働き方改革とは、多彩な人材が心身ともに健康に活躍できるよう、新しい働き方を導入する動きのことです。
2019年4月に「働き方改革関連法」が施行され、労働時間や待遇について規制が設けられました。
法律の範疇外であっても、会社独自の働き方改革を実施している企業もあります。
今回は、働き方改革の概要や具体的な成功例、外国人労働者と働き方改革の関係についてなどを解説していきます。
この記事の目次
働き方改革とは?なぜ今必要?
働き方改革とは、これまでの働き方を見直し、より多くの人材が活躍できるような、新しい働き方をイノベーションする動きのことです。
少子高齢化により労働人口が減少していることや、過重労働や不当な低賃金で労働者から搾取する、いわゆる“ブラック企業”が問題になっていることを背景として推進されています。
2019年4月1日から「働き方改革関連法」が施行され、時間外労働の上限規制・有給休暇の確実な取得・労働者間の不合理な待遇差の禁止等が義務となりました。
他にも、企業ごとの取り組みとして、産休・育休制度の整備や、リモートワーク、ジョブ型採用の導入など、新しい働き方を取り入れる企業が増えています。
働き方改革で何がどう変わる?
それでは、働き方改革が実施されることで、何がどう変わっていくのかについてお伝えしていきます。
働き方改革の三本柱
働き方改革は、以下の3つを柱としています。
①長時間労働の是正と年次休暇の確保
働き方改革では、時間外労働の上限設置・有給休暇取得の義務化により、労働者の健康促進や過労死を防止することが目的の一つです。
長時間労働は、労働者にとって心身の負担になるほか、企業にとっても人件費が嵩む原因となるものです。
また、年次有給休暇を労働者に与えなければいけないことは定められていますが、実際には取得率が非常に低い企業も多くありました。
②多様で柔軟な働き方の実現
少子高齢化による労働人口の減少のため、介護・育児等でフルタイム勤務が難しい人や、外国人、定年退職した高齢者等の活用が課題となっています。
働き方改革では、こういった人も働きやすい新たな雇用形態の提案や、それを可能にするための法整備等が進められています。
③雇用形態に関わらない公正な待遇の確保
働き方改革の推進により、正規労働者(正社員)と非正規労働者(パート・アルバイト・派遣社員等)の不合理な待遇格差が是正されます。
具体的には、「同一労働同一賃金」として、雇用形態が違っても、同じ仕事をしているなら同等の賃金が支払われることとなります。
働き方改革実現への具体的な取り組み
働き方改革として、様々な施策が複合的に実施されています。
具体的な取り組みの内容としては、以下のようなものがあります。
・時間外労働の上限規制導入
・年次有給休暇の確実な取得
・労働時間の客観的な把握
・「フレックスタイム制」清算期間延長
・高度プロフェッショナル制度
・産業医・産業保健機能の強化
・残業の割増賃金率の引上げ
・不合理な待遇差の解消
・待遇に関する説明義務の強化
・行政指導や裁判外紛争解決手続(行政ADR)の規定の整備
など
また、これらの施策に協力的な事業者に対して、補助金・助成金の支給も行われています。
働き方改革関連法はいつから施行?
働き方改革関連法は、2019年4月1日から順次施行されています。
上記でご紹介したほとんどの施策はすでに施行されていますが、「残業の割増賃金率の引上げ」は2023年4月から、「不合理な待遇差の解消」は中小企業では2021年4月からなど、まだ始まっていないものもあります。
働き方改革実現のために企業に求められる対応
それでは、働き方改革に関して、企業側にはどのような対応が求められているのかを解説していきます。
①社員の健康情報の理解・管理
社員一人一人に適切な働き方をしてもらうには、会社が社員の健康状態について理解・管理する必要があります。
適切に健康診断を実施するほか、長時間労働を防いだり、必要な休暇を取らせたりすることで、社員の心身を健康に保つことは会社の義務です。
社員が健康に業務に当たることで業績向上に繋がりますし、保険費の負担減、労災による訴訟リスクの低減といったメリットもあります。
②勤務環境の整備
働き方改革に伴い、企業は様々な社員が活躍できる勤務環境を整備する必要があります。
例えば、テレワーク中の社員も会議に出席できるようウェブ会議システムを整えたり、産休・育休の取得がハンデにならないよう、昇格基準を見直したりするなどの施策が考えられます。
新しい働き方は、ただ導入するだけではなく、それに伴って生じる様々な問題について先回りして考え、解決策を用意しておきましょう。
③勤務に関する規定の改正・整備
働き方改革を進める中で、労働者が働きに見合った適正な賃金や評価を受けられるよう、根本的な雇用制度を見直す必要が出てくるかもしれません。
就業規則・労働契約書・36協定などを是正し、働き方改革関連法の内容に沿って雇用を行う義務があります。
④賃金・人事面での社内改革
働き方改革関連法で定められた範疇外でも、新たな働き方の提案や、社員の心身の健康を保つためにできる施策があるなら、社内改革を行うのが理想的です。
賃金アップ、非正規社員の正社員登用などを促進するために、政府が実施している助成金もあります。
働き方改革の成功事例
実際に企業が行った働き方改革の成功事例をご紹介いたします。
残業ありきで業務時間を捉えていた社員の意識を制度側から変え、社員の心身の健康促進・人件費削減に取り組んでいます。
残業時間削減と社員のモチベーションアップを同時に行うことで、残業は減ったにも関わらず、2018年度上半期の売上収益で過去最高益を達成しました。
従業員のQOL向上によりサービスの質が高まり、営業時間を短縮したにも関わらず2017年の上期既存店売上高は前年比101.3%となりました。
働き方改革のための支援
働き方改革を推進するために、政府は各所に相談窓口を設けたり、補助金・助成金を実施したりすることでサポートしています。
専門家による無料相談窓口
・よろず支援拠点
・働き方改革推進支援センター
・ハローワーク
設備・IT導入等による生産性向上&業務効率化支援
・ものづくり・商業・サービス補助金
・IT導入補助金
・小規模事業者持続化補助金
・業務改善助成金
など
魅力ある職場づくり&人材育成など
・両立支援等助成金
・育児・介護支援プラン導入支援事業
・65歳超雇用推進助成金
・キャリアアップ助成金
など
詳しい支援内容や対象事業者については、政府広報による「働き方改革を知ろう!」ページで確認できます。
働き方改革で外国人雇用も変わる?
働き方改革は、外国人人材の積極採用や、日本人労働者との格差是正にも繋がります。
働き方改革と直接的に関わっているわけではないですが、ほぼ同時期に外国人技能実習制度や特定技能ビザが新設され、外国人労働者の受け入れが盛んになりました。
働き方改革関連法の内容は、当然、外国人労働者にも適用されます。例えば、国籍を理由に日本人より安い賃金で働いていた外国人も、「同一労働同一賃金」となります。
外国人労働者も、より多様な働き方、適正な賃金や労働時間が認められていくことで、より日本国内で働きやすくなるでしょう。
まとめ
2019年4月1日から、働き方改革関連法が順次施行されています。
これにより、長時間労働の防止や有給休暇の取得、雇用形態による格差是正などが企業に義務付けられました。
外国人労働者についても、同じ内容が適用されます。
法で定められた範疇外でも、企業独自の働き方改革を実施することで業績がアップした成功例もあります。
各社それぞれ、多彩な人材の活用や適正な賃金・労働時間について考えていく必要があるでしょう。