外国人労働者を雇い入れるには、直接雇用と派遣雇用の2種類の方法があります。後者の派遣雇用は直接雇用とは違い派遣業者が間に入るため、契約内容が複雑です。さらに在留資格のチェックなど、外国人ならではの注意点も。
今回は、外国人派遣業を利用したり、外国人派遣業を起業したりするにあたっての方法等広くご紹介します。
この記事の目次
外国人の雇用方法
まず、外国人の雇用方法には以下の2種類があります。
- 直接雇用
- 派遣雇用
また、直接雇用するにも、その募集方法は3種類。
- 自社で募集する
- 公的機関を利用して募集する
- 紹介会社や語学学校からの紹介
それぞれのメリット・デメリットや具体的な利用方法を解説していきます。
直接雇用?派遣で雇用?
2種類ある外国人の雇用方法ですが、それぞれの違いは以下の通り。
派遣業者にマージンを取られない分、直接雇用は費用が抑えられます。しかし、条件を満たす外国人からの応募が集まるとは限らず、人材の斡旋力は派遣業者の方が優位かもしれません。また、在留資格やビザのチェックを自社で行う必要があり、万が一不法就労をさせてしまうと企業側にもペナルティが課せられます。
派遣業者を利用すれば、その外国人労働者が派遣先の業種で就労可能かどうかのチェックは派遣業者が行ってくれます。そのため、身元が確かな外国人労働者が短期で集まるというのが派遣業者利用のメリット。
ただし、費用は直接雇用よりも高くなるほか、就業日・就業時間・時間外労働などは派遣業者との契約に縛られます。
「紹介」と「派遣」の違い
紹介と派遣の違いは、外国人労働者と企業が直接契約を結ぶかどうかにあります。
派遣で受け入れた外国人労働者は、就業時間等の融通がきかないほか、直接雇用より賃金が割高になりる傾向にあります。また、契約上派遣期間が定められているため、同じ人材を継続雇用できる保証はありません。
紹介からの直接契約の場合、間に紹介業者が入るため紹介料はかかるものの、直接契約と基本的には変わりません。長期的に自社の従業員として雇用したい場合は紹介、短期的または熟練度の必要ない仕事に就かせる場合は派遣がいいでしょう。
他にも、後で直接雇用することが前提で派遣社員を紹介する、紹介型派遣業者もあります。
派遣業者を通して雇用できる外国人は?
派遣業者を通して雇用できる外国人は、派遣先の業務に従事できる在留資格を持つ人です。外国人が持つ在留資格(就労ビザ)では、従事できる職種が17種類に分かれ、限定されています。例えば、「調理技能」のビザで来日している外国人は、調理に関わることがない事務職などの仕事には就けません。
そこで就労資格証明書を提出してもらうと、より具体的に条件に合致しているかどうかわかるため安心です。
派遣で雇用できない外国人
業種によっては、派遣雇用が禁止されているものもあります。
- 港湾運送業務
- 建設業務
- 警備業務
- 医療関係
これらの業種で派遣労働者を雇用すると、労働者派遣法違反として摘発されてしまいます。
外国人の派遣会社の選び方
それでは、外国人の派遣業者はどのように選べばいいのでしょうか。違法な外国人派遣業者も横行しているため、安易に決めずしっかりチェックしましょう。
許可番号は最低限のチェック事項
派遣業を営むためには、厚生労働省に事業許可の届け出をしなければなりません。この許可番号がないのであれば、認可されていない違法な派遣業者となります。違法な派遣業者を利用していると、労働者派遣法違反として摘発されてしまいます。
できれば大手の派遣会社を
許可番号を得ていても、すなわち優良業者とは限りません。許可番号は最低限違法な業者ではないという保証に過ぎないのです。
大手の外国人派遣業者なら、コンプライアンスに厳しく、在留資格のチェックなどもしっかり行なっている可能性が高いので安心です。
もしも違法な派遣業者だったら
もし、派遣業者が適法ではないと知りながら契約をしていると、違法な状態が発生した時点で労働者に直接契約を申し込んだとみなされる制度があります。これを「みなし労働契約申込み制度」といい、労働者側がこの申し込みを受けると、派遣業者と労働者間で結ばれていたものと同じ条件で直接契約をしなければいけません。
外国人派遣業者との交渉時はここに注意!
外国人派遣業者と交渉するとき、注意するべき点をご紹介していきます。
契約内容の確認
先にも触れたように、派遣で外国人労働者を雇う場合は、派遣業者と労働者の間で雇用契約を結びます。派遣先も、契約内容に沿って働かせるためにその内容を把握しておくことが重要です。
また、就業日・就業時間・時間外労働や、派遣元の36協定にも縛られるので、36協定の内容も把握しておきましょう。
外国人との面接で注意すること
外国人は入社後に任される仕事の内容にシビアです。例えば事務職なら、主な仕事は書類を作成したりデータ入力をしたりすることですが、他に掃除やお茶汲み、コピー取りなどの雑務を振られることもあるでしょう。
しかし、外国人はそういった仕事について先に説明を受けていないと「業務外の仕事だ」と作業を放棄する人も多いです。そのようなことが起こらないよう、面接では就業条件について詳しく説明する必要があります。
面倒でも複数業者で相見積を
外国人派遣業者は会社ごとに料金形態や対応業務が異なります。時間を惜しんで1社のみの見積もりで決めてしまうと、結果的に損をしてしまうことも。派遣業者は一度利用するとなかなか乗り換えることはありませんから、利用開始時にしっかり比較して検討しましょう。相見積(複数業者に同内容での見積もりを出してもらうこと)をしておくと比較しやすいですよ。
外国人派遣業として起業するには
最後に、自分で外国人派遣業を起業するにはどのような条件が必要なのかを解説していきます。
絶対に必須なのは英語スキル
外国人派遣業を起業するためには、まず外国人の人材を集めなければいけません。日本語がわからない外国人と交渉や面接をするため、英語スキルは必須です。アジア系の外国人は英語が話せないことも多いため、中国語・韓国語・タイ語・ネパール語などアジア系の言語スキルがあるとさらにいいでしょう。
起業に必要な資本金は2000万
外国人派遣業に限らず、人材派遣業を起業する場合、資本金は2,000万円以上と定められています。始めから複数の事業所で起業する場合は、2,000万円×事業所数が必要です。
また、資本金の他に必要な財産に関する条件は以下の通りです。
基準資産額≧負債÷7
自己名義現金預金額≧1,500万円×事業所数
起業に必要な資格は?
人材派遣業者を起業するためには、「派遣元責任者講習」を受講しなければいけません。なぜなら、この派遣元責任者講習を受けることが厚生労働省への許可申請を行うための条件となっているためです。
また、派遣元責任者講習の有効期限は、1回の受講で3年となっています。そのため、派遣業を起業するときは、最初に派遣元責任者講習を受け、3年以内に許可申請を行って許可番号を得ることになります。
まとめ
外国人労働者を雇い入れるためには、外国人派遣業を利用するのが便利です。在留資格のチェックを済ませた身元の確かな外国人労働者を、短期で集めることができます。
ただし、派遣業者という第三者が間に入るため、契約関係は複雑。派遣元と労働者がどのような契約内容になっているのか、また派遣先での業務内容については細かく確認する必要があります。