一度退職し、再度その会社で雇用された社員のことを「出戻り社員」といいます。
採用難に直面している企業が多い今、すでに人となりや能力がわかっている社員を確保できる出戻り採用が注目されています。
今回は、そんな出戻り採用のメリットや注意点を詳しく解説。
実際に出戻り採用を行っている会社の割合や、その理由も調査しました。
この記事の目次
出戻り採用とは
出戻り採用とは、一度その会社を辞めた社員を再度雇用することです。
「アルムナイ制度」とも呼ばれ、この「アルムナイ」とは卒業生・同窓生を意味する言葉です。
日本では一度辞めた会社には戻らないという考え方は根強いですが、問題があって退職した社員でもない限り、法や制度的にも、実際の業務においても問題なく再雇用できます。
増加しつつある出戻り社員の採用
現在、有効求人倍率は上昇傾向で、新卒者・転職者ともに売り手市場。採用難に直面している企業が多い中、出戻り採用が注目されています。
実際に、出戻り採用をしている企業がどれくらいあるのかを調べてみました。
出戻り採用をしたことのある会社はどのくらい?
マイナビによる2020年1月の調査では、出戻り採用を実施したことがある企業は全体の65.9%。
従業員数300人以上の企業では、80.0%もの会社が出戻り採用を実施しています。
出戻り制度を設けている会社はどのくらい?
実は、出戻り採用を制度として設けている会社はあまり多くありません。
出戻り制度がある企業は、2018年のエン・ジャパン調査で全体の8%でした。
実際の採用方法としては、制度として大々的に募集するのではなく、有能な元社員にピンポイントで声をかけたり、本人からの応募があったとりしたというケースが多いようです。
出戻りした・出戻り採用をした理由
企業側が、出戻り採用をした理由の上位3つは以下の通り。
1位:即戦力を求めていたから
2位:人となりがわかっていて安心だから
3位:本人に強い復帰の意思があったから
対して、出戻りをする社員側の復帰理由として多いものは以下の通りです。
・家庭の事情等で退職したが、落ち着いて復帰したくなったから
・辞めてからその会社の良さがわかったから
・元上司や同僚から誘いがあったから
出戻り採用は、会社側・社員側それぞれのメリットが合致して実現するというケースが多いようです。
出戻り社員を採用するメリット
それでは、出戻り社員を採用するメリットについて紹介していきます。
出戻り採用は、コストを節約しつつ、能力がわかっている社員を採用できることがポイントとなっています。
会社とのミスマッチがない
以前その会社で働いていた社員は、当然、仕事内容や職場の雰囲気を熟知しています。
ですから、外部からの転職者で起こりがちな「仕事がイメージと違った」「職場に馴染めない」といったミスマッチを防ぐことができるのです。
その会社のことをわかった上で戻る社員は、再度短期で退職してしまうリスクが低いのが1つ目のメリットです。
即戦力としての活躍が期待できる
次に、出戻り社員は即戦力として活用できるのがポイントです。
同じ部署・同じポストに戻すことができれば、すぐに退職前と同じ働きを発揮してくれるでしょう。
業務の知識や経験が必要なポストに欠員が出たとき、以前そのポストに就いていた元社員を再雇用するのはとても良い方法です。
他社での経験・ノウハウが活かせる
出戻り社員は、一度同業他社に勤めたあと、前の職場に再び転職するというケースもあります。
この場合のメリットは、他社での経験やノウハウが活かせること。
企業スパイとまではいきませんが、他社のやり方を知っている社員がいることで、社内に新たなアイデアが生まれるかもしれません。
教育が必要ない
出戻り社員は、その会社の仕事内容を知っているので、再度教育する必要がありません。
在職時と変化があった部分についてはフォローが必要ですが、教育コストを最低限に抑えられます。
新入社員や転職者を教育している時間がない時は、出戻り採用を検討するのも良いでしょう。
採用に時間や費用がかからない
出戻り社員はその人となりがわかっているぶん、選考に時間がかかりません。
また、エージェントや採用サイトを利用する必要がないため、コストもほとんどかけずに採用できます。
本人との連絡・交渉のみという、シンプルなフローで採用できるのも出戻り採用のポイントです。
出戻り社員を採用する際の注意点
出戻り社員の採用にはメリットも多いですが、注意すべき点もあります。
出戻り社員を採用するにあたっては、以下のようなトラブルが起きないよう、フォローや対策が必要です。
以前のような成果が出るとは限らない
出戻り採用をした社員が、すぐに以前のような成果を出せるとは限りません。
ブランクがあると勘が戻るのに時間がかかる人もいますし、離職中に社内に大きな変化があった場合、その変化についていけないことも。
また、離れていた期間が長ければ、職場の新しいメンバーとの人間関係構築も必要です。
ですから、出戻り社員は即戦力になるのがメリットとはいえ、期待しすぎは禁物と言えるでしょう。
不公平・不満に感じる社員が現れる可能性がある
一度退職した社員が好待遇で戻ってくると、それまで在籍し続けていた社員の間で、「自分の方が会社に貢献しているのに」といった不満が出てくることがあります。
特に、管理職など人の上に立つポジションに出戻り社員が就いたり、離職前より良いポストで再雇用されたりすると、不公平に感じる社員もいるでしょう。
ですから、出戻り社員を採用する場合には、その周囲の人材にもフォローが必要です。
待遇やポスト、仕事内容などによく配慮し、周囲との軋轢を生まない人事が重要となります。
社員の転職・退職に関する意識が変わることがある
出戻り採用を行うと、周囲の社員の意識が変わってしまうことも。
要は「いざとなれば戻れるなら、安易に転職・退職をしてもいい」と思わせてしまうのです。
特に、頻繁に出戻り採用を行なっていると、社員の転職へのハードルが低くなりがちです。
これを防ぐためには、出戻り採用を短期に乱発しないことです。また、そもそもの離職率を下げるために、休職・時短勤務・待遇の改善といった引き止め施策を講じる必要があります。
出戻り社員の労働条件はどのようにすればいい?
出戻り採用は、まだ制度として定着していない会社が多く、出戻り社員の待遇についてははっきりした基準がありません。
基本的には、離職前と同じもしくはより良い待遇で再雇用することが多いですが、先にもお伝えしたように好待遇すぎると他の社員の不満を生んでしまいます。
こればかりはケースバイケースなので、出戻り社員本人と周囲の社員のバランスをとりながら、柔軟に対応していくしかないでしょう。
まとめ
出戻り採用を行うと、人柄が信頼でき、即戦力になる人材が確保できて、さらに教育や採用コストがかからないなど良いことずくめです。
社員側からしても、一度勤めていた会社に戻れれば仕事に慣れるのが早く、新たな人間関係を1から築く必要もありません。
ただし、出戻り社員の待遇やポストについては注意が必要。
出戻り採用は、会社と社員本人だけではなく周りの社員の反応まで視野に入れて、上手に活用していくべきでしょう。