
また、日本では主にスープを飲むときなどに使うスプーンですが、韓国ではビビンバやおかゆが多いため、ご飯ものを食べるときに使われます。
韓国の食卓でNGマナーとは?
食事のマナーは、日本と違うところが多いです。日本では当たり前の、麺をすする、お皿を持って食べる行為は韓国ではマナー違反とされています。
目上の人と食事お酒をかわすときに気をつけること
韓国には儒教の考えが根付いており、目上の人とお酒を飲むときのマナーもあります。まず、正面ではなく横を向いて飲むことが正式とされています。お酒を注ぐ際は、瓶を両手ではなく片手で持ち、もう片方の手で自分の腕を支えなければいけません。
お酒の席で韓国人の部下にこのようなことをされるかもしれませんが、敬意の表れなので理解が必要です。
日本ではマナー違反なことも…
他にも、韓国ではくちゃくちゃと音を立てて食べることは美味しくご飯を食べているという意味で好意的にとられるようです。また、韓国では、食事のときあぐらをかいたり片膝をたてたりしても良いそうですよ。
どちらも日本ではマナー違反とされますが、韓国ではまったくの逆となっています。
コミュニケーション・恋愛にまつわる文化・習慣
仕事をする上で不可欠なコミュニケーションですが、韓国と日本で違いはあるのでしょうか。コミュニケーションや恋愛にまつわる文化・習慣の違いをご紹介いたします。
握手は両手で
韓国では、握手の際は握手する反対の手は肘に添えることがマナーです。この握手は、特に目上の人や仕事関係の人、また初対面の人に対して行うことが多いです。握手のやり方は信頼関係にも繋がるため、覚えておくと良いでしょう。
友達の定義
日本人は年齢問わず仲良くなれば友達と言いますが、韓国人は違います。韓国人は目上の人を非常に重んじるため、友達と呼ぶのは同じ年齢の人のみで、年上の人を兄や姉、年下の人を妹や弟と言います。
表現の方法
日本人は自分の本心を隠したり遠慮したりしますが、韓国ではそうではありません。社交辞令はなく、はっきりと自分の意思を伝えます。嫌な人とは無理に付き合うこともしません。反対に、一度仲良くなると人が買ったものも共有し、助け合うことが当たり前と思っています。日本人にとっては煩わしく思ってしまうことも多いかもしれませんが、より仲良くなれるチャンスなので心を開くと良いでしょう。
韓国ではレディファーストが当たりまえ
儒教の教えの影響もあってか、韓国では、デート代や食事代を男性が払うのが当たり前です。韓国人の異性と食事に行く際は念頭に置いておきましょう。
お金にまつわる文化・習慣
お金にまつわる文化・習慣は、韓国と日本でどのように違っているのでしょうか。
食事代や飲み代は貸し借りの対象にはならない
韓国人は、友達同士の食事代については細かく気にすることはありません。今回は払ってもらうので次回は自分が、といったような持ち回り制をとっていることが多いです。
クレジットカード・電子マネーが主流
韓国では現金よりもクレジットカードや電子マネーの出番が多いです。理由としては、韓国の最高紙幣1万ウォンが日本円の5,000円にあたり、高額な買い物をする際かさばってしまうからということが考えられます。
交通にまつわる文化・習慣
交通にまつわる文化・習慣の違い、特徴はどのようなことがあるでしょう。
交通ルールは車優先
韓国では歩行者優先ではなく車優先です。韓国では一般車だけでなくタクシーも運転が荒く、信号無視やスピードを超過の車が後を絶たないそうです。そのため交通事故が多く、交通事故の死亡件数もOECD加盟国の中ではトップクラスです。
交通機関で、立っている人の荷物をもつのが当たり前
韓国では、電車では座っている人が立っている人の荷物を持つ習慣があります。座っていると突然知らない人の荷物を置かれることも多いようです。日本人が電車などの交通機関に乗る際、立っている人も自分で荷物を持ちますが、日本では考えられない光景ですね。
電車内で電話してもよい
韓国では、電車内で電話をしてもマナー違反とはなりません。日本で韓国人を雇用する際は、電車での通話はマナー違反となってしまうことを教えてあげましょう。
教育にまつわる文化・習慣
韓国の教育制度は日本と同じ6-3-3-4制をとっていますが、大きく日本と違っている点もあります。
教育は世界トップレベル
韓国はとても教育熱心な国で、教育レベルは世界トップレベルです。成績が生死を分けると言われるほど厳しく、優秀な成績で卒業することが名誉なこととされるため、学生は休みなく勉強しています。
また、日本では高校は希望の学校を選べますが、韓国ではクジで決められます。
韓国には学校にプールがない
日本には義務教育で水泳の授業があり、学校にはプールがありますが、韓国のほとんどの学校にはありません。韓国で泳ぎを習うにはスイミングスクールへ通わなければならず、泳げない韓国人も多いようです。
結婚にまつわる文化・習慣
結婚にまつわる文化・習慣の違いはどのようなものがあるでしょう。
「同姓同本」の思想
同姓同本とは、祖先の出身地が同じで、なおかつ姓も同じことを言います。以前、韓国では同姓同本の人は近親とみなされ同姓同本の人とは結婚することができませんでした。現在では解禁されていますが、その考えはまだ残っていて、結婚を反対されることもあるそうです。
妻の役割が大きい
韓国では、結婚前は女性優位ですが、結婚後は逆になり男性が強くなります。韓国では嫁がとにかく働くという文化があり、法事などでは座る暇もないくらい働かなければいけません。その役割が大変で離婚をしてしまう人も多いようです。
韓国人男性に必須の制度「兵役」
韓国と日本のもっとも大きな違いの一つが兵役です。韓国人の男性は、18歳から29歳までの間で約2年間の兵役の義務を全うしなければなりません。実際に軍隊にいるのは2年間ですが、除隊後の8年間を「予備役(予備軍)」、それから40歳までを「民防衛」と言い、合計20年ほどの服務義務が生じます。
病気や障害などの理由があれば必要はありませんが、基本的には全員に課せられている義務です。韓国では兵役を終えないと就職はできず、兵役期間中は隊員であるため、週末に友人や恋人に会う際も軍服を着用しなければいけません。
まとめ
日本と韓国は一見似ているようですが、生活習慣や仕事への考え方などで違っている部分も多いです。
韓国人を採用する際は、そういった違いから誤解などが生じないよう気をつけましょう。しかし、韓国の教育制度はトップレベルのため、うまくフォローできれば素晴らしい人材となり得ます。