現在、日本では少子高齢化により労働者不足が深刻化しています。それを解消するため、外国人労働者を採用する企業が増えつつあります。厚生労働省※1によると、2017年10月時点の外国人労働者の数は127万8,670人で、採用事業所は19万4,595箇所です。
外国人を多く採用している企業の特徴とは、どのようなものがあるのでしょうか。当記事では、東洋経済オンラインの情報をもとに、「外国人採用の多い」企業ランキングをご紹介いたします。外国人の採用の多い企業の特徴を踏まえ、今後外国人採用を考えている企業の担当者の方はご覧ください。
この記事の目次
外国人が多い企業の特徴は?
外国人を多く採用する日本の企業はどんな業種が多く、またどのような労働環境にあるのでしょうか。外国人の採用を検討している企業の担当者の方はぜひご覧ください。
日本語能力が問われない業種
全ての外国人労働者が高い日本語能力を持っている訳ではありません。日本語が話せるに越したことはありませんが、かといって優秀な人材を逃してしまっては勿体ないです。
優秀な外国人に活躍してもらう為には、語学力を問わずその人自身の能力を発揮できる業種への採用が必要です。後述するランキングでも、工場などの製造業が上位を占めています。
社内の英語体制が整っている
外国人労働者には、母国語が英語だったり母国語以外にも英語が話せたりという人が多いです。そのため、英語が話せる社員が多い、社内の公用語を英語としているといった体制が整っていれば、コミュニケーションミスを未然に防ぐことができます。
グローバルにサービスを展開している
外国人採用を特に積極的に行っているのは、海外に支社のある企業や海外生産を主としている企業です。グローバルに事業を展開していくためには、日本人だけでなく外国人の力が不可欠です。
また、今後海外進出を検討している企業も外国人労働者の採用を行っています。つまり、日本企業内での外国人従業員の増加の要因は、単なる労働者不足だけでなく、国際的な競争力を高めるためという見方もできます。
外国人の割合が高い国内企業ランキングを発表
2016年の東洋経済オンラインの記事を元に、外国人の採用企業の割合が高い国内企業ランキングをまとめました。それぞれの企業の特徴・傾向や外国人管理職の割合などもご紹介しているので、外国人の採用を検討している企業の担当者の方はぜひ参考にご覧ください。
第1位 フォスター電機(電気機器)
1位は音響・車載用スピーカーなどの電気機器を取り扱っているフォスター電機です。
総外国人従業員数は48,670人で、従業員の外国人比率は98.9%となっています。100%海外生産の企業で、主に製造部門で外国人従業員が活躍しています。外国人管理職の割合は3%で、人数は3人です。
第2位 ユー・エム・シー・エレクトロニクス(電気機器)
2位は自動車や電子機器の部品の調達から製造までを行っているユー・エム・シー・エレクトロニクスです。電子機器の受託部門では国内最大規模の受託率を誇っており、日本をはじめ中国・タイ・メキシコに工場があります。
総外国人従業員数は10,697人で、従業員の外国人比率は98.5%です。外国人管理職は2016年時点ではいませんが、今後増やしていく方針を掲げています。
第3位 マブチモーター(電気機器)
3位は自動車電装や家電・工具のモーターの製造を行っているマブチモーターです。小型直流モーターでは世界No.1のブランド力を誇っています。
1964年の中国進出を皮切りにアジアへ事業拡大し、今では100%海外生産です。総外国人従業員数は22,913人で、従業員の外国人比率は96.4%です。外国人が働いているのは主に海外製造部門で、管理職は全て日本人です。
第4位 ミネベアミツミ(電気機器)
4位はベアリング・モーターを生産しているミネベアミツミです。総生産の6割がタイで、他にも中国・アメリカ・イギリスなど世界各地に支社があります。外国人従業員数は72,310人で、従業員の外国人比率は91.6%となっています。
ミネベアミツミの外国人採用の特徴は、外国人管理職の数が9人と多いことです。2016年時点での比率は0.5%ですが、「管理者の1割は多国籍に!」という企業方針を掲げているため、管理者の人数は今後も増加すると見込まれます。
第5位 りらいあコミュニケーションズ(サービス業)
第5位のりらいあコミュニケーションズは金融・ITのコールセンターを中心に人材派遣を行っている会社です。外国人の採用が少なめなサービス業の中では一番外国人の採用割合が多いです。
アジアにも進出し、国内外で40か所の拠点を構えています。外国人の管理者はいませんが、総外国人従業員数は8,758人で、従業員の外国人比率は87.4%となっています。
第6位 武蔵精密工業(輸送用機器)
6位の武蔵精密工業は本田技研工業の関連会社の自動車部品メーカーです。主に海外輸送部門で外国人を積極的に採用しています。総外国人従業員数は10,807人で、従業員の外国人比率が86.5%です。なお、外国人管理者数は管理者全体の内0.7%となっています。
第7位 テイ・エス テック(輸送用機器)
7位のテイ・エス テックも、武蔵精密工業と同じく本田技研工業の関連会社です。自動車のシートを製造しており、国内外に14箇所(主にアジア・北米)に拠点を構えています。
総外国人従業員数は14,044人で、従業員の外国人比率は86.0%です。なお、外国人管理者は2016年現在いません。
第8位 フジクラ(非鉄金属)
8位は通信ケーブルや電線、ワイヤーハーネスを製造しているフジクラです。タイや中国、アメリカなど国内外に22拠点を置いています。
総外国人従業員数は48,253人で、従業員の外国人比率は84.7%です。なお、外国人の管理職比率は0.6%で、人数は5人となっています。
第9位 住友電気工業(非鉄金属)
9位の住友電気工業は大阪に本社を置く日本最大の非鉄金属メーカーです。世界40ヶ国に支社があり、社員数は約24万人と規模の大きな会社です。そのため、外国人比率は84.2%ですが、総外国人従業員の人数は20万9,094人(1位)と非常に多いです。なお、外国人の管理職比率は0.1%で、人数は4人です。
第10位 山喜(繊維製品)
10位の山喜は紳士用ドレス・カジュアルシャツを製造販売している会社です。中国やタイに製造工場を持っており、総外国人従業員数は1,041人、従業員の外国人比率は83.9%となっています。
1~10位のまとめ
武蔵精密工業を除いて、1位から10位の企業はすべて海外も拠点がある企業です。このことから、日本企業で採用された外国人の多くは日本国内ではなく海外で働いているということがわかります。
外国人の管理職の数はどの企業でも1%未満ですが、外国人管理職を増やすことを今後の課題としている企業もあるため、今後はさらなる増加が期待できそうです。
【11位以降】外国人の割合が高い国内企業ランキング
外国人採用が多い国内企業ランキングの11位から50位までに入っている企業には、どのような特徴があるのでしょうか。引き続き2016年の東洋経済オンラインの記事を元にご紹介いたします。
一番多い業種は「機械」
11位以降の企業で一番多い業種は「機械」で、14位のダイキン工業をはじめ、23位のホソカワミクロン、29位のキトーなど9社がランクインしています。
14位のダイキン工業は空調機器を製造している会社です。総外国人従業員数は54,785人、外国人比率は81.5%となっています。世界各国で多くの外国人が製造に関わっています。
23位のホソカワミクロンは粉体製造機を製造していて、インドネシア・フィリピンなどに拠点を置く企業です。総外国人従業員数は1,089人で、外国人比率は75.4%となっています。
29位のキトーはクレーンを製造している会社で、日本で製造し海外で販売しています。そのため、外国人が活躍しているのは主に海外販売部門です。総外国人数は1,690人で、従業員の比率は71.5%となっています。
二番目に多いのは「輸送用機器」
次に多い職種は輸送用機器で、13位のエフ・シー・シー、18位のヤマハ発動機、19位のホンダ自動車など8社がランクインしています。
12位のエフ・シー・シーはクラッチを製造している会社で、海外に生産拠点を置いています。従業員の内82.6%が外国人で、その数は6,768人です。
18位のヤマハ発動機は二輪車を製造している会社で、二輪車を多く海外へ輸出しているのが特徴です。外国人従業員数は41,727人で、外国人の比率は78.5%です。
19位は大手自動車メーカーのホンダです。海外に支社があり、他国の企業との取引も多いです。総外国人従業員数は165,118人で、従業員の割合は77.9%となっています。
その他
このあとは自動車部品などを取り扱う「電気機器」(7社)が続きます。タムラ製作所(11位)、アルパイン(11位)やブリヂストン(15位)などが代表的です。
食品部門からは味の素とヤクルトがランクインしています。両者ともは海外に支社を置いており、製造だけでなく販売も行っています。このことからも、外国人を多く採用している企業は、すべて海外に支店があるか、海外との取引を行っている企業です。
11位から50位までの外国人従業員数の多い企業
11から50位までにランクインした外国人従業員の多い企業は、自動車会社ホンダの165,118人(ランキング19位)となっています。外国人は、製造・販売部門など様々な部門で働いており、外国人比率は77.9%です。
2位は自動車や船のタイヤを製造するブリヂストンの114,993人(ランキング15位)です。海外に製造拠点があり、外国人が活躍しています。外国人比率は80.1%です。
続いてダイキン工業の54,785人(ランキング14位)、プリンターのインクを製造するセイコーエプソン53,245人(ランキング27位)があげられます。外国人は海外製造部門で働いています。
外国人従業員の多い企業は自動車メーカー・自動車部品メーカーが多いです。海外拠点で働く外国人が多いです。外国人労働者の働きが欠かせない存在となっています。
外国人管理職が多い
11位から50位までの管理職の多い企業の特徴には、管理職の数が多いということが挙げられます。
管理職の多い人数の1位はホンダの15人、2位は電通の14人、3位はダイキン工業の10人となっています。大手企業はグローバル化にいち早く取り組んでおり、管理者の中での外国人比率が高いです。
他にも、医療機器のシスメックス・オムロンも、外国人管理職の多い企業となっています。
管理職の比率の高い企業も
管理職の比率の高い企業は、エス・ディー・エスバイオテックです。農薬を製造しており、タイや中国への海外進出をしています。外国人総従業員数は334人(ランキング39位)、外国人比率は67.3%となっています。外国人管理職の数は3人と全体の7%です。
他にも卸売業のアルテックの2.3%管理職数1人)。医療機器会社のシスメックスの1.6%(管理職数7人)があげられます。
【51位以降】外国人の割合が高い国内企業ランキング
51位以降の外国人採用の多い国内企業ランキングについてもご紹介いたします。注目すべき企業はどのような企業でしょうか。こちらも2016年の東洋経済オンラインを参考にしています。
66位 三菱UFJフィナンシャルグループ
大手銀行として100位以内に唯一入っているのが三菱UFJフィナンシャルグループです。日本の3大メガバンクとして海外との取引も多く、外国人の採用を積極的に行っています。総外国人従業員数は47,980人で、比率は57.1%です。なお、管理職は2016年時点では0人です。
100位 野村ホールディングス
100位は証券・商品先物の野村ホールディングスです。外国人総従業員数は2,308人(43.7%)ですが、特徴的なのは管理職の多さです。管理職の内外国人の割合は4.1%で、外国人従業員全体の約14%(181人)と、他の企業よりも多めであることが分かります。
68位 日産自動車
68位の日産自動車も外国人管理職が多い企業で、その数163人(管理職の内5.9%)です。要因としては、海外の企業と業務提携をしており、製造も海外で行っていることなどが挙げられます。なお、総外国人従業員数は77,809人で、比率は56.7%です。
まとめ
これまで外国人採用の多い企業の特徴・ランキングをご紹介いたしました。上位の会社は海外に工場のある製造業や販売部門がほとんどです。
外国人採用の多い日本企業の外国人のほとんどは海外で働いていますが、今後日本国内の物流部門や農業・医療の分野でも外国人の採用が増えていくでしょう。
残念なことは外国人管理職の数が少ないということです。外国人管理職の人数が少ないと優れた人材を確保できない可能性が高いです。しかし、一方で企業の方針として、外国人管理職の増加を掲げる企業も増えており、今後に期待できます。
外国人労働者の文化や習慣を理解し、彼らが働きやすい環境を作ることが求められています。