外国人を採用する場合、日本国内の別の職場から転職してきた人を採用することもありますよね。外国人の転職者を採用する際に覚えておきたいのが、「就労資格証明書」です。
そんな「就労資格証明書」とはどのようなものなのでしょうか。その申請方法や、万が一不許可になった際の対応について説明します。安心して外国人の転職者を雇用するために、ぜひ参考にして下さい。
この記事の目次
就労資格証明書とは?
「就労資格証明書」とは、転職する外国人が転職先でも今の在留資格のままで働けるかを、事前に確認・証明するための書類です。
外務省入国管理局では、就労資格証明書とは『我が国に在留する外国人からの申請に基づき,その者が行うことができる収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動(以下「就労活動」といいます。)を法務大臣が証明する文書です。』と定義しています。
引用元:出入国在留管理庁
就労資格証明書の目的とは?
採用担当者は外国人労働者を採用する際に、必ず「在留カード」を確認しなければなりません。しかし、在留カードに書かれてある「在留資格」は、「技能」や「技術・人文知識・国際業務」などの記載にとどまっており、細かい作業内容までは記載されていません。
いざ雇用するとなると、具体的にどんな仕事をしてもらうかは重要です。例えば、在留資格「技能」は、コック、パイロット、スポーツインストラクター、ソムリエのすべてに当てはまります。
「就労資格証明書」があれば、就労できる内容が記載されているため、採用する企業側は安心して雇用することができます。
どんなときにあると良い?
「就労資格証明書」は、外国人労働者が日本国内で転職するときにスムーズに「在留資格」を更新するうえで役立ちます。
例えば、A高校で英語教師として働く外国人(「教育」の在留資格を持っている)が貿易会社へ転職し、通訳・翻訳業務に就くケースを例に考えてみましょう。この場合、従事業務が変わるため、在留資格を「教育」から「技術・人文知識・国際業務」に変更してから通訳・翻訳業務に就くことになります。
一方、同じ人がA高校を退職し別の高校に転職した後も英語教師として働くのであれば、仕事の内容が同じなので、在留資格は原則として変更しなくてもよいと考えられています。しかし、その「教育」の在留資格は、A高校で英語教師として働くことを前提としたものであって、B高校で働くことは前提となっていません。
そのため、就労資格証明書は、入国管理局が新しい勤務先での業務が現在の在留資格の活動の範囲内であることを確認するという意味でも有効です。
また、「資格外活動」の許可を得てアルバイトとして働く際に、業務の内容が資格外活動の許可の範囲内であることを確認するために申請する場合もあります。
在留資格更新での「不許可」を防げる
「在留資格」の更新手続きは、転職後の場合は慎重に行われます。そのため、転職後の新しい職種が在留資格に認められた活動内容に適しておらず、在留資格の更新が不許可となる可能性もあります。
しかし、「就労資格証明書」の交付を申請しておけば、在留資格は比較的スムーズに更新されます。入国管理局は、その外国人が新しい業務に就労できる資格を持っているか調査を行いますが、「就労資格証明書」があれば審査の手間が省けるのです。
不法就労者の採用を未然に防げる
不法就労者を採用すると、雇用する企業側も罪に問われる場合があります。不法就労ではないことを確認する手段としては、「在留カードの確認」がありますが、「就労資格証明書」があれば、さらに安心して雇用できます。
ただし、「就労資格証明書」の提出は任意で行われるので、これがなければ雇うことができない、という訳ではありません。
なお、外国人が退職・転職する場合には、入国管理局に「契約機関に関する届出(新たな契約の締結)」を出すことが必要です。こちらは義務化されているので、勤務先が変わると退職・転職の前後で届けを出す、と覚えておきましょう。
就労資格証明書の交付申請方法
「就労資格証明書」のメリットについてご紹介いたしました。次に、「就労資格証明書」の交付申請方法について説明いたします。
審査基準
法務省では、「就労資格証明書」の審査基準として以下の3点を定めています。
•出入国管理及び難民認定法別表第一に定める在留資格のうち就労することができる在留資格を有していること
•就労することができない在留資格を有している者で資格外活動許可を受けていること
•就労することに制限のない在留資格を有していること。
参考:法務省「就労資格証明書申請方法」より引用
申請できる人
就労資格証明書の対象となる人は、「就労することが認められている外国人」です。交付を申請できる人は以下の通りです。
•就労資格証明書を申請する外国人本人
•代理人…申請者本人の法定代理人です。外国人本人が未成年の場合、親も代理人と認められます。
•申請取次人…本人から依頼を受け、本人や代理人が日本に在留している場合に限り認められます。
なお、「申請取次人」は、弁護士・行政書士・特定機関の団体や職員となります。弁護士や行政書士については申請取次の資格取得者であることが必要で、特定機関の団体や職員の場合は外国人が働いている会社の職員となります。
申請に必要な書類
就労資格証明書の交付申請には、以下の書類が必要です。
•就労資格証明書交付申請書(新様式)
•資格外活動許可書の提示(資格外活動許可の取得者のみ)
•在留カードまたは特別永住権証明書
•旅券または在留資格証明書
•身分を証する文書の提示(申請取次者が申請を行う場合のみ)
その他添付書類
•源泉徴収票(転職前の会社が発行したもの)
•退職証明書
•転職後の会社の情報を明らかにする資料(※1)
•転職後の活動の内容、期間・地位及び報酬の記載のある文書(※2)
※1:商業・法人登記簿謄本(3か月以内のもの)、直近の決算書の写し(新設会社の場合、今後1年の事業計画書)、会社案内など
※2:雇用計画書の写し、辞令の写し、採用通知書の写しなど
その他、本人の転職の理由書や雇用理由書の添付が必要な場合もあります。
申請先
外国人が住む場所を管轄する地方入国管理局、または外国人在留総合インフォメーションセンター
手数料
手数料は1,200円です。交付時に収入印紙にて支払う必要があります。
交付にかかる期間
標準の処理期間は当日ですが、転職した場合は1ヶ月~3ヶ月かかることもあります。余裕をもって申請することをおすすめします。
就労資格証明書の受付時間・相談窓口
受付時間は平日9:00~12:00、13:00~16:00の間です。手続きによっては曜日・時間が決まっている場合もあるので、地方入国管理官署または外国人在留総合インフォメーションセンターへ確認が必要です。
詳細は、法務省の「就労資格証明書交付申請」でご確認ください。
就労資格証明書が不許可になったときは?
「就労資格証明書」が不許可になった場合、不服申請の申し立てはできません。就労資格証明書が不許可になるということは、新しい仕事が在留資格に適っていないことを意味します。
不許可の状態で就労させると、雇用側は不法就労助長罪に問われてしまいます。そのため、不許可になってしまった場合は、本人の業務を変更するか在留資格を変更する必要があります。
まとめ
「就労資格証明書」を取得しておけば、外国人労働者本人、採用する企業、入国管理局が安心して、新しい職場での雇用・就労をすすめられます。
ただし、転職の場合の「就労資格証明書」の処理にはかなり時間がかかる場合があります。在留期間が2~3ヶ月しか残っていないと間に合わない可能性もあるので、転職を考えている場合は早めに在留期間更新を行いましょう。