2019年時点で、派遣労働者数は約142万人。
しかし、紹介予定派遣の労働者は4万人程度と少なめです。
紹介予定派遣は企業側・労働者が時間をかけて双方を見極めることができ、メリットの多い雇用方法です。
今回は、そんな紹介予定派遣のメリット・デメリットや注意点について詳しくご紹介します。
この記事の目次
紹介予定派遣とは?
紹介予定派遣とは、「派遣期間後に正社員(または契約社員)として採用することを前提とした派遣」のことです。
厚生労働省の発表では、2017年4月1日~2018年3月31日の1年間に38,239人が紹介予定派遣として派遣され、そのうち19,008人が直接雇用されています。
紹介予定派遣のポイント
紹介予定派遣の最大のポイントは、正社員や契約社員への登用が前提となっていること。
紹介予定派遣の派遣期間は最長6ヶ月間と定められていて、派遣社員として働いたあと、その直接企業に雇用されることになっています。
一般派遣との違いとは
一般の派遣社員は、派遣期間が終わったあとの選択肢は「更新」か「契約終了」のみで、派遣先の正社員になるということはありません。
紹介予定派遣は通常の派遣とは違い、派遣期間はいわば試用期間であり、終了後は直接雇用することを前提としています。
一般派遣の場合、派遣を依頼し続ける限り紹介会社に対して手数料が発生しますが、紹介予定派遣は直接雇用に切り替えることで手数料が不要になるのもポイントです。
紹介予定派遣の流れ
紹介予定派遣を利用する流れは、以下の通りです。
1.人材紹介会社と契約を結ぶ
2.求人票を作成する
3.書類審査や面接を行い、人材を決定
4.引き継ぎや受け入れ準備
5.紹介予定派遣を受け入れ、就業開始
6.最長6ヶ月の派遣期間を経て、採否を決定
一般の派遣と紹介予定派遣で違うのは、派遣先の企業側が事前に人材を審査できることです。
通常の派遣では、派遣会社が職務に合った人材を登録者の中から選定し、派遣します。
紹介予定派遣はのちに直接雇用することが前提なので、派遣先企業が履歴書を請求したり、採用試験や面接を行ったりすることが可能です。
また、派遣期間は最長6ヶ月となっていますが、期間を短縮して直接雇用やお断りをすることもできます。
一般的には、1~3ヶ月ほどで採否を決めることが多いようです。
延長に関しては、1ヶ月の予定だったものを3ヶ月に延長するなど、6ヶ月以内での調整はできますが、6ヶ月以上の延長はできません。
紹介予定派遣から直接雇用になる割合
先にも触れた通り、厚生労働省は紹介予定派遣の状況について以下のように発表しています。(2017年4月1日~2018年3月31日のデータ)
・紹介予定派遣で派遣された労働者数:38,239人
・紹介予定派遣から直接雇用された労働者数:19,008人
割合でいうと、49.7%の人が紹介予定派遣から直接雇用されています。
紹介予定派遣から正社員(契約社員)登用に繋がるのは、約半数ということですね。
直接雇用に繋がらなかったケースでは、会社側が断るのではなく派遣社員側が辞退したということが多いようです。
紹介予定派遣のメリットとは
紹介予定派遣は、派遣先企業にも、労働者側にもメリットの大きい制度です。
双方から見た紹介予定派遣のメリットについて、知っていきましょう。
ミスマッチを防ぐことができる
紹介予定派遣のメリット1つ目は、会社と人材のミスマッチを防げることです。
派遣期間を試用期間として利用できるので、会社側も労働者側も、労働環境や職務への適性、職場の雰囲気との相性などを見極めることができます。
派遣期間には紹介会社に対する手数料がかかりますが、会社に合わない人材をいきなり正社員登用するよりもリスクが低いと言えるでしょう。
一般的な日本人人材はもちろん、文化の違う外国人人材を採用する場合には、特に大きなメリットとなります。
採用にかかるコストを減らせる
普通に正社員募集の求人を出すと、求人媒体の利用コストや、思うように応募が集まらなかった時の時間的コストなど、何かと費用がかかります。
しかし、紹介予定派遣ならこれらのコストをカットすることが可能。人材紹介会社との契約料や手数料は、求人媒体の広告掲載料より安価なことが多いです。
また、広告掲載では必ず応募が集まるとは限らない反面、人材紹介会社は確実に登録者の中から人材を派遣してくれます。
さらに、人材紹介会社は適性のある人材を絞り込んで紹介してくれるため、選考にかかる時間や手間もカットできます。
求職者にとってのメリット
求職者にとってのメリットは、まずアルバイトや一般的な派遣、正社員の試用期間などより時給が高めなこと。
派遣からのスタートなので、いきなり正社員募集に応募するのはハードルが高い企業・業界でも、経験に関わらずチャンスがあります。
また、紹介予定派遣を利用する企業は、一般に求人を出していないこともあるため、一般公募されていない求人情報を入手することも可能。
さらに、条件の交渉や、派遣先でトラブルに巻き込まれた時など、派遣会社のサポートを受けられるのもメリットです。
紹介予定派遣のデメリットとは
紹介予定派遣には、メリットだけではなくデメリットもあります。
よく理解した上で、適切に紹介予定派遣を利用しましょう。
必ず採用できるとは限らない
紹介予定派遣は正社員(契約社員)登用が前提ですが、必ず採用できるとは限りません。
先にもお伝えしましたが、紹介予定派遣から直接雇用に繋がるのは約半数ほどです。
正式採用は難しい人材が派遣されてくるほか、企業側が採用したくても労働者側にお断りされてしまうこともあります。
人材に限りがある
紹介予定派遣のデメリット2つ目は、出会える人材に限りがあるということ。
紹介予定派遣で派遣されてくるのは、契約した人材紹介会社に登録している人だけなので、あまり間口が広いとは言えません。
資格など特別なスキルを求めるとなると、さらに人材の幅が狭くなります。
幅広く採用する人を選びたいという場合は、普通に求人募集をした方が良いでしょう。
求職者にとってのデメリット
求職者にとっても、紹介予定派遣のデメリットはあります。
まず、派遣契約期間が最長6ヶ月と長く、直接雇用されなかった場合は半年もの時間を無駄にしてしまうこと。
必ず正社員登用されるとは限らないことは、求職者にとってもデメリットなのです。
また、有給休暇が発生するのは直接雇用が始まって6ヶ月後なので、その会社で働き始めて最長1年間は有給が取れません。
他には、紹介予定派遣を利用する企業が少ないため、応募できる求人が一般派遣より少ないことや、エントリーするまで企業名が不明なこともデメリットと言えます。
紹介予定派遣利用時のポイント・注意点
最後に、企業が紹介予定派遣を利用する際、注意すべきポイントを見ていきましょう。
面接で人材を見極める
紹介予定派遣は、双方の意向が一致すれば正社員として長く働いてもらう人材です。
そのため、派遣されて来る前に面接を実施し、しっかり人材を見極めるようにしましょう。
人材紹介会社に選定を任せると手間は省けますが、スキルや雰囲気が自社に合わない人が紹介されるリスクがあります。
社内の準備をしっかり行う
繰り返しになりますが、紹介予定派遣は将来正社員や契約社員として働いてもらうことを前提とした派遣です。
受け入れる準備が不足していると、人材が能力を100%発揮できませんし、「ないがしろにされている」と感じて正社員登用を辞退されてしまう可能性もあります。
紹介予定派遣の受け入れ前には、引き継ぎや周囲の社員への周知など、準備をしっかり行いましょう。
法律を遵守する
紹介予定派遣は直接雇用とは異なり、様々な法律の制約があります。
紹介予定派遣を受け入れる際は以下の点に注意し、知らないうちに違反していたということがないようにしましょう。
・人材紹介会社は許認可を受けているか
・手数料は適切か(支払われた賃金額の10.8%または求職者の年収の50%まで)
・派遣が禁止されている職種ではないか
・派遣期間は適切か(最長6ヶ月まで)
外国人人材の場合のビザは?
外国人労働者を紹介予定派遣で雇用する場合、それぞれの職種に該当する就労ビザが必要です。
基本的に、ビザの管理や確認は人材紹介会社が行なっているため、派遣先企業はあまり心配しなくていいでしょう。
ただし、派遣期間終了後に直接雇用する場合は、外国人労働者のビザ管理は本人と受け入れ企業側の責任になります。
直接雇用の時点で所属する企業が変わるので、ビザ自体の変更や新規申請は不要でも「所属機関等に関する届出」が必要です。
まとめ
紹介予定派遣は、派遣期間を通じて人材を見極めることができるのが特徴です。
求人募集にかかるコストや選考の手間も省くことができるなど、様々なメリットもあります。
特に文化が異なる外国人の採用では、職場に馴染めそうかどうかをお互いじっくり判断できるので、メリットが大きいでしょう。
外国人の正社員採用をお考えの企業では、紹介予定派遣を利用してみるのもおすすめです。