これまで、日本で働くインド人労働者は、インドの人口に比べてそれほど多くないのが実情でした。
しかし、両国の環境の変化により、今後日本で就職するインド人労働者は増加していくと見込まれています。
今回は、インド人が来日ために必要なビザの種類を解説していきます。2018年に施行された、インド人ビザの緩和内容も知っておきましょう。
この記事の目次
インド人ビザの提出先は?
インド人がビザを取得するために申請する書類の提出先は、在インド日本国大使館または領事館です。
インドの首都・ニューデリーにある日本大使館をはじめ、コルカタ・チェンナイ・ベンガロール・ムンバイの4都市に領事館があります。管轄の大使館・領事館はインド人本人の住所地によって決まっています。
また、ニューデリーの大使館が管轄するエリアに住民登録しているインド人は、混雑を緩和するため、「代理申請機関」と呼ばれる窓口を介してビザを申請しなければなりません。
緊急性のある案件以外は、全て直接ではなく、代理申請機関を通して申請を行います。
日本人がインドにいる知人を日本に呼んだり、日本企業が採用したインド人を呼び寄せたりする場合は、日本の出入国在留管理局でビザの申請手続きを行います。
そして、発行された許可証をインドにある日本大使館・領事館に提出すると、ビザの交付が行われます。
インド人が来日時に必要なビザ
それでは、来日するインド人に必要なビザを、目的や期間に合わせて見ていきましょう。
インドは日本が定めているビザ免除国ではないため、来日するインド人は必ずビザの取得が必要です。
正社員として雇用する場合
インド人が日本で正社員として働くためには、他の国の外国人と同じく「就労ビザ」が必要です。
全部で17種類ある職種別の就労ビザを、日本で就職する予定の職業に合わせて取得します。
日本で働くインド人はエンジニアが多く、就労ビザの中でも「技術」ビザの取得者が多くなっています。
他には、インド料理店のコックとして働くための「技能」ビザや、飲食・宿泊・清掃等の会社で正社員として働くための「特定技能」ビザの取得者も増えることが予想されます。
留学生が日本でアルバイトする場合
日本の大学や専門学校で学ぶために来日するインド人留学生は、「留学ビザ」を取得します。
この留学ビザは基本的に就労ができませんが、「資格外活動許可書」を得ていると学業に支障のない範囲でアルバイトができます。
また、すでに就労ビザを取得しているインド人が、資格範囲内の職種でアルバイトをする場合には、特に申請手続きなどは必要ありません。
短期間の出張・滞在が目的の場合
出張などで日本に3ヶ月以内の滞在をするインド人は、「短期滞在ビザ」を取得します。
これが、他の多くの外国人とインド人の違うところです。日本が定めたビザ免除国の外国人は、90日以内の滞在ならビザ申請の必要がありません。
しかし、インド人の場合は、1~90日の短期滞在でもビザ取得が必要になります。
また、来日する目的によって、短期滞在ビザは次の3種類に分かれており、それぞれの目的によって申請に必要な書類が異なります。
・知人訪問・観光
・親族・姻族訪問
・短期商用
なお、上の2つの短期滞在ビザだと日本国内で報酬を得る活動ができないため、ビジネス目的で90日以内の短期滞在をする場合には短期商用ビザを取得します。
日本を観光する場合
インド人が日本に観光目的で来日する場合、観光のみの独立した目的のビザはありません。ビジネスでの来日と同じ、「短期滞在ビザ」を取得します。
来日するインド人が、日本国内にいる知人や親族を訪ねる場合には、日本側主体で申請を行うことも可能です。
その場合、来日するインド人との関係を証明する写真やメール、親族関係なら出生証明書や戸籍藤本などが必要になります。
日本に誰も知り合いがいないインド人が観光目的で来日するときは、行き帰りの飛行機の予約確認書や、渡航費用の支払い能力の証明が必要です。
インド人を雇用する時のポイント
日本でインド人を雇用する場合には、インド人の国民性や文化をよく知っておく必要があります。
柔軟性が高い
まず、インド人はとても柔軟性が高いのが特徴。どんなことが起きても臨機応変に対応できる反面、決め事や時間を守るのが苦手という人が多いです。
予定を立てても、状況が変われば全て無駄になるという考えを持っている傾向があり、計画や規律を重んじる日本人とは働き方が異なります。
上下関係がはっきりしている
一方で、上下関係には忠実に従うという国民性もあるため、就職した会社の上司が言うことにはきちんと従うという特徴も。
インド人を雇用するなら、このことを念頭に置いてマネジメントのやり方を工夫しましょう。
「ノープロブレム」には注意?
もう一つ特徴的なのが「ノープロブレム」という言葉。
インド人と英語でコミュニケーションを取ると、頻繁に「ノープロブレム」という言葉を使うようです。
進捗などを確認した際にそう言われると安心してしまいそうですが、実はインド人の「ノープロブレム」は、日本人が感じる意味合いとは少し異なります。
実際は、問題があっても「最善を尽くしている」という意味だったり、単なる相槌として使ったりすることもあります。インド人が「ノープロブレム」と言っていても、本当に問題がないかどうかよく確認するようにしましょう。
インド人に対するビザ緩和のポイント
2018年1月1日から、インド人の短期滞在ビザの一部について、要件が緩和されました。
緩和の内容は、大きく分けて2つあります。
・申請書類の簡素化
・発給対象の拡大
申請書類の簡素化
以前は、短期滞在数次ビザの取得には
・ビザ申請書
・パスポート
・経済力を証明するもの(観光目的の場合)・企業への所属を証明するもの(商用目的の場合)
・申請人の在職証明書
・数次の渡航目的を説明する資料
が必要でした。
しかし、改正以後は「申請人の在職証明書」と「数次の渡航目的を説明する資料」が不要になっています。
これにより、ビザの期間中に何回も来日する、ビジネス目的や観光リピーターのインド人の増加が見込まれます。
発給対象の拡大
発給対象の拡大は、「過去1年間に2回以上の訪日歴があるインド人は、他の要件なしで数次ビザ(有効期間最長5年,滞在期間最長90日)が発給できる」というもの。
経済力の証明や行き帰りの航空券、日本国内の関係者との関係証明などが不要になり、旅券とビザ申請書のみで申請ができるようになります。
さらに、2017年にもインド人の観光ビザの一部緩和がありました。
これは、若年層のインド人の訪日を活性化するため、インド人の学生はビザ申請に必要な「経済力を証明する書類」を、学校の在学証明書で代用できるというものです。
まとめ
インドは日本が定めるビザ免除国ではないため、来日する目的・期間を問わず次のビザが必要になります。
・就労目的:就労ビザ
・留学目的:留学ビザ
・3ヶ月以内の滞在:短期滞在ビザ(観光・商用)
・観光目的:短期滞在ビザ(観光)
近年は、エンジニアや特定技能ビザの労働者として、日本で就労するインド人が増えています。それに合わせて、観光客や若年層のビザ取得をスムーズにする緩和措置も実施されました。
日本側も、インド人の雇用や観光インバウンド対策として、インド人受け入れに対応してく必要があるでしょう。